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優者危険負担の原則。強い人が大きな注意義務と責任を負う。

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先日もちょっと上げた事例ですが、

 

横断歩道と自転車の判例。
以前、横断歩道を渡ろうとする自転車の判例をいくつか挙げたのですが、 正直なところこれについては道交法と実態の差が激しい面があって、どちらにせよ事故を防止する観点から考えると横断歩道を渡ろうとする自転車がいたら一時停止するのが当たり前のこと。...

 

読者様
読者様
自転車が進行妨害したと言いながらも3:7ってなんか納得しづらいですよね。

これは優者危険負担の原則なので、しょうがないです。

優者危険負担の原則

簡単にいえば、強者が弱者よりも大きな注意義務を負い、大きな責任を負っているという原則なので、基本強者のほうが過失が大きくなる原理です。
なので車と自転車の事故であれば、それこそ十字路で自転車が赤信号無視して交差点に進入して車と衝突しても、自転車:車=80:20とかにされますから。
事実上、自転車が完全に悪いケースでも、車は大きな注意義務と責任を負うというのが判例法理。
実際、福岡高裁の判例でいうと、車の運転者の右側注視義務違反は認めたものの、重過失までは認めなかった。
けど過失割合だけで見ると重過失風ではありますよね。

 

このように判示されている判例もあります。

ところで、(2)で述べたような、本件マンションのスロープで危険なスケートボード遊びをし、しかも、間近に迫っている加害車両に気付くことなくスロープを滑り降りた亡被害者の落ち度と、(3)で述べた被告の落ち度とを単純に比較するならば、被告の主張するように、亡被害者の落ち度の方がより大きいと言えるだろう
しかし、交通事故における過失割合は、双方の落ち度(帰責性)の程度を比較考量するだけでなく、被害者保護及び危険責任の観点を考慮し、被害者側に生じた損害の衡平な分担を図るという見地から、決定すべきものである。歩行者(人)と車両との衝突事故の場合には、被害者保護及び危険責任の観点を考慮すべき要請がより強く働くものであり、その保有する危険性から、車両の側にその落ち度に比して大きな責任が課されていることになるのはやむを得ない。特に、被害者が思慮分別の十分でない子供の場合には、車両の運転者としては、飛び出し事故のような場合にも、相当程度の責任は免れないものというべきである。

 

平成15年6月26日 東京地裁

生活道路(車道幅員5.4m)で、マンションのスロープからスケボーで飛び出したことによる事故ですが、時速30キロ程度で車道を通行する車にスケボーが衝突した死亡事故です。
判決でも被害者のほうが落ち度が大きいとしながらも、優者危険負担の原則からすれば被害者:車=40:60としている。

 

ただこれ、自転車同士でも若干の優者危険負担の原理が働くことはあって、ロードバイクみたいにスピードが出る自転車とママチャリの衝突だと、ロードバイクのほうが分が悪いです。
それだけ大きな注意義務を負っている。
個人的には、重量30キロを超える電動アシスト自転車と、重量8キロ程度のロードバイクが万が一衝突した場合は、ロードバイクのほうが重量的には弱者なんじゃないかと思ったりしますが、そういう主張をする人もいないんですかね。
まあ、そんなくだらないことよりも事故を起こさないように気をつけて乗るのが一番なのですが。
生活道路でスピード出して乗るロードバイクはさすがにいないと信じたい。

 

ちなみにですが上の判例では「交通のひんぱんな道路」には当たらないとしているので、76条4項3号の違反には当たらないとなっています。

(禁止行為)
第七十六条
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。

こういう判例って聞きませんが、いわゆるノールック車道降臨事件。

仮にこういうので争った場合、車道を直進していただけのロードバイクも過失はそこそこつくと思います。
前に紹介した、逆走自転車と衝突した判例で、順走側が過失100%になった判例。

 

逆走自転車と衝突したのに、順走自転車が過失100%??
ちょっと前に取り上げた件。 この記事で取り上げたブログさん、ほかにも判例について解説(?)をしているようなのですが、逆走自転車と順走自転車が衝突した事故で、順走側に過失100%を付けている判例を紹介していました。 古い記事のようですし、何か...

