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パトカーが赤色灯をつけずに速度超過車を取締りしても…

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ちょっと前に書いた内容ですが、これ。

なお、警察官がパトカーにより最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合において、赤色警光灯をつけていなかつたからといつて警察官について道路交通法二二条一項違反の罪の成否が問題となることがあるのは格別、右追尾によつて得られた証拠の証拠能力の否定に結びつくような性質の違法はないと解するのが相当であるから、原判決が右のような追尾によつて得られた本件速度測定結果を内容とする証拠につきその証拠能力を肯定した判断は、結論において正当である。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和63年3月17日

赤色灯をつけずに速度超過車を追尾、つまりパトカーも速度超過して違法に追尾したという事件です。
そもそも何の判例なのか?という話ですが、要は違法に証拠収集したのだから無効だろ!と被告人がゴネた事件です。

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パトカーも違法だろ!

違法な証拠収集の場合に被告人が無罪になることがありますが(薬物関係など…)、速度超過した被告人を追尾したパトカーが赤色灯をつけないまま速度超過して証拠収集したのだから、速度超過の罪は成立しないだろ!とゴネた事件。

 

論旨は、要するに、原審が証拠として取調べた司法警察員撮影の道路交通法違反事件現場写真は、(一)警察用自動車が被告人車を速度違反車両として検挙するに当たり、緊急自動車の要件である赤色警光燈の点燈を怠ったまま指定最高速度を超えて被告人車を追尾走行し、その結果右警察用自動車備付けの速度計に表示された指針の状況等を写真に撮影し、(二)また取締りの警察官が被告人に対し、法律上提示義務のない免許証の交付を強要してこれを取り上げたうえ、その免許証を右速度計とともに写真に撮影したもので、違法収集証拠として証拠能力がないから、これを証拠として採用し、挙示の各証拠とともに事実認定の資料とした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある、というのである

 

大阪高裁 昭和61年3月5日

指定最高速度が50キロの道路にて74キロとなっています。
ちょっと前に書いた話だと、パトカーは法定速度(60キロ)までなら赤色灯をつけずに追尾可能なはずですが、それ以上になると赤色灯をつけて追尾計測しないと違法。
サイレンと同時に赤色灯をつけたようで、サイレン+赤色灯+停止命令を同時にしたわけです。

右事実によると、被告人車の追い上げを開始してから速度測定完了時まで赤色の警光燈を点燈しないで進行した右パトカーは、道路交通法施行令14条の規定に照らし、右の間緊急自動車としての要件を欠いた状態で指定最高速度を超える速度で進行したもので、道路交通法22条1項に違反するところがあったものといわなければならない。
しかし、原判決挙示の証拠によると、右パトカーは一見して警察用自動車とわかる外形を備え、かつこれに乗務していた警察官らは、長年交通取締りに従事してきた経験に基づき、進路前方に交通の危険がないことを確認しながら、被告人車の直後をこれとほぼ同一の高速度で追尾したことが認められるから、このようなパトカーの外形や走行状態などから、警察用自動車が緊急の用務に従事中であることが外形上も容易に判断できる状況にあったと認められ、これに右警察官らの運転態度を勘案すると、右パトカーの高速運転によって交通の安全が損なわれるような事態が生じたわけではなく、また測定完了と同時にサイレンを吹鳴し赤色の警光燈を点燈しているのであるから、測定時に警光燈を点燈しなかったのは専ら検挙の確実性を期するためであったと認められ、右警察官らにことさら法令の規定を潜脱しようとする意図があったとまでは認められないし、他方、これによって被告人は、パトカーが交通取締りのため高速度で追尾してくるのを予め察知できなかったという事実上の不利益を受けたに止まり、それ以上になんらかの具体的な権利を直接侵害されたものでもないことに照らすと、パトカーが指定最高速度を超える速度で被告人車を追尾進行した際、警光燈を点燈しなかった違法は、その際にパトカー備付けの速度計に表示された指針の状況等を撮影した所論の写真の証拠能力を否定しなければならないほど、重大なものであるとは到底考えられない。

