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ひょっこり自転車と事故になった場合、「過失割合」はどうなる?

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先日も書いた件ですが、自転車に乗ってひょっこりを繰り返した男が逮捕(道路交通法違反)されました。
妨害運転罪の前科があるのに、再犯とは…

自転車ひょっこり男の逮捕。彼は妨害運転罪の判例を作りたいのか?
先月上旬から「自転車ひょっこり」の目撃情報が多数寄せられて報道されてましたが、千葉県警は道路交通法違反の容疑で逮捕しました。 千葉県柏市で自転車で走行しながら対向車線の車の前に飛び出したとして、36歳の男が逮捕されました。柏市周辺では「ひょ...

前回の判決文はこちら。

(量刑の事情)
まず,自転車による妨害運転の各犯行についてみると,被告人は,自転車を運転中,自動車の通行を妨害する目的で,急転把して後続車両の直前に自車を進出させたり,車道の中央線上に進出して対向車両に自車を接近させたりしたもので,重大な交通事故を引き起こしかねない危険で悪質な犯行である。犯行の動機は,自動車の運転者に嫌がらせをすることによる快感を味わいたいなどというもので,身勝手極まりない。

 

令和3年5月17日  さいたま地方裁判所

ところで、いきなり「ひょっこり」と対向車線に飛び出す行為を繰り返してますが、全て事故には至っていない。
もし「故意ひょっこり」でこの人がケガをした場合、過失割合はどうなると思いますか?

これですが、いわゆる当たり屋行為/故意に起こした事故とみなされるのでひょっこりさんが100%になります。
要は「過失」による事故ではないので、100:0案件です。

 

今回のように何度も同じプレイを繰り返し、しかも過去に同様の事件で有罪にもなっているので今さら「安全不確認で横断してしまいました!過失です!」にはならないでしょう。
対向車を妨害する目的で対向車線に進出し、事故が起きたなら誰が責任を負うかは言うまでもない。

 

煽り運転による民事責任としては、このような判例もあります。

本件事故について、故意に道路交通法違反の運転等をした原告が、被告の道路交通法違反の過失責任を問うことは、信義則上、許されない

名古屋地裁 平成28年1月22日

煽り運転を行った原告が煽り運転の被害者に損害賠償請求した事件ですが、第3車線を通行していた被告車の後ろで原告が蛇行やハイビームを繰り返し、被告が第3車線→第2車線に進路変更して原告車に進路を開けた。
しかし原告は第3車線→第1車線に進路変更し、さらに追い越しして被告車の前方に割り込み急ブレーキ。

まあ、こんなプレイを繰り返す人はめったにいないし、一般的には当たり屋行為や故意に起こした事故の立証は難しいですが、当たり屋さんが故意に起こした事故だとして加害者無過失にした判例なんていくらでもある気がする。

 

○刑事事件(被害者が当たり屋だとし無罪に)

過失運転致傷罪で有罪判決後、被害者が当たり屋と判明し再審無罪に。
こういう事件はきちんと検証すべきと思う。 仙台市泉区で人身事故を起こしたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)で罰金50万円の略式命令が確定した同市宮城野区の40歳代の男性会社員について、仙台簡裁が再審無罪を言い渡したことがわ...
自転車横断帯を横断する自転車は、当たり屋になれるのか?
だいぶ前に、横断歩道を横断した自転車と車の事故について、当たり屋の可能性を否定できないとして無罪(過失運転傷害)にした報道を引用しました。 判決などによると、昨年8月、和歌山市内の交差点手前の停止線で、女性が一時停止をした後に左折をしようと...

○民事事件(被害者が故意に起こした事故として無過失に)

故意に事故を起こしたとみなされた場合の過失割合。
自転車による当たり屋事案は時々聞きますが、当たり屋事案は立証が難しい。 けど時々、被害者が故意に起こした事故だとして加害者側が免責になることがあります。 自転車が故意に起こした事故 判例は名古屋地裁 令和3年11月8日。 道路外に左折したク...

