ホイールの結線について「結局効果はあるの?ないの?」という質問を頂いたのですが、
実はこれ、滅亡したSACRAの実験に全てヒントがあります。
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結線は剛性に影響するか?
まず大前提から。
静的荷重を加えた剛性試験では、結線の有無で有意な差はないとしている。

剛性とは「変形しにくさ」なので、ホイールの一ヶ所を固定し、違う場所に荷重を加えて変形量を見るわけですが、結線の有無で変形量は変わらない。
次に動的荷重の話。
これは以前SACRAがやった実験にヒントがある。

SACRAが行った試験は、スポークに歪みゲージをつけて、実走におけるスポークの動きを観察した。
SACRAが行った試験は当初、「接触交差」のスポーク組に歪みゲージをつけて観察したのですが、
https://www.sacra-cycling.com/columns/wheel_elucidator2
「ハブからスポーク穴までまっすぐスポークが伸びていないとテンションでスポークに曲げがかかってしまうケースがありました。意外とスポークはまっすぐ抜けていないですね。」とある。
これの意味はこう。
今回計測に使ったスポークは駆動の際にテンションが下がるフリー側のスポークで計測した。またスポークがほかのスポークに干渉しないように、組み直して実験した。
バイシクルクラブ5月号106ページより
SACRAは接触交差のスポークに歪みゲージをつけて試験したところ、SACRAが想像したのとは異なるデータになってしまった。
なので接触交差を非接触交差に組み換えて再試験したわけですが、
これから言えるのは、スポーク同士が接触している状態ではスポークの挙動が変わるということ。
ただしそれが意味があるレベルなのかは別です。
普通、接触交差で想定外の結果が出たなら、「じゃあ結線したら試験結果が変わるのか?」とか「結線なしと結線ありで比較実験しよう」となりそうなところ、なぜか田中氏はそれをせず、しかも非接触交差で得られたデータだけをみて「結線は意味がないんです!」と結論した。
試験結果と結論に何の因果関係もないのはもちろんのこと、田中氏が行った試験は「結線は何らかの効果がある可能性」を示唆したのよね。
まあ、接触交差で得られたデータは公開されず、しかもブランドごと滅亡したから、真相究明したいなら誰か比較対照実験するしかないのですが。
効果はあるのか?
結線は効果がある、というのは体感的に言われていることで、それを示すデータがあるわけではない。
しかし田中氏が行った試験からは、結線は何らかの効果がある可能性を示唆しているのでして。
論文で言われている「結線は剛性に影響しない」という話は、静的荷重試験の話なのであまり意味がない。
ホイールが動的な存在である以上は。
たぶんなんだけど、田中氏がきちんと比較対照実験をしていたなら、滅亡に陥ることはなかったんじゃないかとすら思う。
本当にもったいない。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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