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任意保険は、運転者の「故意」による事故には支払われないか?

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運転レベル向上委員会の間違い解説はいつも通りとしか言いようがないのですが、

①西成でのレンタカー殺人未遂事件と、②足立区での中古車販売店から窃取し起こした事故(殺人容疑で再逮捕されている)について、自賠責保険保険は支払われるが、任意保険は「故意免責」により支払われないと解説している。

 

これはどちらも誤りなのでして。

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西成でのレンタカー殺人未遂

まず確認から。
いわゆる「対人賠償責任保険」とはなんなのか。
以下損保ジャパンの約款から抜粋しますが、約款の内容は基本的な部分はどこも同じです。

第1条(保険金を支払う場合)
⑴ 当会社は、契約自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害することにより、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この対人賠償責任条項および基本条項に従い、保険金を支払います。

被保険者が法的な賠償責任を負う、つまり被害者に支払う義務が生じたときに保険金を支払うとする。
被保険者が5000万の賠償責任を負う場合には、被保険者は5000万の損害を負うことになるのだから、それを保険会社が支払うとする。

 

次に被保険者の定義。

第4条(被保険者)
この対人賠償責任条項における被保険者は、次のいずれかに該当する者とします。
① 記名被保険者
② 契約自動車を使用または管理中の次のいずれかに該当する者
ア.記名被保険者の配偶者
イ.記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
ウ.記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
③ 記名被保険者の承諾を得て契約自動車を使用または管理中の者。ただし、自動車取扱業者が業務として受託した契約自動車を使用または管理している間を除きます。

レンタカーではレンタカー会社が「記名被保険者」であり、レンタカーを借りた人は「記名被保険者の承諾を得て契約自動車を使用または管理中の者」になる(つまり被保険者は二名)。
ここで考えて欲しいんだけど、レンタカーを借りた人が起こした自動車殺人事故は、確かに故意免責に該当する。
しかしこの場合、殺人の故意は運転者の故意でしかない

第2条(保険金を支払わない場合-その1)
⑴ 当会社は、次のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
① 保険契約者、記名被保険者またはこれらの者の法定代理人(注1)の故意
② 記名被保険者以外の被保険者の故意

運転者が負う賠償責任については「記名被保険者以外の被保険者の故意」として支払われない。
しかし記名被保険者(レンタカー会社)に故意があるわけではない。

 

自賠法では人身損害について運行供用者が賠償責任を負うとし(同法3条)、対人賠償責任保険の約款では「被保険者の法的な賠償責任に対し支払う」とする。
要するにレンタカー会社が運行供用者として賠償責任を負う限りは、任意保険は支払われるのでして。

 

被保険者が二名いて、二名はそれぞれ賠償を負い、故意免責条項は二名の賠償責任のうち一名分のみ打ち消す。

 

運転者の法的な賠償責任に対しては故意免責が働くけど、この場合はレンタカー会社が運行供用者責任を負う限りは任意保険も支払われることになる。

第5条(個別適用)
⑴ この対人賠償責任条項の規定は、それぞれの被保険者ごとに個別に適用します。ただし、第2条(保険金を支払わない場合-その1)⑴①の規定を除きます

「保険金を支払わない場合-その1)⑴①の規定」とは、「保険契約者、記名被保険者またはこれらの者の法定代理人(注1)の故意」のこと。
つまり、「保険契約者、記名被保険者の故意」の場合には、他の被保険者を含めた全体が免責となり支払われない。
しかし「記名被保険者以外の被保険者の故意(つまりレンタカーを借りた人の故意)」の場合には個別適用になるため、レンタカー会社が負う運行供用者責任にあたる部分は免責にならず支払われることになる。

 

ただし、レンタカーの契約期間を無断で越えて返却されないような状態であったならば、レンタカー会社が運行供用者責任を逃れる場合もあるかもしれない。
しかし契約期間を越えた瞬間からの話ではないと思われ、ある程度の時間経過が必要だろうと思う。

 

結論としては、記名被保険者(レンタカー会社)の故意で起こした事故ではないため、レンタカー会社が運行供用者責任として賠償責任を負う限りは任意保険も支払われる。

足立区の中古車販売店から窃取した事故

これはそもそも、容疑者が無断で拝借したのだから、仮にクルマが任意保険に入っていたとしても容疑者は被保険者ではない
無断で拝借した状態が「記名被保険者の承諾を得て契約自動車を使用または管理中の者」にあたるわけもない。
なので容疑者の故意は何の関係もない。

 

仮に窃取されたクルマについて任意保険に入っていたならば、結局は被保険者が運行供用者責任や民法上の賠償責任を負うか否かで任意保険の支払いが変わる。

 

なお、いまだに昭和48年最高裁判決の意味を理解してないのもどうかと思う。

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昭和48年最高裁判決とは事案が異なると考えられるのでして。
結局、中古車販売店の駐車場の構造が昭和48年最高裁判決がいう「客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況」と言えるなら昭和48年最高裁判決の適用がありますが、「客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況」と言い難いなら個別判断になる。

 

なぜ昭和48年最高裁判決以降ににも駐車場から窃取されたクルマについて所有者の賠償責任を認めた下級審判例があるかというと、駐車場の構造等が最高裁判決とは異なるから。
昭和48年最高裁判決が示したのは、一部のケースについてのみでしかない。

 

要するに運転レベル向上委員会の解説は、自分所有のクルマで運転殺人をした場合の話であって今回とは前提が異なる。
残念ながら、保険については運転レベル向上委員会の人の知識ではムリがあって、全部事案が違うわけ。

 

人身傷害保険の解説も間違いが多発していたけど、ようやく重過失免責に触れ出すなど多少は改善がみられる(重過失免責を知らずに保険を語るのもどうかと思うが)。
しかし重過失は「免責」なのであって、いまだ解説内容がおかしい。

 

こういうのについて思うんだけど、素人解説を信じると、被害者は本来受け取れるべき保険金を受け取れないまま終わることすらある。
保険会社もこれらを勘違い(それが悪意かは別として)して支払い拒絶することすらありうる。

 

運転レベル向上委員会の人は、保険とはなんなのかという基本を理解していない。
保険とは誰の何を補填するものなのか?そもそも賠償責任は誰が負うのか?
対人賠償責任保険は、被保険者が負った賠償責任について補填するものてあって、西成のケースでは被保険者になるのはレンタカー会社と運転者。
運転者の故意により、運転者が負う賠償責任については保険からは補填されないが、運行供用者であるレンタカー会社の賠償責任については補填される。
つまり結果的に被害者には任意保険から支払われることになる。

 

足立区のケースは、そもそも容疑者は被保険者ではない。
なので故意免責を論じる以前の問題なので、容疑者自身の賠償責任について補填する保険は加入していない(と思われる)。
しかし中古車販売店が運行供用者責任や民法上の過失責任が認められるなら、中古車販売店が加入している損害賠償責任が対応しているかもしれないけどそのあたりはわかりません。
一般的に事業を行う上では何らかの賠償責任保険に入っていると思われますが、約款次第としか言いようがない(そもそも運行供用者責任や民法上の過失責任が認められるかについては、報道ベースからは何とも言い難い)。

 

間違い解説を多発して削除も訂正もされないのは社会悪なのよ。
無責任過ぎる。

コメント

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