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優先道路態様の事故と、減速接近義務の理由。

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また謎解説をしてますが、

優先道路と非優先道路が交わる交差点に付属した横断歩道での事故について、

 

①自転車が非優先道路から進行してきて横断歩道を使って横断した場合
②自転車が優先道路に沿って進行してきて横断歩道を使って優先道路を横断した場合

 

これらで過失割合が大きく変わると解説してますが、そのわりには②の態様の過失割合の解説はない。
結論からいうと、①も②も優先道路態様を適用するので過失割合は同じなのでして。

 

民事っていくつかのパターン化された態様に対する「当てはめ」なんだけど、

これを民事ではどちらから横断しても優先道路態様を適用する。
そこに至るまでの過程も関係ない。

 

道路交通法上、優先道路の進行妨害禁止義務(36条2項)は車道通行車両に課されるものですか(17条4項カッコ書き参照)、民事では歩道通行と車道通行を分けて考えないのだから、道路交通法の解釈とはズレが起きる。

 

しかし関係ないのよ。
道路交通法上の義務をベースに基本過失割合が設定され、それに準ずるケースも同等に捉えて適用するだけなので。

 

ところで、この場合の基本過失割合は50:50のところ、横断歩道修正で自転車に有利に5%修正するから45:55がベースになる。
そこからさらに修正が入るかは個別事情による。

 

○東京地裁 平成28年11月1日

被告は、本件交差点を直進するにあたり、本件交差点には横断歩道が設けられていたのであるから、適宜速度を調節し、本件横断歩道を横断する歩行者等の有無及びその安全を確認しながら進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、本件横断歩道上を右方から左方に向かい横断してきた原告車に衝突直前まで気づかず、ブレーキペダルを踏むべきところを誤ってアクセルペダルを踏み込んで原告車に被告車前部を衝突させて原告車もろとも原告を路上に転倒させ、原告に傷害を負わせた。

 

他方、原告にも、交通整理が行われていない交差点に進入する際に、交差道路が優先道路であるときは、当該交差道路を進行する車両の進行を妨害しないよう注意して進行すべき注意義務があるのにこれを怠った過失が認められる。
そこで過失相殺について検討すると、原告が横断歩道上を進行していたこと、本件事故の時間帯は夜間であったが、横断歩道については感知式オーバーハングが設置され、横断歩道上がライトで照らされていたこと、被告が衝突時にブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏み込んだことなどの本件事故態様や現場の状況に照らし、双方の過失の内容、程度を考慮すれば、原告の過失割合については30%と認めるのが相当である。

 

東京地裁 平成28年11月1日

一般的に判決文には「○✕修正で加算」みたいな話は書いてありませんが、過失割合は70:30。
推測するとこうなる。

加害者 被害者
基本過失割合 50 50
横断歩道修正 +5 -5
夜間修正 0 0
踏み間違え +15 -15
70 30

判決文からこれらを読み取れるかがポイント。

①原告が横断歩道上を進行していたこと(横断歩道修正の適用)
②本件事故の時間帯は夜間であったが、横断歩道については感知式オーバーハングが設置され、横断歩道上がライトで照らされていたこと(夜間修正の不適用)
③被告が衝突時にブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏み込んだこと(重過失修正)

歩道から横断歩道に進入しても道路交通法上は優先道路の進行妨害禁止義務を負わないけど、民事では横断歩道までを含めて交差点とみなし(大阪高裁 令和4年9月14日等参照)、交差点(横断歩道含む)に進入する方向を以て判断することになる。

 

わりと興味深いのはこちら。

優先道路に付属した歩道を進行していた自転車と、非優先道路から優先道路に出ようとしたクルマの事故。
これも優先道路/非優先道路態様をベースにしている。
(書き忘れたけど事故は横断歩道上で、クルマは一時停止後に進行)

本件事故は、優先道路に併設された歩道を走行し、本件交差点を直進しようとした原告自転車と非優先道路から優先道路に左折進入するために本件交差点に進入しようとした被告車両との接触事故であるところ、双方に前方、左右の不注視等の過失が認められる。
そして、以上に加え、原告自転車が右側通行であり、被告車両から見て左方から本件交差点に進入してきたこと等に照らせば、本件事故の過失割合につき、原告15%、被告85%と認めるのが相当である。

