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譲る譲らないとか、義務で語ることの意味。

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最近、どうも法解釈を捻じ曲げたがる人がいるように感じるのですが、道交法27条の追い付かれた車両の義務の解釈。
ちょっとまとめておきます。

 

先に書いておきますが、法的な義務が関わるのは事実上、事故が起きた時のケースなわけで、そんなどうでもいいところよりも事故を起こさない、巻き込まれないようにロードバイクに乗るというのが鉄則。
けどネット上って、法的な意味を拡大解釈したがる傾向もあって、違反だ違反だと騒ぐ人もいる。

道交法27条の意味

道交法27条では政令で定める最高速度の話なので、車(オートバイ含む)と原付の関係性の話です。
このあたりの解釈については、こちらにまとめておきましたのでどうぞ。

 

この域まで来ると、さすがにかわいそうな。
先日もちょっと書いた件ですが、 この域まで来ると、さすがにかわいそうだなと。 理解力というか、法律の読み方を説明しないとわからないんでしょうね。 一次ソースの意味を理解されてないようですが、記事で書いたように一次ソースを確認する手段は裁判所...

 

読めばわかるように、自転車には関係しない規定です。
それと同時に、民事の損害賠償では27条に基づく事故回避義務を認めているものもある。

 

自転車に対し、27条【追いつかれた車両の譲る義務】を認めた判例。
堅苦しい話が続いていますが、一つの参考になるかと思いまして。 自転車の場合、道路交通法27条の【追いつかれた車両の義務】は適用外です。 これは刑事事件として取り締ま利される対象ではないというだけで、民事では認めた判例もあります。 事例 判例...

 

これをどう解釈するのか?という話。

 

まず道路交通法は特別刑法なので、国家が刑罰を課す規定。
法解釈は条文に則って厳格にされるので、条文に書いていないことを処罰することは出来ません。

 

そして事故ったときの、民事の損害賠償の判例。
これは民法709条の不法行為責任を争うわけです。

第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

この場合の過失というのは、このように説明されます。

不法行為責任における過失とは、違法な結果が発生することを予見し認識すべきであるにもかかわらず、不注意のためそれを予見せずにある行為を行う心理状態

交通事故でいうと、事故回避義務がこれに当たります。
例えば逆走自転車と衝突した場合、過失割合は50:50となるわけですが、

 

逆走自転車と衝突事故を起こした場合、過失割合は0:100にはなりません。
ロードバイクで走っていると、それなりに見かけるのは逆走してくるママチャリ。 逆走自転車の交わし方については、過去にもいくつか記事を書いてます。 車 対 車の事故で、対向車がセンターラインを超えて逆走状態で突っ込んできた場合、基本的には過失割...

 

これは生活道路での過失割合で、幹線道路だと話が変わります。
逆走自転車と言えど、向かってきたら左に寄せて停止してやり過ごすとか、右に逸れて交わすなど事故回避義務が生じる。
さらに生活道路では、逆走自転車なんて普通に見かける光景なので、それも予見して速度を適宜調整すべきという考えが根底にあるんだと思われます。

 

順走している自転車は何ら違反ではないけど、過失割合では痛み分けの50:50になる。
道交法違反ではなくても、民事では過失として評価される余地があるという話です。

 

27条の判例の件。
1審判決文が見つからないので、詳しい主張内容は不明です。
1審では35:65だったのに対し、双方が控訴している。

 

27条に関係する部分のみを抜粋します。

 

かなり長くなるのでまとめます。(以下、控訴審判決文の双方の主張から引用)
・一審原告(自転車の主張)

第1審原告は、被告車に追いつかれた際、被告車との接触を避けるため、原告車を本件外側線上(車道の左端)に寄せて被告車に進路を譲ることにより(道交法27条2項)、結果回避義務を尽くしたのであるから、過失はない。

・一審被告(後続車の主張)

最高速度が高い被告車に追いつかれた原告車は、できる限り本件道路の左側端に寄って被告車に進路を譲らなければならない(道交法27条2項)。本件道路の左側端に溝や段差があるために自転車である原告車が被告車と並走することが困難な状況の下では、第1審原告は、被告車に進路を譲るためできる限り左側端に寄って一時停止すべき義務があった。

