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やっぱり無罪…警察と検察のミスが浮き彫りになった「被害者の赤信号無視見落とし事件」。

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ちょっと前になりますが、被告人が交差点を右折する際に対向直進バイクが「赤信号無視で」交差点に進入してきて起きた事故。

 

被害者の信号無視を見落として起訴!?それでも検察が起訴を取り消さない理由とは?
なかなか凄い報道が出てますが… 交差点を車で右折中に、対向車線を赤信号で直進してきたバイクとぶつかった事故で、車の運転者は罪に問われるのか――。車を運転していたナイジェリア国籍の男性(53)が自動車運転処罰法違反(過失致傷)などに問われた裁...

 

検察は「被害者の赤信号無視」を見落としたまま起訴していましたが、やはり無罪判決だそうな。

福岡県古賀市で車を運転中、赤信号で交差点に進入してきたバイクに衝突して運転者にけがをさせたなどとして、自動車運転処罰法違反(過失致傷)と道路交通法違反(不申告)に問われたナイジェリア国籍の男性被告(53)に対し、福岡地裁(今泉裕登裁判長)は27日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。

(中略)

事故を巡っては検察側の「捜査不足」が浮き彫りになった。

検察側はバイクが赤信号を無視していた事実を見落としたまま、22年3月に「対向車線に渋滞停止車両があって見通しが困難なのに、安全を十分確認しないまま右折した」などとして男性を略式起訴。同月に福岡簡裁は罰金30万円の略式命令を出したが、男性が不服を申し立て、正式裁判になった。

その後、弁護側の指摘を受け、検察側が現場近くの防犯カメラ映像を再解析するなどした結果、バイクは第1車線と第2車線の間を走っており、▽信号が赤になった時点で停止線の約20メートル手前にいた▽その1・2秒後までに第1、第2車線の車を追い抜き、1・8秒後までに停止線を越えて交差点に進入した――と推定。バイクの赤信号無視が明らかになったが、検察側は起訴を取り消さず、22年6月の初公判から約1年1カ月後の今年7月に起訴状の内容を変更(訴因変更)した。

弁護側は公判で「赤信号を無視して交差点に進入してくるバイクまで予測する義務はない。事故の不申告も処罰するほどの違法性はない」などと無罪を主張。一方の検察側は「赤信号になったとしても、『(急には)安全に停止できない』と判断した対向車両が交差点に進入してくる可能性がある。車の男性はそれを予測できたし、予測する義務もあった」などとしていた。

 

衝突したバイクは赤信号無視 右折車の運転手に無罪判決 福岡地裁 | 毎日新聞
福岡県古賀市で車を運転中、赤信号で交差点に進入してきたバイクに衝突して運転者にけがをさせたなどとして、自動車運転処罰法違反(過失致傷)と道路交通法違反(不申告)に問われたナイジェリア国籍の男性被告(53)に対し、福岡地裁(今泉裕登裁判長)は...
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信頼の原則

被害者が信号無視して交差点に進入して事故になった場合、加害者の刑事責任を問うには「信頼の原則を否定する特別な事情」を示さないとダメなので、

本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。そして、原判決は、他に何ら特別な事情にあたる事実を認定していないにかかわらず、被告人に右の注意義務があることを前提として被告人の過失を認めているのであるから、原判決には、法令の解釈の誤り、審理不尽または重大な事実誤認の疑いがあり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日

「赤信号無視する車両がいることを予見する特別な事情」を検察が立証できなければ基本的には無罪です。
普通に回避可能だった場合にも信頼の原則は否定されますが、この事件はそもそも「警察、検察が被害者の赤信号無視を見落としていたこと」が原因。
被害者の赤信号無視があるなら、本来は普通に不起訴です。

 

右直関係でも、昭和43年に以下の判例が出てますが、起訴を取り消しにしなかったので「特別な事情」を検察官が示せるのか?とも思いましたが、やはり単なる意地で起訴を継続したのだと思う。

