先日のこちら。

なかなか凄い根拠を探してくる人もいるんだなと思いましたが、
調べてみたら解説書の交差点の定義のところで「道路から路側帯を除いた車道の交わる部分をいうものと解される」とありました。 pic.twitter.com/TXKawZfTii
— 鈴木貫太郎 (@toro24f) November 10, 2024
これは木宮・岩井著の「詳解道路交通法」ですね。
なぜわかるかというと、持っているので文面の特徴からすぐにわかりました。
で。
条文上は歩道を除外しているだけで路側帯を除外していないので、条文にない除外解釈をするには根拠が必要。
例えば最高裁昭和43年7月16日判決は、当時の42条(徐行)について、条文には書いてないけど優先道路通行車と広路車除外を認めましたが、判決の中でその根拠/理由は述べている。
条文にない除外をするなら根拠が必要ですが、何の理由も示さずに「含まないと解する」としているだけの記述だと単なる私見止まりなのよね…
そして他の解説書がどうしているかというと、東京地方検察庁は「路側帯も交差点に含まれる」とし
法2条1項5号の規定により路側帯は交差点に含まれる(1.3-図4)
東京地方検察庁交通部研究会、最新道路交通法事典、東京法令出版、1974、9ページ
執務資料も同様だし、警察庁交通企画課も実例判例集でこれを挙げているわけで、
路側帯が設けられている道路においては、路側帯を含めた道路が交わる部分を交差点という
東京高裁 昭和60年3月18日(刑事)
さらにいうと、判例タイムズ284号「道交法の解釈 交差点の意義と範囲」にはこのように書いてある。
交差点とは、十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路の交わる部分である(道交法二条五号)。そして歩道と車道の区別のある道路においては車道の交わる部分をいい(道交法二条五号かっこ内の部分、歩車道の区別がある道路とその区別がない道路が交わる場合について高松高判 昭和40・5・11下刑集7・5・789)、路側帯が設けられている道路においては、路側帯の部分を含めて道路の交わる部分をいう(警視庁交通部・実務のための道路交通法逐条解説上巻12頁)。
「道交法の解釈 交差点の意義と範囲」、竹重誠夫(東京地裁判事)、判例タイムズ284号、1973
警視庁の逐条解説も「路側帯も交差点に含む」とし、東京地裁判事も引用している。
東京地検、警察庁、警視庁、東京高裁、東京地裁判事は条文通りに「路側帯も交差点に含まれる」としているので、何の理由も示さずに書いてある詳解道路交通法を引用しても意味がないのよね…
その木宮氏がその判断に至った根拠が書いてあるならまだしも、理由すら示されてないので検討に値しないかと。
司法(裁判所)が条文通りに判断したのですから、根拠不明な私見ではだいぶ弱いというよりも検討に値しない。
その判断に至った特別な理由書いてあるなら検討の余地はありますが…
まあ、言った通りになりましたよね。
結局は認めないために必死になにか探し出すのがこの人のオチ。
条文上「歩道のみ」を除外しているので、歩道のみが交差点の範囲から除外だと解釈するのは当たり前ですし、検察庁や警察庁、裁判所もその条文通りに解釈してますが、そのような状況で異論を出すなら根拠が必要なのよね。
そして路側帯を「交差点ではない」と解釈した場合、
路側帯を通行してまっすぐ進む自転車は「交差点において直進しようとする車両」に当てはまらなくなり(路側帯から路側帯への「横断」と解することになる)、他の車両との関係で37条や36条の優先権を主張できなくなりますが、彼はそのようなことまで考えているのだろうか?

