先日の記事について追記。
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横断歩道事故で歩行者に過失
横断歩道事故の場合、赤信号無視以外なら「原則」は歩行者が無過失ですが、歩行者に注意義務違反を認めることはあります。
本件事故当時降雨中であつたため、控訴人は右手で雨傘を差し左手で手提かばんを持つて(または抱えて)歩行し、信号機の設置されていない本件事故のあつた横断歩道の手前で、横断のため左右を見たところ、南方から被控訴人車が北進しているのに気づいたが、かなりの距離があつたので歩道(一段高い)端附近に横断歩道に向つて立ち止まり、右のように右手に傘を持ち左手にかばんをかかえながらライターを取り出して煙草に火をつけた後、左右の交通の安全を確認しなくても安全に横断できるものと考えその確認をしないまま、横断歩道上を横断し始め、約1.3m歩いたとき被控訴人車左前方フエンダー附近に控訴人の腰部を接触し、本件事故を起した。
以上のとおり認められる。もつとも、乙第12号証(控訴人の供述調書)には、横断前に一度左右を見たことについて述べていないが、原審控訴人本人尋問の結果では事故のシヨツクで思い出せなかつたと述べており、これと対比すると右認定を妨げるものではなく、他に右認定を左右する証拠がない。
横断歩道であつても信号機の設備のない場合歩行者は左右の交通の安全を確認して横断すべき注意義務(事故を回避するための)があることは多言を要しない。右事実によると、控訴人は一旦横断歩道の手前で左右を見て被控訴人車がやや離れた南方から北進中であり直ちに横断すれば安全に横断できた状態であり、その時点では控訴人は右注意義務を果したといえないわけではない。しかし、控訴人はその直後に歩道端に横断歩道に向つて立ち止まり、右手に傘を持ち、左手でかばんをかかえながらライターを取り出して、煙草に火をつけたというのであるから、通常の場合よりも若干手間取つたことが考えられ、その時間的経過により、被控訴人車がさらに近づきもはや安全には横断できない状態になつていたことが十分に予測できたものといえるから、控訴人が横断し始めるときには、すでに、歩道に立ち止まる以前にした左右の交通の安全の確認では不十分で、さらにもう一度左右の交通の安全を確認した後に横断を始めるべき注意義務があつたものというべきである。しかるに、控訴人は歩道に立ち止まる前にした左右の交通の安全の確認だけで安全に横断できるものと軽信し、あらためて左右の交通の安全を確認しないまま横断し始めた過失があり、それが本件事故の一因となつているものといわざるをえない。本件事故についての控訴人、被控訴人双方の過失の態様、程度を比較し検討すると、控訴人の過失割合は10%とみるのが相当で、これを損害額算定につき考慮すべきものである。
広島高裁 昭和60年2月26日
何度も書いていることですが、民法709条の過失とは「予見可能な結果について、結果回避義務の違反があったこと」を意味します。
従って道路交通法違反のみが過失になるわけではないし、判例によってはむしろ関係ないことも。
このように判示されていますが、
横断歩道であつても信号機の設備のない場合歩行者は左右の交通の安全を確認して横断すべき注意義務(事故を回避するための)があることは多言を要しない
左右の安全を確認して横断すべき注意義務とありますが、道路交通法上、このような規定はありません。
昭和35年以前の道路交通取締法には歩行者にも注意義務があった時代もありますが、昭和35年以降は道路交通法にはない。
注意義務にカッコ書きで「事故を回避するための」とありますが、民事責任上では歩行者にも事故回避義務違反を認めることはあります。
横断歩道事故の場合、以下のケースでは歩行者にも過失がつくことも。
・幹線道路
・容易に事故が回避出来た場合
まあ、「原則」は車両が過失100%です。
けどこういう例外は多いかは別として普通にあるので、自信満々に「そんな判例はない!」と断言している人を見ると、勉強不足じゃね?とすら思う。
パン?
なんか違う感がある報道。
宇都宮市陽東3丁目交差点で、宇都宮東警察署の署員ら約20人が信号待ちをしているドライバーへ配布しているのは「横断歩道は止まろう」にかけてその名も「止まロールパン」。13日は「止まってくれない栃木県からの脱却」を目指す強化日に指定されていて、警察官たちは正しい交通ルールを説明しながら止まロールパンを配っていました。
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何か違う施策をして注目を浴びたいとか、インパクトを残したいという気持ちは買いますが、パン配って止まるなら苦労しないし、「パンをもらった」ことしか頭に残らないオチが待っていそうな気がする。
何かインパクトを残したい気持ちについては、わからないでもないけど。
話題になるという効果を期待しているのだと思うけど、なんか違う感は否めない。
民事の場合
民事の過失=道路交通法違反という法律はどこにもないので、歩行者に過失をつけることはあります。
けど、交通事故の損害賠償なんてほとんどは裁判ではなく示談でしょうし、10%を争って裁判するくらいなら示談にしたほうがいいというケースが多いんじゃないですかね。
裁判したら必ず10%程度歩行者に過失がつくわけではなくて、基本は歩行者過失が0%ですし。
判例見ている限りでは、メインの争点は過失割合ではなくて、損害賠償額のこともあります。
全過失は車両にあることを双方が認めた上で、金額の算定について争っているケースも普通にある。
民事の過失割合って、道路交通法違反の程度を争っているとも限らない。
例えばこれ。
原告と被告の過失割合について検討すると、道路交通法31条の2の趣旨を考慮しても、進路変更するに当たり、原告自転車が間近に迫っていたのに、右後方の安全確認を十分しないで原告自転車を見落とした被告の過失は大きいというべきである。
しかしながら、(中略)原告がブレーキを掛けるなどして本件事故を回避することは容易であったというべきである。にもかかわらず、原告は、漠然と追越しを行っている。
以上によれば、本件事故の主たる原因は原告の過失にあるというべきであり、原因と被告の過失割合は、本件事故が自転車対四輪車の事故であることを考慮しても、原告70%、被告30%と認めるのが相当である。
東京地裁 平成23年12月5日
路線バスと自転車の事故です。
バスの過失が大きいというところから、最後は「事故回避義務違反」を重視して自転車に7割の過失をつけています。
容易に事故を回避できたにも関わらず、回避義務を怠った面を重視。
こっちの事例は「車道通行自転車」 対 「歩道から
ノールックで車道に降臨して逆走横断した自転車」の判例です。
これでも50:50。
状況からみて、逆走横断開始する自転車を予見出来たというところを過失にしてますが、ロードバイク乗りの立場からするとちょっとツライかな。
道路交通法は道路上でのルールを決めていますが、ルール無視という事実と、事故の発生は必ずしもイコールではない。
仮にルール無視されたとしても、容易に事故発生を回避できるなら、回避行動を求めているとも言えます。
歩行者の回避義務、注意義務を道路交通法上では規定していないだけのこと。
ルールを破ることと、事故の発生は必ずしもイコールではないので。
けどまあ、パン配っているよりも、「横断歩道に近づくときは減速、横断しようとする歩行者がいないことを確認するまではひたすら減速し、歩行者がいたら停止」を意識付けしたほうがよろしいかと。
パン、パン、サラダ、パン。
ロードバイクで横断歩道に向かってダンシングアタック決めてるようなバカもいるし、パン配るよりも何かあるのでは?
自転車でも横断歩道での死亡事故なんて普通に起きてるわけだし、何か起きてから悔やんでも遅いから。
「取り返しがつかないことをしてしまった」と法廷で泣きながら謝罪したそうですが、ルール違反が取り返しがつかない結果になるんだよね。
他人の事例から学ばないと。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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