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なぜ昭和39年に自転車の並走を禁止したか?

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こちらについて読者様から「そもそもなんで自転車の並進を禁止にしたのか?」と質問を頂いたのですが、

自転車の並進(19条)解釈はややこしい。
歩道で自転車が並走するのは合法だと主張してますが、通行が許可されている歩道での自転車併進は合法です — 🇯🇵熊野巫女🇯🇵【硬式】 (@kumano_miko35) December 12, 2025当然のように疑義を持つ人が出てくる。これホ...

軽車両の並進禁止規定(19条)が新設されたのは昭和39年道路交通法改正です。
それ以前は並進を禁止する規定がなかった…というわけでもなく、昭和39年以前は「条件付きで並進許可」だったんですね。

 

それをみていきます。

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昭和35年以前(道路交通取締法)

現行規定には25条の2第1項がありますが、旧法時代の25条の2第1項相当の規定は今と異なります。

12条
1 車馬は、他の交通を妨害する虞がある場合においては併進し又は後退し若しくは転回してはならない。
2 公安委員会は、危険防止及びその他の交通の安全のため特に必要があると認めるときは、区域を限り、併進、後退又は転回について、必要な制限を定めることができる

旧法時代は「正常な交通を妨害するおそれがあるときは併進禁止」という規定がありました。
2項には「併進禁止の標識」を設定できるともありますが、調べた限り併進禁止の標識は確認できませんでした。

 

それに加え、旧法時代は自転車であっても「進路避譲義務」が課されていた。

 

道路交通取締法では、追い越しする後車はクラクションで合図する義務がありました。

第24条(追越の方法)
2、前項の場合においては、後車は、警音器、掛声その他の合図をして前車に警戒させ、交通の安全を確認した上で追い越さなければならない

合図を受けた前車は左側端に寄る義務があった。

24条
3 前項の合図があったことを知った場合において、前車が後車よりも法第16条第1項および第2項の規定による順位が後順位のものであるときは、前車は、後車に進路を譲るために道路の左側によらなければならず、その他のときは、追越を妨げるだけの目的をもって後車の進路を妨げる行為をしてはならない。

自転車が並走していても、追い越しする後車がクラクションで合図したなら(旧令24条2項)、自転車は並走を解除しなければなかった(旧令24条3項、旧法12条1項)だと読み取れます。

これが昭和35年までの規定。
なお当時の解説書をみる限り、追いつかれた並進自転車が進路を譲らないことは12条1項ではなく24条3項を適用するみたいな記述になっており、「他の交通を妨害するおそれがあるときは併進禁止」という規定にどれほどの意味があったのかは謎です。

昭和35~39年

昭和35年に道路交通法が制定されたときに、旧法12条「他の交通を妨害するおそれがあるときは併進禁止」は削除されましたが、「進路を譲る義務」(27条)には自転車が含まれていた。

 

○昭和35~39年

(通行の優先順位)
第十八条 車両相互の間の通行の 優先順位は、次の順序による。
一 自動車(自動二輪車及び軽 自動車を除く。)及びトロリーバス
二 自動二輪車及び軽自動車
三 原動機付自転車
四 軽車両
(進路を譲る義務)
第二十七条 車両(道路運送法第 三条第二項第一号に掲げる一般乗合旅客自動車運送事業又は同条第三項第一号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリー バスを除く。)は、車両通行区分帯の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位(以下「優先順位」という。)が先である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側に寄つてこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるか 又は後である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

昭和39年以前の進路を譲る義務は、旧18条の「車両の優先順位」を基準にし、旧18条に軽車両が含まれているのは明らか。

 

つまり並進自体が禁止されてなくても、追いつかれた自転車は並進を解除することになるし、

次から次へと後続車が来ているなら、並進できなかったといえる。

そして昭和39年に軽車両並進禁止規定が新設されます。

昭和39年以降

昭和39年に軽車両並進禁止規定が新設されましたが、これはジュネーブ条約加入をきっかけにしている。

第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。
2 二輪の自転車は、公安委員会が道路又は交通の状況により支障がないと認めて指定した道路の区間においては、前項の規定にかかわらず、他の二輪の自転車と並進することができる。ただし、二輪の自転車が三台以上並進することとなる場合においては、この限りでない。

ジュネーブ条約ではこのように定めている。

16条(b)
自転車の運転者は状況により必要な場合は一列で通行しなければならず、また、国内の規則で定めた特別な場合を除くほか、車道では3台以上並列させて車道を進行してはならない
12条1項
運転者は、行き違うとき又は追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端にできる限り寄らなければならない
12条2項(b)
追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端にできる限り寄り、加速しないでいること。

ジュネーブ条約は自転車の並進を認めているんだと主張する人がいますが、「状況により必要な場合は一列で通行しなければならず」だし、条約12条1項(進路を譲る義務相当)は自転車を排除していない。
つまりジュネーブ条約によると、昭和39年道路交通法改正以前の規定、つまり「並進自体は禁止されてなくても、追いつかれた自転車は並進を解除する義務がある」が正当。
しかし並進自体を禁止にし、追いつかれた車両の義務を「車両の優先順位(旧18条)→政令最高速度」に変えたことから、追いつかれた車両の義務から自転車が脱落した。

 

