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自転車が並走中に衝突して事故。しかしウソをついていた…

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ちょっと思うところがありまして。

名古屋市東区で23日夕方、並走していた自転車同士が衝突し、58歳の男性が意識不明の重体です。

警察によりますと23日午後6時ごろ東区東大曽町の道路で、西区に住む会社員・宝尺正浩さん(58)と知人の57歳の女性が自転車で一緒に走っていたところ、衝突しました。

この事故で自転車を運転していた宝尺さんが頭などを強く打って、病院に搬送されましたが、意識不明の重体です。女性にケガはありませんでした。

事故の目撃者が消防に通報しましたが、一緒にいた知人女性は消防の聞き取りに「自転車から降りて歩いていました」と説明したため、消防は警察に通報していませんでした。

ところがその後、女性は午後9時半ごろ、並走して事故が起きたと交番に届け出たということです。2人は女性の東区の自宅へ向かう途中でした

女性は「自転車にぶつかったことは間違いありません」と説明していて警察が詳しく調べています。

知人女性と一緒に並走中…自転車同士が衝突し58歳男性が意識不明の重体 相手の57歳女性の家に向かう途中 | 東海テレビNEWS
『知人女性と一緒に並走中…自転車同士が衝突し58歳男性が意識不明の重体 相手の57歳女性の家に向かう途中』

並走中の衝突で意識不明の重体という状況がイマイチわかりませんが、一応はこれ事故報告義務違反(72条1項後段)に問われる可能性あり。
「自転車から降りて押していた」だと歩行者扱いなので救護義務/報告義務はありませんが、乗っていたなら車両の運転者ですから…

(交通事故の場合の措置)
第七十二条
(前段省略)
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない

まあ、構成要件に合致したから可罰的なのかは別問題なので、思い直して報告したのはまだいいほうとも言えますが…

 

ところでこちらに書いた件。

横断歩道を通過した直後も横断歩行者に注意すべきか?
読者様から38条2項と対向車の関係について質問を頂いたのですが、それとはちょっと別の件を挙げてみます。 横断歩道を通過した直後の注意義務 今回は民事判例です。 事故の態様はこんなイメージ。 加害者は交差点を左折。 被害者は6才で、横断歩道付...
読者様
読者様
歩道では並走が違反にならないとの見解を書いてますけど、19条には車道のみと書いてないからそもそもおかしな見解なのではないでしょうか。

これは以前書いたけど、執務資料(野下解説)にて「歩道では並走が違反にならない」とする根拠はこれ。
まず19条を読みましょう。

(軽車両の並進の禁止)
第十九条 軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。

確かに歩道とか車道とか書いてない。
ここが落とし穴で、16条1項にこうある。

(通則)
第十六条 道路における車両及び路面電車の交通方法については、この章の定めるところによる

「この章」とは当然「哀川翔」のことを指します。

 

 

…クソつまんないですね。
道路の通行方法を哀川翔が決めちゃまずい。
「この章」とは16条~63条の11のこと。

 

そして17条4項にこれがある。

(通行区分)
第十七条
4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。以下略

第九節の二(17条4項~51条の16)までは、歩道等と車道の区別があるときは車道を意味するとしている。

 

これらを踏まえて19条を読むと、以下を付け足し読み替える。

(軽車両の並進の禁止)
第十九条 軽車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。)において軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。

16条1項/17条4項を踏まえて読めば、歩道では並走が違反にならないことになりますが、警察庁はこの見解を否定している。

歩道・路側帯での並進行為には本条(法19条)は適用されないとの見解(野下解説)もあるが、警察庁は、歩道・路側帯でも本条が適用されるとの見解をとっている。

 

シグナル、「普及版 道路交通法」、第26版、令和元年12月、p42

日弁連の赤い本なんかは執務資料の見解を採用しているし、警察庁の見解もあてにならないけど、昭和39年に新設された並進禁止の解釈っていまだ割れてんのよ笑。

自転車が「歩道」で並走して違反になるか?解説書と警察庁の見解から。
ちょっと前に書いたこちら。 まとめておきます。 歩道での並進を推進する立場ではなく、あくまでも法解釈の話として捉えてください。 自転車の並走と解釈 いくつかの解説書に書いてある見解のおさらいから。 自転車の並走は19条で規制されています。 ...

並走することで63条の4(歩道の中央から車道寄り)に違反するというならまだわかるけど、この話は実はややこしい。
まあ、報道の事故とは関係ありませんが。

 

そもそも、仮に歩道で並進禁止規定が適用されないと仮定しても、事故が起きれば並進が過失になりうるわけでして。
その意味では厳格に解釈する必要がない気もする。

 

ところで、昭和39年に並進禁止規定を新設した際の資料には、立法理由の一つに「並進により自転車同士の接触事故事例がある」みたいな話もあります。
どのくらい起きたのかはわかりませんが、このあたりの改正経緯は以前から書いているように、なかなか興味深い。
並走して接触し意識不明の重体になるのも不可解ですが、「自転車同士の事故」なのか、「自転車対歩行者の事故」なのかで民事責任は変わるし、知人ならなおさらウソはつかないほうが良かったですね。

 

まあ、思い直して報告しただけマシなんですが。

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