その事故はなぜ起こり、どう対策すべきなのか?

何でもそうですが事故が起きてから、道路構造などを見直しするケースってあります。
最初からいろいろ考えて作れよというのももっともなんですが。

この方々がどこまで検証しているのかは不明として。

事故の詳細

この事故は9日、静岡市葵区の長沼交差点付近で、長沼大橋を下り終えた自転車と長沼大橋横の側道に進入しようとしたトラックが衝突し、自転車に乗っていた男性が死亡したものです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e6388b6c840afb3b1e916b89e01efd16fdc1803a

事故現場はこちらです。

信号機で規制されている十字路があって、そのわずかに先で左側に逸れる側道がある。
見方によっては変形五差路とも取れますが、歩道は自歩道なので自転車通行可能になっていて、側道を渡る横断歩道には信号機がありません。

報道を見る限りでは、このような事故です。

交差点の構造が悪いと言い放っても、とりあえずは現状がこうなっているので仕方がない。

その上ですが、このように報道されています。

現場は見通しが良いため、スピードを緩めずに橋を下る自転車が多く、物理的に減速させる構造が必要という意見が多く集まりました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e6388b6c840afb3b1e916b89e01efd16fdc1803a

横断歩道での安全運転義務は車のほうに大きいわけですが、それと同時に自転車が通行してきた歩道は下り坂になっていることから、スピードが出やすい構造とも言える。

さてここでまず法的にどう見るのか?という話。

そもそも歩道は【徐行義務】がある

歩道には自歩道の標識があるので、自転車が歩道を通行してきたこと自体は違反ではありません。
ですがそもそも、歩道を通行する自転車には徐行義務があります。

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四
2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

徐行の定義はこちら。

二十 徐行 車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。

63条の4によると、歩行者がいてもいなくても常に自転車には徐行義務が課している。
徐行は10キロ未満とも言われますが、そもそも歩行者を妨害してはいけない趣旨だったりを検討すると、ふらつかない程度に最徐行を求めている(5~8キロ程度)という説もあるくらい。

本来、下りだろうと法律に則って徐行しているならば、今回の事故が起きなかった可能性もある上に、歩道を通行する歩行者と自転車の接触・衝突事故を防ぐという観点からも、自転車の速度を抑えるような施策が必要になる。
法律上【徐行せよ】と義務を課しているにもかかわらず、徐行しない自転車が多いこと自体にも問題があるわけで。

万が一車が自転車を見落として横断歩道に進入したとしても、自転車が法律に則り徐行していれば、接触・衝突を避けるためその場で急停止するという選択肢もあるわけ。

自動車のドライバーは過失運転致死で逮捕されているように、過失があったものととして捉えている。
それと同時に自転車が法律に則って徐行してくれないならば、強制的に徐行させるような方法を取るしかないよね?というだけのこと。

視野が狭いなぁ。

横断歩道での義務関係

道交法38条によると、横断歩道での車両の義務が書いてあります。
これについては判例も検討しています。

先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車...

38条って本来の趣旨で言うと、横断歩道を渡る歩行者(渡ろうとする歩行者含む)と、自転車横断帯を渡る自転車(渡ろうとする自転車含む)に対する保護の規定なので、横断歩道を渡る自転車については対象外。
ただし地裁レベル(民事)では横断歩道を渡る自転車に対して車の義務を認める判決もあります。
高裁判例は調べた限りでは、横断歩道を渡る自転車については対象外とするものしか見当たりませんでしたが、38条は適用外であることを確認しつつ、70条の安全運転義務から車に注意義務を認めているものもあります。

刑事上(罰則)という点では、横断歩道を渡る自転車に対しては38条は適用外とするのが一般的解釈です。
民事は主張の仕方次第では話が変わります。
本来、27条の追いつかれ車両の義務については自転車は適用外ですが、27条が成立するとした上で、危険回避する余地がなかったとしている判例すらありますし。

堅苦しい話が続いていますが、一つの参考になるかと思いまして。 自転車の場合、道路交通法27条の【追いつかれた車両の義務】は適用...