 

これもダイジェスト版しかないので正確にはわかりませんが、なぜか順走自転車が相手方の逆走違反について主張していない。
けど仮に逆走について主張したとしても、たぶん分は悪いです。
先に停止して危険回避した逆走自転車と、前をよく見ていなかった順走自転車ではまあまあ厳しい。

 

冒頭の横断歩道事故ですが、自転車に30%の過失が付いているというのは、そこそこ重い部類です。
けど車のほうが大きな注意義務と責任を負うので、簡単にいえばデカくて強い奴が悪いという法理になる。

 

けど最近って、明らかに弱者のほうが悪いケースでは弱者側に過失100%を認めた判例もあります(東京地裁 平成24年7月20日)。
同じくスケボーの飛び出し事故ですが、渋谷区の片側3車線道路(表参道通りと明治通りが交差する十字路)で、スケボーに乗った人が赤信号無視して横断歩道に突入。
第2車線を時速50キロで通行していた車が急制動とクラクションを鳴らしたものの、回避できる距離ではなかったので衝突した事故。
この判例では直前横断&赤信号無視で回避可能性が無いこともそうですが、交通のひんぱんな道路での禁止事項違反もあるので過失相殺を認めず、スケボーに100%の過失としています(注:原告は車の方です)。
この判例では、スケボー側が車の交差点内安全進行義務違反(36条4項)を主張していますが、車が急制動を掛けて12.1m進む間に、スケボーも6.4m進行するなど高速度での赤信号無視進入であることや、交通のひんぱんな道路での禁止事項違反ということからスケボーの過失が100%。

 

優者危険負担の原則って、いつも思うのは多摩サイ。
子供がウロウロしている状況でも、時速40キロ近くでかっ飛ばしていくバカもいます。
サイクリングロードは道交法上では道路(車道と歩道の区別が無い道路)なので、理屈の上では歩行者は右側端ないし左側端通行義務があると言えますが、それに反する歩行方法をしている歩行者がいたとしても、側方間隔保持義務と徐行義務、安全運転義務はあるので、あの状況でかっ飛ばすロードバイクはヴァカなんだろうなと思う。

 

勇者は保護する義務があるんですよ。
いや、優者か。

 

時々勘違いしている人っているように思うんですが、道路交通法を守っていればそれで十分と。
道交法は最低限のところのルールであって、そこから上があるんですね。
優者危険負担の原則というのはいわゆる弱者保護そのものなので。
それを理解していない人って多いと思う。

 

だからこういう珍論まで出てくる。

 

横断歩道と自転車の判例。
以前、横断歩道を渡ろうとする自転車の判例をいくつか挙げたのですが、 正直なところこれについては道交法と実態の差が激しい面があって、どちらにせよ事故を防止する観点から考えると横断歩道を渡ろうとする自転車がいたら一時停止するのが当たり前のこと。...

 

正直メチャクチャ。
先日アップした記事なんですが、 他のサイトさんの解釈について少し触れています。 このサイトさん、法律解釈はかなり弱いようで、だいぶ間違ったことを書いているので気をつけた方がいいかと。 動画でも間違い 38条は「横断歩道を渡ろうとする歩行者」...

 

道交法上は横断歩道を渡ろうとする自転車に対して一時停止義務はないですが、それは単に道交法の規定にしか過ぎなくて、注意義務と回避義務が消滅するわけではない。
注意義務と回避義務は自転車も含め車両にも歩行者にも課されるわけですが、その注意義務の程度としては優者危険負担の原則があるので、デカくて強い奴がより大きな注意義務と責任を負う。
道交法だけを考えているだけでは到底足りない。

 

ちなみに今度新しく創設される予定の小型低速車(電動キックボード)。
恐らくですが、自転車と同等のカテゴリになるものと思われます。
ただし、対ロードバイクとなった場合には、まあまあ微妙な気がします。
小型低速車は時速20キロまでしか出ない電動キックボードなので、速度次第ではロードバイクが強者と見られるかも?

ついでにですが

そういえば前に紹介した判例ですが、コレ。

 

自転車に対し、27条【追いつかれた車両の譲る義務】を認めた判例。
堅苦しい話が続いていますが、一つの参考になるかと思いまして。 自転車の場合、道路交通法27条の【追いつかれた車両の義務】は適用外です。 これは刑事事件として取り締ま利される対象ではないというだけで、民事では認めた判例もあります。 事例 判例...

