だいぶ前に書いた記事の続きです。
道路交通法の自転車道は、極めて曖昧なもの。


ちなみに初回が意義なのに2回目で意味と変えているのは大した問題ではありません。
道路交通法の自転車道は、解釈によって通行義務があるように思えたり、通行義務が無いようにも思えたりする。
定義の問題だとは思いますが、結局は好き勝手にされるのがオチ。
分からない構造物
道路交通法上の自転車道は、道路標識が必須要件ではありません。
上の定義を見てもわかるように、【道路標識によって示した部分】という表記が無いので、道路標識はあってもなくても、自転車のために工作物で仕切れば成立する。
それと同時に問題になるのは、【車道の部分】というところ。
執務資料道路交通法解説などは、

けどある警察署ではこうも言われています。

道交法では、車道も歩道も縁石など工作物で仕切れば成立する。
車道を削って歩道にすることも出来るし、歩道を削って車道にすることも出来る。
だから歩道を削って車道にして、自転車用だとすればそこは自転車道でしょ、と。
判例を見ていると、自転車道の道路標識が無い場所であっても、自転車道であるという前提にしているものもあります。
過去に何度も書いているように、自転車道は自転車用として工作物で仕切れば、道路交通法上は成立するため、道路標識も必須要件ではないし、公安委員会の指定も不要。
【車道の部分】ということについても、歩道を縮小して車道にすること自体は可能なわけで、歩道の中にあるから成立しない・・・と言い切れるだけの根拠もない。
結局のところ、解釈次第で通行義務があるか無いかが変わるので、一般人が見抜けるはずも無い。
例えばここ。
自転車道の道路標識はありませんが、どうみても工作物で仕切った自転車道に見える。
ここからさらに進むと、一部途切れた後に自転車道の道路標識が登場する。
歩道を走っている自転車は、ここを通るんだなと理解できます。
車道を走っている自転車は??
いきなり自転車道へ行けと言われても対応できないし、そもそも通行義務がある自転車道なのかすらわからない。
管轄署ではさすがに自転車道とは見なさないでしょうけど、これも捉え方次第では自転車道になりうる。
尾根幹のところ。
道交法上の自転車道って、道路標識が必須要件ではない。
道交法では、工作物で仕切っていれば成立しうるのですが、道路管理者も自転車道の標識を立てていないことから見ても、ここの車道を走って問題になることはまずないでしょうし。
で、道交法の義務関係については、分からず間違えた場合、警察から注意されたら従えばいいだけとも言えますが、もし事故が起きた場合には、裁判でどう判断されるかも不明。
民事の裁判で道交法上の自転車道だとされた場合、車道を走る自転車が事故に遭うと、自転車道があるのに通行区分違反を犯したということで大幅に過失が付く。
車道走っても自転車道を走ってもリスクがある構造なので、怖くて走れない。
まずは法できちんと定義すべき。
自転車道は本来、歩行者・自転車・車の通行位置を明確に区分することでそれぞれが干渉した事故を減らすための構造だと思うのですが、どっちを走っても問題が生じうるような構造なわけで。
ロード乗りのほとんども、そもそも通行義務があることを知らない人もいるでしょうし、好き勝手に判断されるのがオチ。
サイクルトレーラーも通行不可
OGKがサイクルトレーラーを販売開始しましたが、残念ながら法律が追い付いていない。