少なくとも控訴審では、双方が27条の成立自体を認めている。
その上で1審原告は義務を果たしたという主張。
1審被告は一時停止すべきだったという主張。

第1審被告は、原告車との間に安全な側方間隔を保持することができない状態で本件追い抜きを開始したのであるから、第1審被告には、安全運転義務違反の過失が認められる。
これに対し、第1審被告らは、被告車に追いつかれた原告車は道交法27条2項に基づいて避譲義務を負うところ、本件においては第1審原告に一時停止義務が課さられていたというべきであるから、第1審原告が一時停止義務に反して走行を続けていた以上は、同行の反対解釈により第1審被告が本件追い抜きを行うことも許され、第1審被告に過失はない旨主張する。
確かに、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ道路の中央との間にその追いついた車両が通行する十分な余地がない場合においては、追いつかれた車両に進路を譲らなければならない。(道交法27条2項)。しかしながら、追いつかれた車両が進路を譲る義務を負うのは、道路の左側部分に進路を譲る余地があることが前提であり、何らかの障害によって道路の左側端に寄ることができない場合には、本件外側線の幅約20cmを含めても80cmしかなく、本件路側帯の幅員から本件外側線の幅(約20cm)及び本件外側線の外側(左側)から本件段差までの幅(約15㎝)を除くと、側溝の縁の部分を含めて約45cmの幅しかないことを考慮すると、本件路側帯は自転車の走行には適さない状況であったと認められる。第1審原告は、前記1認定のとおり、被告車の接近に気付いて本件外側線場まで原告車を寄せており、さらに本来自転車の走行には適さない本件路側帯に進入することにより、被告車に進路を譲る義務を果たしているといえる。また、本件事故現場(上り勾配で、しかも緩やかに左にカーブしており、本件路側帯は本来自転車の走行には適さない状況であった)及び自転車は減速するとふらつく危険性があることなどを考慮すると、本件事故現場付近において、原告車が被告車に進路を譲るため、安全に一時停止することは困難であったと認められる。したがって、第1審原告が、道交法27条2項に基づく避譲義務の一環として一時停止義務を負うとは認められない。

 

名古屋地裁 令和元年8月2日

ここで争っている内容は、民事責任として事故回避義務がどうだったのかを争っている。
1審の内容が不明なのでどういう経緯でこのような主張に至ったのかはわかりませんが、控訴審では1審原告も1審被告も事故回避義務として27条の概念を流用していると読むべきで、それが道交法違反なのかどうかを争っているわけではない。

 

なので27条。

法令 意味
刑事 道路交通法 自転車は27条の適用外
民事 民法709条 事故回避義務として、27条の概念を自転車にも適用される余地はある。

後続車が危険な追越しをしてきても、事故らないようにその場で避けるなどできることはあるわけ。
それを27条の概念を流用して、原告は義務を果たしたと主張している。
被告は一時停止まですべきと主張している。

 

単にそれだけの事。
道交法違反として、27条が自転車に適用されることはありません。

ケーススタディ

例えば、こんなケースで考えてみます。

前にツイッターで煽られたと言っていた方と同じ道路のようです。

 

正しい車両通行帯の考え方と、自転車乗りは違反なのかについて検討。
先日も書いた件です。 片側2車線道路で、左第1車線のど真ん中付近を走行しているのですが、これが違反になるのかどうかについて検討します。 事実確認・法確認から 調べたところ、この道路は府道13号京都守口線の守口市内のようです。 ・片側2車線道...

 

この道路は管轄署にも確認していますが、片側2車線道路ですが交差点手前のイエローラインのあたり以外は車両通行帯ではありません。

車両通行帯ではない以上、道路交通法18条1項に基づき、自転車は車道の左側端通行義務があります。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

道交法では、歩道の縁石までが車道なので、路肩のエプロン部を避けて左に寄って通行する義務があると言えます。

 

路肩走行の是非、判例を検討する。
前に自転車で、片側2車線道路の第1車線の真ん中を通行していた方の件。 この方、裁判所の認定ではなく原告の主張を引用するなど根本的に判例の読み方がわかっていないことや、道交法にも詳しくないのかなと思うのですが、 こんな主張もされているようです...