 

これ、自転車に10%付いた理由は、路側帯に退避したときに自転車が操作を誤って転倒した可能性を否定できないという観点で10%付いてます。
ここの詳細は争いがあったようですが、事故回避義務は果たしたけど、退避した先で操作を誤った可能性があるという点で10%。

 

これの一審判決ですが、すみません。
やっぱ見つかりません。
判例検索だと、基本的に1審がどこで終局審がどこなのかまでリンクも貼ってあるのですが、なぜかこの判例は1審情報がなにも載っていない。
あと一点勘違いしていたのですが、裁判所で保管する判決文は、保存期間は50年なんだそうです。
事件記録が5年で破棄。
判決確定後には、事件記録は全て1審に戻るので探せばあるとは思いますが、ちょっとそこまでするのは面倒なのですみません。

 

判例を読むときは、双方がどこを認めていて、争点が何だったのかをきちんと見ないと、判例の価値を見誤ります。
以前、38条の判例をいくつか挙げましたが、

 

横断歩道の自転車通行と、38条の関係性。
こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車のものなので、基本的には横断歩道を通行する自転車に対しては適用外です...

 

38条1項前段の義務を認めた判例がある!と謎の非難をされましたw
恐らく横浜地裁の判例だと思われますが、どう読んでも争点がそこにあるとは思えないんですけどね・・・
双方ともに横断歩道を渡ろうとしている自転車がいたら減速徐行する義務があることを認めた上で、横断予見性があったのか?が争点になっているように思うのですが。

 

要は先行して同方向に向かう自転車が、横断歩道を渡ろうとしている予兆があったのか?というところ。
結局のところ、同方向に進んでいるのだから見えているし、一方通行道路で時速50キロも出すなよということで判決が下ってますが、もちろん争点を理解した上で単にマウンティングしたかった程度なんだろうなと思ってますが、もちろんマジで語ったのではなく争点を理解した上なんでしょうけど。
アレでマジで語っているとしたらさすがにヤバイですし。

 

そういう意味ではこれもそう。

 

キープレフト(18条1項)の判例と、読み方。
先日もちょっと書きましたが、 この中で取りあげたキープレフトの判例。 車同士の衝突事故ですが、左側端2m空けて走行していた車が、18条1項のキープレフトに反するのか?が問われた民事事件です。 民事なので、事故の過失割合を決めるだけの訴訟。 ...

 

静岡地裁浜松支部の判例を読み違えた人から、

読者様
読者様
自転車は左側端から2m認められている!

 

などと謎のメールを貰いました。
回答してあげたのに、返答もないなんてひどい話だよなぁと思いますが、そもそも質問の意味が不明すぎて何を回答したらいいのか分からない日本語で困惑したのを思い出しますw

 

そもそもこの判例は、左側端2m空けて進行していた車が、18条1項の違反と言えるのか?が争点。

この判例を見て、自転車の通行分は2mまで認められている!なんて読み方をする人がいるとは思ってもいなかったのである意味では衝撃です。
例えばですが、仮に車が左側端1.5m空けて通行していたとして、「軽車両の2m分を空けていなかったから18条1項の違反」なんて判決が下ると思うのだろうか?
2m空けて通行していたので、軽車両通行分を2mとみれば車の通行位置が18条1項に反する過失はないよね?というだけのことなので、左側端を2m空ける義務を認めたわけでもないし、逆に2m空けていないと違反だという判例でもない。

 

この道路幅、後続車と先行車の状況、路肩が舗装されていないこと、車の幅など総合的にみて2m空けていた車は違反ではないという判示であって、それ以上の意味は持たない。
これが仮に、左側端から2mの位置にいた自転車が18条1項に反するのか?という判例であれば多少意味合いは変わるでしょうけど、そうであったとしても結局はその道路状況、交通の状況など総合的にみてどうなのかという判断なので、ほかの道路でも2m認められると解釈することは出来ませんし。

 

だから、左側端1.5m空けていたオートバイに18条1項の違反があったと認定した判例もあれば、左側端から2mの位置にいた自転車に対して18条1項の違反だとした判例もある。
原付は交通のひんぱんな道路では第1車線のできる限り左端を軽車両と一緒に走れとしている判例すらある。
そもそも18条1項なんて明確な基準はどこにもない規定なので、道路幅、交通の状況、混雑具合など様々な状況で変わるのだから、一つの判例をみて2m認められているなんて考えるのは残念ながら安易すぎる上にもうちょっと争点を考えた方がいいと思う。

 

道路交通法18条1項の解釈と自転車。
ずいぶん前にも書いたのですが、 道路交通法18条1項の解釈、どうも勘違いする人がいるような。 18条1項 (左側寄り通行等) 第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車...