 

大阪高裁 昭和61年3月5日

ということで被告人の速度超過の罪を認めてますが、同時にパトカーも速度超過の罪が成立するとしています。
被告人は最高裁に上告して争いましたが、無事以下の判断になっています。

なお、警察官がパトカーにより最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合において、赤色警光灯をつけていなかつたからといつて、警察官について道路交通法二二条一項違反の罪の成否が問題となることがあるのは格別、右追尾によつて得られた証拠の証拠能力の否定に結びつくような性質の違法はないと解するのが相当であるから、原判決が右のような追尾によつて得られた本件速度測定結果を内容とする証拠につきその証拠能力を肯定した判断は、結論において正当である。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和63年3月17日

けど、パトカーも違法だと認定された後、パトカーの運転者も同じように処理されたのかはわかりません。
正当業務行為だから…という言い分も…ジャパンは得意ですからね笑。

世間の考え方

大阪高裁判決の一節にこのような文言がありますが、

これによって被告人は、パトカーが交通取締りのため高速度で追尾してくるのを予め察知できなかったという事実上の不利益を受けたに止まり

いますよね。
赤色灯が見えた瞬間に減速して揉み消し作業に入るクルマは笑。
計測失敗に終わらせれば速度超過の罪にはならない。
「事実上の不利益」と表現してますが、不利益…

 

話を戻してこれの件ですが、

 

結局、白バイの速度(118キロ)は法律上問題なしと言えるのか?
こちらの続きです。 そもそもの事故&裁判報道はこちら。 これらについて、質問を頂いた内容がこちら。 Aさん 管理人さんはパトカーの速度が違反だと捉えているようにお見受けしましたが、北海道道路交通法施行細則3条の2(2)イで「専ら交通の取締り...

 

結局のところ、白バイが「警ら中」に法定速度を越えてもいい根拠はなにもなく、なぜ検察官が誤りと思われる主張をするのかわからないし、ましてや道警本部が出した通達は違法行為を容認し職務として法定速度オーバーを指示していた可能性すらある。

 

そして被告人(右折車)は通常、信頼の原則により「10~20キロオーバーの直進車を予見する注意義務」がありますが、今回の件は約60キロオーバー。
信頼の原則を否定するには「特別な事情」を示す必要がありますが、私が知る限り、仙台高裁平成5年2月5日判決が「被告人は以前から速度超過車があることを知っていた」として「30~40キロオーバーの直進車を予見する注意義務」を認めたくらいしか思い浮かびません。
異常な速度超過については信頼の原則を適用するのが通常。

 

道路交通法37条の直進車優先と判例。直進車が暴走しても直進優先?
ちょっと前にも書いたのですが、まとめておきます。 第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。 ※直進車が違法走行した事例をメイ...

 

速度超過ってあらゆる事故回避可能性を消し去りますが、中には「パトカーも違法だろが!だからオレの違反も成立しない!」と主張して最高裁まで争う人もいたわけですね。

 

道路交通法違反の判例って、こうしたのがまあまああるのが現実。

 

交通取締が変わったかもしれない判例。
判例を調べている段階でちょっと面白いのを見つけました。 車の交通違反は、原則として切符を切り反則金を支払えば刑事訴追されないシステム。 赤信号無視で違反切符を切ろうとしたけど、本人は黄色で通過したと思っているので拒否し、パトカーの車載カメラ...

 

事故判例じゃないからか、若干シュールな争いを最高裁までしたように思えてしまう。

コメント

  1. カモがネギしょってる より:

    そういえば、信号無視を追う時に赤色灯とサイレンを鳴らさずに赤信号の交差点に侵入した白バイに遭遇したことがあります。全く鳴らさなかったわけではなく、侵入してから鳴らしていましたが。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      それは完全に違法です…テキトーになっている面は否めない。

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