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道路交通法の義務違反だけど、注意義務違反にならないもの。

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先日の記事にご意見を頂いたのですが、

義務と注意義務の違いと、一時停止する必要があるか?
こちらで挙げた内容に質問を頂いたのですが、○「横断歩道又はその手前の直前で停止している車両等」とは進路前方に設けられた横断歩道上か自車から見てその手前で停止している車両等のことです。したがって停止車両等が自車線(複数の車線がある道路において...
読者様
読者様
いつも参考になる記事をありがとうございます。
ところで、大雑把なベン図「まあそうなるよね」と全く私も同意するところですが、よくよく考えると「道交法違反だけど注意義務違反ではないゾーン」って具体例が思い浮かびません(笑)
逆の「注意義務違反だけど道交法違反ではないゾーン」は枚挙に暇がありませんけどね

これの件。

道路交通法の義務違反 道路交通法に定めがない注意義務違反
事故の発生に関係なくプレイ単独で処罰の対象 注意義務を怠っても、事故が起きなければ罪にはならない

注意義務違反(過失)って「その注意義務を果たしていれば事故が起きなかった」に該当するものを指すので、自転車でいうならベル装置義務(道路交通法71条6号、公安委員会遵守事項)なんかは典型例じゃないですかね。

ベル未装備により他人が死ぬ、という事態が考えにくい。
仮に前回記事で挙げたように、「警音器を吹鳴すべき注意義務違反」が認められるケースがあったとしても、自転車ベルは音量が小さい上に「声」で代用できる。
森簡裁 昭和42年12月23日判決は、出前の岡持バイクを「安全運転義務違反」として起訴した事例ですが、検察官は「警音器を鳴らせない体制も安全運転義務違反の根拠」と主張。
しかし「声で代用可能」と裁判所が判断していることを考えると

警音器を使用することができなくとも、状況によつては声で知らせることもでき

森簡裁 昭和42年12月23日

自転車ベル未装備が道路交通法違反になるとしても、注意義務違反(過失)になる可能性はたぶん無い。
要は両者は別個の問題になる。

道路交通取締法が自動車を操縦する者に対し特定の義務を課しその違反に対して罰則を規定したのは行政的に道路交通の安全を確保せんとする趣旨に出たもので刑法211条に規定する業務上の注意義務とは別個の見地に立脚したものであるから道路交通取締法又は同法に基づく命令に違反した事実がないからといって被告人に過失がないとはいえない。

 

東京高裁 昭和32年3月26日

日本の道路交通は道路交通法の義務違反よりも過失(注意義務違反)を重視してきたと考えられますが、わりと明文化されてない注意義務違反を認定してきたのよね。
それこそ古い判例ですが、後退する際に付近に成人がいたら見張りを依頼すべき業務上の注意義務があったとしたものすらある。

運転補助者なく狭い三叉路において車体転換をし、つづいて後進をしようとすると、自動車を右折もしくは左折させ、停止させ、後進させ、後進のまま右折もしくは左折することとなり、附近通行人は自動車の動きを十分に予測することができず、衝突の危険を持つということができ、又後進の際には、運転者自から車体の一方を警戒しても、その反対側及びその後方には当然死角を生じ、同様通行人と衝突の危険を持つということができる。そこで運転補助者なくして右の如き処置をなそうとする運転者は、その行為に出る前一旦下車して三叉路附近通行人の存否を確かめ、通行人ある場合は、これに対し、一旦進入し後進を開始する箇所、後進する方向等を具体的に指示して避譲せしめ、又附近に成年者もしくは成年者に近い者がいて、たやすく協力を求め得る事情にある場合には、少くとも車体転換が終る前後の間だけでも、右の如き処置をとることを伝え、幼児等が突然後進方向に現れないよう見張方の協力を依頼し、見張人が得られない時は、後進開始後数米毎に一旦停車し、運転しながら警戒した反対側に通行人が現れないかを確かめ、且つ極力徐行し、後進しながらも随時警笛を吹鳴させて通行人を警戒させる等のことをし、事故を未然に防止する業務上の注意義務があるということができる。

 

山口地裁 昭和35年2月11日

道路交通法には「見張り依頼」なんて規定はありませんが、要は事故を起こさないためにはあらゆる手段を使えという話でもある。

 

ところで、38条2項が対向車の渋滞停止の場合は対象外だとしても、

大型車で著しく死角が大きい場合には「一時停止すべき注意義務違反」になる可能性もあります。

○「横断歩道又はその手前の直前で停止している車両等」とは
進路前方に設けられた横断歩道上か自車から見てその手前で停止している車両等のこと
です。したがって停止車両等が自車線(複数の車線がある道路においては、自車と同一方向の他の車線を含む。)にある場合と反対車線にある場合を両方含みますが、停止車両等の側方を通過して「その前方に出る」前に一時停止すべき義務を課したものですから、結局、この規定からは、後者(停止車両等の反対車線にある場合)は除かれると思います。
しかし、この規定は、停止車両等が邪魔になって横断歩道やその直近を横断しようとしている歩行者や横断中の歩行者の有無の確認ができない場合に、歩行者の安全を守るため、車両等の運転者に一時停止義務を課したものですから、反対車線に停止中の車両等の側方を通過して「その後方」に出ようとする場合も、一時停止義務を課すべきです。よって、このような場合、一時停止義務違反は道路交通法違反にはなりませんが、過失運転致死傷罪成立の前提となる注意義務違反には該当します。

互敦史、「基礎から分かる交通事故捜査と過失の認定」、東京法令出版、191頁

道路交通法に規定がないから問題ない、とはならない法律体系なので、最徐行で不安が残るなら一時停止すべき注務があることになりますが、これっていくらでもある話。
例えば横断歩道を渡ろうとする自転車に対して38条1項の義務はないけど、

子供なんて不注意からおかしなタイミングで横断開始することも予想される。
それは「一時停止義務はないけど、一時停止すべき注意義務はある」という状態ともいえて、道路交通法の義務をオーバーライドすることすらあるのよね。
もちろん、一時停止までは不要だけど最徐行で足りる場合もあるだろうけど、道路交通法だけで成り立ってない法律構造なのに道路交通法だけで語る方が間違い。

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