 

例えばこういう判例があります。

事実認定

本件道路は、幅員約3メートルであり、ほぼ東西に通じ、東側は畑で本件道路との間には有刺鉄線が張られており、西側は民家で本件道路に沿ってブロック塀が設置されている。被告は、平成3年12月31日午前11時20分ころ、被告車を運転して、本件道路を南側(練馬方面)から北側(所沢方面)に向かって時速約10キロメートルで進行し、幅員約4.1メートルの西方に通じる道路が本件道路に逆T字路型に交叉している交差点の手前約9メートルに差し掛かったところ、折から同交差点で軽四輪貨物自動車が右西方に通じる道路を利用して切り返しを行って方向を転換しようとしていたので、その妨げにならないように被告車を後退させようと思い、被告車を停車させ、両サイドミラーで後方両側は確認したが、被告車の荷台にはガスボンベ一九本を積載していたので、バックミラーによっても自車の直後を確認することはできなかった。

他方、原告は、被害者を自転車の補助席に同乗させ、被告車に追従して本件道路左側端を通行せずに本件現場付近に差し掛かり、被告車が停止したので、同原告も被害者も自転車に乗ったままでその後方約3メートルの位置に停止した。被告は、両サイドミラーだけでは自車の後方の安全を十分確認できなかったにもかかわらず、両サイドミラーからでは追従車両等を認めなかったので、後方に車両等はないものと軽信し、後退の合図の警告音を発しつつ時速約5キロメートルで後退をして、そのため原告の運転する自転車に被告車を衝突させ、自転車もろとも同原告と被害者を転倒させてなおも後退を続け、同原告が立ち上がって運転席に駆け寄り、「止めて、止めて」と叫びながら運転席の窓ガラスを必死で叩くと、被告は漸く異常に気付き、被告車を停止させたが、停止するまでに被告車の後輸で被害者の頭部を轢過した。

 

右のとおり、本件道路の幅員は狭く、しかもその両側は有刺鉄線あるいはブロック塀であったから、原告としては、被告車の後方に停止する際、同車を避けるために道路の際に止まることはできなかったのであり、他方、被告は、自動車運転者として後退する時はその後方の安全を確認するのは運転者の基本的注意義務であるというべきところ、バックミラーによって直後の安全を確認することはできなかったにもかかわらず、安全を確認しないまま後退をしたのであって、その過失は重大であると認められる。

 

三  過失相殺の可否

1  道路交通法18条によれば、軽車両は、車両通行帯が設けられている場合を除き、道路の左側端によって通行しなければならないが、右規定は、軽車両が不安定でありまた高速度で進行するに適さないことから、交通の円滑と安全を計るために軽車両の通行方法を定めたものであり、しかし軽車両が自動車に追従する場合に、その自動車運転者がサイドミラーによって軽車両の発見を容易にすることまでも直接の目的とするものではないと解される。そして、自動車の運転者としては、当然バックミラーによっても後方の安全を確認することができ、かつそうすべきであり、他方、前記のとおり、本件道路は幅員約3メートルに過ぎず、その側方はブロック塀あるいは有刺鉄線があったから、原告が本件道路の左側端を通行せず、及び被告車の後方に停止したとしても、これをもって同原告にも本件交通事故の発生につき過失があったということはできない。

 

浦和地裁 平成9年8月12日

これを読んで、

読者様
読者様
自転車は左側端に寄らなくてもいいという判例がある!

