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過失運転致死傷容疑の逮捕率。

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以前、過失運転致死傷罪の「起訴率」が低いのは単なる数字のマジックに過ぎず、「致死」と「致傷のうち重症」、「軽症だけどひき逃げや酒気帯び運転など悪質なもの」は原則起訴していると書きましたが、

過失運転致死傷罪の「起訴率が低い」は真実か?
読者様から質問を頂いたのですが、これはちょっとややこしいのです。確かに、法務省の統計によると令和3年の過失運転致死傷罪は公判請求が1.5%、不起訴が84%。一方、弁護士事務所のデータでは過失運転致死傷罪は70%が起訴、30%が不起訴だったと...

要はこれ、「致傷(軽症)」は原則不起訴(自動車運転処罰法5条但し書き)な上、「致死傷全体」でみると「致傷(軽症)」が大多数だから「致死傷」の起訴率が低く見える。

 

ところで逮捕率については、統計データはありません。
逮捕は単なる身柄拘束に過ぎず起訴不起訴とも関係しませんが、弁護士事務所に依頼があった実例をみても

過失運転致死傷の逮捕率29%|アトム弁護士相談
過失運転致死傷の逮捕率は約29%。アトム法律事務所の実例全176件を集計。過失運転致死傷で逮捕されるか逮捕されないか、知りたい方へのお役立ち情報。過失運転致死傷について逮捕の流れ、起訴/不起訴の比率なども解説。

「逮捕したこと」と「起訴したこと」は何の関係もないことがわかるかと。
逮捕しても不起訴事案はいくらでもあるし、逮捕しなくても起訴され有罪になっている実例はいくらでもある。

 

けど巷では「逮捕されたから過失があったとの判断だ」みたいな謎解説が横行する。
逮捕は①証拠隠滅のおそれ②逃亡のおそれ、がある場合にするもので、逮捕の有無と過失の有無は何の関係もないのに…

 

現実的な話をしますが、過失運転致死傷の容疑で逮捕されるのは以下の場合。

 

・死亡もしくは重症(加害者が思い詰めて自殺するおそれも含め)
・前科あり
・酒気帯び運転や無免許運転など悪質な違反を伴う場合

 

これらを総合的に判断して逮捕する必要がある場合のみ逮捕している。
現に弁護士事務所に依頼があった実例をみても逮捕率は高くない。

 

「過失が大きいと判断したから逮捕したんだ」みたいな間違い解説の何がダメかというと、その理屈だと「非逮捕案件は過失がない、もしくは過失が小さいと判断したからだ」という誤りに繋がり、社会に間違った概念を植え付けるから。
逮捕は単なる身柄拘束に過ぎないし、非逮捕事案を「警察の忖度か?」みたいな誤った世論を形成したがる。

 

池袋暴走事故で学んだ人と、学べなかった人の差なのかな…
あれが非逮捕な理由は上級国民だからではなく、証拠隠滅や逃亡のおそれがないから。
重大な過失で有罪になって収監されたことは記憶に新しいけど、ああいう実例をみながらもいまだに「逮捕されたか?」にこだわる人を見ると、法律論を語っているように見せかけて内情は感情論になってんのよね。

 

ちなみに警察検察的には現行犯逮捕するメリットはさほどない。
なぜなら逮捕勾留の場合には起訴期限が迫っているので十分な捜査ができない可能性すらあり、現実的な運用は「被疑者を落ち着かせるために逮捕したけど、身元引き受け人が現れたら釈放」、つまりは自殺防止の側面が大きいのかと。

 

誤った考え方の何がダメかというと、必ず辻褄が合わないことが起きるから。
辻褄が合わない事態が起きたら、話をすり替えて陰謀論に走る結果に陥る。

 

以前「危険運転致死容疑と見られる事故」が起きたときに、現行犯逮捕しなかったことから「神奈川県警の忖度」「中国籍だから」などと語っている人すらいたけど、

陰謀論を信じる前に。
こちらで書いた件。ワケわからん陰謀論って、信じる人が多いのだろうか?陰謀論のダメな点これ。容疑者の一方的な危険運転で何ら擁護する余地はない。1:55あたりから「中国籍の男性は病院に搬送されましたが軽症」と報道しているように、現行犯逮捕してな...

事実誤認も甚だしい。
正しい認識がない人は、持論に合わないことが起きたら困ったら陰謀論に走るしかないのよね。
中国籍全体に対するヘイトになっていることに気付かないのは配慮が無さすぎる。

 

こういうことに繋がるから正しい認識を持つことが大事になりますが、法律関係はわりとガセネタが横行する上に、ガセネタのほうが正しいと勘違いしやすいので注意しましょう。

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