いろいろ思うことがありますが、自転車側は一時停止、クルマは徐行義務があるパターンです。
21日夕方、愛媛県松山市内の交差点で、自転車と軽乗用車が衝突する事故があり、自転車に乗っていた男子中学生が意識不明の重体となっています。
警察によりますと、事故があったのは、愛媛県松山市東野の市道交差点で、21日午後5時ごろ、自転車と軽乗用車が出合頭に衝突しました。
この事故で、自転車に乗っていた近所に住む、中学2年生の男子生徒(13)が愛媛県松山市内の病院に搬送されましたが、意識不明の重体となっています。
現場は住宅街にある信号機のない交差点で、事故当時、自転車に乗っていた男子中学生はヘルメットを着用していました。
警察は、軽乗用車を運転していた77歳の女性から、当時の事情を聞くなどして、事故の詳しい原因を調べています。
自転車と軽乗用車が信号機のない交差点で出会頭に衝突 中学2年生の生徒が意識不明の重体 事故当時はヘルメットを着用 愛媛県・松山市 | TBS NEWS DIG (1ページ)21日夕方、愛媛県松山市内の交差点で、自転車と軽乗用車が衝突する事故があり、自転車に乗っていた男子中学生が意識不明の重体となっています。警察によりますと、事故があったのは、愛媛県松山市東野の市道交… (1ページ)
現場の画像をみるとわかるんですが、この交差点には優先道路がない。
優先道路を勘違いする人が多いけど「優先権がある道路」ではなく、「交差点内にセンターラインか車両通行帯がある道路」のことを優先道路という。
優先道路の定義はこれ。
優先道路とは「当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」と規定されており、道路標識等により指定する場合すなわち優先道路となる道路の交差点の手前の地点に「優先道路」の指示標識を設置し、併せてこの道路と交差する道路の交差点の手前に、「前方優先道路・一時停止」の標識を設置して指定するものと、中央線又は車両通行帯境界線が交差点の中まで連続して設けられていることによって直ちに優先道路としての取り扱いを受けるもの、との二つがある。
交通法令実務研究会、「逐条道路交通法」、警察時報社、昭和62年
道路標示(中央線または車両通行帯境界線)による優先道路は、交差点の中まで中央線等が表示されている道路のことをいい
東京地方検察庁交通部研究会、「最新道路交通法事典」、東京法令出版、1974
左右の見通しがきかない交差点で優先道路がないので、クルマ側は徐行義務(42条1号)。

この場合、Aが自転車、Bがクルマですね。
ところで今回の事故についてはクルマが徐行していたか、自転車が一時停止していたかは報道をみても明らかではない。
今回は「過失運転致傷罪に問われない走り方」を考えてみましょう。

加害者のB車両からすると、優先道路がない上に左右の見通しが悪いから「交差点に入ろうとする時は徐行」(42条1号)になる。
さらにいうと自分が通行する道路が「明らかに広い」かは判別できず、
道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいうものと解するのが相当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和45年11月10日
しかも交差道路に一時停止標識があるかは見えない。

なので交差点に入ろうとする時点では自分に優先権があるかはわからないことになる。
交差道路に一時停止標識があるなら結果的に自分に優先権がありますが、
②交差点に入ろうとする時点では優先権がわからず、左方優先の可能性も視野に入れると、最徐行することになる。
③最徐行して交差点に進入し安全が確認できたら加速する
ところが最徐行していても、相手がそこそこのスピードで進入してきたら事故は起きる。
そういう場合には法は不可能を強いるわけではないので、無罪になる。
○大阪高裁 昭和59年7月27日
原判決に示された法律判断によれば、自動車運転者は、本件交差点を西から東へ進行する場合には一時停止又は徐行(最徐行)をして左右道路の安全を確認すべき業務上の注意義務があるとしているところ、本件交差点が前説示のように左右の見通しの困難な、交通整理の行なわれていない交差点であるから、車両の運転者に道路交通法上の徐行義務があることは明らかであるが(道路交通法42条)、さらに進んで一時停止の業務上の注意義務があるかはにわかに断定できず、本件交差点は一時停止の交通規制は行なわれていない場所であるから、業務上の注意義務としても特段の事情なき限り、一時停止義務はないものというべきである。けだし、道路交通法は交通の安全と円滑を調和せしむべく徐行すべき場所或いは一時停止すべき場所を決めているのであって、例えば車の鼻先を出しただけで衝突を免れないような交差点や優先道路との交差点などでは、別に一時停止の交通規制を行つているのが通常であり、規制のない場合には、業務上の注意義務としてのものであつても、一般的には一時停止義務を課することは相当でないというべきである。
(中略)
そこでさらに進んで被告人の徐行の注意義務違反の有無について考察すると、道路交通法上徐行とは車両が直ちに停止することができるような速度で進行することをいうと定義されている(道路交通法2条1項20号)が、具体的に時速何キロメートルをいうかは明らかではないとしても、前記認定の時速5キロメートル程度であれば勿論、時速10キロメートルであつても徐行にあたるものというべく、本件において業務上の注意義務としての徐行としても、時速5キロメートル程度のものであれば、これにあたると解するのが相当である。原判決は本件のような交差点に進入する車両には単なる徐行より一段ときびしい最徐行義務があるかの如き説示をしているのであるが、最徐行とは具体的にいかなる速度をいうのかの点は暫らくこれを措くとしても、前記のように被告人が時速5キロメートル程度の速度で進行していたとするならば、被告人において徐行(最徐行を含めて)の注意義務はつくしているものと認めるのが相当である。従つて、被告人には公訴事実にいう徐行の注意義務を怠つた過失はないというべきである。
大阪高裁 昭和59年7月27日
被告人は徐行義務を果たしていて回避可能性もなく無罪。
やることをやっていて回避可能性がなければ過失運転致死傷罪が成立しないし、行政処分も回避可能性がなければ点数はつかない。

なのでこの事故についてクルマが刑事責任を問われないための条件は、最徐行して左右注視していたかがポイントになる。
もちろん自転車が一時停止して交差道路の妨害をしない義務があることはいうまでもない。
結局のところやることをやっていたら法は不可能を強いるわけではないので、やることをやりましょうでしかないのよね。
なお今回はクルマ側は逮捕されていない。
最近「逮捕したのは過失が大きいと判断したからだ」とか「逮捕しなかったのは被害者の過失が大きいからだ」という謎解説が横行してますが、過失運転致死傷罪は被害者の過失は量刑に影響する程度で罪の成否とは無関係。
逮捕は逃亡又は証拠隠滅の恐れがあるときにするものだから、逮捕の有無と過失運転致死傷罪の成否は何の関係もない(そもそも過失の大小なんて捜査してわかるもので、現行犯逮捕する時点で確定するものではない)。

ヘルメットをしていても、スピードが出てなくても意識不明の重体になることはありますが、結局のところやることをやっておくしかないのよね。
事故を起こさないための走り方、事故になったとしても刑事責任/行政責任を問われないための走り方をするのが大事ですが、民事責任については無過失はなかなか難しい。
なぜなら、民事については無過失を証明しない限りは賠償責任を負う仕組みだから。
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
刑事無罪でも民事無過失はなかなか難しいのが日本の法律ですが、理屈の上では最徐行していたことを証明できたなら可能性はある。

結局のところ冒頭の事故については、自転車は一時停止して確認、クルマは最徐行して確認することが大事なのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。




コメント