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時速118キロ白バイ事故について、最高裁が上告棄却決定で有罪確定。

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時速118キロ白バイと右折車が衝突し、白バイが死亡した事故についての裁判(過失運転致死罪)については何度も取り上げましたが、

「苫小牧白バイ118キロ事故」について、札幌高裁が原判決を支持した理由。
いろいろ話題になった「時速118キロ白バイ」と「内小回り右折車」の事故。過失運転致死罪に問われた右折車ドライバーに対し、一審(札幌地裁  令和6年8月29日)は有罪判決、二審は原判決を支持し控訴棄却。そもそもこの判決の意味するところを報道が...

控訴審判決が令和7年2月20日で、早くも最高裁は上告棄却決定をだしたらしい。

時速120キロの白バイ警官(当時32)死亡、右折トラック運転手の有罪確定「接近を予見、回避不可能」と無罪主張するも…最高裁が上告棄却(HBCニュース北海道) - Yahoo!ニュース
2021年9月、北海道苫小牧市の交差点で、白バイと衝突し、警察官を死亡させた罪に問われた大型トラックの運転手の上告審で、最高裁は23日、運転手側の上告を棄却する決定をしました。禁錮1年、執行猶予3年

この事故報道もかなり違和感があるけど、この裁判のポイントは「時速118キロは予見可能」としたのではない。
信頼の原則では「制限速度+20キロ程度」を予見して注意する義務がありますが、被告人は交差点中央より25m手前から「逆走小回り右折」を開始してますが

被告人が右折を開始した時点で、既に両者の距離は79mに迫っていた(事実認定はドラレコによるもので、基本的な事実関係に争いはない)。
被告人車は大型車なので右折完了(対向車の進路を通過するに要する時間)に時間を要するわけですが、

 

対向車が79mに迫っていた事実においては、対向車が時速80キロ程度(制限速度+20キロ)であっても正常に右折を完了することはできない。
なお被告人車が右折完了に要する時間は、被告人に有利に時速34キロ程度で計算している。

 

つまりこの事実関係においては、対向車が時速80キロ程度であっても事故が発生したことになりますが、「時速80キロ程度を予見する注意義務を怠り漠然右折した」のだから「右折を差し控えるべき状況だった」ことになる。
ましてや謎の内小回り右折をしてますが、交通法規に従って交差点中央まで直進し、その時点で対向車確認していればなおさら両者の距離は迫っていたことになるのだから、さらに容易に対向車確認できる。

被告人に過失があることは明らかとなる。

 

で。
なぜか報道では「右折開始した時点での両者の距離」を伝えないし、いまだに過失運転致死傷罪の成立要件が「どっちが悪いか?」だと勘違いしている人が多いから正確に伝わってないのよね。

 

さて、今回は「上告棄却決定」であり「上告棄却判決」ではない。
最高裁は上告理由を憲法違反と判例違反に限定していますが(その他にも上告理由はあると言えばありますが)、この件はおそらく判例違反を主張したものと思われる。
最高裁は「適法な上告理由ではない場合」には弁論を開かずに上告棄却決定調書を出すことができますが、おそらくは「上告人が主張する判例は事案を異にし適切ではなく、適法な上告理由に当たらない」という理由で棄却したと思われる。

 

なお、詳しい判決文(一審と二審)はこちら。

「苫小牧白バイ118キロ事故」について、札幌高裁が原判決を支持した理由。
いろいろ話題になった「時速118キロ白バイ」と「内小回り右折車」の事故。過失運転致死罪に問われた右折車ドライバーに対し、一審(札幌地裁  令和6年8月29日)は有罪判決、二審は原判決を支持し控訴棄却。そもそもこの判決の意味するところを報道が...

で。
かなり酷似した事故について福岡高裁でも同様の判断が出ており、福岡高裁 令和3年4月14日は同じく右折車が被告人ですが、対向直進車が約110キロだったとして信頼の原則が適用されるべきと主張。
福岡高裁は被告人が右折を開始した際の両者の位置関係が50mだったことを指摘し、信頼の原則でいう「+20キロ(この場合は70キロ)」でも事故が起きていたと指摘。
信頼の原則は「対向車が通常想定される速度で進行していれば安全に右折することが可能だった場合に限られる」とし、通常想定すべき注意すら払わず右折したことから有罪に。

異常な高速度直進車が相手でも右折車が有罪になるケース。
時速118キロの直進白バイの件は何度か取り上げましたが、この事故、認定された事実はこんな感じ(被告人が右折した瞬間の位置関係)。被告人が対向車を確認した時点(衝突8.5秒前、右折開始6秒前)の位置関係はこちら。札幌地裁は、被告人車の車長の問...

思うに、この判決については以下理由から誤解を生んでいると思う。

①詳細な事実を報道してないから、右折開始時点で「既に対向車が迫っていた」ことが理解されてない。
②過失運転致死傷罪の成立要件を「どっちが悪いか?」だと勘違いしている人が多く、「白バイが悪いのに有罪はおかしい」という風潮につながった。
過失運転致死傷罪の成立要件は「被告人の過失と致死傷に因果関係があるか」のみで、被害者の過失は有罪無罪とは直接的な関係はなく、量刑で考慮するに過ぎない。

なお、「きちんと対向車確認したのに対向車が著しい高速度で直進してきた事故」については、民事ですが右折車を無過失認定した判例もありますが(福岡高裁 令和5年3月16日)

時速120キロ直進車と、交差点右折車が衝突。過失割合はどうなる?
何年か前に大分で、時速194キロで直進するクルマと交差点右折車が衝突する事故がありましたが、一般原則としては右折車が劣後します(道路交通法37条)。第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しよう...

今回の白バイ事故と決定的に違うのは、きちんと対向車確認して右折したか、対向車確認が不十分なまま対向車が迫っていたことを見逃して漠然右折したかの差なのよね。

異常な高速度の右直事故と、過失割合の話。
右直事故の直進車が「時速120キロ」という異常な高速度だった2つの事例を取り上げましたが、刑事と民事の差は無視しますが、時速120キロという異常な高速度で差が出る理由はここ。①時速118キロで直進した白バイと衝突した右折車に、過失運転致死罪...

両者はともに「直進車が時速120キロ程度」ですが、決定的に違うのはそこ。
これらからすると、結局のところきちんと対向車確認して右折したことについては法は無理難題を強いるわけではないし、対向車確認をしないまま漠然右折したなら話が違う。

 

しかし世間は「結果論(対向車が著しい高速度だったこと)」に目を向けて、中身(被告人の安全確認や対向車との距離)を見ないのよね。

 

結局、安全確認をしっかりしてから右折する必要があることに変わりないわけですが、上告棄却決定までわずか3ヶ月という点からみても、最高裁的には取り上げるまでもないということかと。

 

コメント

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