本件事故につき被告人に業務上の注意義務を欠いた過失があつたかどうかの点について考察する。自動車の運転者が交差点で右折しようとする場合、単に自車を方向転換させようとする右方のみならず前方(左方)の交通状況に十分注意し、安全を確認して進行し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があることは原判決の指摘するとおりであつて、ことに、交差点において直進し又は左折しようとする車両があるときはその進行を妨げてはならないことは道路交通法37条1項の明規するところである。しかし、本件交差点のごとく信号機の表示する信号により交通整理が行われている場合、同所を通過するものは互いにその信号に従わなければならないのであるから、交差点で右折する車両等の運転者は、通常、他の運転者又は歩行者も信号に従って行動するだろうことを信頼し、それを前提として前記の注意義務をつくせば足り、特別の事情がない限り、信号機の表示する信号に違反して交差点に進入してくる車両等のありうることまで予見して、このような違反車両の有無にも注意を払って進行すべき義務を負うものではない

 

広島高裁 昭和43年10月25日

 

弁護人から「被害者の赤信号無視」を指摘され確認した時点で起訴を取り消しにしないとまずい案件なのに、何を血迷ったのか訴因変更して有罪立証を続けた検察の姿勢はあり得ない暴挙としか言えませんね。

 

ワンチャン狙いで起訴を継続したのでしょうか。。。
長期間の応訴を強いられる被告人の負担を全く考えていない。

 

けど本当にややこしいのは、こういうのって検察の不手際を審査するような仕組みがないこと。
要は被害者の赤信号無視があるから必ず無罪という仕組みではないので、得意の「見解の相違だ」とか「我々の主張が認められず残念だ」で終わる。

 

確かに、被害者が赤信号無視だから必ず無罪という仕組みではないですから。↓

本件は、被告人が深夜(略)普通乗用自動車を運転し、車道幅員約12mで片側一車線の歩車道の区別のある道路を時速約40キロメートルで走行中、本件交差点にさしかかり、青色信号に従い右交差点を直進しようとした際、酔余赤色信号を無視して交差点内中央付近を右から左へ横断歩行していた本件被害者2名を約13ないし14m先に初めて発見し制動措置をとることができないまま自車前部を両名に衝突させたことが明らかであり、これに反する証拠は存在しないところ、本件交差点出口南側横断歩道の左側に街路灯があるため、交差点手前の停止線から40m手前(本件衝突地点からは約51.4m)の地点から本件衝突地点付近に佇立する人物を視認できる状態にあり、しかも被害者の服装は、一名が白色上衣、白色ズボン、他の一名が白色ズボンであったから、被告人は通常の注意を払って前方を見ておけば、十分に被害者らを発見することができたと認められる。なるほど、被告人車の進路前方右側は左側に比べて若干暗くなっているけれども、(証拠等)によれば、被告人が最初に被害者らを発見した段階では、すでに被害者らは交差点中心よりも若干左側部分に入っており、しかも同人らは普通の速度で歩行していたと認められるから、前記見通し状況のもとで、被告人が本件の際被害者らを発見する以前に同人らを発見することは十分に可能であったと認められる。

 

そして、本件が発生したのは深夜であって、交通量も極めて少ない時間であったこと、本件事故時には被告人車に先行する車両や対向してくる車両もなかったし、本件道路が飲食店等の並ぶ商店街を通るものであること、その他前記本件道路状況等に徴すると、交通教育が相当社会に浸透しているとさいえ、未だ本件被害者のように酔余信号に違反して交差点内を横断歩行する行為に出る者が全くないものともいいがたく、したがって、本件において、被告人が本件交差点内に歩行者が存することを予見できなかったとはいえないし、また、車両運転者が歩行者に対し信号表示を看過して横断歩行することはないとまで信頼して走行することは未だ許されないというべきである。

 