 

刑事上の道路交通法の処罰規定でいうと、違反になるのは自転車の左側端通行義務違反(18条1項)、追い越した後の急ブレーキ(24条)が考えられます。
後続車の追越し時の安全義務違反(28条4項)については、先行している自転車が勝手に右に寄って行って危険性を生み出しているだけなので、成立しないでしょう。
車両通行帯ではないので、隣の車線に移動して追い越す義務もありません。
なおクラクションについては、先行車の違反行為に対する注意とみなせるので違法性阻却事由に当たる可能性があります。

 

車が自転車を追い越すときに、クラクション(警音器)を鳴らすのは違反なのか?
先日書いた記事で紹介した判例。 自動車運転者が自転車を追い越す場合には、自動車運転者は、まず、先行する自転車の右側を通過しうる十分の余裕があるかどうかを確かめるとともに、あらかじめ警笛を吹鳴するなどして、その自転車乗りに警告を与え、道路の左...

 

これが道交法の刑罰規定ですね。

 

もしここで自転車とタクシーが追越し時に接触などを起こした場合は、民事でどうみられるのか?という話。

 

過失割合としては、接触した以上は後続車の追越し時の安全運転義務違反が大きくなるとは言え、これ、クラクションと同時に自転車が中央寄りに進路を変更しています。

 

これが事故回避義務を怠ったと解釈される可能性があるのと、18条1項の規定に反する位置を通行していたということで事故を未然に防ぐ義務を怠ったと評価される可能性があるので、0:100にはならないです。

 

これも18条1項から注意義務違反・事故回避義務違反を導くことも出来るでしょうし、27条の概念を流用して、接触の危険があるにもかかわらず回避しなかったという考えも取れる。
ちなみに車両通行帯と見間違えた、見分けがつかないという主張をしたとしても、相手方が適切な主張をした場合には瞬殺されると思われます。

 

判例と車両通行帯。
読者様からメールを頂きました。 先日はありがとうございます。 興味が出て判例をいくつか調べてみました。 おっしゃる通り、判例の中には車両通行帯の概念を間違えていると思わしきものがいくつか出てきました。 なぜそうなるのか、詳しく記事にしてくれ...

 

裁判って当事者主義、弁論主義なので双方が主張していないことを裁判官が認定することは出来ませんが、この辺をちゃんと主張していないんだろうなと思われる判例はそこそこ多いです。
車両通行帯だ!と主張してきても、車両通行帯ではないよね?と反論されると分が悪い。

 

並走状態になったときに、接触リスクがある上に、左側端がガラ空きなのに避けもしなかったとなると、それが事故回避義務違反として認定されるわけで。
それを27条から概念を流用するのか、18条1項に基づくのかは双方の主張次第でもありますが、結果としては大差ないかと。

 

民事って、刑事上の処罰対象にはならないことも過失として評価される余地がありますよ、というのが私が判例を紹介した意味。
知らぬ間に謎の解釈を加えたがる意味不明な人もいるので、本当に困る。

正直なところ

自転車の道交法って最低限のことだけ抑えておけばよくて、信号を守るとか、左側端を走るとか、二段階右折とか。
それ以上のことは義務だからどうとかよりも、事故を回避するためにはどうすべきか、事故を未然に防ぐにはどうすべきか?ということを考えておけば自然と答えは出る話。

 

もちろんですが、事故回避のためにわざとブロックするというのは無しですよw

 

わからないときは、最も安全そうな方法を選べば法に触れることはあまりないと思う。

 

上の動画の件も、こういう位置をわざと走る人って、どうせ車両通行帯ガーとか、追い付かれた車両の義務は関係ない!とか言いだすのがオチ。
車両通行帯ではないし、見分けがつかないというのも単なる勉強不足だし。

 

そういうことで、刑罰規定の道路交通法と、道路交通法の概念を流用した注意義務・事故回避義務は差があるという話。
車両通行帯ではない第2車線を通行していた原付が、第1車線から進路変更した大型車と衝突した事故。

これも原付に2割の過失をつけてます。

 

道路交通法18条1項の解釈と自転車。
ずいぶん前にも書いたのですが、 道路交通法18条1項の解釈、どうも勘違いする人がいるような。 18条1項 (左側寄り通行等) 第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車...

