運転レベル向上委員会の人は「18条3項の違反かどうか?のみ」に固執して「事故防止」という観点はないようですが、
パトカーが自転車の後ろに追従していることを「間違い」だと語っている。
そして「追い越しするなとも追い抜きするなとも書いてない」と力説してますが(後述しますが悪質なすり替え論法です)、
運転レベル向上委員会から引用
実際の映像はこちら。
片側1車線で自転車が走行している時のお手本
本日からの改正道路交通法で自動車が自転車を追い越す場合に1m以上側方間隔を取れない場合は自転車の速度に合わせて徐行する必要があるようです pic.twitter.com/BkEsYU3gpH— オリオスペック【公式】 (@OLIOSPEC) April 1, 2026
さて。
運転レベル向上委員会の人に決定的に欠けているのは、「違反になるか?」に固執して「事故を防ぐためにどうするか?」という思考がないところ。
18条3項は自転車や特定小型原付を追い抜きする際に十分な側方間隔がないときは、安全な速度で追い抜きすることを求めている。

条理上、安全に追い抜きできない場合には「追い抜きを差し控える」ことになるのは当然なので、「追い抜きするなとは書いてない」と力説するのは法律の読み方を理解してない。
そしてもっと問題なのは、運転レベル向上委員会の頭の中には18条3項しか法律がないところ。
このケース、自転車は通行に適さない不安定な路肩のエプロン部を通行していることを考えれば、自転車が転倒するリスクが想定される。

※なお歩道がある場合の車道外側線と歩道の間(路肩)は道路交通法上「車道」にあたる。
そのリスクを考えたときに、「事故を防ぐ」という目的に立てば「安全側方間隔+減速」がベストといえる。
しかしこの道路で安全側方間隔を取るために中央に寄りすぎるのは対向車との関係ではリスクなのだから、「追い抜きしないで追従し、道路幅が広くなるポイントまで待つ」というのは正解なのよね。
道路交通法には18条3項だけでなく、安全運転義務(70条)もあれば、自動車運転処罰法でいう「注意義務」も考えれば、事故を最大限防止するために「追従する」という選択は「間違い」にはなり得ない。
一方、安全側方間隔が保てないことから、自転車の速度+2キロくらいで慎重に追い抜きすることもできる。
事故が起きなければ自動車運転処罰法違反には問われないし、18条3項にも違反しないでしょう。
つまり、どちらも間違いではないのよね。
ちなみに運転レベル向上委員会はパトカーが「追いつかれた車両の義務違反」だと言ってますが、パトカーが左側端に寄ったところで対向車がいるのだから後続車は前に出れないし、ましてや追いつかれた車両の義務と称して左側端で停止したとしたら、後続車からしたら大迷惑なのよ。
いったいどういう思考回路なのだろうか。
以前、業務上過失致死傷罪(現在は過失運転致死傷罪)において、二輪車を追い越し、追い抜きする場合の注意義務を複数の判例から検討しましたが、

例えば最高裁S60.4.30は、側方間隔60~70センチ、時速5キロでの追い抜き時に起きた事故について、「追い抜きを差し控えるべき業務上の注意義務があつた」という。
もちろん道路交通法上には「追い抜きするな」という規定はありませんが、事故発生が予見可能であれば追い抜きを差し控えるべき注意義務があるのは言うまでもない話で、「道路交通法には書いてません」と力説するのは失当である。
もちろん当該判例は被害者が老人で、有蓋側溝の不安定な部分に避譲したこと、左側は民家の壁、右側は大型車という心理的圧迫などから判断したものだから、動画とは事案を異にする。
しかし仮に注意義務違反にならないとして無罪になったとしても、事故が起きていれば意味はないのである(民事の過失は免れない上、行政処分もあるでしょう。それが警察官にとって大問題になるのは言うまでもない)。
要するに、事故リスクを最大限考えて安全な通行をするか、事故にはならないだろうと考えて慎重に追い抜きするかの違いでしかなく、どちらかが間違いなのではなくどちらも正解なのよね。
理屈の上では、時速15キロで安定走行する自転車を、側方間隔が30センチ、時速17キロで慎重に追い抜きしたとして、18条3項には違反しないでしょう。
しかしそれにより事故が起きれば過失運転致死傷罪に問われるのだし、法律は18条3項だけではないのよね。
とにかく事故リスクを下げたい人(このパトカー)と、18条3項「だけ」の違反にならなければいいと考える人(運転レベル向上委員会)の差でしかない。
ちょっと前にも書いたんだけど、運転レベル向上委員会は18条3項に「追い越しの場合は除外」と書いてあるから追い越しの場合には関係ないとか言ってたでしょ。
しかし道路交通法28条4項(追い越しの方法)は実質的に18条3項と同じ義務を課しており、18条3項の違反にならなくても28条4項の違反になるのだから、リアルな運転とはかけ離れている。

