フロントトリプルのロードバイクについて質問をいただきました。
初めまして。
先日の記事でトリプルクランクについて触れているものがありましたが、それについて質問です。登りがつらいのでスプロケットを変えようかなと思っていたところにトリプルクランクという単語が出てきたので、もしかしたらトリプルクランクのほうが登りが楽になるのではないかと気になっています。
今ソラを使っていてフロント50-34、リア11-28ですが、トリプル化とスプロケ変更どっちがいいと思いますか?
回答いたします。
Contents
フロントトリプル
まずですが、現行モデルのコンポの場合、フロントトリプルの設定があるのはティアグラ(4700)、ソラ(R3000)、クラリス(R2000)だけになります。
105以上ではフロントトリプル自体がありません。
私の知る限り、ロードバイクの完成車で、フロントトリプル仕様の完成車はないと思います。
少なくとも、私がロードバイクに乗り始めた2011年頃でも、見たことはありません。
ジャイアントのPACEみたいなランドナー風のツーリングバイクに、フロントトリプルの完成車があったくらいだと思います。
2019モデルの完成車を見渡しても、恐らくですがフロントトリプル仕様のロードバイク完成車はないのではないでしょうか?
それくらいメジャーではありません。
ここではまず、なぜフロントトリプルが普及していないのかを説明します。
フロントトリプルが一般的ではない理由
Qファクターが広がる
フロントがトリプルになれば、その分ペダルが外に押し出されるような形になりますよね。
だって一枚ギアが増えますから。
その結果、当たり前ですがQファクターが広がります。
4700ティアグラで見ると、ダブルのFC-4700が150mmに対し、トリプルのFC-4703では158.8mmです。
Qファクターが広がると股が開く形になり、乗りづらいです。
重量増加
フロントにはチェーンリングが一枚増えますので、その分重くなります。
これは当然の結果です。
使えるギアはさほど増えない
例えばなんですが、9速ソラでスプロケが11-28Tだとして、トリプル化した場合のギア比を見てみましょう。
まずはダブル(50-34)から。
11 | 12 | 13 | 14 | 16 | 18 | 21 | 24 | 28 | |
50 | 4.55 | 4.16 | 3.85 | 3.57 | 3.13 | 2.78 | 2.38 | 2.08 | 1.79 |
34 | 3.09 | 2.83 | 2.62 | 2.43 | 2.13 | 1.89 | 1.62 | 1.42 | 1.21 |
次にトリプル(50-39-30)を。
11 | 12 | 13 | 14 | 16 | 18 | 21 | 24 | 28 | |
50 | 4.55 | 4.16 | 3.85 | 3.57 | 3.13 | 2.78 | 2.38 | 2.08 | 1.79 |
39 | 3.55 | 3.25 | 3 | 2.79 | 2.44 | 2.17 | 1.86 | 1.63 | 1.39 |
30 | 2.73 | 2.5 | 2.31 | 2.14 | 1.86 | 1.67 | 1.43 | 1.25 | 1.07 |
2×9が3×9速になっても、ギアが9枚増えたわけではないことはお分かりになりますでしょうか?
トリプル化しても、ギア比がほぼ同じになる組み合わせが結構あります。
例えば、39×24と30×18はほぼ同じギア比ですよね。
このように被るギアが結構あるので、実際使えるギアとしては、30×28が1.07となるくらいが増えた分と見れます。
参考までに、フロント50-34でリア11-34を投入した場合の、最も軽いギア比は1.00(34×34)です。
トリプル時の30-28とかなり近いギア比になります。
費用面
トリプルクランクを導入する場合、交換する必要があるのは以下の4点。
・左STI(トリプル用)
・クランク
・フロントディレーラー(トリプル用)
・リアディレーラー(GS)
意外と盲点なのがリアディレーラーで、スプロケが11-28Tであってもフロントをトリプルにする場合はGSにしないといけません。
次にスプロケを34Tにする場合に交換が必要なのは
・スプロケ
・リアディレーラー(GS)
・チェーン(長さが足りない)
どっちが安いかは明白ですね。
当然、ワイドスプロケにしたほうが安いです。
ちなみにですが、4700ティアグラについては、フロントトリプル時のスプロケの対応が32Tまでになります。
フロントトリプル&リア34Tはティアグラでは不可です。
フロントトリプルorリアワイド化?
