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路側帯を通行する自転車は、どの程度の速度まで認められているのか?②

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前回の続編です。

 

路側帯を通行する自転車は、どの程度の速度まで認められているのか?
自転車は路側帯を通行可能ですが、ちょっと前の記事についていろいろ質問を受けていたので。路側帯の定義と自転車路側帯と路肩を混同すると話がおかしくなるので、まずは定義から確認します。三の四 路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つた...

 

前回は業務上過失致死傷容疑の刑事事件。
このように路側帯を時速50キロすり抜けして交差点に進入したオートバイについて、37条の直進車優先はないとした判例です。

今回は民事で、状況はほぼ同じですがオートバイの速度は30キロ、対向右折車は時速15キロ。

路側帯を不法通行したオートバイ

本件事故現場付近の外側線外側は道路交通法2条1項3号の4に規定する路側帯である。同法17条1項本文は、車両は路側帯と車道の区別のある道路においては車道を通行しなければならない旨規定しており、本件の場合が同条1項但書の場合に該当しないこと前記認定により明らかである。すなわち、自動二輪車たる原告車は路側帯を通行してはならないのに、原告はこの規定に違反して路側帯を通行し、または前記二1認定のとおり本件交差点附近の原告車進行方向の車道は自動車が渋滞しており、原告車からの見とおしが悪かつたにもかかわらず、原告は、前方の安全を確認し適宜減速することなく、漫然時速約30キロメートルのままで本件交差点に進入したものであつて、これは原告の重大な過失である。

 

ところで、自動車の運転者が交差点で右折しようとする場合には前方(対向方向)の交通状況に十分注意し、直進しまたは左折しようとする対向車両があるときはその進行を妨げてはならないのであるが(道路交通法37条)、右にいう直進又は左折の対向車両とは適法に運転される車両でなければならないこと当然である。およそ自動車の運転者は、他の交通関係者も交通法規を守つて行動するものと信頼し、かかる信頼を前提として自動車運転者としての注意義務を尽くせば足りるものであり、本件のように車両の通行の禁止されている路側帯上を進行してくる自動二輪車のありうることまで予見して、これに対する注意を払つて進行すべき義務を負うものではないと解するのが相当である。前記二1の認定によれば、被告は対向車線外側の路側帯上を進行してくる車両のありうることまで注意していなかつたことが認められるが、被告はかかる注意義務を負わないから、同被告には本件事故につき過失はなかつたというべきである。

 

仙台地裁 昭和52年(ワ)第1001号

前回と状況的にはほぼ同じで、違うのはオートバイの速度が30キロという点と、対向右折車は時速約15キロという点。

前回の業過判例はこのように判示しています。

路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点ということ、道路交通法37条は路側帯を含む交差点通行車両全体についてその進行上の優先関係を規定していること、同法37条にいう車両等には軽車両を含むこと及び路側帯を通行する車両についても直進車優先が適用されることは原判決の判示するところである。従って、右折車は、路側帯を適法に通行する自転車等の軽車両の直進車の通行を妨げてはならないことは明らかである。

 

しかし、路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているもの(ただし、歩行者の通行が禁止されている自動車専用道路の場合を除く。)であって、軽車両だけが、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除いて、通行を許されているにすぎず、この場合においても軽車両は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければならないもの(同法17条の2第2項)とされているのである。ところで、路側帯の通行を許された軽車両とは、人又は動物の力により運転する車両に限られる(同法2条1項11号、16条2項)のであって、これらの車両は自動車や原動機付自転車と異なりその性質上低速のものであり、かかる軽車両だけが歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することを許されているにすぎない路側帯は、本来高速の車両の通行を全く想定していないものと考えられる。もっとも、現実には法律上路側帯の通行を禁止されている原動機付自転車や自動二輪車が路側帯内を通行する事態が時にみられるのであり、このような現実を全く無視することはできないが、このような場合であっても原動機付自転車や自動二輪車の側では適宜速度を調節して進行するのが一般的であり、これらの車両が時速50キロメートルもの高速度で路側帯内を通行することは通常予想されないところといわなければならない。そうすると、このような異常な走行をする直進車については、交差点における直進車優先の規定の適用はなく、右折車はかかる直進車に対してまでその通行を妨げてはならない義務があるものとは解されない。

 

(中略)

 

右通行余地を自転車、自動二輪車等が進行してくるに備えブレーキペダルに右足をのせ左方を注視しながら時速5、6キロメートルで進行したところ、左斜め前方約12mの地点を対向して進行してくる自動二輪車(以下、被害車両という)を認めて急制動し、被告人車の先端がわずかに路側帯内に入った地点で停止したことが認められるのであって、被告人としては右通行余地を対向して進行してくる車両に対して相当の注意を払っていたものと認められる。そして右の程度の注意を払っていれば、路側帯内を適法に進行してくる歩行者や軽車両は勿論、原動機付自転車や自動二輪車が進行してくる場合であってもそれらが適宜速度を調節して進行してくる限り、それらとの衝突を回避することが十分可能であったと認められる。もっとも、右の程度の注意では被害車両の如く路側帯内を時速50キロメートルもの速度で進行してくる車両との衝突を回避できないけれども、これを以て被告人の過失とみることは相当ではない。すなわち、前説示どおり路側帯は主として歩行者の通行の用に共するために設けられているのであり、例外的に自転車等の軽車両が歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行することが許されているにすぎないのであって、本来高速の車両の通行を全く予定していないのである(以下略)

 

東京高裁 昭和60年3月18日

そうすると、やはり疑問が生じます。

もし自転車が時速30キロで進入したら?