という感想を持つ人がいるとは思えませんが(笑)、要は先行車がバックするときに後方確認していないことが事故の原因だよね?ということ。
単にこの道路状況、事故発生の様態からすれば、自転車に過失はないというだけの判例です。

 

こういう判例もあります。

右の争いなき事実によると、被告が、民法第709条以下の規定により、原告等主張の本件交通事故によって生じた損害を賠償すべき義務を負うことが明らかである。之に対し同被告は、被害者にも過失があると抗争するので検討するに、事故に遭遇した屋台の尾部に反射鏡を備え付けていなかったことは、原告等と同被告との間に争いがないが、<証拠略>によると、事故当時、屋台後部の左側の柱に点灯したカーバイトランプを吊してあったことを認めることが出来る。

ところで、道路交通法第52条によれば、本件の屋台の如き軽車両は、夜間道路にあるときは政令で定めるところにより、同政令の定める光度を有する前照燈、尾燈若しくは反射器、反射性テープ等を備え付けねばならないとされているが、たとえ、反射鏡の設備がなくても、カーバイトランプを点灯すれば、通常、後方数十メートルの距離より之を確認し得ると考えられるので、原告に、右の義務に違反した過失を認めることが出来ないものと解する。

次に、原告が、左側端通行義務に違反したか否かについて検討するに、事故に遭遇した屋台が、歩道から中央寄りに1メートルの個所を通行していたことは、原告等と同被告との間に争いがなく、<証拠略>によると、事故現場は、両側に幅員3メートルの歩道が設置され、車道の幅員が15メートルで、その中央にセンターラインの標識がある直線状の道路上であり、原告は、右屋台の前後の中央線が、歩道から中央寄りに略々2メートルの個所を進行していたところ、その後部に同被告運転の乗用車の前部中央附近が追突したものであること、及び<証拠略>によると、原告は、事故に遭遇する直前、絶えず交通事故の不安を感じ乍ら通行していたことを夫々認めることが出来る。

而して、道路交通法第18条は、本件の屋台の如き軽車両に、道路の左側端を通行すべきことを義務づけているのであるが、右の事実によると、若し、原告が、右義務を忠実に守り、出来得る限り車道の左側端を通行するように心掛けて居れば、或いは被害が一段と軽度であったろうと推認するのを相当とするから、被害者側にも斟酌すべき過失があると言わねばならない。そしてその過失割合は、被告の過失が、脇見運転即ち前方不注視と言う、自動車運転者にとり最も基本的な注意義務に違反した重大な過失であるのに対比し、被害者側の過失は、道路の左側端通行義務違反で、然も、更に左側に寄って通行すべきことを要求し得るのは、せいぜい50センチメートル以内に止まると解されるから、同被告の過失に対して極めて軽度と言うべく、従って、前者の過失割合を9割、後者の過失割合を1割と認定するのが妥当であると考える。

 

横浜地裁横須賀支部 昭和47年1月31日

夜間に屋台(軽車両)を引いていたところに後続車が突っ込んだ事故ですが、判決をみるとあと50センチ程度は左側端に寄れたはずとなってます。
ただまあ、これも一般化できるような判例なのかは正直怪しいところですが、事故回避義務の一環としては18条1項による左側端通行義務を順守すべきという結論に至っているとも言える。

 

車道の幅が15メートルとあるので、このくらいは過失にならなそうな気もするけど、実際は過失としている。
これも道路幅や道路の状況、交通の状況など総合判断した結果なので、常にビタビタに左側端まで寄って通行しろと解釈するものでもない。
あくまでもこの道路と状況において、という意味しか持たない。

 

判例の意味を理解できないと、こういうのも大きく勘違いすることになりますが、「自転車は左側端2mまで判例で認められている!」などと言ってきた人、今も見ているのかは知りませんが理解出来たんですかね?
判例の趣旨は、左側端2m空けて通行していた車が18条1項の違反と言えるのか?それが事故の過失になるのか?という争点です。
間違っても以下のような意味合いではない。
・車は左側端2m空ける義務がある
・軽車両は左側端から2mまで、左側端の範囲だと認められている

 

判例の争点と結論をきちんと見ないと大きな勘違いを生む。
その上で、優者危険負担の原則がある以上、自転車と車の事故では車のほうが過失が大きくなる傾向にある。
そもそも道交法違反について争っているわけではないですしね。

ついでになんですが・・・

先日もちょっと書いた件。

 

横断歩道と自転車の判例。
以前、横断歩道を渡ろうとする自転車の判例をいくつか挙げたのですが、 正直なところこれについては道交法と実態の差が激しい面があって、どちらにせよ事故を防止する観点から考えると横断歩道を渡ろうとする自転車がいたら一時停止するのが当たり前のこと。...

