先日の記事について。
車道外側線は道路交通法上何の効力もないということは確定で、車道は歩道の縁石までになります。
道路交通法18条では軽車両は「車道の左側端に寄る」ことを求めていますが、車道外側線との関係について言及している判例もあります。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
車道外側線と道路交通法18条1項
この判例の概要から。
車が道路外の施設に向けて左折しようとしたところ、車道外側線の外側を通行してきた原付と衝突した事故です。
車道外側線と歩道の縁石までの距離は約1.5m。
歩道の縁石付近にいくつか金属のグレーチングもあり。
争点の一つに、車道外側線の外側は車道なのか?があります。
車の主張としては、「車道外側線の外側は車道ではないから、原付は通行区分違反(17条1項)」。
原付の主張は、「車道外側線の外側は車道」です。
車両は、歩道と車道の区別のある道路においては車道を通行すべきとされている(同法17条1項)ところ、路側帯は、歩行者の通行の用に共し、または車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路または道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で道路標示によって区画されたものをいう(同法2条1項3号の4)から、歩道の設けられた本件道路には路側帯は存在せず、本件道路の歩道付近に設けられた白線は単なる車道外側線にとどまる。
したがって、被告は、本件道路から路外に左折進行するにあたっては、本件道路の外側線の歩道寄りにさらに約1.5mの余地があることを踏まえれば、外側線を越えてさらに歩道寄りまで車両を寄せた後に左折すべきだったといえ、この点の過失が認められるほか、左後方の確認を怠った過失があることは明らかである。(中略)
原動機付自転車は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、道路の左側に寄って走行するものとされているが、軽車両にあっては道路の左側端に寄って道路を通行しなければならない(同法18条)とされているから、原動機付自転車は、軽車両が通行することに必要とされる道路の左側端を除いた上で、道路の左側部分の左端を通行することになる。
本件道路においては、車道外側線から歩道までの間に約1.5mの余地があるが、その左端に設置された側溝を含めた幅に過ぎないことを考慮すると、本件道路の左側端から軽車両が通行する余地を除いた場合、原動機付自転車が走行する余地が車道外側線の歩道寄りになお残されるかどうかについては疑問が残る。もちろん、かかる規定は道路交通法20条における車両通行帯とは異なるから、原動機付自転車が本来軽車両の走行する部分を走行したとしても直ちに通行方法違反とはならないが、本件事故態様が、原告車両において車道外側線の歩道寄りを走行していた結果、減速した被告車両に追いつく形となって生じた事故であることを踏まえると、この点について、原告の過失を考慮せざるを得ない。
名古屋地裁 平成26年8月28日
18条1項の「軽車両の左側端」の範囲は、車道外側線を何ら基準にしてないことになります。
この場合は歩道と車道に分かれている道路ですが、車道外側線の外側1.5mは軽車両の通行場所と認定され、原付が通行する場所はその「左側端を除いた左側」だとしている。
原付が左側端を通行したことを違反ではないとしながらも、事故態様を鑑みて過失としています(なお、この判例では原付の過失は25%です)。
「車道外側線の外側を通行する義務はない!」などと主張する人もいますが、車道外側線は道路交通法上では何ら規制効力がないので、そんな線を基準に語る時点で無能なのかもしれません。
例えばこんな道路なら、車道外側線の外側を通行すること自体が危険過ぎるから話になりませんが、車道外側線と歩道の縁石の間隔は道路ごとに違うし、道路ごとに違う上に何ら規制効力が無い線を語る時点で無知なのかも。
ちなみに外側線については、以下の判例もあります。
