読者様から質問を頂いたのですが、
これは割り込み禁止(32条)に該当するのでしょうか?
先日の割り込みの話はこちらですが、
わざわざクルマが前に出る必要性がないように思うし、道義的にはいかがなものかと思うけど、割り込み禁止(32条)には該当しません。
理由は先日の話とは別です。
Contents
割り込み禁止違反
要は割り込み禁止違反(32条)でいう割り込みとはこういう話。
第三十二条 車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追いついたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切つてはならない。
「割り込む」とは
前方にある車両等の狭い間隙にしいて進入することであるが、最前端にある車両等の直前に進入することも含まれる。割込み車両の車体全部が進入しなくても一部が進入すればよい。しいて進入する行為であるから、割り込まれる車両等の前方に、割込み車両が進出できるじゅうぶんな余地があるときは、割込みにはあたらない(法総研111ページ、同旨 交法研115ページ、横井・木宮161ページ、宮崎161ページ)。
東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
で。
この動画が「割り込み禁止」に該当しない理由ですが、理由は上記とはあまり関係ありません。
先に断っておきますが動画に写っている範囲のみで書きます(動画以前の話はしません)。
自転車は路側帯、クルマは車道を通行してます。
法律上は「一時停止」(法令による停止)のために減速している自転車に「追いついたとき」で、追い付いてから「その前方にある車両等の側方を通過」が要件。
もうここまで書けばわかるかと思うけど、16条1項、17条4項カッコ書きから、車道と路側帯の区別がある道路では「車道で追い付いた」「車道上を通行する車両の側方を通過した」じゃないと要件を満たさないので、これは追い越しでもなければ追い抜きでもなく、路側帯/車道という別の通行区分を通行する関係でしかないのよ。
法第三章の各条文は、前述のとおり、すべて「道路において」と読みたして解釈しなければならないが、その道路が歩道等と車道の区別のされている道路であるときは、さらに法17条4項の規定により法51条の15までの各条文については「車道」と読みかえて解釈しなければならない。
道路交通執務研究会 編著、野下文生 原著、「執務資料道路交通法解説(18訂版)」、東京法令出版、p180
第十六条 道路における車両及び路面電車の交通方法については、この章の定めるところによる。
第十七条
4 道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)
歩道や路側帯を通行する自転車に対し、車道を通行する車両が側方通過しても「違う通行区分同士の関係」でしかない。
なので「車道上で追い付いて車道上で側方通過した」に該当しないため、最終的にこのようになったとしても割り込み禁止違反にはならない。
追い越しの定義(法2条1項21号)にしても、①追い付く、②進路を変える、③側方通過、④前方に出る、までが道路(歩道又は路側帯がある場合は車道)で行われて初めて道路交通法上の追い越しになるので、路側帯と車道の関係性では成り立ちません。
なので
このクルマが路側帯に入ったのは対向車とすれ違うためには仕方ない話なので(仮に自転車より前に出なかったとしても、対向車とすれ違うためにはどのみち路側帯に一部進入せざるを得ない)、それを違反とみなすことはできませんが、道義的にはこの状況でわざわざクルマが前に出ないほうがいいでしょうね。
こういうのを見ていて思うのは、仮にそれが違反にならないにしても、相手の立場に立って考えれば不快に感じさせるプレイは避けるべきという当たり前の論理でしかない気がしますが、自転車に乗っているときには歩行者やクルマの視点に立ち、クルマに乗っているときは歩行者や自転車の立場に立って考えることも必要なのではないでしょうか。
なお、改正道路交通法で新設された18条3項については、「歩道等又は自転車道を通行しているものを除く」ではなく、「歩道又は自転車道を通行しているものを除く」なので路側帯を通行する自転車や特定小型原付に対しても義務を免れません。
一方、新設18条4項では「道路の」とあるため、「道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道)」と読み替えます。
3項では路側帯を通行する自転車や特定小型原付に対しても安全側方間隔又は安全速度を義務付けし、路側帯を通行する自転車や特定小型原付に対しては路側帯の中でさらに左側端に寄れというルールにはしていない。
警察庁交通局長が説明しているように、新設18条4項は既に道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道)の左側端に寄って通行している自転車に対してさらに義務を加重したものではない。
18条にあるんですけども、「当該特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄つて通行しなければならない」とあるんですけども、「できる限り」という表現が曖昧なような気がするんです。
・早川交通局長
自転車の側方を自動車が通過する場合の義務に関する規定についてのご質問でありますが、先ほどお答え申し上げた通り、元々自転車は車道の左側端を走行しなければならないという規定がございます。自動車が側方を通過する際は、自転車は元々車道の左側端を走行しておるのですが、可能な範囲で左側端を走行してくださいということで、本来元々左側端を走行しているのであればそれで十分であるという規定の趣旨であります。
しかし、道路交通法って分かりにくいよね。
法規上は問題ないにしろ、すべきではない行動なんていくらでもある気がしますが、自転車は路側帯や歩道を通行できる分、解釈がややこしい。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
車両のうち特例特定小型原動機付自転車及び軽車両(道路交通法17条の3(特例特定小型原動機付自転車等の路側帯通行)ご参照。)を除くものが路側帯を通行することができるのは,同法17条(通行区分)1項ただし書きに規定する場合(「道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき」又は「第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し,若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するとき」)だけであり,このただし書きが規定する場合には,同法10条(通行区分)1項ただし書きに定める場合(道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないとき)や同条2項2号に定める場合(道路工事等のため歩道等を通行することができないとき,その他やむを得ないとき)に相当するような場合は含まれていません。よって,自動車が対向車とすれ違うためにやむを得ず路側帯を通行するのことは(少なくとも形式的には)同法17条1項の違反になるのではないかと思われます(もっとも,自動車がそのように路側帯を通行したことによって当該路側帯を通行中の歩行者を負傷させたといったような場合を除き,実際上は,警察の取締まりの対象とはされないでしょうが。)。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り条文上の除外規定はありません。しかし物理的にすれ違いが不可能な以上、仕方ない(そもそも一方通行にするなど対応すべき)と思います。
難しく考える事が苦手なんですけど、道路を使うときに「みんな仲良く」すればいいだけだと思います。
無理に追い越すとか、割り込みとかしないに越したことないし、そう感じてからって仕返ししようとか、「優先権」や「正義感」あるいは「正当性」を盾に意地でも抵抗するとか、教育を受けた先進国の住人とは言えないと思います。
法律や規制は不備だらけで、時に冷酷で厳しく、理解が難しいですが、必要だからあるにせよ、道路上で意地や闘争心は必要ないと思います。
コメントありがとうございます。
最終的にはそこでしょうね。
他人の立場で考えればわかる話。