名古屋地裁 平成30年9月5日

民事過失上、右側歩道を通行して左側から進入した場合に過失修正されることがあります。
あくまでも優先道路/非優先道路態様をベースにしているのでおそらくこんなイメージかと。

加害者 被害者
基本過失割合 90 10
左方から進入/右側通行 -5 +5
85 15

左方から進入かつ右側通行で被害者不利に修正するのは、非優先道路通行車からみて視認性/回避可能性が減弱するため(逆にいえば見通しがいい交差点では同修正は適用しない)。
歩道の右側通行は違反ではないが、過失としてなりうる。

 

優先道路とは「歩道と車道の区別がある場合は車道(17条4項カッコ書き)」なのだから、歩道通行自転車を道路交通法上は優先道路通行車とは言えない。
しかし、あくまでも過失割合のベースをどれにするかの話なので、優先道路に付属した歩道を通行する自転車を民事では優先道路通行車とみなす。

 

ところで、運転レベル向上委員会は「自転車から降りたら歩行者になるから」という理屈で減速接近義務があるとしてますが、

 

つまり、自転車が横断待ちしていた/もしくはそれに近い状態を加害者が視認していたケースを考えているようである。
この考えだと事故予備軍と言わざるを得ない。

 

このケースにおいては、加害車両視線では横断歩道右側に死角があるのだから、「横断しようとする歩行者が明らかにいない」とは言えないことを理由に減速接近義務が課されるのでして(つまり自転車が横断待ちしていたか否かは関係がない)。

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一例として神戸地裁 平成16年4月16日判決(刑事)をみていく。

前掲関係各証拠によれば,被告人は,平成14年5月28日午後5時55分ころ,被告人車両を運転し,本件交差点手前の県道加古川三田線を,B車両に先導され,東から西に向けて時速約50キロメートルで進行していたこと,被告人は,実況見分調書(検察官請求証拠番号1。以下「検第1号証」というように表記する。)添付の交通事故現場見取図の①地点(以下の地点の表示はいずれも同見取図記載の地点である。)で,先行するB車両が本件横断歩道を通過するのをA地点(被告人車両の前方約26.6メートルの地点)に認め

先行する同車両を見ながらこれに追随して,前記速度のまま進行したこと,被告人は,②地点で,同交差点南側道路から同交差点に自転車を運転して進入してきた被害者を,その左前方約15.1メートルの!地点に発見

急制動の措置を講じたが,約13.5メートル進行して③地点で被害者が運転する自転車に自車左前部を衝突させ,本件事故を惹起した

被告人車両は③地点から約10.9メートル進行した④地点で停止したこと,衝突地点である<×>地点は,!地点から北に約1.5メートル,本件横断歩道西端から西に約1.4メートル,道路中央線から南に約1.5メートルの地点であること,被害者は<ウ>地点(衝突地点の西約12.7メートルの地点)で転倒しており,その自転車は<エ>地点(衝突地点の西約11.5メートルの地点)に転倒していたこと,被害者の右足の靴が<オ>地点(衝突地点の西約7.6メートルの地点)に,左足の靴が<カ>地点(衝突地点の南約13.2メートルの地点)に,被害者のカバンが<ク>地点(衝突地点の西約16.2メートルの地点)にそれぞれ散乱していた

衝突地点は横断歩道西端から1.4m(民事では2m程度なら横断歩道上と同視される/別冊判例タイムズ38号)、被害者は衝突地点から12.7mの地点まではね飛ばされた。

 

これが事実認定。
裁判所が認定した過失はこれ。

前記2で認定した事実を前提として,被告人の過失の有無を検討する。車両等の運転者は,「横断歩道等に接近する場合には,当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者や自転車がないことが明らかな場合を除き,当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。」(道路交通法38条1項)ところ,前認定のとおり,本件交差点は前記石垣のため見通しも悪かったのであるから被告人に本件横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない注意義務があったのにこれを怠った判示の過失の認められることは明らかというべきである。
なお,被告人は,被害者が飛び出してきた旨主張するが,被害者が本件交差点の南側道路から一時停止することなく交差点に進入してきた旨の主張であるとすれば,本件事故の直前,一時停止の白線付近で自転車にまたがって止まっている被害者の姿を目撃した旨の信用性の十分な前記証人Cの証言に照らし理由のないものであるし,前認定のとおり,被告人車両が②地点から衝突地点(③地点)までの約13.5メートルを進行する間に被害者は自転車で約1.5メートル進行しているに過ぎないから,被害者の自転車が急な飛び出しといえるような速度で本件交差点に進入したものでないこともまた明らかである。

神戸地裁 平成16年4月16日

横断歩道左側に「石垣による死角」があることを以て「横断しようとする歩行者が明らかにいないとはいえない」とし、減速接近義務があったとする。
これは東京高裁 平成22年5月25日判決でも同じ。

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。横断歩道と自転車の関係をメインにします。○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。○横断歩道を横断しようとする自転車には3...