東京高裁 昭和59年3月13日

なぜに起訴を継続したのか、そしてそもそも捜査が杜撰だったという話になります。

判決後、男性は取材に「警察にバイクが赤信号だったと話したが、調書にも入れられず無視された。強い怒りを感じる」と話し、福岡地検は「適切に対応したい」とコメントした。

車で右折中に赤信号進入のバイクに衝突、53歳男性に無罪判決…「警察の調書で無視された」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
交差点を車で右折中に、赤信号で進入してきた対向車線のバイクに衝突して運転手に重傷を負わせたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)などに問われた福岡県古賀市のナイジェリア国籍のアルバイ

元凶は警察の捜査と、たいして捜査しないまま起訴した検察官…
「適切に対応したい」というのは何ら具体性がないコメントとしか言えないし、「適切に捜査してから起訴しますごめんなさい」が正解。

たまにある

たまに判決文の中で検察の捜査が杜撰だったと非難するようなものがありますが、例えばこれ。

 

自転車横断帯を横断する自転車は、当たり屋になれるのか?
だいぶ前に、横断歩道を横断した自転車と車の事故について、当たり屋の可能性を否定できないとして無罪(過失運転傷害)にした報道を引用しました。 判決などによると、昨年8月、和歌山市内の交差点手前の停止線で、女性が一時停止をした後に左折をしようと...

 

自転車横断帯を横断した自転車と左折車の非接触事故。
検察が過失運転致傷罪で略式起訴したものの裁判所が「慎重な審理が必要」として略式不相当にした事件です。

本件被害者のように2年間に5件の交通人身事故に遭う確率は概算58億3958万0953分の1という極めて低い確率となり、これは巷間で言われている「ジャンボ宝くじ」の1等に当たる当選確率である「1000万分の1」と比べても比較にならないくらい極めて低い確率であって、(中略)通常の常識ではちょっと考えられない、異常な交通事故遭遇頻度である。

 

平成28年7月25日 和歌山簡裁

事故による傷害保険金等目当てに、自ら作為的に仕組んで転倒した偽装事故の疑いが極めて高く

 

平成28年7月25日 和歌山簡裁

判決文の中で警察と検察の捜査を非難するような文言も出てきますが無罪。

 

検察は明らかに「確実に有罪にできる案件」を選んで起訴しているから有罪率99%以上になるわけですが、冒頭の件も「右直だし余裕で有罪」くらいにしか思ってなかったのではないかと思われますが、逆に「有罪にできるか五分五分」みたいな事件はガンガン不起訴にするし、バランスが悪い組織に思えてしまいます。

 

そしてもう一つ問題なのは、行政処分との整合性。
いかなる行政処分を食らっていたのかはわかりませんが、おそらくは道路交通法37条違反と付加点数でしょう。

 

「刑事事件と行政処分は別」という法律上の建前があるので、まだ揉める可能性はありますね。

 

無罪と運転免許取消は別!というのは、市民感覚からすればズレている。
過失運転致傷罪(自動車運転処罰法)が無罪になったからといっても、行政処分は別というのは市民感覚からすればズレていると思いますが、法律上は「別」になってしまう。 交通事故をめぐる刑事裁判で無罪となったにもかかわらず、運転免許の取り消し処分が変...

 


コメント

  1. かたさん より:

     起訴取消の判断が出来なかった検察は、信号が黄色から赤に変わるタイミングで突っ込んで事故ったようなもんですね。ブサイクー。
     企画会議で消極策が通りにくいのとも似ています。経営者や投資家は損切りの判断が難しくてタイミングを逃しがち。撤退戦を指揮できれば一人前の指揮官。下山で迷ったときに引き返さずに遭難。
     いや、一言で言えば、「恥の上塗り」でしょうか。
     国家権力を行使する責任の重い仕事なのに、公平性や被疑者の負担より、手前のメンツを優先させた印象を受けるので、嫌悪感を感じ、ちょっと貶してみたくなりました。
     

