こういう方っていろんな意味で心配になるんだけど、
来年4月1日から側方1.5m確保せず追い抜く車は轢き逃げ未遂で通報しまくります。
「日本のルールおかしい」中3死亡事故で“自転車の車道走行”求める道交法に不安の声 「青切符」導入控える中…“安全整備”に課題(弁護士JPニュース)#Yahooニュース
https://t.co/begl7COFff— 名古屋走り撲滅〜歩行者に未来を〜 (@SafetyNagoya) October 31, 2025
そもそも「追い抜き時に1.5m」という条文は新設されないし、ましてや「ひき逃げ未遂」という道路交通法もない。
架空の独自道路交通法を適用し通報しまくると宣言しているのだから、下手すると警察に対する威力業務妨害にすらなりうる。
ところで改正18条3項。
3 車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合(当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。)において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない。
この規定は、追い抜く際に「十分な側方間隔がないとき」には「安全な速度」で追い抜きしろというもの。
これの原型は愛媛県条例。
第6条 自動車等の運転者は、自転車が車両であることを認識し、歩行者、自転車及び自動車等が共に道路を安全に通行することができるように配慮するよう努めなければならない。
2 自動車等の運転者は、自転車の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行するよう努めなければならない。
愛媛県条例では「安全な間隔」又は「徐行」としていた。
しかしこの条文には矛盾があり、
有識者会議の中でこのような意見が出ています。
○ 愛媛県等で実施されている「思いやり 1.5m 運動」は全国にも広げていくべきと考えているが、自動車と自転車との間に 1.5m の間隔を確保することができない場合には徐行する、としている点については検討が必要である。自動車に徐行させるとなると、自動車は自転車を追い抜くことができない。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/04/chuukanhoukokusyo-honbun.pdf
追い抜きする際に「徐行」すると、後続車は後ろに下がってしまう笑。
愛媛県条例をベースに矛盾を解消したのが改正18条3項になる。
では改正18条3項の解釈はどうなるか?
これは国会で警察庁が回答している。
第213回国会 参議院 内閣委員会 第14号 令和6年5月16日
○塩村あやか君 ありがとうございます。
ということは、やっぱりその自転車を運転する側がしっかりといろいろな方向に注意をしておかなくてはいけないという形で、運転する人がちゃんと、自分は大丈夫なのかというのはやっぱりちゃんと自問自答しながら自転車に乗っていかなきゃいけないなというふうに思いました。ありがとうございます。
十八条、先ほど酒井先生の方からも質問あったと思うんですけれども、自動車などの車両は、特定小型原動機付自転車などの右側を通過する場合において、十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等の間隔に応じた安全な速度で進行しなければならないという規定を創設するということに今回なっております。
十分な間隔そして間隔に応じた安全な速度とは具体的にどのようなものを想定しているのか、分かりやすく教えてください。○政府参考人(早川智之君) お答えいたします。
歩道における自転車と歩行者の事故件数が増加傾向にある中、自転車の車道通行の原則の徹底を図るためには自転車利用者が安全に車道を通行できる環境を整備することが重要であると考えております。
