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わざわざ反対側に渡って「自転車横断帯を通行せよ」という意味ではない。

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以前、このようなケースにて自転車横断帯を通行する義務があるか?について解説してますが、

直進すりゃ済む話だけど、63条の7をみるとこれが正解なんじゃないかという話。

(交差点における自転車の通行方法)
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。
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そのような趣旨ではないはず

確かに63条の7をみると、交差点を通行する際に自転車横断帯があるときには、自転車横断帯を通行せよとする。
そのまま読めば、これが正解なんじゃないかと。

これについては、以前「歩行者の規定」の解釈を理由にわざわざ迂回するようなプレイは求めていないと説明しました。
どういうことかというと、歩行者は「付近に」横断歩道があるときは横断歩道を使って渡れと規定している。

(横断の方法)
第十二条 歩行者等は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。

この規定は凄く分かりにくいのですが、例えばこれ。

「付近」に横断歩道があるのに横断歩道を使わずに横断したから違反!とはならないのよ。
なぜなら、①方向に歩行者が進行する場合に、横断歩道を使わなければ横断回数は1回、横断歩道を使うと横断回数は3回になる。

横断という行為には危険性が伴うので、横断回数を最小限に抑える意味で「付近」に該当するか考えるのだと解釈されてます。
条文からは全く読み取れませんが…笑

 

実際の判例から確認しましょう。
判例は名古屋地裁 平成21年9月11日。
事故の態様です。

歩行者と右折車の衝突事故になります。
北側の横断歩道までは25m、南側の横断歩道までは20m。
どちらも距離としては「横断歩道の付近」になりますが、北側の横断歩道を基準にすると「道路交通法上は横断歩道の付近には該当しない」ことになる。

本件現場は、道路交通法12条1項にいう「横断歩道のある場所の附近」に該当するといえる(なお、北側の横断歩道は、被害者が南北道路を横断する前にいた南北道路の東側の歩道から西側の歩道に向かう横断歩道であるという点では、歩行者が横断しようとする道路にある横断歩道であるかのようであるが、本件現場が本件丁字路交差点の南側にあり、北側の交差点が本件丁字路交差点の北側にあることから、北側の横断歩道を横断すると、被害者が南北道路を横断して向かおうとしていた南北道路の西側とは、東西道路をはさんで反対側(東西道路の北側)に出てしまう(そこから三原市役所の駐車場に行くには、今度は東西道路の横断歩道を横断しなければならない。)のであるから、横断しようとする道路にある横断歩道には該当しないというべきであり、北側の横断歩道のみを基準にした場合は、本件事故現場は、道路交通法12条1項にいう「横断歩道のある場所の附近」に該当しないというべきである。)。したがって、本件事故現場において南北道路を横断しようとした被害者は、道路交通法12条1項の定める横断方法に違反した過失があるといえる。

 

名古屋地裁 平成21年9月11日

この歩行者は東西道路南側にある駐車場に行くために横断したわけ。
南側横断歩道を使う場合、横断回数は1回。

ところが北側横断歩道を使う場合、横断回数は2回になる。

あくまでも「横断歩道の付近」に該当するかについては、横断回数を最小限に抑える意味で捉えるとしている。
その趣旨から考えれば、わざわざこんなプレイを求めているとは到底思えない。

普通に直進すりゃ済むのだから。

ところでご意見を頂きました。

あまり深く考えなくても

読者様
読者様
1年越しのコメント失礼します。制定当時の警察庁の解説や交通ルール(軽車両は右側部分の路側帯も通行できたこと)も踏まえて記事にされていて、条文を読んだだけの私の解釈と比べて説得力が63.7倍くらいあると感じました。素晴らしい記事をありがとうございます。
特に「自転車横断帯の規定が作られた昭和53年時点では路側帯の右側通行は違反ではなかった」という事実は目から鱗でした。ただ、ずっと引っかかっている点がございまして……

この記事では、道路を横断しようとする歩行者と横断歩道の関係を自転車と自転車横断帯の関係においても準用して「交差点の反対側にまで移動する義務はない」ことの根拠の一つとしていますが、第63条の7第1項による自転車横断帯通行義務は道路横断時(第63条の6)以外での交差点の通行方法を定めたものであり、「横断」回数が増えることをもって「交差点の反対側にまで移動する義務はない」ということはできるのか、という点で腑に落ちきれずにいます。

たぶんなんですが、自転車横断帯のルールってわりと不完全なんだと思う。
上で説明した理屈は「付近該当性」について歩行者のルールを流用してますが、

これは「交差点の付近」ではなく「交差点に自転車横断帯がある場合」だろ!と言われてしまうとなかなかツラい。

(交差点における自転車の通行方法)
第六十三条の七 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項、第三十四条第一項及び第三項並びに第三十五条の二の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。

で。
あえていうなら、道路交通法の理念は「安全と円滑」。
わざわざ3回も「横断」して迂回するプレイは、安全でもなければ円滑でもないのよね。

全ての通行者にとってメリットがない。
クルマからすると自転車の横断の度に一時停止義務が生じ、自転車からしても直進すりゃ一瞬で完了するのにわざわざ3回も横断して危険性を高める理由がない。

 

これを法律のバグとみるか、歩行者のルールから「付近該当性」の概念を流用するかは悩みますが、条文にこだわりすぎるとワケわからんのよ。

 

条文にこだわりすぎると意味がわからなくなる事例として、高松高裁 昭和27年3月29日判決があります。
この判例は小学校の校庭を「道路」と認定し、無免許運転罪の成立を認めたもの。

 

校庭が道路なら、運動会を開くのに道路使用許可が必要になる。
この解釈の矛盾について、東京地検交通部はこのように説明する。

横井・木宮氏や法総研は、学校の校庭などを道路と認めると、77条(道路使用許可)なども適用しなければならなくなり不合理であるということなどを根拠に道路性を否定しているが、もともと、学校の校庭や工場の敷地などは一般交通の用に供する場所として設けられたものではなく、道路としての形態も備えていない。したがって、そのような場所で運動会を行ったり、工事をしたり、工作物を設ける場合に使用の方法や形態などについて警察署長の許可を得なくても道路交通の安全や円滑を損なうおそれはなく、77条の適用などはその必要がない
これに反し、64条(無免許運転の禁止)や65条(酒気帯び運転などの禁止)の規定などは、当該場所が現に公衆の通行の用に供されている以上その交通の安全を図るためにその適用が必要とされるのである。
かように、道路交通法の目的・諸規定の立法趣旨にたちかえって考えれば、道路交通法の道路と認定された場所について、ある規定が適用され、ある規定が適用されないという結果が生じても不都合ではない。

東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974

条文上は除外規定がないから道路使用許可が必要になりそうだけど、立法趣旨から考えれば全てのルールを適用する必要がないだろとする。
自転車横断帯にこれを当てはめるのはやや無理筋ですが、

誰にとってもメリットがなく、事故リスクはむしろ上がる。
たまたま条文上はこのように通行する義務があるように取れるけど、法の趣旨からは合わないし直進すりゃ済むのよね。
道路交通法は条文通りに解釈すると、時にテロが起きてしまう。
ある程度、裏メニュー的な明文化されてないものがあると考えればいいのかも。

コメント

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