相手が当たり屋だろうとやるべき義務は変わらないので、速度/交通法規を遵守し、前方注視していれば問題ない。
やるべきことをきちんとした上で相手が故意に起こした事故なら、無過失が基本。

 

その意味では、やるべきことをきちんとやっていたらあとは相手の問題。
相手がどうのこうのの前に自分がやるべきことをきちんとやればいいし、やるべきことをやっていても防げない「故意に引き起こされた事故」についてまで責任を負うわけではないですが、当たり屋事案は立証が難しい。

 

まあ、事故にならない範囲でひょっこりを繰り返していた様子ですが、反省して再犯しないようになるのかは疑問が残ります。

コメント

  1. shtakah より:

     故意の不法行為については,roadbikenavi様ご指摘のように,過失相殺を認めない判決が多いようです。ただし,故意の不法行為であっても,被害者の過失が相当程度以上ある事案については,過失相殺を認めた下級審判決が相当数あります。例えば,ねずみ講などのマルチ商法に関する事案で被害者が少し注意を払えば問題のある取引であることに気付くことができたようなケースについての下級審判決や,被害者の言動が加害者の暴行を招いたようなケースについての下級審判決です。まず,マルチ商法に関する下級審判決としては,広島高判昭和61年10月23日判例時報1218号83頁(ねずみ講の事案について,被害者が加入したことについては責められるべき点があり,軽率のそしりを免れないとして,4割の過失相殺を認めたもの),山形地判平成元年12月26日判例タイムズ730号159頁(山形国債ねずみ講(国利民福の会)の事案について,被害者はいわゆるねずみ講の一種であることを容易に認識することができたなどとして,5割の過失相殺を認めたもの)等があります。次に,被害者の言動が加害者の暴行を招いた事案についての下級審判決としては,横浜地川崎支判平成30年11月22日労働判例1208号60頁(従業員が事業所内で他の従業員に暴行を加えて負傷させたという事案について,本件暴行は被害者の加害者を貶める発言等によって誘発されたと認められるとして,3割の過失相殺を認めたもの),,東京高判平成8年6月26日判例タイムズ941号231頁(加害者(28歳で空手初段)が,駅のプラットホームで喫煙していた被害者(57歳の男性)の左肩当たりを小突いて注意したところ,被害者が文句を言いながら近付いてきたので,被害者がつかみかかってくるように感じて,咄嗟に回し蹴りをして被害者を転倒させ死亡させたという事案について,2割の過失割合を認めたもの),東京地判平成2年3月20日判例タイムズ733号132頁(パブ店員(身長170センチメートルでボディービルディングを習っている青年)が,酩酊して来店し女性客に絡むなどした男性客(身長159センチメートルで51歳)の左手首をつかみ店舗前の歩道に勢いよく引っ張り出し,石柱に前額部付近を衝突させるとともに,その場に転倒させて,死亡に至らせたという事案について,客の粗野な言辞,挑発,受傷後の診療拒否を考慮して5割の過失相殺を認めたもの),大阪地判昭和63年6月30日交通事故民事裁判例集21巻3号687頁(8月の深夜に被害者(19歳)らのグループと加害者らのグループとが喧嘩した後,発進しようとした加害車両(普通乗用自動車)のトランク上に被害者が飛び乗り,屋根によじ登って,しがみついたところ,加害者は,発進後間もなくそのことをに気付いたが,あえて高速運行を継続し,被害者が加害車両を蹴り回すなどしてフロントガラスを蹴破ったことに腹を立てて,被害者を加害車両から振り落とそうと決意し,未必的な殺意をもって,約90メートルにわたり,時速約40キロメートルでジグザグ運転,急停止,急発進を繰り返し,被害者を屋根から路上に転落させて脳挫傷等の傷害により死亡させたという事案について,事故の発生について被害者にも過失があったことは明らかとして,過失相殺により損害額の4割を減額したもの)などがあります。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      このように過失相殺した事例があることは知ってますが、ひょっこり事案とは事案が異なる(反ひょっこり側に非があるわけではない)ので、意味が違うのではないかと思われますが…

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