青信号対赤信号の事故の場合、四輪車同士、または四輪車対オートバイの基本過失割合は
赤信号側が100%になることはよく知られてます。
これは信頼の原則上「特別な事情がない限り、赤信号を無視してくる車両を予見すべき注意義務はない」となっていることに対応するもの。
しかし信頼の原則は「特別な事情がある場合は別」とし、民事では「容易に赤信号無視が予想される状況」では青信号側にも若干の過失がつく。
実例でみていきます。
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赤信号無視 対 青信号

判例は仙台高裁 令和6年12月17日(一審は仙台地裁 令和6年6月27日)。
赤信号直進車と青矢印右折車の事故。
控訴人らは、控訴人が対面信号機の右折矢印灯火に従って本件交差点を右折進行したものであるから、原則として、対向直進車両があることを予見すべき義務はなく、過失相殺することは相当ではないと主張する。
しかしながら、本件交差点は、別紙図面記載のとおりの形状の十字路交差点であり、被控訴人車両は、前照灯を点灯した状態で対向車線を進行して本件交差点に接近し、その対面信号が赤色表示に変わる直前には、本件交差点の停止線まで迫っていたことは、前記引用に係る補正後の原判決が認定するとおりである。そうすると、控訴人は、その停止位置からして右折を開始する直前に、横断する対向車線の通行車両の動向にわずかにでも注意を払えば、接近する被控訴人車両が減速せずに本件交差点に進入してくることを容易に察知することができる状況にあったといえ、それが困難であった事情は認められない。したがって、控訴人は、本件交差点を右折進行するに当たり、信号の変わり際であったから、横断する対向車線の進行車両の有無やその動静を注視し、自車進路の安全を確認して進行すべきであったのに、進行車両がないものと軽信してそれを怠ったと言わざるを得ず、損害算定に当たって、過失相殺を行うことはやむを得ない。仙台高裁 令和6年12月17日
赤信号に変わる直前には停止線付近に迫っていたことから、右折車がわずかな注意を払えば回避できたとする。
もちろん過失の大半は赤信号無視した直進車にあることは言うまでもない。
ところでこの判例、ちょっと前にあった甲府の事故のように、対向右折車が死角を作っている。

それでも「赤信号に変わった直後」と「既に直進車が停止線付近」という状況では、右折車がわずかな注意を払えば回避できたとして過失を肯定。
一審、二審ともに右折車無過失を認めていない。
ではこういう事案がマレなのか?ですが、判例検索するとチラホラ見つかる。
名古屋地裁 令和6年9月4日判決は、「直進車である被告車両の対面信号が赤色灯火で、右折車両である原告車両の対面信号が右折の青矢印信号である以上、直進車である被告車両は直進が禁止される。一方で、右折待機車としても、わずかに前方を注視すれば、直進車の進入を認識し得るのにこれをしなかった場合については、右折車にも若干の過失を認める余地があるというべき」として5%の過失相殺をしている(直進車は法定速度から30キロ以上超過)。
赤信号無視の直進車の大幅な速度超過と相殺しているわけではない。
要はその状況において、右折車がわずかな注意を払えば直進車の赤信号進入を察知できる場合には青信号の右折車にも過失がつく。
まあ、現実には赤信号無視側が100%で示談成立するケースが多いでしょうけど。
ところで
以前取り上げたこちら。
直進車が赤信号進入ですが、右折車は無過失にはならなかったとしている(示談成立)。
これも「わずかな前方注視をすれば直進車が赤信号無視することが予見可能」なケースなんですよね。
信号の変わり際に駆け込み進入する車両があるのは日常的にみかける光景ですし。
基本過失割合が「100:0」に設定されているケースは「0側」に過失がないことを前提にしているから、「0側」に過失が認められる場合には過失がつく。
一方基本過失割合が「100:0」に設定されていないケース、例えば優先道路対非優先道路態様は、非優先道路側にも過失があることが多い実情から「10:90」に設定されていますが、優先道路側に過失が認められない場合には非典型例として扱われる。
右直事故は四輪車同士なら右折車80%に基本過失割合が設定されていますが、右折車に過失が認められない場合には非典型例扱いになる。

時速120キロ以上で直進したバイクと右折車が衝突した事故について、直進バイクの一方的過失(右折車無過失)と判断した福岡高裁 令和5年3月16日判決がありますが、十分な確認をした右折車には「過失がない」。
決して「相手が著しい高速度だから右折車の過失を帳消しにした」わけではない。
これらから言えるのは、結局自分のプレイ次第で過失割合は変わるのであって、相手がどうのこうのではないのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
信号の変わり際に駆け込み進入する車両があるのは日常的にみかける光景ですし。
安全運転義務的には予見すべきですが、ぶっちゃけ行政、警察の怠慢として彼らの過失にしたいですが、当事者としては出てこないですしね。
コメントありがとうございます。
必ず100:0になると思っている人が多いけど現実は違うという話です。