ちょっと前になりますが、

なんかおかしな方向に炎上させた人たちがいてビックリした話は書いた通り。

以前から感じていたことだけど、ちゃんと読まないままテキトーなことを語る人がわりといるんだな…
「行政にその質問をしたら、ダメと言われるに決まってるだろ」と発狂されましても…
「決まっている」とか「しか来ない」と持論を言われましても、そうではない実例を挙げているのに読んでもらえないのが現実…
全く同じ公安委員会遵守事項を持つ都道府県に以前確認したことがありまして、「ロードバイクに乗る人が常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで禁止しているわけではないけど、歩行者がたくさんいる歩車道の区別がない道路でドリンクを飲んだり、下り坂でスピードが出た状況で飲むわけじゃないでしょ?常識的な範囲でドリンクを飲む行為まで規制したものではない」と言われまして。
広島県では自転車走行中に「サイクルボトル」から飲む行為が禁止に。こちらの記事にご意見を頂いたのですが、広島県では県施行細則(公安委員会遵守事項、道路交通法71条6号)の改正により、自転車走行中にサイクルボトルからドリンクを飲む行為が禁止になるそうな。ちょっとこれについて掘り下げようと思う。公安委員会遵守...
実例を挙げているのに、無視して話を盛り盛りされてもなあ…
けど、「X」でおかしな方向に炎上させる人の特徴って、ちゃんと読まないままテキトーなことを語るからなんだと感じる。
例えばこんなの。
これ「謎ルール」とか言っちゃうのか…
0.75mってのは車椅子の幅が由来だって教習所で教わったよ。幅寄せNG? 駐禁の“謎ルール”が招く迷惑駐車の実態! 「0.75m空ける」必要は本当にあるのか?(Merkmal)#Yahooニュースhttps://t.co/V4l64HcU58
— ciclista_tetsu (@ciclista_tetsu) December 11, 2024
元ネタ記事を読めばわかるんだけど、
特に「0.75m空ける」という規定には意図がある。このルールは、路側帯を通る歩行者が車道に出ることなく通行できるようにとの配慮から来ているようだ。
幅寄せNG? 駐禁の“謎ルール”が招く迷惑駐車の実態! 「0.75m空ける」必要は本当にあるのか?(Merkmal) - Yahoo!ニュース駐車違反に関するルールは複雑で、特に「0.75m空ける」という規定には意図がある。このルールは、路側帯を通る歩行者が車道に出ることなく通行できるようにとの配慮から来ているようだ。 しかし、実際
著者はルールの前提や趣旨を理解した上で疑問を投げ掛けている。
しかしこの「X」の投稿者によって、そもそもルールの趣旨を理解してない記事であるかのように印象付けされてしまう。
凄まじいすり替え…インターネットって怖いですね。
ところで、この規定って根本的に矛盾を抱えている。
というのも、路側帯は1条の2第2項において「原則として0.75m以上」としながらも、最小0.5mまで縮小可能としている。
第一条の二
2 法第四条第一項の規定により公安委員会が路側帯を設けるときは、その幅員を〇・七五メートル以上とするものとする。ただし、道路又は交通の状況によりやむを得ないときは、これを〇・五メートル以上〇・七五メートル未満とすることができる。
そうすると47条3項。
第四十七条
3 車両は、車道の左側端に接して路側帯(当該路側帯における停車及び駐車を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたもの及び政令で定めるものを除く。)が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前二項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
第十四条の六 法第四十七条第三項の政令で定めるものは、歩行者の通行の用に供する路側帯で、幅員が〇・七五メートル以下のものとする。
2車両は、路側帯に入つて停車し、又は駐車するときは、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によらなければならない。
一 歩行者の通行の用に供する路側帯に入つて停車し、又は駐車する場合当該路側帯を区画している道路標示と平行になり、かつ、当該車両の左側に歩行者の通行の用に供するため〇・七五メートルの余地をとること。
つまり、こうなるわな。
路側帯が0.5mのとき(0.75m以下の場合)は、47条3項の除外なので、47条1項、2項により「車道の左側端」に沿って駐停車する。
つまり路側帯が0.5mならば、道路左側端は0.5mしか余地がない。
一方、路側帯が1mあるなら(0.75mより広い場合)は路側帯の中に入り0.75m開けて駐停車する。
なぜこういう規定にしたかについては、昭和46年に路側帯が規定された際に警察庁が説明している。
車両が駐車し、または停車するときにその中に入ってはならない路側帯として政令で定めるものは、歩行者の通行の用に供する路側帯でその幅員を0.75メートル以下のものとする予定である。車両がこの程度の狭い路側帯に入って停車または駐車することは、常に歩行者の通行の妨害になるおそれがあるといえよう。路側帯の幅員については、第4条第1項の規定に基づく政令で、路側帯を設けるときにはその幅員を0.75メートル以上(やむを得ないときは、0.5メートル以上)とすべきことが規定される予定であるから、幅員が0.5メートル未満の路側帯は、存在しないたてまえとなり、路側帯が設けられている場所において車両が路側帯に入らないで停車し、または駐車する場合には、必ずその車両の左側に0.5メートル以上の余地があることになる。
「道路交通法の一部を改正する法律」、警察庁交通企画課、月刊交通、1971年8月、東京法令出版
法が保証しているのは、路側帯がある場所で駐停車した際に「必ず0.5mの余地が左側にあること」。
0.5mの余地では車椅子はもちろんのこと、歩行者でも通行するのはなかなか厳しい。
そもそも法は車椅子が車両の左側を通行することを何ら保証していないのがわかるし、手動車椅子はJISで630mm以下とされている一方、ドアなどは車椅子を考慮して推奨幅90センチ以上とも言われている。
道路端に傾斜があることを考えても、75センチでは車椅子が通行するには不十分なわけでしてね。
そもそも、最近の国土交通省の考え方だと車椅子の幅を0.7m、占有幅を1.0mと想定しているわけで、0.75m開けたところで車椅子の通行に適さないのは明白かと。
https://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_3-2.pdf
リンク先の記事って、0.75m開けるルールが「歩行者のためのルール」だと理解した前提で、疑問を投げ掛けている。
しかし、実際に駐車車両と道路の端との間に0.75mの隙間があった場合、その幅を通行できるかどうかは疑問だ。例えば、買い物袋などを持っていると通行はさらに難しくなることが多い。その結果、道路の中央寄りに止められた車両の右側を歩く羽目になることも考えられる。
幅寄せNG? 駐禁の“謎ルール”が招く迷惑駐車の実態! 「0.75m空ける」必要は本当にあるのか?(Merkmal) - Yahoo!ニュース駐車違反に関するルールは複雑で、特に「0.75m空ける」という規定には意図がある。このルールは、路側帯を通る歩行者が車道に出ることなく通行できるようにとの配慮から来ているようだ。 しかし、実際
そりゃそうだなと。
じゃあ駐停車する際に車両が路側帯内の左側端にガチガチに寄り、歩行者は車道に出る形で通行するほうがベターなのかはまた別問題。
けどこの人って、こう。
これ「謎ルール」とか言っちゃうのか…
0.75mってのは車椅子の幅が由来だって教習所で教わったよ。幅寄せNG? 駐禁の“謎ルール”が招く迷惑駐車の実態! 「0.75m空ける」必要は本当にあるのか?(Merkmal)#Yahooニュースhttps://t.co/V4l64HcU58
— ciclista_tetsu (@ciclista_tetsu) December 11, 2024
しかしこの投稿者は「記事を書いた人がルールの趣旨を理解していない」かのようにすり替えちゃってるでしょ。
「X」はこういうのが多い気がするけど、冒頭の件にしてもちゃんと読まないまま発狂する人がいるのがうなづける。
まあ、そもそも「0.75mルール」ですが、法が保証している余地は「最低0.5m」でしかなく、0.5mだろうと0.75mだろうと歩行者の通行に十分な余地だとは考えていないのですが、
路側帯ルールを立法した昭和46年当時とは車椅子に対する価値観もだいぶ変わってきているはずだし、再検討するのもアリなのよね。
再検討とは、むしろ拡大して「最低1m」を保証する方向かもしれないし、車両が駐停車する際にはガチガチに左側端に寄せることかもしれない。
どちらがいいかはケースバイケースすぎるけど、そもそもこのルールが遵守されているようには見えない実情からすると、合理化して整理する時期なのかもしれません。
しかし、タイトルだけを見て中身をきちんと読まない人はわりといるのだろうか。
それはこの時も痛感したけど、