なんでこういう判決文になるのかというと、民事だからです。

いくつかの判例。

しかし道路交通法は歩行者と軽車両である自転車を明確に区別しており、自転車を押して歩いている者は、歩行者とみなして歩行者と同様の保護を与えている。(同法2条3項)のに対し、自転車の運転者に対しては歩行者に準ずるような特別な扱いはしておらず、同法が自転車に乗って横断歩道を通行することを禁止しているとまでは解せないものの、横断歩道を自転車に乗って横断する場合と自転車を押して徒歩で横断する場合とでは道路交通法上の要保護性には明らかな差があるというべきである。
また、道路交通法38条1項は、自転車については、自転車横断帯(自転車の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号の2)を横断している場合に自転車を優先することを規定したものであって、横断歩道(歩行者の横断の用に供される道路の部分・同法2条1項4号)を横断している場合にまで自転車に優先することを規定しているとまでは解されず、むしろ、本件の場合、Aは、優先道路である本件道路進行車両の進行妨害禁止義務を負う(同法36条2項)ことからすると、過失相殺の判断にあたっては、原判決判示のとおり、自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当である。

平成30年1月18日 福岡高裁

同条項による徐行義務は、本件のように自転車横断帯の設置されていない横断歩道を自転車に乗ったまま横断する者に直接向けられたものではない

平成22年5月25日、東京高裁

【自転車が横断歩道上を通行する際は、車両等が他の歩行者と同様に注意を向けてくれるものと期待されることが通常であることの限度で考慮するのが相当】というところがポイントで、歩道を徐行せず高速度で通行し横断歩道に来るような自転車にまでは向けられていないんですね。
歩道では自転車に対して徐行義務があるわけで、法に則って歩行者に近いレベルの徐行をしているかどうかが一つの争点になりうる。(あくまでも民事での過失の話です)

この38条と歩道での徐行義務ってそれなりに関係性があって、自転車が徐行していれば、自転車の存在に気がついて自転車が横断歩道に達するまでに時間を稼げる。
ところが、下り坂でそれなりの速度で自転車が来た場合、自転車の存在に気がついてから横断歩道に達するまでが一瞬の出来事になってしまう。

例えばですが、30mの距離を時速25キロで進行すると、かかる時間は4.32秒。
これが時速8キロだった場合には、13.5秒。

ただでさえ、対向二輪車は距離感が掴みづらいとされているわけですし、下り坂で高速度で進入してくるような自転車に対してまで予見していろというほうが無理がある。

どうすべきなのか?

こういうのって本来の法の趣旨からすれば、歩道では自転車は徐行する義務があって、徐行とは【直ちに停止できる速度】なので、歩道を通行する自転車が徐行義務を果たしていたならば事故発生リスクは大きく下げることができること。
この事故についてはその詳細は明らかではないですが、大型トラックには70条により安全運転義務があり、自転車が飛び出してくる予兆があったなら徐行や一時停止すべき義務があった。
それと同時に、自転車も63条の4に従って徐行していれば、対向車からしても自転車の存在を気が付いて停止するまでの時間が稼げる。

なので事故を防ぐ一つの手段としては、法律に則って歩道では徐行してもらうように徹底することも大切だし、車のほうに一時停止してもらうようにすることも大切。

現状の道路構造で事故を減らすにはどうするか?という観点では、法律通り歩道を通行する自転車に徐行を徹底させることも必要なわけで、それに基づいて提言しているだけだと思うんですが、

視野が狭いなぁ。
まあ、判例の読み方も分からないような人のようですし、厳しいのかも。

最近、判例の読み方と意味を全く理解してない人が多いのかなと思うことが多いのですが。 ちょっと前にツイッターで動画を挙げていた人。 ...