動画の状態で追い抜きし事故が起きれば、「事故になった以上安全運転義務違反」とか「自賠法3条の無過失の証明なんてムリ」などと語るのも目に見えてますが、道路交通法違反になるかならないかというのは実は大要素ではない。
事故を起こさないためにどうするか?なのですが、運転レベル向上委員会はこの観点が全く無いのよね。
ちなみに18条3項は、歩道を通行する自転車が歩行者と衝突する事故が多いことから、車道通行の安全性を担保し自転車を歩道から車道に促すことを目的とする。
第213回国会 参議院 内閣委員会 第14号 令和6年5月16日
○塩村あやか君 ありがとうございます。
ということは、やっぱりその自転車を運転する側がしっかりといろいろな方向に注意をしておかなくてはいけないという形で、運転する人がちゃんと、自分は大丈夫なのかというのはやっぱりちゃんと自問自答しながら自転車に乗っていかなきゃいけないなというふうに思いました。ありがとうございます。
十八条、先ほど酒井先生の方からも質問あったと思うんですけれども、自動車などの車両は、特定小型原動機付自転車などの右側を通過する場合において、十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等の間隔に応じた安全な速度で進行しなければならないという規定を創設するということに今回なっております。
十分な間隔そして間隔に応じた安全な速度とは具体的にどのようなものを想定しているのか、分かりやすく教えてください。○政府参考人(早川智之君) お答えいたします。
歩道における自転車と歩行者の事故件数が増加傾向にある中、自転車の車道通行の原則の徹底を図るためには自転車利用者が安全に車道を通行できる環境を整備することが重要であると考えております。
御指摘の規定は、車道における自転車と、失礼しました、自動車と自転車の接触事故を防止するため、自動車が自転車の側方を通過する際のそれぞれの通行方法を整備する規定でございます。本規定に定める自動車と自転車との間隔や安全な速度につきましては、自動車と自転車との具体的な走行状況に加えまして、道路状況や交通状況などにより異なることから、具体的な数値は規定していないところでございます。
その上で、あえて申し上げれば、例えばでありますが、都市部の一般的な幹線道路においては、十分な間隔として一メートル程度が一つの目安となるものと考えているところでございます。また、このような十分な間隔を確保できない狭隘な道路におきましては、自転車の実勢速度というものが、いろいろありますが、二十キロメートル毎時程度であるということを踏まえますと、例えばこうした場合には、間隔に応じた安全な速度としては二十キロから三十キロ、これぐらいの速度というのが一つの目安になるのではないかと考えているところであります。
いずれにいたしましても、この規定の趣旨は、自転車の安全を確保しつつ、自動車と自転車の双方が円滑に車道上を通行することを確保することにありまして、自転車に危害を加えるような態様でなければ本規定の趣旨に反するものではないと考えているところであります。
「自転車の安全を確保しつつ、自動車と自転車の双方が円滑に車道上を通行することを確保することにあり」とありますが、安全性に振れば今回のパトカーのように追従することもありうるし、円滑に振れば慎重に追い抜きすることもあり得る。
どちらも間違いではないのに、間違いだと連呼するところがYouTuberらしさなのかもしれませんね。
ちなみに下記は誤り。
運転レベル向上委員会から引用
17条5項は4項の例外規定という形式を取っており、イエローのセンターラインをはみ出して追い越しした場合は17条4項の違反となる。
そもそも5項には罰則規定がない。
現にイエローのセンターラインがあるのにはみ出し追い越しした判例においても、大阪高裁昭和53年6月20日判決は下記のように述べている。
「原判決が被告人の行為を同法一七条三項(現在は17条4項)違反とし、同法一一九条一項二号の二を適用して処断したことは、正当であつて、所論のような法令解釈適用の誤りはない。論旨は理由がない」
要するにイエローラインではみ出し追い越しした場合も、はみ出し追い抜きした場合も、「被告人は法定の除外事由にあたらないのに、道路の中央から右側を通行した」になるのよね。
執務資料にも書いてあるはずですが…
そもそも、
運転レベル向上委員会から引用
「追い抜きするな」と書いてない一方、「追い抜きしろ」とも書いてないのよね。
追い抜きする際の注意について規定しただけで、追い抜きするかしないかは別問題なのよ。
「特定小型原付等の右側を通過する場合において」として、追い抜きしろともするなとも書いてないのだから、その一方にあたる「追い抜きするなとは書いてない」を力説するのはだいぶ偏ってんなあ…
「追い抜きするときはこうしてね」という規定に過ぎず、必ず追い抜きしろなんて話ではない。
しかし運転レベル向上委員会のすり替え論法だと「追い抜きするなと書いてない」→「追い抜きしなければならない」にしてんのよ。
追い抜きを実行するかしないかは、安全性を見極めて判断するものであって、「する」という選択をしたなら18条3項に規定する注意を払う必要がある。
「しない」という選択をしたなら、後ろで追従しより安全に追い抜きできる幅員になるのを待つ。
どちらも正解なのよね。
そして運転レベル向上委員会は間違いが多すぎるし、法律を語るのはやめたほうがいい。
こういう人を見ていると、交通安全ってなんなんだろうと考えさせられる。
そしてそもそも、18条3項に規定した内容は業務上過失致死傷判例において「注意義務」として昭和の時代から認定されてきたことで、注意義務を道路交通法の義務に昇格させたに過ぎない。
注意義務も道路交通法上の義務も、どちらも義務であることには変わらない。
違いは、前者は事故が起きたときのみ問責され、後者は事故発生を問わないところのみ。
昭和の時代から注意義務として存在するものを、今になって騒ぐことが一番の問題だと思うのですが…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。



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