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      検察官もいろんな人がいますよね。
      無駄な争いをして惨敗して…

  2. きゃばりーのらんぱんて より:

    もしもバイクが無罪になったりしたら、「あ、赤信号で突っ込んでええんや」なんて前例が出来て、右折が出来なくなって流石にまずい。と、裁判官は思ったでしょう。
    法律に詳しくないですけど、基本は誠実さ、正直さが大事なことで、仲良く楽しくがモットー。イジメやヘイトがなくなれば戦争も起こらない。
    検察官は周りがなんと言おうと起訴する権限があるってドラマでみた気がしますが、実際はどうなんでしょ?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      直進バイクは刑事訴追されてないので、何ら罪に問われてませんよ~。
      警察が信号無視を認めてない以上、青切符すらありません。
      検察官は起訴の独占権がありますが、面倒なことは不起訴だと思います。

      • きゃばりーのらんぱんて より:

        検察官は警察が送検した際の捜査資料だけで起訴したんでしょうね。
        誰も悪くないなら、事故なんか起こらないのに。
        沢山の案件を抱えて大変かもしれないですが、正義のために頑張って欲しいです。
        ありがとうございました!

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          検察の仕事なんてこんなもんですし、検察官がお粗末な主張をして惨敗している判例は時々見かけます。
          世の中、意外とテキトーなんですよ。。。

  3. 山城守 より:

    福岡地方検察庁(https://www.kensatsu.go.jp/kensatsumail/feedback.php?id=034)及び福岡県警に(https://www.police.pref.fukuoka.jp/mailform/soudan.html)に意見送信すべきです。
    福岡県警にはバイクの信号無視を把握していなかったことに関する怠慢を非難する内容を、福岡地方検察庁には当該検察官がバイクの信号無視を把握していなかった怠慢に加え、信号無視が発覚した後も「昭和42年10月13日 最高裁判所第二小法廷 刑集 第21巻8号1097頁」を無視した暴論を展開した痴態を厳しく糾弾する文面を送信すべきです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      記事でも少し触れましたが、「特別な事情」を立証できれば信頼の原則は働かないので、起訴を取り下げなかったことが違法というわけでもないんですね。
      腑に落ちない話ですが。

      • 山城守 より:

        違法ではありませんが、その「特別な事情」がない限り非難は免れません。
        そして、検察庁法第23条第1項は「検察官が心身の故障、職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないときは、検事総長、次長検事及び検事長については、検察官適格審査会の議決及び法務大臣の勧告を経て、検事及び副検事については、検察官適格審査会の議決を経て、その官を免ずることができる。」と定め、同第2項は「検察官は、左の場合に、その適格に関し、検察官適格審査会の審査に付される。
        一 すべての検察官について三年ごとに定時審査を行う場合
        二 法務大臣の請求により各検察官について随時審査を行う場合
        三 職権で各検察官について随時審査を行う場合」と定めており、同第3項は「検察官適格審査会は、検察官が心身の故障、職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないかどうかを審査し、その議決を法務大臣に通知しなければならない。法務大臣は、検察官適格審査会から検察官がその職務を執るに適しない旨の議決の通知のあつた場合において、その議決を相当と認めるときは、検事総長、次長検事及び検事長については、当該検察官の罷免の勧告を行い、検事及び副検事については、これを罷免しなければならない。」と定めています。
        つまり、このことが話題となったり、或いは乗用車の運転者が検察官適格審査会へ審査申し出を行ったりしてそれがきっかけに検察庁法第23条第23条第2項第2号又は同第3号の随時審査が行われ、委員の過半数が当該検察官を「職務を執るに適しない」と判断し、当該議決を法務大臣(実務上は然るべき官僚)が相当と認めれば当該検察官は罷免されます。

        • roadbikenavi より:

          コメントありがとうございます。

          どちらにせよ、私が罷免を求めているわけではありませんので、罷免を求めるならそちらで動かれたらいかがでしょうか。

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