道路上に速度抑制のため、こういう丸印をつけるのってありますよね。
おおよそ勾配10%以上のところによくあります。

速度抑制のために、ポールを立てることもありますよね。

本来歩道では徐行せよという規定なので、徐行してればこのような速度抑制帯があったとしても、それによる事故なんてほぼ起こらない。
速度オーバーで避けきれなかったりすれば、それはそもそも徐行義務を果たしていないから起こったことに過ぎないし。

ただまあ、歩道という特性を考えると、例えば車椅子の方などが通行しづらい造りにしたらマズイ。
歩道を通行するママチャリが、きちんと法律を守っていれば問題は起こりづらそうですが、法律を守らない人が多数いる以上、何かしら構造を改革しないといけないんでしょうね。

車道でも法律を守らないロード乗りもいますし。

先日も書いた件です。 片側2車線道路で、左第1車線のど真ん中付近を走行しているので...

ここまで何度も、一般道の場合は車両通行帯は限られた場所にしかないよという話を書いているのですが、警察庁が車両通行帯を設ける場所の基準を一応出...

けどまあ、減速目的とは言えおかしな構造物を作ると、徐行していても事故多発になりかねないですし、実際にはたいしたものを作れないだろうと思われます。
道路上の瑕疵にあたるようなものを作れば、何か問題が起これば国賠の対象になり得るし。
本来、歩道では徐行するという義務を果たす自転車が多いなら問題も起こりづらいところですが・・・

多摩サイで、減速のためにハンプがありますが、あれもほぼ意味を成していないのが実情。
あれも車椅子などを考慮すれば、あの程度しか作れないということになるわけで、結局のところ有効な手段って無いんでしょうね。




コメント

  1. しんぱち より:

    列挙されているので誤解を生みそうなんですが、
    ・平成30年1月18日 福岡高裁(民事)
    ・平成22年5月25日、東京高裁(刑事)
    ですよね?

    根拠
    1.東京高裁の例は立花書房「よくわかる交通事故・事件捜査 過失認定と実況見分」に掲載されており、これは交通事故事件の捜査に従事する警察官に向け(「TRC MARC」商品解説より)た書籍である。
    2.同書において「被告人」という表現が用いられているが、「被告人」は刑事裁判で使われるもので、民事では「被告」。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通り、平成22年東京高裁は刑事ですが、出典元には誤字脱字が多いため、詳細は不明です。
      こちらでも説明していますが、

      https://roadbike-navi.xyz/archives/24089/

      所論がいうように歩行者に対して要請される道路交通法38条1項による徐行義務等を流用して、被害者車両の予見可能性を認定しているわけではない。

      とあるように、横断歩道を渡る自転車に対しては38条の成立を否定した上で、安全運転義務違反(70条)と、横断歩道を渡ろうとする歩行者の有無を確認していないにもかかわらず高速度(約55キロ)で進入した点を運転者の過失としている判例です。

      この事件で過失とされている点は、歩行者の有無を確認しないまま高速度進入している点なので、自転車に対して直接向けられたものではないと判示しています。
      その上で、原判決(1審)でも、

      自転車に乗ったまま横断歩道を進行する者が日常的に存在することなどから、本件において、横断歩道に接近する際に、歩行者のみならず、被害者のような小走りの歩行者と同程度の速度で進行してくる自転車が横断歩道に進出してくることを予見することは可能である、としている。

      予見可能性の認定として、歩行者の小走りと同程度の速度の自転車は予見可能という点を挙げています。

      頂いたコメント、何をおっしゃりたいのかがよくわからないのですが、被告人が問われているのは判決文にもあるように自動車運転処罰法における過失運転致死罪で、道路交通法の義務と同一ではありません。

      (過失運転致死傷)
      第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

      判決文にもあるように、自動車運転処罰法における「運転上必要な注意を怠り」について、38条を流用しているわけではなく、安全運転義務から導いている判例ですので、38条は横断歩道を渡る自転車に対しては原則として適用外、ただし歩行者の小走り程度の自転車については予見可能だし、被害者が高齢者なので合法的に歩道を走れる存在だから予見可能だよという判示をしています。

      誤解を生むというのはどの点でしょうか?