押して歩いても歩行者扱いされないので歩道を通行することは一切不可。
歩道を通行することも一切不可。
自転車道も通行不可。

まあ、歩道を爆走する未来しか見えませんけど・・・
自転車道を通行していけない自転車については、法17条3項と規則5条に規定があります。
第十七条
3 二輪又は三輪の自転車その他車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当する車両(これらの車両で側車付きのもの及び他の車両を牽けん引しているものを除く。)以外の車両は、自転車道を通行してはならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ないときは、自転車道を横断することができる。
第五条の三 法第十七条第三項の内閣府令で定める基準は、第一条の五に掲げる長さ及び幅を超えない四輪以上の自転車であることとする。
第一条の五 法第二条第三項第二号の内閣府令で定める基準は、次に掲げる長さ及び幅を超えない四輪以上の自転車であることとする。
一 長さ 百九十センチメートル
二 幅 六十センチメートル
なので自転車道を通行できるのはこういう条件。
・長さ190センチ以内、幅60センチ以内の2輪以上の自転車
・側車と牽引車は不可
サイクルトレーラーは完全アウト。
まあ、知らずに通行する未来しか見えませんが・・・
こういう規制が強い上に、車道は怖いなどと言う人もいるのでサイクルトレーラーは流行らないでしょう。
流行ったとしたら、無法地帯化している状態しか未来が見えない。
こういうのって車のドライバーからしても、意味が分からないポイントだと思うんですね。
牽引車のような自転車は、安全性を考えたら自転車道を通行して欲しいと思うでしょうし。
けど実態は通行禁止なわけで、牽引自転車も車も不満がたまるポイントでしかない。
実態として
現在の道路交通法の弱点と言いますか、自転車道の定義がやや曖昧なため、どっちにも解釈しうる。
道路標識が必須要件ではないので、道路標識が無かったとしても自転車の通行用として柵や縁石などで仕切っているならば、自転車道として成立する余地が残ってしまう。
何度も書いている国道16号相模原の自転車道もそうですが、
誰がどうみても、自転車道の入り口手前は歩道なので、普通に見れば歩道の中にある自転車道とみなせる。
けどここは元々側道だったのを、側道を潰して自転車道を作り歩道も再整備した経緯があるので、管轄署の考えでは道交法上の自転車道だと・・・
一般人が即座に見抜けない自転車道&自転車道風の構造物にどれだけのメリットがあるのかはわかりませんが、まずは法律上の定義をしっかりしてくれ、というだけの話です。
ついでにですがちょっと謎判例を見つけたので一つ。
(1) 本件交差点は、座間方面から長後方面に通じる主要地方県道四四号(通称藤沢座間厚木線)と小園方面に通じる市道がT字路に交差する交差点である。県道は、歩車道の区別があり、本件交差点から長後側に東名高速道路上を通過する陸橋がある。陸橋上は、車道と歩道が分離され、陸橋西側に幅員三3.1メートルの歩道が設置され、自転車歩行者専用道路との標識が設置されている。県道の車道幅員は6.4メートルでセンターラインは白色の破線により区分されており、市道の幅員は6.6メートルで、歩車道の区別はない。本件交差点は、信号機が設置されておらず、交通整理がなされていない。路面はアスフアルト舗装がされており、平坦で、若干の勾配があつた。本件事故当時路面は乾燥しており、付近に照明灯はあつたが、比較的暗かつた。指定最高速度は時速40キロメートルに規制されている(別紙図面参照)。
被告は、足踏式自転車を運転して、無灯火のまま県道の車道上を長後方面から座間方面に向け進行し、本件交差点に差しかかり、そのまま直進進行したところ、座間方面から小園方面に右折してきた原告運転の原動機付自転車を発見し、急制動の措置を講じたが及ばず、足踏式自転車右前部を原告に衝突させた。
原告は、原動機付自転車を運転して県道を座間方面から長後方面に進行し、本件交差点を小園方面に右折したが、対向車線から直進進行してきた足踏式自転車に衝突され、原動機付自転車及び原告は転倒した。