 

正直メチャクチャ。
先日アップした記事なんですが、 他のサイトさんの解釈について少し触れています。 このサイトさん、法律解釈はかなり弱いようで、だいぶ間違ったことを書いているので気をつけた方がいいかと。 動画でも間違い 38条は「横断歩道を渡ろうとする歩行者」...

 

謎のサイトを参考にしろ!とのことだったのですが、もうちょっと勉強したほうがいいとは思う。
この方なりの正義感なんでしょうけど、これって勘違いすると痛い目に遭うのは自転車の方なので気をつけた方がいい。

 

初めてみるサイトと動画なんですが、ちょっとびっくりしました。
この動画、めっさコメント欄が荒れているのですが、確実にうちのサイトから判例引っ張った方いますよねw

 

www.youtube.com/watch?v=zIbFSc-n_6s&t=99s

 

判例はこちらでも多々紹介してます。

 

横断歩道の自転車通行と、38条の関係性。
こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車のものなので、基本的には横断歩道を通行する自転車に対しては適用外です...

 

コメント欄を見ていると、動画主の方の言い分はかなり無理があるとして、追及している側の人もうまく追及出来ていないように思えるのですが、これだけ荒れるというのもある意味すごい。

 

判例引っ張るのはいいんですが、引用する側の人も、一度判例は全文読んで理解してから引用した方がいいと思います。

 

一つ気になった点。
たぶん当サイトから判例を引っ張ったと思われる方に対して、動画主が反論している場面。

その判例はすべて原告が横断していた自転車のものです。運転者が横断歩道を通行する判例ではありません。

 

www.youtube.com/watch?v=zIbFSc-n_6s&t=99s

この返しをみて、うーん・・・と少し考え込んでしまいました。
判例を全文読まないことの弊害って、こういうところにあるのかも。

 

38条の判例は当サイトでいくつも挙げていますが、

 

横断歩道の自転車通行と、38条の関係性。
こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いたように、横断歩道=歩行者のためのもの、自転車横断帯=自転車のものなので、基本的には横断歩道を通行する自転車に対しては適用外です...

 

当然ですが全文を書くのではなく、38条に関わるポイントと、自転車の過失として評価された点を重点的にピックアップしている。
これはイチイチ断りを入れなくても理解できると思っていたのですが、民事の判例では自転車VS車の構図なので、原告が自転車だからというのは特に関係なくて、双方の落ち度について争っているもの。
原告の主張に対して、被告は反論し攻撃防御するというのが裁判なので。

 

なのでどっちが原告とか特に関係ないんですよねw
というよりも、車の38条についてのところをピックアップしているわけなので、車の過失がどこについたかを重点的に書いているとも言えるのですが、この動画主はどういう解釈で判例を読むのだろう?

 

福岡地裁、高裁の流れとしてはこうですよね。

【原告】車の過失によって死亡事故が起きたのだから、〇〇万円支払え!理由は車が横断歩道に近づいた時に自転車を見落とした重過失だ!

【被告】いやいや、優先道路はこっちなんだから妨害したのは自転車でしょ?35:65が相当では?

【福岡地裁】車の重過失は認めないが、過失はある。自転車は優先道路の妨害をしたから30:70です。

【原告(控訴人)】地裁判決に納得いかない!自転車は一度降りてから乗って渡ったのだから歩行者同然とみなして過失はゼロであるべき!

【被告(被控訴人)】控訴棄却を求める。

【福岡高裁】控訴は棄却する。一度降りて乗ったといっても、自転車は38条の適用外だから歩行者同等とみなす根拠は無いので。

原告が訴訟を提起した段階では、車の過失が100%だという前提で主張し、それに対し車が反論する。
その結果の判例なので、「運転者が横断歩道を通行する判例ではない」という見方は完全に間違い。

 

だいたいにして、自転車と車が衝突すればどっちが被害者か理解できるとは思いますが、普通、この手の事故では被害者が加害者に対して損害賠償を支払え!と裁判するわけで、加害者が訴訟を提起することって基本ありません。
なんで加害者がわざわざお金をかけて裁判をするのやら。
ごくまれに、債務不存在確認請求訴訟というのもありますが、横断歩道事故で車の過失が0%ということはあり得ないわけで、加害者が墓穴を掘るように裁判を起こすこと自体があり得ない。
もちろん、車の運転者が「35:65にすべき」という裁判を起こすことも出来ません。

