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横断自転車とクルマの事故、解説するよ。

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先日のこれ。

自転車はノールックで横断してはならない。
先日もちょっと触れましたがこれ。自転車はイヤホンをつけてノールック横断した様子。ところで前回記事でも書きましたが、この件は両者の過失が競合しているのは明らか。クルマは減速接近義務(38条1項前段)と徐行義務(42条1号)、自転車は横断等禁止...

なんか怪しい話ばかりが飛び交いますが、判例を交えて解説しておきます。
クルマの視点、自転車の視点からみた「義務」と、民事の考え方に分けておきます。

 

事故現場はこちら。

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クルマ視点から見た義務

まず注意しなければいけないのは、横断歩道があるので38条1項前段(減速接近義務)が「横断しようとする歩行者が明らかにいない」と言えない場合に発生する。

第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない

そしてもう1つ。
この交差点には優先道路(交差点内にセンターラインか車両通行帯)がなく、しかも左右の見通しが効かない交差点なので徐行義務(42条1号)になります。

(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

優先道路の定義はこちら。

第三十六条
2 (略)優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)

なので横断歩道及び交差点を通行しようとする車両は徐行義務があります。

 

クルマの問題は徐行義務違反(38条1項前段、42条1号)

では判例を。
38条は横断歩道を横断する自転車には向けていませんが、横断しようとする「歩行者」が明らかにいないと言えない場合以外は減速する義務がある。
仮にたまたま歩行者がいなかったとしても減速接近義務は免除されません。

進行道路の制限速度が時速約40キロメートルであることや本件交差点に横断歩道が設置されていることを以前から知っていたものの、交通が閑散であったので気を許し、ぼんやりと遠方を見ており、前方左右を十分に確認しないまま時速約55キロメートルで進行した、というのである。進路前方を横断歩道により横断しようとする歩行者がないことを確認していた訳ではないから、道路交通法38条1項により、横断歩道手前にある停止線の直前で停止することができるような速度で進行するべき義務があったことは明らかである。結果的に、たまたま横断歩道の周辺に歩行者がいなかったからといって、遡って前記義務を免れるものではない。もちろん、同条項による徐行義務は、本件のように自転車横断帯の設置されていない横断歩道を自転車に乗ったまま横断する者に直接向けられたものではない。しかし、だからといって、このような自転車に対しておよそその安全を配慮する必要がないということにはならない。

 

東京高裁 平成22年5月25日

自転車の視点からみた義務

自転車も車両なので車両としての横断義務に従いますが、「正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断禁止」なので、横断する前に左右の確認をしてから横断する義務がある。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

判例を。

車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する自転車等に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行する義務があるところ(道路交通法36条4項)、被告は、本件交差点に直進進入するに当たり、本件交差点又はその直近で道路を横断する自転車等に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行する義務があり、また、最高速度である時速40キロを遵守する義務があったにもかかわらず、これらの義務を怠り、注意を欠いたまま、制限速度を約20キロも超過した時速約60キロの速度で進行し、本件交差点の約15m手前でようやく原告車を発見したものであり、過失が認められる。

 

また、原告は、自転車に乗って本件横断歩道上を横断するに当たり、左右を確認し、南北道路を通行する車両の有無、動静に注意して横断すべきだった(同法25条の2第1項)にもかかわらず、これを怠り、左方への注意及び安全確認が不十分なまま本件横断歩道上を横断したものであり、過失が認められる。

 

平成21年12月15日 名古屋地裁

つまりこれらからすると、双方ともに過失があるのは明らか。

クルマの過失 自転車の過失
徐行(38条1項前段、42条1号) 横断前に確認(25条の2第1項)

民事の考え方

これって見方によっては、自転車は交差点右折にもみえるし、横断にもみえるし、進路変更にも見えます。
民事はある程度パターン化して過失割合が決まりますが、こういうタイプって広路車と狭路車の交差点出会い頭態様(自転車過失30%)をベースにし、自転車が横断歩道を通行したことから「-5%」と捉えることが多い気がするのですが…

この類型からするとこうなる。

クルマ 自転車
基本過失割合 70 30
自転車の横断歩道通行 +5 -5
自転車の直前横断・イヤホン -10 +10
65% 35%

広狭関係や徐行義務については基本過失割合に含まれている。
自転車が横断歩道を通行した際に「-5%」する理由は、「横断歩行者」に向けた注意義務があるから。
あとは自転車が横断する際に確認不十分で直前横断したことや、イヤホンを加味してこんな感じじゃないですかね。

信号機のない交差点で狭路を直進する自転車とその左または右の広路から出てきた車の事故の過失割合 - 交通事故お役立ち手帳
信号機のない交差点で狭路を直進していた自転車とその左または右の広路から出てきた車の事故の過失割合を調べることができます。

民事はパターン化されているので、右折類型で捉えるならベースとなる過失割合が変わりますが、要はこういうのって双方が自分に有利な類型を主張するので揉めます。

 

それこそ、被害者からすれば少しでも相手の過失を増やしたいわけで、「クルマはおかしな位置に停止した自転車がノールック横断する可能性に備え、クラクションを鳴らして警告すべき注意義務を怠った」と主張するのもよくあるパターン。

 

だから民事判例ではカジュアルに「警音器を吹鳴すべき注意義務を怠った過失」が認定されたりする。

民事判例と警音器の罠。
以前、自転車を追い越しや追い抜きする際のクラクションの判例を挙げてますが、基本的な考え方はこれ。先行自転車ヘルメットふらつきなど、具体的危険もないのにクラクションを鳴らすのは違法ところで、民事の判例では「クラクションを鳴らして注意する義務が...
過失割合なんてそんなもん。「平等」ではなく「公平」が過失相殺。
先日のこれですが、報道に出てきた弁護士さんは、基本過失割合が自転車30%のところ、イヤホンなどで修正して自転車過失40%としている。これに対して、という人はまあまあ多い。これってある意味ではこの件にも通じるのかなと思ってまして、この件はこの...

要は民事判例って、いかに自分に有利に、相手に不利になるように主張するかが1つのポイント。
主張してないことは裁判所は判断しません。
まあ、「お前がクラクション鳴らしいれば、オレは直前横断を控えたはずだ!」というのも主張としてはいかがなものかと思ってしまいますが(笑)、現実的にそのように被害者遺族から主張かあり、裁判所が認めた判例はあります。
結局、相手の過失を増やしたいわけですから…そういう主張になる。

 

裁判の仕組みを理解してないと、判例の意味もわからないですよね。
そして過失割合なんて所詮は結果論。
それぞれの視点で何をすべきだったか考えないと意味がないし、クルマは横断歩道で減速する、自転車は横断する際には左右を確認する。
シンプルにそれだけの話なのよ。

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