酒田市の「横断歩道直前で停止している車両を追い抜きして起こした事故」の件。
運転レベル向上委員会は「警察のやってますアピールだ」という謎の陰謀論を語ってましたが、ご意見を頂きました。
警察への意見が少なく検察への意見が多いことから「警察のやってますアピールだった」かのような内容になってますが、検察への意見はほとんどが批判ですね。
検察が批判されると警察のアピールになるとする理屈が意味不明です。警察が称賛されたなら「やってますアピール成功」と言えても、無理がありすぎです。 『横断歩道手前で停止車両を追い越して横断中の女子中学生をはねた』危険運転では無く過失運転での起訴になった理由『女子中学生は依然意識不明のまま』酒田市#危険運転致傷 #過失運転致傷 #道路交通法停止車の脇を抜けて横断中の女子中学生をはねた事故。警察は危険運転で送検→検察は過失運転で起訴。本動画では、条文上なぜ危険運転が難しいのか、民事の過失割合と損害額の実務的な見立て、さらに人身傷害・弁護士費用特約の使い方まで整理します。各項目へ...
うーん…
この「意見」のソースが不明なのもそうだし、検察に対する批判が集まっても「警察を上げる」わけではないので、検察に対する批判が集まったという数字を出されても「警察のやってますアピール」という帰結はムリがありすぎますが、それ以上に気になったのは合計でたった18件しか警察や検察に対する意見が出てないなら、何のアピールにもならなかったと見るほうが適切なのではないでしょうか?
たった18件ですよね?
そもそも警察と検察は別組織とは言え、対立関係ではなく協力関係の組織です。
警察のやってますアピールという前提で検察に対する批判が集まったとしたら、今後に遺恨を残して仕事がやりにくくなるだけの話ですし、要は運転レベル向上委員会の持論「警察のやってますアピールです!」と言いたいだけなのでは?
結論ありきで無理矢理こじつけるために謎の統計を作成したようにしか見えない。
ところで酒田市の事故ですが、危険運転致傷を適用するとしたら通行妨害目的危険運転致傷罪(処罰法2条4号)以外に当てはまりそうなものはない。
大阪高裁判決「通行妨害になる未必的な認識で足りる」を念頭に置き、大分地裁やさいたま地裁で同罪の争いがあったという経緯も踏まえるとなおさら。
そして通行妨害目的危険運転致傷で送検したことが確実になったのはここ。
山形地方検察庁はより罪の重い危険運転傷害の罪ではなく過失運転傷害の罪で起訴した理由について、男が女子生徒がいることを認識していたと証明することが難しいとの考えを示しました。
女子中学生は未だ意識不明 酒田市亀ヶ崎の交通事故 現場の状況と…なぜ?”危険運転での起訴”を見送った検察の判断を振り返る(山形)(テレビユー山形) - Yahoo!ニュース8月28日に山形県酒田市で起きた交通事故。下校中の女子中学生が車にはねられ意識不明となりました。TUYの取材によると、今も容体が変わったという情報はありません。この事故は、警察と検察の判断が分か
危険運転致死傷罪として各号に掲げるもののうち、「被害者がいたことの認識」が要求されるのは通行妨害目的態様(2条4号)だけなのよね…
報道が意味する内容を読み取れたかで、法律に詳しい人か問われる。
通行妨害目的態様の解釈と判例は過去いくつも判例や論文を挙げたように、「積極的な妨害意思が必要」という話は東京高裁平成25年判決で否定され、さらに進んで「未必的な認識で足りる」と大阪高裁が判断した。
運転レベル向上委員会の人はこれらを知らないのでしょうから、これが通行妨害目的危険運転致傷罪に該当しうることがわからず、謎の陰謀論を語るだけなのよね…
おそらく警察が描いたシナリオは、「横断歩道直前に停止車両がいたなら、横断歩行者優先中だという認識(確定的か未必的かはともかくとして)があり、それをあえて突破すれば通行妨害になることを認識していた」なんだと思われる。
それの証拠として、供述以外に何かあったのかは不明。
しかし送られてきた証拠をみた検察官が、「横断歩行者がいたことを確実に認識していたとする証拠がない」と捉えたからこういう判断なんでしょ。
山形地方検察庁はより罪の重い危険運転傷害の罪ではなく過失運転傷害の罪で起訴した理由について、男が女子生徒がいることを認識していたと証明することが難しいとの考えを示しました。
女子中学生は未だ意識不明 酒田市亀ヶ崎の交通事故 現場の状況と…なぜ?”危険運転での起訴”を見送った検察の判断を振り返る(山形)(テレビユー山形) - Yahoo!ニュース8月28日に山形県酒田市で起きた交通事故。下校中の女子中学生が車にはねられ意識不明となりました。TUYの取材によると、今も容体が変わったという情報はありません。この事故は、警察と検察の判断が分か
検察はほぼ確実に有罪になると考えられるケース以外は起訴しませんが(だから日本の有罪率は99%)、通行妨害目的危険運転致傷罪として確実に有罪に持っていくなら、横断歩行者がいたことの確定的認識が必要。
供述のみならず客観的証拠がないと、公判で供述をひっくり返されたら、客観的証拠がないとムリなのよ。
大分地裁やさいたま地裁の事例は、メインはあくまでも「進行制御困難高速度危険運転致死」(2条2号)なのでして、今回のように通行妨害目的態様のみで争うのはなかなか難しい。
警察と検察は対立関係じゃなく協力関係にあるのは言うまでもないけど、通行妨害目的態様の判例を知らないと「警察のやってますアピールです!」という陰謀論にしかならんのよ。
大阪高裁判決や論文をみていれば、通行妨害目的態様で送検したんだろうなとわかるし、ましてや38条2項の立法趣旨を理解していれば、「横断歩道直前に停止車両がいたなら、横断歩行者がいたことの認識(確定的か未必的かはともかくとして)があったはず」というロジックなんだろうなと想像できる。