根拠不明の私見を頑張って探してきても、司法や行政はそうは考えてないので…
しかもこの人、違法になるか?の問題と、取り締まり対象か?(現場の裁量の問題)を混同させているので、話にならないのよね。
「車両通行帯の公安委員会指定は道路交通法外」と主張し最高裁判例すら認めない姿勢だった人ですからね笑。
ところで木宮氏が主張した内容の根拠ってなんなのだろ?
単に誤記で真逆の意味に書き間違えただけなんじゃないかとすら思いましたが…何せ警視庁や警察庁が「路側帯も交差点」と発表していて、条文通りに読めばそりゃそうだなと誰しもが納得するところ、なぜか木宮氏のみが何の理由も示さずに「路側帯は除外です!」と書いているので…
警察が「路側帯も交差点に含まれる」とし高裁も同様の見解なので、信号無視として検挙されるリスクが普通にあり、裁判で争っても全く勝ち目がないに等しいレベルとも言えますが(なにせ条文通りに読めば路側帯も交差点の一部ですし)、彼は一体何と闘っているのだろう?
なお「実務のための道路交通法逐条解説(警視庁交通部)」は入手困難ですが、判例タイムズ284号は今も買えます。
2000円くらいだったはず。
ちなみに以前読者様から頂いた情報で、メディアが流した内容が誤りだと指摘しましたが、

警察の公式見解に反する独自論なので、全員検挙されても文句言えないのよね…
これは警察にきちんと確認した話なのか、仮に警察に確認したなら警察もきちんと確認してから回答したのか疑問しかないけど、東京地検、警察庁、警視庁、東京高裁、東京地裁判事(判例タイムズ)、執務資料は「路側帯も交差点に含まれる」としてますね。
木宮氏のみが真逆という…普通に考えれば単なる書き間違えの可能性が高そう。
しかし、正統な見解より持論優先の人って、凄まじいよね。
条文上路側帯を除外していないので、路側帯除外説を唱えるなら相応の理由がないと無理筋だし、裁判所や行政(警察、検察)も路側帯を含むとしているので…なおさら路側帯除外説を唱えるならかなりムリがある。
仮に5号にカッコ書きがなく「歩道除外」と書いてなかったなら、歩道と路側帯は除外なのでは?という議論になりうるのですが、歩道のみが除外されている都合上、歩道のみが除外と解釈せざるを得ない。
そして彼が持論に反する見解(執務資料や東京地検、東京高裁判例など)を紹介するか無視するかで人間性すら問われますが、どっちを選ぶかでウッディと同等なのか、一味違うのかわかりますね笑。
ウッディも持論に都合がいい情報を切り抜きしてましたが、正論を紹介した上で異論も示す人と、異論のみを取り上げる人の差は人間性なんじゃないかな。
ちなみに「X」で道路交通法を理由にごちゃごちゃいう人たちを「道交法界隈」というらしいけど、どうも一部の人については「道交法を曲解しねじ曲げてから語る界隈」にしか見えないのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
木宮氏は100歳くらいなので無理でしょうが、岩井氏は80歳で現役弁護士みたいなので連絡してみたらこの件を聞けるかも?
ないかw
コメントありがとうございます。
判例タイムズが1973年(昭和48年)、路側帯の新設が昭和46年なので、警視庁交通部の見解は46~48に出ているはずです。
それを踏まえても、詳解道路交通法は単に書き間違えただけなんじゃないかと…
確かに文章にも少し違和感がありますよね
歩道と同じ結論になるなら「路側帯が設けられてる道路においては」より「おいても」となりそう
コメントありがとうございます。
詳解道路交通法は横井/木宮の註釈道路交通法(横井註釈)のリメイク版という形式になってますが、横井註釈は昭和46年改正以前に絶版になっています。
46年に路側帯が新設される以前は、歩道がない場合の車道外側線の外側はいったい何なのだ?という争いがあったらしく、車両の通行を禁止し歩行者のエリアとみる「歩道に近い存在」とみなす人と、条文上は道路なのだから車両の通行を禁止してないエリアという見解もあったようです。
これらの見解の相違から、路側帯新設後に木宮氏が記述のように捉えた可能性もありますが、註釈をみても横井/木宮氏がどう捉えていたかは明らかではなく、どちらにせよ46年改正後に警察が逐条解説で示しているわけで、単なる書き間違えなんじゃないかなと…
「車両通行帯の公安委員会指定は道路交通法外」とXで言われた者です。道交法の車両通行帯と標識令の車両通行帯は別という珍説に開いた方が塞がりませんでした。
コメントありがとうございます。
Toro24fさんは道路交通法の話をしているのではなく、道路交通法風に見せかけたファンタジーが多いので、ブロックしたほうが幸せですよ。