外側線は、それ自体としては、道路管理者が、道路の構造を保全し、又は交通の安全と円滑を図るため、必要な場所に設けられた区画線(道路法45条1項、2項)の一つにすぎず、外側線を表示する区画線は、「歩道の設けられていない道路又は道路の歩道が設けられていない側の路端寄りに設けられ、かつ、実線で表示されるもの」に限り、路側帯を表示する道路標示とみなされる(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令7条)から、一審原告及び一審被告の進行方向に向かって左側に歩道があると認められる本件道路の左側の外側線が、路側帯を表示する道路標示とみなされることのないことは明らかというべきである。そうすると、一審被告が外側線からはみ出して走行していた部分も車道に該当するから(道路交通法2条1項3号)、一審被告がこの部分を車両で通行したことが通行区分(同法17条1項本文)に違反する行為であるということはできない。
広島高裁岡山支部 平成26年8月7日
まあ、当たり前の話かと。
18条1項
どうでもいい話になりますが、18条1項の解釈。
車が通行する「左側」には「左側端」も含むから、車が左側端を通行しても違反にはならないと書いてあるのが以下。
・注解道路交通法(いわゆる宮崎注解)
・詳解道路交通法
・逐条道路交通法
・判例タイムズ284号
同条1項の「道路の左側に寄って」とは、軽車両の通行分を考慮し、軽車両が道路の左側端に寄って通行するために必要とされる部分を除いた部分の左側に寄ってという意味であり、「道路の左側端に寄って」とは、道路の路肩部分を除いた部分の左端に寄ってという意味である(宮崎注解)。このように自動車及び原動機付自転車と軽車両とで若干異なる通行区分をしたのは、速度その他通行の態様が著しく異なる両者がまったく同じ部分を通行すると、交通の安全と円滑が害われるおそれがあるためである。もっとも軽車両がまったく通行していない場合に自動車または原動機付自転車が道路の左側端まで寄って通行することまで禁止したものではないだろう(同旨、法総研・道交法87頁)。
ところで、キープレフトの原則の本来の趣旨は、通常走行の場合はできるだけ道路の左側端を通行させ、追い越しの場合は道路の中央寄りを通行させることにより種々の速度で通行する車両のうち、低速のものを道路の左側端寄りに、高速のものを道路の中央寄りに分ち、もって交通の安全と円滑を図ることにあるとされている(なお、法27条2項参照)。右のような趣旨ならひに我が国の道路および交通の現状にかんがみると、18条1項の規定をあまり厳格に解釈することは妥当ではなかろう。
判例タイムズ284号(昭和48年1月25日) 大阪高裁判事 青木暢茂
もっとも、厳密に述べるならば、「道路の左側」は「道路の左側端」を含むので、「道路の左側端に寄って通行する」ことは、「道路の左側に寄って通行する」こととなる。したがって、当該道路を軽車両が通行していない場合、自動車及び原動機付自転車は、道路の左側端に寄って通行することも差し支えない(もっとも、自動車や原動機付自転車は、軽車両に比べて走行速度も速いので、あまり左側端に寄り過ぎると交通安全上適切とはいえない)。
そもそも「キープレフト」の原則は、道路の中央部分を追越しのために空けておくという考え方によるものであり、道路の幅員が不十分な場合には、自動車等は相対的に左側端に寄ることになるであろうし、幅員が十分であれば、左側端側にそれなりの余裕を持って通行することとなろう。また、現実に軽車両が通行しているときは、自動車等は左側端に寄り難く、相対的に道路の中央寄りの部分を通行することになろう。このように「道路の左側に寄って」とは、あくまでも相対的な概念であり、具体的な場所が道路のどの部分を指すかは、道路の幅員及び交通状況によりある程度幅があるのである。
道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房
宮崎注解の宮崎氏は、警察庁で道路交通法の立案をした人です。
ただこれ、執務資料だと逆に書いてあるのが気になる。
しかし、法20条の車両通行帯とは全く異質のものであるから、軽車両が自動車などの通行する部分を通行したからと言って通行帯違反とすることはできない。
野下文生、道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説、2018、p204