もし仙台地裁の状況で、オートバイではなく自転車が時速30キロで進入したら?
自転車は路側帯を合法的に通行できる存在。

 

優者危険負担の原則があるにせよ、同じ時速30キロでも、オートバイと自転車で扱いが変わるのでしょうか?
時速30キロで路側帯から交差点に進入する自転と、時速30キロで路側帯から交差点に進入するオートバイ。
対向右折車からしたら、どっちでも変わらないわけですよ。
衝突したのが自転車かオートバイかの違いに過ぎず、見えない位置から謎の二輪車が直進してきたことには何ら変わりはない。

 

あと、東京高裁の業務上過失致死傷容疑の判例では、対向右折車は時速5、6キロで慎重に確認したけど、時速50キロのオートバイがきたらどんだけ注意していても「お手上げ」という状況

一応は路側帯から低速進入する自転車を予見して最徐行したけど、時速50キロでオートバイがきたらお手上げ。
仙台地裁の判例は、対向右折車は時速15キロなので注意義務を尽くしたと言えるのか?
右折時には徐行義務(34条2項)もあることを考慮すれば、低速自転車が見えない路側帯から交差点に進入する可能性を考慮して最徐行義務があるとも取れる。

 

まあ、仮に同じ状況で自転車が交差点に進入するとしても、車道の先行車が停止している以上は「交差点内が見渡せない」状況なので、一定の注意義務はあります。
同じ状況で自転車だったら、0:100にはならないと思いますが。

路側帯は

 

路側帯は本来、自転車であっても高速度通行する場所ではない、というところは間違いないかと。

2 前項の場合において、軽車両は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない。

仮にこういう状況であっても、

路側帯で時速50キロ出すロードバイクがいるとは思えませんが、こうした状況で交差点に進入する場合、対向右折車からは見えない位置を通行するわけなので、かなり減速して様子を見ながらじゃないと事故リスクは上がります。

 

東京高裁の判例だと、対向右折車は時速5、6キロで注意深く進行したのでまだマシなほうですが、徐行とは言えないような速度で右折する車は多い。

 

自転車乗りの立場としては、「見えない交差点はかなり警戒して確認してから進行」するのがお約束。
もちろん車のドライバーも最徐行して注意しなければなりません。

 

自転車は路側帯を通行することか「できる」存在ですが、高速度通行することは許されていないということかと。

 

前の記事でも書いたように、特定小型電動キックボードは路側帯通行が「可能」。
ただし注意義務は自転車と同じく「歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」。

 

ドライバー側もこのような路側帯すり抜け交差点進入を予見して注意する義務がありますが、高速度進入の場合には自転車だろうと過失になりうるので「見えない交差点はかなり警戒して確認してから進行」がお約束になるかと。
で、これ。

 

うーん。。。
ちょっと前に書いた記事について、質問を頂いたのですが。このネタ、なんか荒れそうなのでアレなんですが。理由この件ですよね。判例を見る限り、路側帯通行の自転車だからと言って特別な保護があるわけでもないし、自転車も車両である以上は一定の注意義務も...

 

自転車が路側帯通行する上では、「現に」歩行者がいないからと言って「歩行者の通行を妨げないような速度と方法」の義務が消失するわけではないことや、自転車が高速度通行することは予定されていないこと、自転車は時速30キロ以上だと高速度通行と見なされる傾向にあることなどを考えれば、自転車の過失が必ずゼロになるとは思えません。
まあ、せいぜい5~10%程度つくかどうかなので、裁判にならずに0:100で示談することが多いでしょうけど。

 

それこそ、歩道を通行する自転車に過失つけることは普通にあるので。

 

すみません、横断歩道と自転車の判例、一部訂正。
ずいぶん前に、道路交通法38条と自転車についての判例を書いてますが、重大なミスがあり一部訂正します。訂正上の記事の中で、名古屋地裁平成23年10月7日について、自転車に対して38条の義務を認めた!みたいに概略を書いていたのですが、すみません...

 

ロードバイクってママチャリと同等には見てない判例が多いのですが、一応はロードバイクのサイトなので、どういうところに注意すべきか書いておきました。
そもそも民事って、道路交通法違反があるか否かだけが過失ではないのを理解していないと。




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