御指摘の規定は、車道における自転車と、失礼しました、自動車と自転車の接触事故を防止するため、自動車が自転車の側方を通過する際のそれぞれの通行方法を整備する規定でございます。本規定に定める自動車と自転車との間隔や安全な速度につきましては、自動車と自転車との具体的な走行状況に加えまして、道路状況や交通状況などにより異なることから、具体的な数値は規定していないところでございます。
その上で、あえて申し上げれば、例えばでありますが、都市部の一般的な幹線道路においては、十分な間隔として一メートル程度が一つの目安となるものと考えているところでございます。また、このような十分な間隔を確保できない狭隘な道路におきましては、自転車の実勢速度というものが、いろいろありますが、二十キロメートル毎時程度であるということを踏まえますと、例えばこうした場合には、間隔に応じた安全な速度としては二十キロから三十キロ、これぐらいの速度というのが一つの目安になるのではないかと考えているところであります。
いずれにいたしましても、この規定の趣旨は、自転車の安全を確保しつつ、自動車と自転車の双方が円滑に車道上を通行することを確保することにありまして、自転車に危害を加えるような態様でなければ本規定の趣旨に反するものではないと考えているところであります。
警察庁が示したのは、都市部の一般的な幹線道路においては「1m」が目安だとする。
そして十分な間隔を保てない狭路においては、自転車の実勢速度を20キロとみた場合に「20~30キロ」が同項が規定する安全な速度だとする(つまり自転車+10キロ)。
ところでそもそも、日本の法律上「道路交通法の義務」のほかに「自動車運転処罰法5条による注意義務(過失)」や「民法上の注意義務(過失)」があり、追い抜きや追い越し時に事故が起きた際には「注意義務違反(過失)」の有無として処理されてきた。

側方間隔1.3mでは不十分として有罪にした仙台高裁 昭和29年4月15日判決もあれば、95センチの追い抜きで無罪とした広島高裁 昭和43年7月19日判決もあるし、側方間隔1mで有罪とした高松高裁 昭和42年12月22日判決もある。
これらは裁判官によって判断が割れた結果ではなく、事案が違うだけなのよ。
前方の見通し、自転車の挙動(ふらつき等の有無)、自転車の年齢(まっすぐ進行することが期待できるか)などによって、追い越し・追い抜きする車両に課される注意義務が違うのは当然のこと。
自動車運転者が、先行自転車を追抜く場合には、該自転車の動静に注意し、これと適当な間隔を保持しつつ、安全を確認して進行すべき義務の存することは当然であるが、どの程度の間隔をもつて適当といえるか、又更に警音器を吹鳴して自転車搭乗者に警告を与え或いは減速して追抜きにでるべき義務が存するか否かは、両車の横の間隔その他その際の具体的状況に応じて定まるもので、一律には論じえない
昭和43年7月19日 広島高裁
具体的状況によって安全といえる範囲が違うのだから、一律には論じ得ない。
そのため、「最低何メートル」と判示した判例はほぼ無い。
仙台高裁秋田支部判決くらいだろうか。
被告人に注意義務懈怠の事実があるか否かについて考えるに、一般に先行する自転車等を追い抜く場合(追越を含む。以下同じ。)、自転車の構造上の不安定をも考慮に入れ、これと接触のないよう安全な速度と方法によって追い抜くべき注意義務のあることはもとよりであるが、右の安全な速度と方法の内容は、道路の巾員、先行車及び追抜車の速度、先行車の避譲の有無及び程度、対向車及び駐停車両の存否等具体的状況によって決すべく、一義的に確定すべきでないところ、前記認定の被告人車の場合のように左側端から1mないし1.2m程度右側のところを進行中、道路左側端から0.8m程度右側を進行中の先行自転車を発見し、これを時速45キロ程度で追い抜くに際しては、先行車の右側方をあまりに至近距離で追い抜けば、自転車の僅かな動揺により或いは追抜車両の接近や風圧等が先行自転車の運転者に与える心理的動揺により、先行自転車が追抜車両の進路を侵す結果に至る危険が予見されるから、右結果を回避するため、先行車と充分な間隔を保持して追い抜くべき注意義務が課せられることが当然であって、本件においても右の注意義務を遵守し、被害車両と充分な間隔(その内容は当審の差戻判決に表示されたように約1m以上の側方間隔を指称すると解すべきである。)を保持して追い抜くかぎり本件衝突の結果は回避しえたと認められる以上、被告人が右注意義務を負うことになんら疑問はない。
