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過失運転致死と過失運転致傷の起訴率。

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過失運転致死傷罪の公判請求が1%程度であることから、「示談すれば不起訴」みたいな誤った解説をみかけますが、

過失運転致死傷罪の「起訴率が低い」は真実か?
読者様から質問を頂いたのですが、これはちょっとややこしいのです。確かに、法務省の統計によると令和3年の過失運転致死傷罪は公判請求が1.5%、不起訴が84%。一方、弁護士事務所のデータでは過失運転致死傷罪は70%が起訴、30%が不起訴だったと...

以前も書いたように過失運転致死の起訴率はむしろ高めです。
過失運転致傷のうち「軽症」については5条但し書きによる刑の免除になるから不起訴にしますが(ただし酒気帯び運転や無免許、ひき逃げを伴う場合は起訴)、過失運転致死については検察官向けの解説書には「原則起訴」とある。

 

過失運転「致死傷」という括りにすれば、交通事故の圧倒的多数は「致傷(軽症)」なのだから不起訴率が高いように見えるのは当たり前。
単なる数字のマジックですが、現実の起訴率はどの程度なのでしょうか?

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過失運転致死の起訴率

「最高検、高検及び地検管内別 自動車による過失致死傷等被疑事件の受理、既済及び未済の人員」という検察庁の統計から過失運転致死の起訴率をみていきます。
2023年のデータです。

備考
総数 4416 前年未決約500含む
起訴合計 2001
公判請求 1266
略式命令 735
不起訴合計 993
起訴猶予 176
嫌疑不十分 752
その他 65
中止 16
他の検察庁に送致 934
家栽送致 46
未済 501

未済事件や中止(おそらく被疑者死亡等)を省いて考えると、過失運転致死は起訴が2001件に対し、不起訴が993件。
両者の合計から割合を出すと、過失運転致死の起訴率は約67%です。

 

わりと興味深いのは、不起訴理由。
起訴猶予は情状酌量的な意味が強く、「本来は起訴する事案だけど今回は見送った」になりますが、不起訴993件のうち起訴猶予は176件(17.7%)。
嫌疑不十分が752件(75.7%)。

 

嫌疑不十分は、過失の立証が困難な場合を意味する。
「示談すれば情状酌量で不起訴」なんてことはほとんどなく、不起訴理由の大半は証拠不十分などにより過失の立証が困難なケースなんだとわかる。

 

次に過失運転致傷をみていきます。

備考
総数 391017 前年未決約3000含む
起訴合計 42064
公判請求 2876
略式命令 39188
不起訴合計 314666
起訴猶予 305221
嫌疑不十分 8727
その他 718
中止 83
他の検察庁に送致 20833
家栽送致 9591
未済 3558

過失運転致傷は起訴が42064件に対して不起訴が314666件なので、ほとんどが不起訴です。
不起訴理由は305221件(96.9%)が「起訴猶予」つまり情状酌量的な意味合い。
こちらは自動車運転処罰法5条但し書きによる問題だと理解できる。

これらから言えるのは

死亡事故を起こした場合には約67%が起訴されており、不起訴になる場合の不起訴理由は「嫌疑不十分」がほとんど。
過失の立証ができない場合が嫌疑不十分なのだから、予見不可能/回避不可能な事故も嫌疑不十分として扱われていると考えられる。

 

ケガを負わせたにとどまる場合は、軽症事案であれば不起訴濃厚(ただし酒気帯び運転、無免許、ひき逃げ等の悪質な道路交通法違反を伴う場合は別)。
重症事案は基本的に起訴です。

 

なお勘違いしやすい点として、刑事事件の結果が無罪又は不起訴であっても、民事過失は別問題です。
むしろ関係ないと言ってもよい。

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