(2) 右事実に徴すると、被告には、本件道路を進行するに当たり、自己が無灯火であり、かつ、自転車が進行するべき車線を走行してはいないのであるから、自己の存在が他車には認識しにくい状況にあることを認識し、進行方向に十分注意を払わなければならないのにこれを怠つて進行し、前方の安全確認が不十分であつた過失があり、民法709条により、原告に損害が発生していれば、賠償する責任があるというべきである。
(三) また、本件事故発生につき、原告にも本件道路を右折するにつき、自車が対向車線から進行してくる車両の進路を塞ぐ形になるのであるから、対向車線の車両の有無を十分に確認すべきであつたのに、これを怠つた過失があるものである。
平成2年4月25日 横浜地裁
たぶん場所はここなんですが、
事故自体は昭和のものなので、現在と同じなのかどうかは不明として。
判例に載っている住所と、県道の道路番号が全く違うところになっているので詳細は不明。
陸橋上は、車道と歩道が分離され、陸橋西側に幅員三・一メートルの歩道が設置され、自転車歩行者専用道路との標識が設置されている。
被告には、本件道路を進行するに当たり、自己が無灯火であり、かつ、自転車が進行するべき車線を走行してはいないのであるから、自己の存在が他車には認識しにくい状況にあることを認識し、進行方向に十分注意を払わなければならないのにこれを怠つて進行し、前方の安全確認が不十分であつた過失があり、民法七〇九条により、原告に損害が発生していれば、賠償する責任があるというべきである。
無灯火とか前方注視義務違反はいいとして、「自転車が進行するべき車線を走行してはいない」なのか?という疑問しか浮かばなくて。
歩行者自転車専用道路の道路標識ではなくて、自歩道(自転車の歩道通行可)ではないのか??
けどグーグルマップで見ると、当時は不明だけど陸橋の歩道部分の道路標識には「神奈川県」と表記があるので、そうすると道路管理者である神奈川県が設置した自転車歩行者専用道路とも取れる。
自歩道であれば公安委員会の規制だし。
※自転車歩行者専用道路も、歩道上の自歩道も道路標識自体は全く同じです。
けど判例を読む限り、普通に考えると歩道に自歩道の標識があるだけで、車道を自転車が走ることは禁止対象ではないと思うんですね。
事故現場もそうだし、イマイチ意味が分からない事実認定をされているような気がする。
まあ、双方に争いが無い場合はそのまま認定されるので、こういう判示になっているだけかもしれませんが・・・
あと、普通に読めば右直事故なわけですが、確かに右直事故でも直進自転車には一定の過失が認められる。
けど直進車優先なわけで、なんでそのあたりをしっかり追及していないのかも謎。
認定された過失割合は50:50です。
なお不法行為による損害賠償の場合、認容額の10%が弁護士費用として加算されるのが通例です。
(認容額が50万なら、判決上での弁護士費用は5万円認められる)
で、あえてこの判例を出したのは、結局のところ自転車道の話と繋がります。
車道を走行中に事故に遭ったときに、相手方が

このような主張をし出すと、実はクソ面倒。
道交法上の自転車道は、定義がコレ。
「道路標識で示した車道の部分」ではないので、道路標識が無くても工作物で仕切れば成立する。
公安委員会の指定も不要。
なので尾根幹とかも、相手方が自転車道だと主張し出した時に、適切な反論が出来ないと、通行区分違反を犯した過失だと認定される余地はあるわけです。
これは以前、相模原署の交通規制課の人にも言われたことですが、

管轄署が自転車道とは考えていない場所でも(国道357号金沢区など)、事故が起きたときに民事でどう判断されるかは分からんよという話。
だから道交法の自転車道って、定義がクソだと思うんですね。
もうちょっとハッキリさせた方がいいと思う。
国立市の大学通りの普通自転車専用通行帯にしてもそうですが、

どうみても歩道の一部にしか見えない構造物でも、一応は公安委員会が指定した車両通行帯扱いだという謎状態。
こんな謎の花壇で仕切られて車両通行帯だと言われても・・・
しかも車道の信号が赤で進んでいいのですかね?笑
その場所その場所でなんだかよく分からない構造物を作る前に、法律の整備と構造の一貫性をもうちょっと考えた方がいいと思う。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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