 

あとちゃんと調べない弊害って出ているなと思ったのですが、うちで取り上げた判例のうち、民事ではなく刑事事件も含まれます。
その場合、車の運転者は被告人という立場。
なので車の運転者が横断歩道を通過するにあたっての注意義務について争っているもの。

 

最近、判例をきちんと分析できない人って多いような気がするのですが、横断歩道で事故が起きた民事訴訟であれば、双方の落ち度を争っているわけだし、刑事事件であれば車の運転者が犯罪なのかどうかについて争っている。
この単純な構図を理解できないのは、ちょっとよろしくないのかなと。

 

自分自身が行政訴訟をしているときに気をつけていたことですが、ある仮説を立てたときに、一旦自分の仮説を否定する立場に立って徹底的に否定する根拠を探します。
Aという法理を使えば、否定できそうに見えるけど、Bがある以上は否定する根拠にはなり得ないよね?みたいな想定をひたすらする。
そういうシミュレーションをしていたおかげで、相手方がどういう反論して来るかも予想できたし、速やかに反論できる。

 

実際には想定していない法理により反論されたことも一度あってさすがに焦りましたが、あるところで昭和30年代に国が出した重要な通達の存在を知り、国会図書館で通達を発見して反論。
自説に対して批判的に見る癖付けをしないと、ダメだと思う。

 

自説を肯定する根拠を探そうとすると、読み違いするんですよね。
実際にはそういう意味では書いていないのに、自分に有利な記述だと誤解してしまい、それを証拠として提出して反論喰らって墓穴を掘るみたいな。
自分の主張を批判的に検討する癖付けをしないと、間違うと思う。

 

あともう一つ。
車道を走る自転車は軽車両だけど、歩道を通行する自転車は車との関係性でいうと歩行者だ!みたいな謎主張もある様子。
これはさすがに酷い。
もうちょっと勉強した方がいいと思う。
けどこれ、名無しさん(小島さん、渡部さん)も似たようなこと言うんだよなぁ・・・

 

名無しさん→小島さん→新キャラの渡部さん登場w
もう、うっとおしい。 名無しさんという方に変わって別人キャラの小島さんが登場したのですが、名無しさんと小島さんは同一人物で確定しておりますw 次に渡部さんという方が登場されたのですが・・・ 名無しさん=小島さん=渡部さん どうでもいいのです...

 

相手が誰なのか次第で、自転車の立場が変わるという考え方のようですが、法律構造はそうなっていない。
私はこの動画主にはちょっと関わりたくないですが、果敢にコメント入れている方をみると尊敬します。
名無しさん(小島さん、渡部さん)のコメントのときも、途中で止めたくてしょうがなかったですしw
話にならないんですよね。
法律に則らないオリジナル解釈を散々披露された場合。
だって名無しさん(小島さん、渡部さん)、

管理人
管理人
何条の規定で否定されるか教えてください。
条文を挙げて反論できないようならお断りします。
読者様
読者様
横断者である自転車が優先に決まってます。
これが法的根拠です。

いったいいつ、お前が法律を語ったんだ・・・
根拠がない感情論レベルだと議論にならないから、条文挙げてくれと言ってもこの始末。
このサイト、コメントが付くと携帯にメールで来るシステムなんですが、夜中もメールの嵐。
そのエネルギーで勉強したらいいのに。

 

ということでかなり話が逸れましたが、優者危険負担の原則がある以上、どうしても過失割合はこうなります。
スケートボード事故の判例はそのあたりもしっかり判示してますが、車両の運転者は道交法の優先義務とか妨害禁止規定をはるかに超えた重い注意義務があるわけです。

 

ちなみにですが、後日書きますが、幅寄せで暴行罪が成立するかどうかの判断をしている重要な判例の中に、このような一節がありました。

自動車の運転は,それ自体常に重大な事故を生ずる可能性を内包する行為である

 

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

当たり前のことですが、これをこの気持ちを持ち続けているかどうかで全然違うのかと。
この判例、暴行罪の成立要件について語っている重要なものですが、後日ほかの判例も含めて書きます。




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