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異常な高速度直進車が相手でも右折車が有罪になるケース。

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時速118キロの直進白バイの件は何度か取り上げましたが、

苫小牧「時速118キロ白バイ事故」の控訴審が即日結審。
苫小牧で起きた「時速118キロ白バイ」と「謎の小回り右折」をした事故については何度か取り上げてますが、一審は右折車運転者の「過失運転致死罪」を認め有罪。弁護人は控訴しましたが、控訴審は即日結審したようです。控訴審での弁護人の主張先に一審での...

この事故、認定された事実はこんな感じ(被告人が右折した瞬間の位置関係)。

被告人が対向車を確認した時点(衝突8.5秒前、右折開始6秒前)の位置関係はこちら。

札幌地裁は、被告人車の車長の問題から右折完了するには時間がかかることから、対向車が約79mに迫っていた「右折開始時」に右折を差し控えるべきだったとし、又は法規に従って交差点中央まで直進して対向車を確認していればさらに両者の位置関係は接近していたのだからやはり右折を差し控えるべきだったとする。
これは信頼の原則でいう「20キロちょっとの速度超過を予見する注意義務」で検討した結果とし、被告人に有利に実勢右折速度(33キロちょっと)で検討した結果。
右折時には徐行義務がありますが、被告人に有利に解してもこうなる。

 

ところで、似たような事例が福岡高裁 令和3年4月14日判決にありまして。
同じく右折車が被告人ですが、対向直進車が約110キロだったとして信頼の原則が適用されるべきと主張。

 

福岡高裁は被告人が右折を開始した際の両者の位置関係が50mだったことを指摘し、信頼の原則でいう「+20キロ(この場合は70キロ)」でも事故が起きていたと指摘。
信頼の原則は「対向車が通常想定される速度で進行していれば安全に右折することが可能だった場合に限られる」とし、通常想定すべき注意すら払わず右折したことから有罪に。

 

要は信頼の原則を持ち出す以前の問題だと指摘している。

 

札幌地裁の事案は控訴審判決待ちなのでまだわからないにしても、この事実関係だと変わらない可能性が高い(なお被告人と検察官で基本的な事実に争いはない)。

 

ところで札幌地裁の事例は、被告人の主張をベースにした報道内容と、明らかに違法な速度の白バイだったことも相まって「冤罪事案?」という世論が形成された。
推定無罪だからおかしな報道はできないにしても、一審で認定された事実は報道すべきだったのかも。

というのも、世論は「そんなの白バイが悪い」に傾いてますが、ざっくりいえば「右折車の右折方法と安全確認に問題があり、かつ、白バイの著しい速度超過も問題」。
刑事は「どっちが悪いか?」ではなく被告人に過失があるか?が問われるだけなので…

 

そもそも、なぜか「高知白バイ事故」と結びつける人がいてびっくりするけど、高知白バイ事故は「白バイの速度超過と、被告人車が止まっていたという事実が認定されなかったこと」が問題。
苫小牧事故は事実に争いはなく、法律解釈の問題。

 

共通点は「被害者が白バイ」というだけなのよね。

 

マスコミの報道から争点が「時速118キロは予見可能か?回避可能か?」にあるように見えましたが、本当の論点はそこではなかった事案なので、マスコミ報道は一歩引いて見たほうがいいのかもしれません。
結局、裁判で大事なのは事実認定がどうなのかなので、事実認定を見ないとわからない典型例かも。

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