通行帯ではないから通行帯違反にならないという意味以上にはないと思うけど、どこかのバカはこの記載を以て「違反じゃねーし!」とか言ってた気がする。
まあ、理解力がない人だし彼に正しいことを求めるほうが間違っているけど笑。
けど、執務資料だけは「左側の範囲に左側端も含む話」は出てこない。
たぶん、勘違いする人が出る原因としか。
左側端は自転車の聖域だと勘違いした人は過去にもいたし、実際に道路上で喧嘩売ってる自転車乗りを見たこともあるし、勘違いと不勉強は他人を不幸にするんだろうなと。
18条1項に関する判例をテキトーに挙げておきます。
○横浜地裁横須賀支部 昭和47年1月31日
右の争いなき事実によると、被告が、民法第709条以下の規定により、原告等主張の本件交通事故によって生じた損害を賠償すべき義務を負うことが明らかである。之に対し同被告は、被害者にも過失があると抗争するので検討するに、事故に遭遇した屋台の尾部に反射鏡を備え付けていなかったことは、原告等と同被告との間に争いがないが、<証拠略>によると、事故当時、屋台後部の左側の柱に点灯したカーバイトランプを吊してあったことを認めることが出来る。
ところで、道路交通法第52条によれば、本件の屋台の如き軽車両は、夜間道路にあるときは政令で定めるところにより、同政令の定める光度を有する前照燈、尾燈若しくは反射器、反射性テープ等を備え付けねばならないとされているが、たとえ、反射鏡の設備がなくても、カーバイトランプを点灯すれば、通常、後方数十メートルの距離より之を確認し得ると考えられるので、原告に、右の義務に違反した過失を認めることが出来ないものと解する。
次に、原告が、左側端通行義務に違反したか否かについて検討するに、事故に遭遇した屋台が、歩道から中央寄りに1メートルの個所を通行していたことは、原告等と同被告との間に争いがなく、<証拠略>によると、事故現場は、両側に幅員3メートルの歩道が設置され、車道の幅員が15メートルで、その中央にセンターラインの標識がある直線状の道路上であり、原告は、右屋台の前後の中央線が、歩道から中央寄りに略々2メートルの個所を進行していたところ、その後部に同被告運転の乗用車の前部中央附近が追突したものであること、及び<証拠略>によると、原告は、事故に遭遇する直前、絶えず交通事故の不安を感じ乍ら通行していたことを夫々認めることが出来る。
而して、道路交通法第18条は、本件の屋台の如き軽車両に、道路の左側端を通行すべきことを義務づけているのであるが、右の事実によると、若し、原告が、右義務を忠実に守り、出来得る限り車道の左側端を通行するように心掛けて居れば、或いは被害が一段と軽度であったろうと推認するのを相当とするから、被害者側にも斟酌すべき過失があると言わねばならない。そしてその過失割合は、被告の過失が、脇見運転即ち前方不注視と言う、自動車運転者にとり最も基本的な注意義務に違反した重大な過失であるのに対比し、被害者側の過失は、道路の左側端通行義務違反で、然も、更に左側に寄って通行すべきことを要求し得るのは、せいぜい50センチメートル以内に止まると解されるから、同被告の過失に対して極めて軽度と言うべく、従って、前者の過失割合を9割、後者の過失割合を1割と認定するのが妥当であると考える。
横浜地裁横須賀支部 昭和47年1月31日
○福岡地裁小倉支部 昭和48年1月19日
第二車線を通行していた原付に、第1車線を通行していた大型車が進路変更して衝突。
本件事故現場は道路左側が2車線になっており、そのうち、少なくとも事故直前の時点にあっては、道路中央線から遠い車線、即ち道路左側から数えて1番目の車線(以下便宜「第1車線」という)上を被告のトラックが、道路中央線に近い車線、即ち道路左側から数えて2番目の車線(以下便宜「第2車線」という)の梢第1車線寄りの部分を原告が、いずれも同一方向に、殆ど近接した状態で併進したこと、被告は第1車線上の他車輛を追越すため後方を確認したが、その確認状態が杜撰で不十分であったため原告に気付かず、事故現場直前約13.8mの地点で第2車線に進路変更のための方向指示器を挙げて追越にかかり車体が約半分第2車線に出たところで直進してきた原告に接触したこと、しかし右の第1、第2車線は道路交通法第20条所定の車両通行帯ではないこと、即ち、右両車線の中央を仕切る境界線は道路標識、区画線及び道路標示に関する命令別表第四(区画線の様式)(102)所定の車線境界線であって、道路管理者である建設省において便宜表示した記号にすぎず、之と若干まぎらわしい記号ではあるが、同命令別表第六(道路標示の様式)(109)1(1)所定の、公安委員会が危険防止のため設定表示した車両通行帯境界線ではないこと
