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ヘアピンカーブを横転して箱乗り同乗者が死傷した事故。詳細が記事になっていた。

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ちょっと前に、ヘアピンカーブを曲がりきれず横転し、同乗者が箱乗りだったこともあり死亡した事故の判決公判がありました(福岡地裁 令和7年9月22日判決、危険運転致死傷罪)。

 

福岡地裁は「進行制御困難高速度危険運転致死傷罪」(処罰法2条2号)の成立を認め有罪にしましたが、この判決の報道を見たときに、イマイチわからない点がありまして。

 

マスコミが珍しく3部構成で解説記事を出している。

”箱乗り”車が横転→16歳少女2人が死傷「命を預けろ」運転していた22歳男と少年少女3人の関係、当日夜は…危険運転致死傷事件①【判決詳報】 | TBS NEWS DIG (1ページ)
2023年11月、福岡県篠栗町の山道で窓から上半身を出して乗る”箱乗り”をしていた軽乗用車が横転し、16歳の少女が死亡、別の16歳の少女が軽傷を負った危険運転致死傷事件。福岡地裁は9月22日、「被告人が全責任を… (1ページ)
”箱乗り”車が横転→16歳少女2人が死傷「運転と事故結果の因果関係」など裁判3つの争点 危険運転致死傷事件②【判決詳報】 | TBS NEWS DIG (1ページ)
2023年11月、福岡県篠栗町の山道で窓から上半身を出して乗る「箱乗り」をしていた軽乗用車が横転し、16歳の少女が死亡、別の16歳の少女が軽傷を負った危険運転致死傷事件。福岡地裁は9月22日、「被告人が全責任を… (1ページ)
”箱乗り”車が横転→16歳少女2人が死傷 「全責任を負うのはいささか酷」言及も「軽々しく危険な行為に及んだ」22歳男に判決 危険運転致死傷事件③【判決詳報】 | TBS NEWS DIG (4ページ)
2023年11月、福岡県篠栗町の山道で窓から上半身を出して乗る”箱乗り”をしていた軽乗用車が横転し、16歳の少女が死亡、別の16歳の少女が軽傷を負った危険運転致死傷事件。福岡地裁は9月22日、「被告人が全責任を… (4ページ)

この事故ですが、検察官の主張によるとカーブの限界旋回速度は時速36~38キロ程度。
被告人は時速約45キロで走行しており、プロドライバーの証言や一般車両の実勢速度(平均時速21キロ)からみても「進行制御困難な高速度」(処罰法2条2号)に該当すると主張。

 

判決公判の報道を見てもイマイチ争点がわからなかったのですが、今回の解説記事によると争点は3つ。

①被告人が「進行を制御することが困難な高速度」で自車を走行させたか
②被告人の運転と少女2人が死傷したという事故の結果との因果関係
③被告人の故意(「進行を制御することが困難な高速度」で運転している事実を認識していたか)

判決公判直後の報道でよくわからなかったのは②でして、要は「箱乗りが横転の原因なのか?」、それとも「被告人の運転方法(進行制御困難な高速度)が横転の原因なのか?」という論点。
理屈の上では、限界旋回速度より下の速度であった場合に、箱乗りのように片方に荷重がかかる状態であれば横転する可能性がある。
しかしこの事故はそもそも、限界旋回速度を越えていたのだしなぜこれが論点になるのか不思議に思ってました。

 

確かに、限界旋回速度を越えてヘアピンカーブに進入したときに、横転に至るか、横転には至らなくても進路を逸脱して事故るかは別問題とはいえ、どちらにしても事故るわけよ。
横転するか逸脱衝突するかは単に事故詳細が違うだけで、結局同乗者が死傷に至る点では変わらない気もする。

 

けどようやくこの論点の意味がわかったのは、そもそも弁護人の主張は「ESPが作動して横滑り防止機能が働いており、限界旋回速度を越えていなかった」だったわけ。
限界旋回速度を越えていなかったという主張が前提にあるから、②の主張につながるのかと考えるとようやく理解できた。

 

そして裁判所は、被告人の運転速度が「進行制御困難な高速度」だと認定した上で、箱乗りが横転の原因ではないことを認定。
ただし量刑考慮の上では、同乗者の箱乗りが「死亡」という結果に至ったことは否めない(箱乗りじゃなければ死亡に至らなかった可能性を否定できない)ことを理由に、被告人に全責任を負わせるのは酷だとする。
もちろん被告人の運転方法に問題があるのは当然で非難されてますが。

「池田被告は、本件以前から、箱乗りの危険性を認識しながら、スリルを楽しみ、これを仲間内で共有するために友人らと”箱乗り”を繰り返しており、本件もその一環として、軽々しく危険な行為に及んだものであるから、被害者が自ら”箱乗り”をしたという点を酌むにも限度があるというべきである」
と結論づけた。

”箱乗り”車が横転→16歳少女2人が死傷 「全責任を負うのはいささか酷」言及も「軽々しく危険な行為に及んだ」22歳男に判決 危険運転致死傷事件③【判決詳報】 | TBS NEWS DIG (3ページ)
2023年11月、福岡県篠栗町の山道で窓から上半身を出して乗る”箱乗り”をしていた軽乗用車が横転し、16歳の少女が死亡、別の16歳の少女が軽傷を負った危険運転致死傷事件。福岡地裁は9月22日、「被告人が全責任を… (3ページ)

ところで、一つの事件についてマスコミが判決文を詳細に解説することは珍しい気がした。
今回の事件については、いろいろ調べても判決文は見あたらないので、メディア特有の「大事なポイントを割愛している」可能性もなくはないけど、きちんとまとめた感がある。

 

ところで、「進行制御困難高速度危険運転致死傷罪」について速度を具体的に数値規定にするかどうかの議論がありますが、数値規定にした場合、今回の事故は危険運転致死傷罪に当たらなくなる可能性がある。
なので数値規定による高速度態様はこれとは別の規定にすべきだと考えます。

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