結構不思議なのよね。
というのもこの人、

判決文にある「原告の主張」を裁判所の説示と勘違いしているので、インターネットの記事や判例を読むときはきちんと読んだほうがいいのではなかろうか。
ということで、路側帯のある場所において駐停車車両の存在により、「車両の端」として歩行者が通行する余地は最低0.5mしか保証されていないことになりますが、今のままでベストなのか、むしろ広げるべきなのか、歩行者が道路中央寄りに駐停車車両を避けて歩くほうがベターなのか、幼児や車椅子、盲の人の存在も考慮しながら再検討する時期なのかもしれません。
むしろ「路側帯の幅員にかかわらず1m開ける」としたら、どうなるんだろう。
ルールの趣旨を理解した上でルールが本当に合理的なのか指摘している記事なんだから、むしろ歩行者保護の趣旨を考えて「拡大する」という選択肢もあると思う。
そしてこのルールが制定された際にどのような議論があってこうなったかを整理することがまず必要ですが、法が保証したのは「最低0.5m」でしかなく、車椅子が通行云々は実際に制定された規定内容とは合致しない。
日本は本音と建前がある国だから、「ソープ某は自由恋愛だからセーフ」という謎理論が発動しますが、最低0.5mしか保証してないルールなのに「車椅子」というのはおかしい。
車椅子が理由ならむしろ最低間隔を広げても良さそうですが、本音と建前と実際のルールに差が生じるのはジャパニーズスタイルなのだろうか…
0.75mの根拠が「車椅子」という点にしても、それは現実的に通行可能な幅としての話なのか、話に信憑性を持たせるための方便なのかすら怪しいですが、そもそも法が保証したのは0.5mでしかないので「車椅子のため」というのは机上の空論なのでしょうね。
その意味では「謎ルール」というのもその通りなのですが…著者がそこまで理解しているかは別として、指摘としては興味深い。
見直す方向性については著者の論調には賛同し難いけど、そもそも「車椅子なんちゃら」なんて机上の空論甚だしいのであって、見直す必要はあるのよね。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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