仙台高裁秋田支部 昭和46年6月1日
ただし仙台高裁秋田支部判決も「安全な速度と方法の内容は、道路の巾員、先行車及び追抜車の速度、先行車の避譲の有無及び程度、対向車及び駐停車両の存否等具体的状況によって決すべく、一義的に確定すべきでない」とする。
結局、改正18条3項の内容はこれら業務上過失致死傷罪(現在の過失運転致死傷罪)で判断されてきた注意義務違反を道路交通法の義務に昇格させ、事故未発生でも取り締まり可能にする効果があると思われる。
それは昭和46年に38条1項前段(横断歩道の減速接近義務)を新設したときと同じで、減速接近義務にしても昭和46年以前から業務上過失致死傷判例では注意義務違反として過失認定してきたわけでして。
側方間隔1.3mでは不十分として有罪にした仙台高裁 昭和29年4月15日判決は、自転車の挙動がこんな感じなのよ。
被告人がトラックを運転して時速約25キロで進行中、前方約30mの地点に自転車に乗っていく被害者の後姿を発見したので、時速を約20キロに減じ、警笛を鳴らしたが、避譲する様子もなく道路のほぼ中央を進行していたこと、約5mの距離に接近した際初めて後方を振向いたのでトラックの追進していることを気付いた筈であるのに、僅かに左側に寄ったのみでなおも避譲する気配もなく、そのふらつく様子からみて同人は酒に酔っていることが認められたこと、殊に同乗していた運転助手は被害者の自転車に乗っている様子がふらふらしていたので、運転者の被告人に対し酒に酔っているから危ないなあと話すと、被告人はそうかもしれないなあと答えたこと、以上の各事実が認められ、記録に徴しても右認定に誤りがあることは認められない。
ところで、進行中の自転車とその後から進行してくるトラックとの間隔(両者並行した場合の間隔)が1.30m程度の場合には、時速20キロという速度で車体の巨大なトラックが自転車を追越せば、自転車の搭乗者はトラック通過のあおりを喰い、周章して運転を誤り易く、ためにその際自転車をトラックに接触乃至衝突せしめ、その結果人の死傷を惹起することのあることは睹易い道理で、殊に本件の如く自転車の搭乗者が酒に酔っていた場合には右の危険は一層大きいことは勿論であるから、追越すトラック運転者としては警笛を十分鳴らしてトラックの接近乃至通過を熟知せしめるとともに、その自転車が停止又は十分な距離の個所に避譲して前記の危険の発生することがなくなったことを確かめた後に通過するか、さもなくば何時でも接触又は衝突を避け得るように速力を減じ、且つ助手をして自転車搭乗者の動静に注目せしめる等の措置を講じて通過する注意義務のあることは条理上当然であって、(中略)トラックと自転車の間隔を約1.30mにした程度のみを以て事足るものというを得ない。
昭和29年4月15日 仙台高裁
明らかにふらふらする自転車だったから1.3mでは不十分と判示した。
改正18条3項にしても、警察庁が示した国会答弁は「一般的な自転車」を想定していると思われ、先行自転車が小学生や老人の場合には1.0mで十分とは解されないでしょう。
ましてや「十分な間隔を保てないときには、自転車速度+10キロ程度」という話にしても、最高裁S60.4.30のような場合にまで当てはまるものではない。
最高裁S60.4.30をみていきます。
事故現場は車道幅員3.38m。

時速50キロで通行し、自転車に対しクラクション。

自転車が有蓋側溝に避譲したので側方間隔60~70センチ、時速5キロで追い抜き。
不安定な状況で倒れた。