つまり自転車がいる/いない、歩行者がいる/いないに関係なく、事故報道の横断歩道に接近する車両は全て減速接近しなければならない
減速接近義務の概念を間違っていると言わざるを得ない。

進行道路の制限速度が時速約40キロメートルであることや本件交差点に横断歩道が設置されていることを以前から知っていたものの、交通が閑散であったので気を許し、ぼんやりと遠方を見ており、前方左右を十分に確認しないまま時速約55キロメートルで進行した、というのである。進路前方を横断歩道により横断しようとする歩行者がないことを確認していた訳ではないから、道路交通法38条1項により、横断歩道手前にある停止線の直前で停止することができるような速度で進行するべき義務があったことは明らかである。結果的に、たまたま横断歩道の周辺に歩行者がいなかったからといって、遡って前記義務を免れるものではない。もちろん、同条項による徐行義務は、本件のように自転車横断帯の設置されていない横断歩道を自転車に乗ったまま横断する者に直接向けられたものではない。しかし、だからといって、このような自転車に対しておよそその安全を配慮する必要がないということにはならない。

 

東京高裁 平成22年5月25日

横断歩道左右に見通し不良があれば、それだけで減速接近義務があり、結果的にたまたま歩行者がいなかったことを以て免除されない。
38条1項でいう「横断しようとする歩行者」は、車両が横断歩道直前に達したときに「左右5m」にいる歩行者とされることを考えると、事故現場では「横断歩道右側5m」に対応できるように減速しなければならず、

 

さらにいえば同減速接近義務は「急制動で止まればいいという趣旨ではない」としていることを考えると、本件横断歩道直前では時速10キロ程度まで落としてないと本来は違反なのである。

道路交通法38条1項に規定する「横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。」との注意義務は、急制動等の非常措置をとつてでも横断歩道の手前で停止することさえできる速度であればよいというようなものではなく、不測の事故を惹起するおそれのあるような急制動を講ずるまでもなく安全に停止し得るようあらかじめ十分に減速徐行することをも要するとする趣旨のものであり、したがつて、時速25キロメートルでは11m以上手前で制動すれば横断歩道上の歩行者との衝突が回避し得るからといつて右の速度で進行したことをもつて右の注意義務を尽したことにはならない、と主張する。

(中略)

横断歩道直前で直ちに停止できるような速度に減速する義務は、いわゆる急制動で停止できる限度までの減速でよいという趣旨ではなくもつと安全・確実に停止できるような速度にまで減速すべき義務をいつていることは所論のとおりである。

 

大阪高裁 昭和56年11月24日

減速接近義務を理解してないと言わざるを得ない。

 

過去に優先道路を跨ぐ横断歩道での事故判例を7つくらい出してきましたが、50:50にした判例もあれば、15:85まで修正した判例もある。
これらで興味深いのは、多くの判例で被害者側が「優先道路態様の交差点事故を適用するのは不当」と主張しているものの、裁判所は優先道路態様を適用しているところ。
そしてもう1つ興味深いのは、これら民事判例のいくつかでは「加害者は過失運転致死傷罪で有罪が確定している」ことも書いてある。

 

過失割合は単に金銭の問題に過ぎず、現実には刑事処分や行政処分もあるわけですが、

 

運転レベル向上委員会の解説をみると民事の解釈も疑問だけど、減速接近義務の解説をみると「その理解では対歩行者でも横断歩行者妨害するわな」と言わざるを得ない。
運転レベル向上委員会は常々「横断歩道は安全な場所ではない」と語りますが、横断歩道を危険な場所にしているのはこうした法律への無理解が根底にある。

 

「クルマは急に止まれない」という当たり前な物理法則に対処する目的で減速接近義務があり、横断歩道左右のどちらかに死角があるだけで減速接近義務の対象になりますが、

 

運転レベル向上委員会の人って、上の神戸地裁判決も全く違う内容にして紹介していたけど、毎回どこかズレている。
不思議です。

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