(中略)
各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、同法18条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。
福岡地裁小倉支部 昭和48年1月19日
○静岡地裁浜松支部 昭和43年3月18日
道路交通法第18条第1項の自動車及び原動機付自転車の観念上の通行区分である「道路の左側に寄つて」とは道路の左側部分の左の方に寄つてという意味であり、具体的には軽車両が道路の左側部分に寄つて通行するために必要とされる道路の部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてということであり、また前記法条の軽車両の観念上の通行区分である「道路の左側端に寄つて」とは路肩部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてという意味であると解するを相当とする。そうすると本件事故現場の道路の左側部分(舗装部分)の幅員は5.50mであることは既に認定したところにより明らかであるから自転車、荷車、馬車、牛車、リヤカーのような軽車両の通行に必要とされる道路の幅は約2mとみて、車体の幅が2m弱である被害者運転の車のような自動車の通行に必要とされる道路の幅は約2mとみるとき、被害者運転の車は道路中央線より約1.50m左側に寄つて通行すれば道路交通法第18条第1項所定の「道路の左側に寄つて」という通行区分に違反しないこととなる。ところで既に認定したように被害者は本件事故当時道路中央線より左側に1mないし1.50m位入つたところを西進していて、しかも他の車両に追いつかれているような状況ではなかつたのであるから、被害者はキープレフトの原則に違反していなかつたものというべきである。
静岡地裁浜松支部 昭和43年3月18日
○東京地裁 平成19年1月21日
直進オートバイと右折車の事故。
原告車両から見て衝突位置の左側に、車線の半分以上である少なくとも1.5m以上のスペースを残して直進進行してきたものであるから、左側寄り通行義務(道路交通法18条1項)に違反した過失もあるというべきであり、このことが本件事故発生の一原因になっていることは否定し難い。
東京地裁 平成19年1月21日
以前「自転車は左側端から2mまで認められている!」とか語っていた人もいましたが、見りゃわかるように「道路状況次第で変わる」。
道路状況次第で変わるからこそ、罰則すら設けていない。
具体的な数字はその判例でしか意味を成さないのは明らかだけど。
判例を複数見れば、軽車両の左側端がどのように解釈されているか見えてきますが、1つの判例だけみて解釈するとそれが全てだと勘違いしやすいのでご注意を。
ついでに
以前、判例を読むのが苦手な方がなんだかよくわからない話を多々語ってました。
本件道路は、片側 2 車線の歩車道の区別のある道路であり、車両通行帯が設けられているから、
自転車は道路の左側端から数えて 1 番目の車両通行帯を通行しなければならず(道路交通法 20 条
1 項)
との記載から、やはり自転車は路肩を走ってはいけないと高裁も判断しているhttps://t.co/lpBWZXFxgP— おっくん (@okkun_oosaka) July 23, 2021
この判例、「自転車は路肩を走ってはいけない」などとは全く書いてないのですが(笑)、判例読むのが苦手な方みたいだししょうがない。
この判例はこちらでも触れてます。
前提
・車両通行帯であることについては、二審において当事者間の争いがない。
・外側線のすぐ外側はグレーチング。
二審での控訴人(一審被告)の主張。
また、被控訴人は、本件事故発生前に第一通行帯を走行していたというのであるが、路肩部分への進路変更の具体的必要性
について何ら述べていないことからすると、特に必要がないにもかかわらず、漫然と本件路肩に進路変更をしたとみるほかない。