なお、原判決の認定によると、被告人は、大型貨物自動車を運転して本件道路を走行中、先行する被害者運転の自転車を追い抜こうとして警笛を吹鳴したのに対し被害者が道路左側の有蓋側溝上に避譲して走行したので、同人を追い抜くことができるものと思つて追い抜きを始め、自車左側端と被害者の自転車の右ハンドルグリツプとの間に60ないし70センチメートルの間隔をあけて、その右側を徐行し、かつ、被害者の動向をサイドミラー等で確認しつつ、右自転車と並進したところ、被害者は、自転車走行の安定を失い自転車もろとも転倒して、被告人車左後輪に轢圧されたというのであるが、本件道路は大型貨物自動車の通行が禁止されている幅員4m弱の狭隘な道路であり、被害者走行の有蓋側溝に接して民家のブロツク塀が設置されていて、道路左端からブロツク塀までは約90センチメートルの間隔しかなかつたこと、側溝上は、蓋と蓋の間や側溝縁と蓋の間に隙間や高低差があつて自転車の安全走行に適さない状況であつたこと、被害者は72歳の老人であつたことなど原判決の判示する本件の状況下においては、被告人車が追い抜く際に被害者が走行の安定を失い転倒して事故に至る危険が大きいと認められるのであるから、たとえ、同人が被告人車の警笛に応じ避譲して走行していた場合であつても、大型貨物自動車の運転者たる被告人としては、被害者転倒による事故発生の危険を予測して、その追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつたというべきであり、これと同旨の見解に立つて被告人の過失を肯認した原判断は正当である。
昭和60年4月30日 最高裁判所第一小法廷
なお、民事では興味深い判例がある。

東京地裁 平成27年10月6日判決の事故は、側方間隔1.2m、時速40キロで追い抜きした際に、なぜか自転車が非接触にもかかわらず吹っ飛び転倒した。
しかし警察庁が示した改正18条3項の解釈に従うと、これを18条3項の違反と言えるかは疑問。
冒頭の件に戻ります。
「側方1.5m確保せず追い抜く車は轢き逃げ未遂で通報しまくる」と宣言してますが、そもそも条文上「1.5m」という規定はないし、十分な間隔がないときに「安全な速度にしろ」という規定でしかない。
道交法界隈と呼ばれる方々が道路交通法に疎いのはどうかと思うんだけど、

エア条文創作界隈とか、道交法KY(KYとは「きちんと読め」の略)というほうが実態にあっているのではなかろうか。
なお、ごく一部ですが「追い抜きを差し控えるべき注意義務違反」を認定した判例もある。
最高裁の事例(追い抜きを差し控えるべき注意義務違反)については、もう少し先にいけば道幅が広くなる事情を加味したのではないかとする論評もありますが、より安全にできるならそれまで待つという感覚も大事なのよね。
道交法KYの方々も少しは勉強した方がいいのではなかろうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
「ひき逃げ未遂」とか「通報しまくり」は、おかしな人としか思えないですが。
このツイートの元記事は、「弁護士JP」なるサイトからYahooニュースが引用してて、その元記事にも、【引用:具体的には、自動車が自転車の右側を追い越す際に1.5メートル以上の物理的な間隔を確保することが法的に義務付けられる。】と書いてるので、間違える人続出だと思います。
誰が言い出したのかは不明ですが、このほかにも、モーターファ●とかの自動車雑誌のサイトにも、同じ1.5m説が掲載されてました。(「道路交通法 2026年 改正」でググった結果で出てきます。検索ワードに、「1.5m」を加えると、収拾がつかないくらい出てきます)
弁護士紹介サイトや自動車雑誌など、間違えそうになさそうなサイトに掲載されてるのが、信憑性を高めてて、けっこう危険ですね。
私とて、この管理人さんのサイトを見なければ、わざわざググったりしないので、1.5m説を信じてたかもしれません。
コメントありがとうございます。
そもそもガセネタ報道が問題なんですよね。
個人的には、まず車には制限速度を守った上で追い抜きして欲しいですね。自転車だから抜くものだと言う前提の方が多く見受けられます。
後は、車間距離も考えて欲しい。適切な距離を保っていても、俺はこれだけ詰めれるぜ、と追い越しかけてくる方もいますね。
まあ、最近は側方間隔を注意する車は以前より増えたかな。
コメントありがとうございます。
本来は側方距離+減速が正解なんですよね。