 

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、同法18条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。

 

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

理由はこちら。

本件事故現場は道路左側が2車線になっており、そのうち、少なくとも事故直前の時点にあっては、道路中央線から遠い車線、即ち道路左側から数えて1番目の車線(以下便宜「第1車線」という)上を被告のトラックが、道路中央線に近い車線、即ち道路左側から数えて2番目の車線(以下便宜「第2車線」という)の梢第1車線寄りの部分を原告が、いずれも同一方向に、殆ど近接した状態で併進したこと、被告は第1車線上の他車輛を追越すため後方を確認したが、その確認状態が杜撰で不十分であったため原告に気付かず、事故現場直前約13.8mの地点で第2車線に進路変更のための方向指示器を挙げて追越にかかり車体が約半分第2車線に出たところで直進してきた原告に接触したこと、しかし右の第1、第2車線は道路交通法第20条所定の車両通行帯ではないこと、即ち、右両車線の中央を仕切る境界線は道路標識、区画線及び道路標示に関する命令別表第四(区画線の様式)(102)所定の車線境界線であって、道路管理者である建設省において便宜表示した記号にすぎず、之と若干まぎらわしい記号ではあるが、同命令別表第六(道路標示の様式)(109)1(1)所定の、公安委員会が危険防止のため設定表示した車両通行帯境界線ではないこと

 

福岡地裁小倉支部 昭和48年1月19日

これも原付に対しては違反とまでは言えないとしながらも、18条1項の立法趣旨から事故回避義務を認めている。
違反ではないけど過失になるなんて、民事では普通のこと。

 

法律を中途半端に覚えた自転車乗りが謎のブロックをしたりするのは論外ですが、それと同時に、求められてもいない義務を果たせと車のドライバーに言われるのもおかしい。
追いつかれた車両の義務として歩道に行け!とか言ってくる人もいるわけですが、当然そんな道路交通法の義務はない。
既に左側端に寄っているにもかかわらず、それ以上寄れというのは理不尽な上にそんな義務もない。
法解釈がおかしな人たちが騒ぐから面倒なことになるだけのことですが、もうちょっと勉強したほうがいいと思うし、自転車乗りとしては最大限事故を回避するにはどうするかを考えていればそれでいい。

 

まあ、本格的なキチガイ様が突っ込んでくるときは防ぎようが無いですが・・・

 

あともう一つ書いておきますが、判例って当事者にしか効力が無いので、民事であればその道路状況、交通の状況などから、その場でどういう事故回避義務があったのか?を争っているだけのこと。
中には法解釈の重要な部分を判示するケースもあり、そういうのは全ての事例で指針になる可能性はあるにせよ、常に譲れとかそういうバカな話でもない。

 

そもそも、何で27条から自転車が除外されているのか、その意味を考えればわかると思うんだよなぁ。

 

この域まで来ると、さすがにかわいそうな。
先日もちょっと書いた件ですが、 この域まで来ると、さすがにかわいそうだなと。 理解力というか、法律の読み方を説明しないとわからないんでしょうね。 一次ソースの意味を理解されてないようですが、記事で書いたように一次ソースを確認する手段は裁判所...

 

18条1項に基づいて通行している分には、そもそも追い付かないし、自転車は常に左側端で譲っているわけだし。

本来に趣旨でいうならば

道交法の趣旨からすると、本来は自転車は左側端を通り、追越ししたい車両は安全な側方間隔を空けて追越しするという規定になってます。
追越し時に側方間隔が近すぎる!と騒ぐロード乗りってそこそこいるように感じるのですが、上の動画をみてもわかるように、ブロックしたとしても危険な距離での追越しは起こる。

 

左側端をわざと走ってない人が、文句言える立場なんだろうか?と考えてしまうのですが、たぶんこれ、18条1項の軽車両については罰則を設けることと、それと同時に追越しや追い抜きの際の側方間隔の規定を作れば済むんじゃないですかね。
自転車はきちんと左側端を通り、車は安全間隔を空けて追越しする。
単にそれだけのことなんですが、法律を分かってない人たちが義務だ権利だと語りだすから話がおかしくなるだけのこと。

 




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