これについて立法者の解説はこうなる。

道路交通条約第16条第2項によれば、自転車は状況により必要な場合は一列で通行しなければならず、また、国内法令に定める特別な場合を除くほか、三台以上並列させて進行してはならないこととされている。ところで、現行道路交通法においては、特に自転車の並進を禁止していないが、実態的にはそのような行為はしばしば危険をもたらすのであるので、条約への加入を機会に、今回の法改正においても、軽車両の並進を原則として禁止し、公安委員会が道路または交通の状況により支障がないと認めて指定した道路の区間においては、二輪の自転車に限り、二台まで並進を認めることとした。

 

宮崎清文(警察庁交通企画課長)「道路交通法の一部を改正する法律について」、警察学論集、立花書房、1964年7月

これらから推測するに、昭和39年以前は並進自転車が追いつかれた場合に「進路を譲る義務」があるのに、現実には遵守されず危険をもたらす実情が少なからずあったのではなかろうか。
そうすると「原則並進許可、追いつかれた場合には解除義務」とするよりも「原則並進禁止、一部の許された道路では許可」にしたほうが現実的だったのではないかと思われる。

 

建前上「原則並進許可」だったとしても、下記状況では進路を譲る義務との兼ね合いで並進することは許されず、しかも下記状況が大半であれば並進を「原則禁止」にしたほうが合理的と言える。

さて。
確かにサイクリングロードみたいな場所で並進を禁止する必要はないように思えますが、要は並進を禁止する必要がない場所は旧19条2項/現63条の5に基づき並進許可の標識を立てれば済む話。
しかし公安委員会が動かない。
それは公安委員会の問題でしかない。

 

バックミラー装備義務もない自転車に「原則並進許可だが、追いつかれたら解除義務」を要求することにムリがあるから、それなら「原則並進禁止、追いつかれた車両の義務は不要(左側端寄り通行義務があるし)」で足りるというのが政策判断なのかと。

 

そして以前も書いたけど、特定小型原付は並進禁止規定がなく、追いつかれた車両の義務が課されている(なお特定小型原付の法定最高速度は20キロではなく30キロになっていることに注意。モーターの性能としては時速20キロまでしか出ない)。
これをみても、並進禁止規定と追いつかれた車両の義務は二者択一の概念なのよね。

 

どちらか一方があれば、あとは18条1項(左側寄り通行義務)の規定で足りる。

 

ジュネーブ条約にしても「状況により必要な場合は一列で通行しなければならず」な上、「追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端にできる限り寄らなければならない」なので並進を絶対的に許容した規定とは解釈できないですが、現実的に「状況により必要な場合は一列で通行しなければならず」と「追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端にできる限り寄らなければならない」が遵守されないなら、一律並進禁止にし、その代わり進路を譲る義務から除外したほうが現実的とも言える。

 

一部の界隈は「ジュネーブ条約では自転車の並進を認めているんだ!」と力説しますが、切り抜き論法としか言いようがなく、「状況により必要な場合は一列で通行しなければならず」と「追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端にできる限り寄らなければならない」がある以上、絶対的に並進を認めているわけではない。
別にいいんですよ。
並進禁止規定を削除し、追いつかれた車両の義務に自転車を含めても。

 

けど日本の現実からみて、ほとんどのケースはこうなるでしょう。

並進を認めたにしても、実態的に「並進できない」無意味な場合が多いなら何も変わらないと思うのですが。

 

そしてこれらの経緯からすると、並進禁止規定は歩道と車道の区別がない道路か、車道のみの規定なんだろうなと考えられる。
追いつかれた車両の義務から自転車が脱落したのも、元々軽車両は「左側端寄り通行義務」がある上に並進を禁止したなら不要になったからと考えられますが、

 

歩道通行時には左側端寄り通行義務を課していない。
そういうところからも、

自転車の並進(19条)解釈はややこしい。
歩道で自転車が並走するのは合法だと主張してますが、通行が許可されている歩道での自転車併進は合法です — 🇯🇵熊野巫女🇯🇵【硬式】 (@kumano_miko35) December 12, 2025当然のように疑義を持つ人が出てくる。これホ...

警察庁の解釈は変な気がする。

 

ちなみにこれらを調べるのに、道路交通取締法時代の進路避譲義務から調べてますが、そこまで遡らないと意味がわからないのよね。
道路交通取締法時代の進路避譲義務と追い越しに関係する判例も以前紹介してますが、古い時代にどのように解釈されていたかまで検討して、並進禁止規定が新設された意味を検討しました。

 

なお特定小型原付は並進を禁止されてませんが、現実的に並進可能な道路がどんだけあるのか疑問。
特定小型原付には「追いつかれた車両の義務」が課されている以上、追いつかれた並進特定小型原付は並進を解除する義務がある。
しかし次から次へと後続車が来ていたら、結局並進できないのは自明なのでして。

 

しかしこの規定の経緯は、調べるほどなかなか興味深い。
なお幅員が広いサイクリングロードで並進できないのは不合理という話については、そもそもサイクリングロードで警察が取り締まりすることがない。
そして「子供の自転車と並進できない」という声にしても、

 

6歳未満の自転車は道路交通法上「小児用の車」として歩行者扱いになりうる。
なので自転車と歩行者の並進になり、禁止されていません。

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