なかなか不思議な質問を頂いたのですが、
ちょっと気になりまして。
まず、自転車にも最高速度遵守義務があり罰則もあるので、理屈の上では22条1項に違反すれば検挙対象。
第二十二条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。
ただし、自転車については政令で定める最高速度が規定されてないため、自転車の最高速度超過罪は「速度標識がある道路」に限定されます。
Contents
自転車の速度超過は検挙困難
最高速度超過罪は故意犯と過失犯の処罰規定がありますが、要は故意犯って「40キロの速度標識があることを知りながら、50キロで通行した」みたいな話。
つまり、時速50キロで通行していることを認識している必要がありますが、スピードメーターがない自転車は自分が何キロで通行しているか知りようがないのよね。
誰がみても明らかにスピードが出すぎているなら別ですが、そもそも自転車ではそんなスピードは出せない。
過失犯については、例えば「40キロの速度標識を見落とした過失により、時速50キロで通行した」みたいな話。
どちらにせよスピードメーターがない自転車に適用することは困難ですが、一応このような判例もあります。
弁護人は、被告人は本件車両の速度計に故障の存することは思いもよらず、その指示するところに従い最高速度を遵守しつつ運行したもので、右車両は中古車とは言い条、購入後まもない車であるから被告人が右速度計に故障がないものと信じたのは無理からぬことで、それ以上に運転感覚等により最高速度遵守の注意義務を被告人に要求するのは難きを強いるもので、ひつ竟、被告人の本件所為には所謂期待可能性がなく、被告人は無罪である、と主張する。
(中略)
被告人の如き経験を有する自動車運転者としてはその速度計の指示針の振れ(4乃至5キロもあつたことが認められる)に当面してその故障に思いを致し、これのみに依存せず、過去の経験により自ら収得した運転感覚(スピード感覚)等により最高速度以下に減速運行すべき注意義務があるものと言うべきで、かかる注意義務を要求しても一般の経験則上不能を強いるものとも認められないし、又他に所謂期待可能性の不存在を肯認すべき証拠もない。結局弁護人の右主張は理由がない。
広島簡裁 昭和39年5月18日
中古車のスピードメーターが壊れていたから無罪だと主張してますが、過去の運転経験によって得たスピード感覚により最高速度を遵守すべきとし、過失の最高速度遵守義務違反罪として有罪に。
道路交通法の過失犯は、具体的にいかなる過失があったか特定しないと成立しませんが、故障した速度計を過信した過失があったとしてます。
自動車運転者としては速度計のみに頼らず、自己の速度感覚、他車両との速度対比等により、法令に定められた最高速度40キロ毎時を超えないように注意しながら運転しなければならないのに、不注意にも故障した速度計を過信してその最高速度を超えたことに気付かず、漫然右最高速度を超える約49キロ毎時の速度で進行したものである。
広島簡裁 昭和39年5月18日
現実的には
自転車が速度超過で検挙される可能性はほとんどないに等しいですが、
思うに、検挙されるかされないかに重きを置くのは間違い。
40キロの速度標識がある道路は、それ以上の速度だと危険性があるからわざわざ規制しているわけで、指定最高速度を超過しても何もメリットがないんですね。
危険性とは自分自身の危険もそうだし、対歩行者事故リスクもそうだけど、自転車が歩行者に衝突したら両者無事ではない。
自転車でスピードが出るのは峠の下りとかですが、指定最高速度を超過する=自分の爆死率アップ。
何もメリットがなくデメリットしかないし、検挙されるかされないかを基準にすることに違和感。
自転車が下り坂で曲がりきれずに事故になる事例は毎年ニュースになりますが、その中には何らかの理由で制御不能に陥った事例もあるし、
ムリして上級生について走行した結果、事故ってしまった事例もある。
標識最高速度を遵守しないこともそうだけど、標識最高速度と自分が制御可能な速度はまた別なのよね。
標識最高速度が40キロだとしても、人によっては35キロでも危険な場合がある。
標識最高速度を越えない+自分が制御可能な速度を越えないことが大事なのではないでしょうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
【過去の経験により自ら収得した運転感覚(スピード感覚)等により最高速度以下に減速運行すべき注意義務があるものと言うべき】
これだと、我々ロードバイク乗りは、違反したときにスピードメーターが付いてない自転車だったとしても、「被告人は、スピードメーターが付いたロードバイクを常用しており、運転感覚で速度を判断することも可能」とか言われそうで怖いですね。
コメントありがとうございます。
著しい速度超過じゃないとムリかと。
あと、この判例は疑問視する声もあります笑
疑問視する声もあるのですね。
まぁ、60年前なので、車のスピードメーターだけでなく、警察のスピード違反を見る計器も今ほどは正確でなかったと思います。
更に、今なら、有罪となったこの被告の人は、このクルマを売った中古車屋さんに損害賠償を求める訴訟をしそうです。
コメントありがとうございます。
一応はスピードメーターを信じたワケなので、錯誤なんですよね。そこを処罰する理由があるかは疑問です。
コメント失礼します。
個人的には峠の下りを爆速で走るロードバイクはビシバシ取り締まってほしいです。
制限速度30キロの下りで50キロ以上出している(と思われる)ロードバイクは多いですし、そんな猛スピードのロードバイクにいきなり追い越されて恐怖を感じたことも何回もあります。
現実的には難しいのかもしれませんが、下りでとばす人って、なぜか『自分だけは事故しない』とか『死なない』って盲信してる人が多いし、それで自分だけが事故るなら仕方ないけど、まわりを危険にさらすこともあるので、危険なロードバイク乗りはドンドン取り締まってほしいです。
コメントありがとうございます。
取締はあんまり現実的じゃないんですよね…
速度超過については、メーター付いてる車ですら遵守しているケースが皆無と思えますね。制御できない速度は怖いのでバカみたいな速度は出しませんが、それでも速度指定が40kmあたりのダウンヒルとかだと余裕で超えてしまいます。にも関わらず、後ろから追い付かれるどころか、クラクションとか鳴らされますからね。以前、自動車乗りに聞いた時は、流れに乗るのが正しいので、速度制限守るのは阿呆だよ、と言う回答が返ってきましたね。
コメントありがとうございます。
自転車は下りでぐんぐんスピードが上がるので、結構危ないんですよね。
なにはともあれ事故らないように…としか言えません。