しかしながら、横断歩道において事故にあう歩行者は、跡を絶たず、これらの交通事故の中には、車両が横断歩道附近で停止中または進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見が遅れて起こしたものが少なからず見受けられた。今回の改正は、このような交通事故を防止し、横断歩道における歩行者の保護を一そう徹底しようとしたものである。
まず、第38条第2項は、「車両等は、交通整理の行なわれていない横断歩道の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、当該横断歩道の直前で一時停止しなければならない」こととしている。
もともと横断歩道の手前の側端から前に5m以内の部分においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するために一時停止する場合のほかは停止および駐車が禁止されている(第44条第3号)のであるから、交通整理の行われていない横断歩道の直前で車両等が停止しているのは、通常の場合は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにするため一時停止しているものと考えてしかるべきである。したがって、このような場合には、後方から来る車両等は、たとえ歩行者が見えなくとも注意して進行するのが当然であると考えられるにかかわらず、現実には、歩行者を横断させるため横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、その歩行者に衝突するという交通事故を起こす車両が少なくなかったのである。
そこで、今回の改正では、第38条第2項の規定を設けて、交通整理の行われていない横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとする車両等は、横断歩道を通行し、または通行しようとしている歩行者の存在を認識していない場合であっても、必ずその横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、歩行者の有無を確認させることにしたのである。車両等が最初から歩行者の存在を認識している場合には、今回の改正によるこの規定をまつまでもなく、第38条第1項の規定により一時停止しなければならないことになる。
「一時停止」するというのは、文字通り一時・停止することであって、前車が停止している間停止しなければならないというのではない。この一時停止は、歩行者の有無を確認するためのものであるから、この一時停止した後は、第38条第1項の規定により歩行者の通行を妨げないようにしなければならないことになる。また、一時停止した結果、歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、そのまま進行してよいことになる。警察学論集、「道路交通法の一部を改正する法律」、浅野信二郎(警察庁交通企画課)、立花書房、1967年12月
不勉強は陰謀論になるよね、という当たり前な話なのかと。
そして報道によると検察官が危険運転致傷での起訴を断念した理由が出ており、「被害者の存在の認識」が立証不十分だということから、やはり通行妨害目的態様なんだと理解できる。
つい先日、こちらの記事にご意見を頂きました。

歩行者妨害についても独自解釈してYouTuber弁護士から突っ込まれてたかな。
1日2本ペース(最近は1日1本)で動画上げてるんで時間的にも深掘りは無理。
ただいろいろな事故を取り上げて、解釈はともかく報道や現場を見せてくれるから
事故ケースの参考動画としてはコスパがいい。ケーススタディのデータ用として見るが吉。
要は法律解釈は怪しい前提で、深掘りしてないのも承知で事故のケーススタディとしか見てないと。
確かに、運転レベル向上委員会の動画につくコメントをみても、法律解釈にツッコミ入れる人はほとんどいない。
要は法律解釈は怪しい前提で、そこはどうでもいいと思っている視聴者が集う場所なんだと理解するほうがすっきりするのかも。
そうすると、運転レベル向上委員会が力説する法律解釈は聞いてない人が多いのかもしれません。
ところで、運転レベル向上委員会は名古屋高裁判決を理由に「大分時速194キロ事故は危険運転致死罪にならない」を力説していた。
当初私もそう思ってましたが、報道が「道路に対する制御困難性を立証しようとしている」と読み取れたあたりから、名古屋高裁判決とは全く違う論点なんだと理解できた。
論点が違う判決なんだから、大分地裁の事例に名古屋高裁判決は関係しない。
けど、両者が「矛盾する判決」とか「判断が割れている」みたいに同一線上のものと勘違いしたままだと、大分地裁判決は理解が難しいのよね…
持論を否定してアップデートできないと、おかしな話ばかり振り撒くことになるから注意した方がいい。
法と事実に基づいて考える人と、法を理解せずすぐに推測に走る人では結論が大きく変わりますが、陰謀論者さんの思考回路は理解し難い。
警察がやってますアピールして何のメリットがあるの?という話でもあるんだけど、このケースは「横断歩行者がいたことを被告人が認識していた」なら通行妨害目的危険運転が成立しうるのよね。
陰謀論者さんの思考回路は本当に理解し難い。
例えば某ケミカル屋は、アルカリで割れたとされるチェーンについて「偽物チェーンなのではないか」と語ってましたが、偽物チェーンをホンモノであるかのように宣伝するメリットがメーカーにあるわけもなく、デメリットしかない。
それすらわからなくなるのが陰謀論者さんの思考回路なのかもしれません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。





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