  2. しんぱち より:

    >誤解を生むというのはどの点でしょうか?

    「なんでこういう判決文になるのかというと、民事だからです」
     ↓
    「いくつかの判例」

    …という話の流れから、福岡と東京の高裁判決2例が列挙されている。
    これらはどちらも、自転車への38条の単純適用を否定するものと読めます。
    その意味で同じ内容と見ても良い。

    だとしたら、読者は上記2例が両方とも民事上の判決であると単純に理解(誤解)しそう、というのが私の感想です。
    実際には民事と刑事で、その違いを論じる流れなのに。

    特に東京高裁の判例から引用されてるのは一行のみ。
    読者が、これだけで刑事案件だと判断するのはちょっと難しい気がします。

    >頂いたコメント、何をおっしゃりたいのかがよくわからないのですが、被告人が問われているのは~

    その「被告人」というのは、民事裁判では使われない刑事裁判だけの特別な用語ですよね。
    この時点で刑事裁判の話をしてると予想が付きます。
    でも、記事内ではその「被告人」って言葉が紹介・引用されてないので、その意味でも判断材料が少ないのかな、と。

    私の考えすぎ、余計なお世話という感じでしたらすみません。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      民事だから、というところの意味は、民事では当事者間が認めたことについてはそのまま進行するという意味です。
      私も昨年まで行政訴訟を本人訴訟でしていましたが、相手方の主張の中で法に反する解釈がありましたが、こちらにとっては有利なのであえて【認める。争わない】と主張したところ、そのまま通りました。
      それについて判決文でも、法解釈に関する判示はありませんでした。
      【なんでこういう判決文になるのかというと、民事だからです。】というところは、リンク先について語ったものですが、分かりづらかったら申し訳ありません。

      その後に挙げた判例ですが、法解釈に関わる判示のところのみを挙げているので、刑事・民事で分ける必要性が無い箇所のみを挙げています。
      38条の意義について判示している箇所のみを挙げているので、刑事とか民事とか分ける必要性をあまり感じませんが、この記事において分けるべき必要性と合理性がありましたら教えていただけると助かります。

  3. しんぱち より:

    既に申し上げているように、
    「民事は主張の仕方次第では話が変わります」
    「なんでこういう判決文になるのかというと、民事だからです」
    と、民事を刑事とは別物であると説き、さあ分けて論じようという矢先に

    「刑事・民事で分ける必要性が無い箇所のみを挙げています」
    と、性質を同じくする両者の象徴例が並べられてるわけです。

    ここでは「リンク先について語ったもの」と仰っていらして、その説明があれば誰もが納得すると思うのですが。
    正直、読者がリンク先をすぐ確認するのか、この記事を一通り読んでからリンク先を確認しに行くのかは賭けだと思います。
    (自転車も38条で譲らないといけないのか結論を手っ取り早く得体い層には、リンク先の話は後回しか回避する程度の優先度)

    それでなくても、リンク先の話とその直後に判例として紹介されているものが、一度区切られた話題なのか連続性を持ったものなのかは、私のような頭ではちょっと分かり難い感じでして。

    あと、全て分かってる人が「別物と知りつつ分ける必要は無い」と判断するのと、分かってない人が「区別があることすら知らずごっちゃに理解」するのとは、少し違う気がするんですよね。

    スタンスの差だと思うので、こういう感性もあるくらいに受取って貰えれば幸いです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      確かにおっしゃる通りだとは思いますが、当サイトの記事は過去の記事との連続性もあるので、全てを引用すると長くなりすぎる面もあることをご理解いただければ。
      あと、民事と刑事が別物というのはちょっと意味合いが違うというか、法解釈について直接判示しているところについては差があるわけでもないという話です。
      引用している部分は、38条の意義について裁判官が直接判示している部分なので差が出ることは基本ありません。
      リンク先の27条の件は、27条が自転車に適用されるかどうかを直接判示していないという差があるということです。

      ご意見ありがとうございました。