広島高裁岡山支部 平成31年4月12日
車両通行帯であることを争ってないので、そりゃ裁判所もその通りに事実認定するわな。
被控訴人(一審原告)が車両通行帯だと主張してますから。
現場の様子。
外側線から歩道まで距離がある道路と、すぐに側溝になる道路を同視する人もいないだろうけど。
なおこの判例は、ざっくり言うとこんな判例です。
フロントライトつけて街灯もあるから見えなくはないし、それでも路肩を通行するなら自己責任。
路肩を走ってはならないとする判例でもないし、二車線なら車両通行帯とする判例でもないけど、この界隈の人たちの判例を読む能力の低さのほうがむしろ気になる。
本件道路は、片側2車線の歩車道の区別のある道路であり、車両通行帯が設けられているから、自転車は道路の左側端から数えて1番目の車両通行帯を通行しなければならず(道路交通法20条1項)、この規制に従えば、本件路肩部分の外側線に掛かっていない部分を自転車が継続的に走行することはなく、道路外の施設に出入りしたり、自転車の走行が許されている歩道に進入したりするために横断することが想定されるにとどまる。
そして、本件路肩部分と車両通行帯との間に段差等の物理的障害がないことなどに鑑みると、自動車に追い越される際の危険を低減したいなどの意図から自転車運転者が本件路肩部分を事実上走行する場合もあり得ることが想定されるが、前述のとおり、路肩は道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つためのものであって、本来的には車両等が恒常的ないし継続的に通行することが想定されたものではない。そして、路肩には種々の形状・構造・種類のものがあり、本件路肩部分のような都市地域の道路の路肩には排水設備や滑りやすい金属製のふた等も多く設置されているのであって(弁論の全趣旨)、路肩は、自転車の運転手が車道、自転車道及び通行可能な歩道と同様の注意を払っていれば安全に走行できるような構造ないし形状となっていることが本来的あるいは絶対的に保証されているとは解し難い。
したがって、本件路肩部分は、自転車を含む車両運転者が通行するに際し、路面の状態に注意し、より慎重に運転することが求められる部分であるというべきである。
また、本件道路において、本件隙間を視認することの妨げとなるような植栽や障害物等はないから、通常の注意を払って路面状態を観察すれば、本件路肩部分にスリット(本件隙間)があり、それが一定の深さを有する可能性は比較的容易に認識できるというべきである。そして、先に認定した事実によれば、本件隙間は、夜間においても、車道とは異なるコンクリートブロック製の路肩部分で、そのコンクリートブロックの中間に道路に沿う方向に続く黒い直線として容易に認識することができるところ、そもそも道路上に一定の幅を持った線状の構造物が続いているのに、それが何の意味も持っていないなどと安易な認識や判断をすることは通常考え難いのであって、路肩部分、特に本件路肩部分のように車道とは異なるコンクリートブロック製の路肩部分にそのような黒色部分が続いていれば、それが排水や道路清掃等の用に供される隙間ないしは窪みであるとか、少なくとも穴や割れ目、あるいは逆にやや突出した障害物等、走行に何らかの支障を及ぼすものである可能性を疑うのが通常であるし、本件道路において十分な照度が保たれていたことも踏まえると、通常の注意を払えば、夜間においても、一見すると黒い直線に見えるものがスリットであり、それが一定の深さを有する可能性も比較的容易に認識できるというべきである(なお、被控訴人は、本件事故に先立ち、本件道路を走行するに際して、前照灯を点灯していたというのであるから、本件隙間の認識はより容易であったといえる。)。
これに対して、被控訴人は、本件路肩部分に本件隙間があることに気が付いていなかったというのであるが、この事情は、被控訴人が夜間に自転車で路肩を進行するに際して必要な注意を払っていなかったことを裏付けるにとどまり、本件隙間の夜間における視認可能性に関する上記判断を左右するものではないというべきである。
(中略)
本件事故以前には、ロードバイクを含む自転車の運転者が本件隙間に車輪を挟み込まれるなどして本件路肩部分で転倒した事故が発生したことはなかったと認められるし(A 市内において同様の事故が発生していたと認めるに足りる証拠もない。)、ロードバイク以外の型の自転車については本件隙間にタイヤを挟み込まれることは考え難い。
