モペットの不適切使用が問題になってますが、一般原付や自動車に該当する車体なのにナンバー無し、自賠責保険未加入、交通ルール無視などやりたい放題ですよね。
この問題の根は深いですが、警察庁は事業者向けガイドラインを公開しました。
警察庁が事業者向けガイドラインを公開
ガイドラインはこちらです。
https://www.npa.go.jp/news/release/2024/guideline1108.pdf
14ページに渡るガイドラインですが、まとめてある軽量版がこちら。
https://www.npa.go.jp/news/release/2024/guideline.summary1108.pdf
まず、販売するときに車両区分の明示を求めている。
「自動車」なのか「一般原付」なのか「特定原付」なのか?
彼は一体何者なのかを販売する際に明らかにしろと。
そして免許が必要ならば販売時に運転免許の確認をし、保安基準や自賠責保険にも触れている。
要はこれ、今までもこういうアナウンスはしてきたけど、それらをまとめてガイドライン化したわけですね。
これらを踏まえ、ペダル付き電動バイク及びキックボード様の立ち乗り型電動車(以下「ペダル付き電動バイク等の電動モビリティ」という。)に関連する交通事故を抑止するため、販売事業者(ペダル付き電動バイク等の電動モビリティを販売することを業とする者をいう。以下同じ。)、プラットフォーム提供事業者(電子計算機を用いた情報処理により構築した場であって、販売事業者と購入者が売買契約の申込みをすることができるものを提供する事業者をいう。以下同じ。)、飲食物等の配送業務を委託する事業者等(以下「関係事業者」と総称する。)が取り組むべき交通安全対策について、ガイドラインとして示すものである。
販売事業者のみならず、いわゆる通販の場を提供するプラットフォーム事業者(Amazonや楽天など)、フーデリ事業者「等」にも向けている。
通販事業者に対しては、以前も商品説明にきちんと「車両区分」を明示するように求めていたのですが、要はこれらはガイドライン。
法は違法モペットの販売や所有を禁止しておらず、あくまでも「道路での使用」を道路交通法で禁止している。
なので「販売禁止」にもできないため、ガイドラインという苦肉の策しかないのよね。
ちょっと興味深いのはこちら。
(2) プラットフォーム提供事業者が取り組むべき交通安全対策
ア プラットフォームを利用する販売事業者等への働き掛けプラットフォーム提供事業者は、次の方法により、販売事業者によって前記(1)に掲げる交通安全対策が確実に実施されるよう取り組むこと。
〇 利用規約等において、販売事業者に対して、ペダル付き電動バイク等の電動モビリティを販売する場合に
・ 「一般原動機付自転車」といった車両区分
・ 運転免許を受けていることを確認できない者には販売しない旨を表示することを義務付けること。○ 利用規約等において、販売事業者に対して、販売前又は車体の引渡し前に、購入者が運転免許を受けていることを確認することを義務付けること。ただし、プラットフォーム提供事業者が、車体の引渡し前に、購入者が運転免許を受けていることを確認した場合にあっては、この限りでない*10。
〇 利用規約等において、販売事業者に対して、保安基準に適合していないペダル付き電動バイク等の電動モビリティを販売しないことを義務付けること。
○ 販売事業者による販売状況を定期的に確認し、誤った車両区分を表示して車体を販売している、運転免許の確認を適切に行わず車体を販売している、
保安基準に適合しない車体を販売しているなど、利用規約等に違反していると認められる場合には、販売事業者に違反の是正を求め、又はプラットフォーム提供事業者として違反の是正を行うこと。その上で、販売事業者による違反が是正されない場合には、当該販売事業者がプラットフォームを利用することができないよう、サービスの利用停止措置等の所要の措置を講ずること。
法は違法モペットの販売を禁止してないので、警察が販売に介入することはできない。