フロント50-34、リア11-28の9速からローギアを増やしたいという目的では、フロントトリプルでもリアのワイドレシオ化(34T導入)でも似たようなギア比が得られます。
ただし実用上は、結構な差が出ます。
というのも、まずはスプロケから見ていきましょう。
11-28 | 11 | 12 | 13 | 14 | 16 | 18 | 21 | 24 | 28 |
差 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | |
11-32 | 11 | 13 | 15 | 17 | 20 | 23 | 26 | 30 | 34 |
差 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 4 | 4 |
11-34Tのスプロケではギアが飛び飛びなので、どうしても適切なギアが選びにくくなります。
この中間にギアがあればなぁ・・・となるわけです。
フロントをトリプル化してリアは11-28スプロケのままであれば、11-34Tスプロケよりはギアが飛び飛びではありません。
その代わりフロント側の操作が増えます。
Qファクターの増加、重量増加、面倒なフロント変速・・・と繋がっていくので、どっちがいいかは微妙だったりします。
またトリプル化した場合は、たすき掛けは完全にNGです。
ただし多くの人はフロント変速は面倒と考えるでしょうし、特にクラリスやソラグレードだと、リア変速に比べるとフロント変速はスムーズさがありません。
なのでフロントトリプル化は面倒が増えると考える人が多いのではないでしょうか?
かといって11-34Tではギアが飛び飛びに・・・となると、最後はコンポ交換して11速化するほうがよかったりするわけです。
9速では飛び飛びでも、11速ならまだマシになりますので。
フロントトリプルはオススメしません
フロントトリプルでは、クロスレシオのスプロケを活かしながら、ローギアを増やすことができます。
ですが、費用がそこそこ掛かる上に、実質的に増えるギアは一枚くらいしかなく、Qファクターが広がって乗りづらくなり重量も一気に増えるのであまりオススメしません。
しかしながら、トリプルクランクを好んで使う人もいます。
私が見ている限りでは、荷物を積載してまったり走るツーリング派の人には、一定のトリプルクランク愛好家がいるような気がします。
しかしながら、左STI、クランク、FD,RDを交換すると、ソラグレードでもそこそこお金がかかってきますよね。
パーツ代だけでも2万円弱というところでしょうか。
それだけ掛ける意味があるのかないのかは人それぞれ価値観が違うと思いますが、個人的にはナシな気がします。
ちょっと前に紹介した内容ですが、【トリプルクランクはワシが育てた・・・】という内容の名言をメールしてきた方がいました。
https://roadbike-navi.xyz/archives/7217
一般人の意見なんてほぼ関係ないだろうとは思いますが、そこはどうでもいいとして、時代は確実にフロントシングル化に進んでいます。
勝手な予想ですが、次のデュラエースではフロントシングル&リア12速とかで来るんじゃないかと思ってます。
フロントシングルは個人的にはあまりオススメしていませんが、トリプルクランクはもっとオススメしません。
お金はかかってしまいますが、105など11速に組み替えて11-34Tを導入したほうが変速性能や使い勝手などは確実に良くなるでしょう。
トリプル化を検討するときは、満足できるギア比が得られそうか、十分に検討してから行ってください。
また、トリプル化した場合、フロントの変速回数が増える可能性もあります。
それが煩わしいと思う人もいるでしょうし、操作性が変わるので、そのあたりもしっかり考えた上で導入するか決めたほうがいいでしょう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
11-28Tのトップ側“11-12-13-14”から13Tを抜いたことに不便を感じないなら、11-32Tはおすすめですよ。
30×28Tの12.1とほぼ同じ34×32Tの12.0になるので、登りはだいぶ楽になります。
しかし、11-28Tも平坦をアウターで走っている時に、18-21Tの落差が気になるので、
まんべんなく使える11-30Tが9速では一番オールラウンダーだと思います。
11-28Tは8速でも11速でも、平坦の巡航では“15-17-19-21T”の2つ差のところを使うことが多いと思いますから、奇数が偶数化の違いで同じく2つ差になっている“14-16-18-20T”も平坦巡行時の使い勝手はほとんど同じです。
私は9速の11-30Tと13-25Tを山岳と平坦で使い分けていますが、どちらも巡行では16Tあたりを使っています。(私が11速を使うとしても、11-30Tと14-28Tの二つのスプロケットを使い分けると思います。速度域によっては11速の11-28Tで15-17Tの落差で引っかかるよりは、9速の11-30Tで16-18Tが合う場合も私のようにありうると思います。)
11速にした方が良いのは、トップ側の“11-12-13-14-15T”を細かく使いたい場合に、スプロケットのギア比として、11枚の必要があると思いますが、
登りでは、“20-23-26-30T”でシッティング30Tからダンシングに移行する時には、23Tに変えることが多いので、ロー側はそこまでクロスしている必要性は感じませんので、
とりあえず、9速の11-30Tか11-32Tのスプロケットに変えてみることをお勧めします。
個人的な経験ですが、登りがつらい場合すぐにインナーローが必要になって、多少勾配が緩くなってもシフトアップできないのは、登坂テクニック不足。
勾配の変化に合わせて、インナーローからシフトアップが可能ならば34Tまでは必要ないことがほとんどだと思います。
トップ側の15T以上をみっちり使いたいのでなければ、
ローが28Tでも平気な場合は8速の“11-28T”。30Tまで必要なら9速“11-30T”。32Tがいるなら10速の“11-32T”も、11速でなくても十分な使い勝手があると思います。