本件道路においては自転車も歩道を通行することができるから、車道や本件路肩部分を通行する必要はないし、路肩の目的ないし用法について先に説示したところによれば、路肩を走行する場合においては、自転車の運転者には、当該路肩の状況・状態に注意し、これに応じた適切なハンドル操作等をして転倒等の事故を回避することが期待されていたといえる。加えて、車両の運転者には、自己が運転する車両の形状や運動性能等の特性を把握した上で、路面の状態を含む道路状況・交通状況に応じた適切な運転操作が期待されているところ、本件自転車のように、タイヤの幅が広く普及している自転車よりも狭いのであれば、運転者にはこの点をも考慮に入れた上での適切な進路の選択、ハンドル操作等が求められるというべきである(本件まで同種事故がなかったことは、本件までは、ロードバイクの運転者が本件路肩部分を通行する際には前記のような運転をしてきたことを示すともいえる。)。
以上の諸点に照らすと、ロードバイクを含む自転車が本件路肩部分を走行するとしても、本件隙間にタイヤが挟まって転倒するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自転車の運転者が適切な運転操作を行うことによりそうした事故を回避することができるというべきである。
広島高裁岡山支部 平成31年4月12日
「路肩を通行する義務はない!」と主張する人は、この判例における「本件道路においては」を読み取れないのかな?
例えばこの道路の路肩は、エプロン部以外は「通行に適した舗装」。
こちらの道路における路肩は、「通行に適さないエプロン部」。
これらを同視して「路肩」と語るからおかしくなるけど、広島高裁岡山支部 平成31年4月12日判決における表現も「本件路肩部分」。
全ての道路の車道外側線の外側なんて語ってない判決ですが、判例を読めないと大概間違う。
車両通行帯であることも「争い無し」。
そりゃ争いがない事実はそのまま認定されるよね。
車道外側線は
「自転車は車道外側線の外側を走れ」とか、「車道外側線の外側を通行する義務はない!」とか言ってる人を見かけますが、そもそも車道外側線は道路交通法上では何の意味もないので、車道外側線を基準に語る時点で無能認定したほうが早い。
そこが左側端なら自転車は通行する義務があるだけ。
ちなみに、「左側端に寄って」だから左側端ではない!とか語る人もいますが、判例上は普通に「左側端通行義務」と出てきます。
言葉遊びする暇があるなら、判例調べたほうがよい。
もちろん、ビタビタに左側端を通行したら危ない。
さじ加減は道路と状況次第。
前回記事から話は逸れましたが、
車道外側線の判例が割れているというか、紛らわしいものなのできちんと主張しないと裁判官も間違うというだけなんじゃないですかね。
裁判官が全ての法律に精通しているわけじゃないので、誤解されやすいところはそれを見越して主張しないと。
ちなみに車道外側線の外側については、何年も前から「自転車が通行しやすいように」とグレーチングを無くしたり傾斜を無くすように国土交通省がガイドラインを出してますから、「通行に適さない場所」という解釈は取れなくなっています。
通行に適さない路肩は、グレーチングやエプロン部のこと。
もちろん、道路ごとに違うけど。
18条1項の左側端寄り通行は、「通行に適さない路肩を除いて左側端に寄る」なので、車道外側線がどうのこうのは関係ありません。
自転車ナビラインについても、そこが左側端なら通行義務があるし、あまりにも左側端に寄りすぎなら違うし。
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2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
現実として外側線を跨ぐと転ける原因になったりするので、それより中央寄りを走ることになるのですが、線の外に追い出そうとする車が怖いです。こっちが外に出るまでギリギリまで車間を詰めてくる。あと並走して寄せてきた車もいたな。そういうのは取り締まってほしい。
コメントありがとうございます。
取り締まり、なぜか警察は消極的ですよね。
なぜなんだろ。