通販事業者(プラットフォーム提供事業者)の利用規約で違法モペットの販売禁止を義務付けすることを求めている。
利用規約でおかしなものを販売することを禁止にして締め出せとしてますが、最大の問題点はプラットフォーム事業者はその車体が違法なのかどうか判断することが必ずしもできないことにある気がする。
販売事業者が虚偽の説明を載せて合法モペットだと偽った場合には、景品表示法違反に問えるとはいえ、虚偽なのか本当なのかをプラットフォーム提供事業者が判断できるか?という話。
ガイドラインとして公開したことは評価しますが、実効性があるかは疑問。
というのも、ちょっと前に書いたこちら。
怪しい「電動アシスト自転車化キット」について自転車屋が発狂してますが、要はアシスト比率オーバーなら軽車両ではなく一般原付扱いになる。
販売事業者の回答をみる限り、
怪しすぎて草も生えない。
けど「合法デスYo」と主張する販売事業者に対し、プラットフォーム提供事業者は合法違法を判定する立場にないわけで、しかも合法違法を判定するノウハウがあるわけでもない。
そうするとプラットフォーム提供事業者は単なる板挟みでしかない。
警察庁「プラットフォーム事業者は違法モペットの販売禁止を規約に入れてな」
販売事業者「ボクは合法デス」
プラットフォーム事業者「…まいったな、俺たちは判定するノウハウがないし」
特定小型原付の目論見は失敗?
以前書いたけど、特定小型原付を導入した本当の理由は「違法モペットから合法特定小型原付への釣り」だと思ってまして。
保安基準も満たしてないし、免許持っているかも怪しい。
免許不要ヘルメット不要で合法なんだから、わざわざ違法モペットを買う人が減るのではないか?
特定小型原付として電動モビリティを再定義し、時速20キロ以下の車体で釣りにしよう。
ところが現状、この目論見がうまくいったかは謎。
しまいには特定小型原付自体が叩かれまくってズタボロですし。
一応警察庁や国土交通省は違法モペットの摘発に力を入れてまして、現場の警察官が調べようがない「車体の出力」についても国土交通省と連携して取り締まりするとしてますが、
これにしても具体的にどうしたのかよくわからない。
オランダは路上で合法違法を判定できるマシンを投入してますが、
日本ではたぶんこのようなものはない。
ガイドライン化することはいいんだけど、実効性がある話なのか机上の空論的な話なのかは疑問なのよ。
結局、販売規制する法律がないことが根底にあるので、ガイドラインが効果を上げるかは疑問。
以前から書いているように、特定小型原付は違法モペットから合法特定小型原付にシフトさせるための壮大な「釣り」だと思うのよね。
免許必須・ヘルメット必須で無免許ノーヘルだと検挙リスクがある違法モペットから、無免許ノーヘルで合法的に乗れる特定小型原付にユーザーの目を向けさせ、時速20キロまでの世界に封じ込めて秩序をコントロールしようとしたのかと。
しかし本格的なバカはそもそも違法モペットが違法だとわかってないから釣りにすらならないし、時速20キロまでの世界が魅力的に見えなければ違法モペットを選択してしまう。
特定小型原付のほうが値段的に高いという事情もあるのかもしれませんが(保安基準に適合させるためにコストが…)、違法モペットの販売や所持が違法ではない以上、いつまで経っても同じような状況に陥るのかもしれません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
電動キックボードが普及してから、
逆に、違法モペットが走ってるのが増えた気がします。(大阪です)
電動キックボードで、歩道で無茶する奴が増えたので、俺らも、前よりも目立たないか、と思ったのかもしれません。
コメントありがとうございます。
うーん、むしろ電動モビリティの普及になってしまったのでしょうか…
普及は良いことなのでしょうけど、
事業者と警察が、違反に対して厳しくしていかないと、
モラルの低下の拍車がかかるということなのでしょう。
もともと一般の自転車のモラルも低い。
コメントありがとうございます。
取り締まりは人的限界がありますが、そもそも政策の失敗なんですかね…