以前書いた記事について、ご意見を頂きました。
自転車の違反者講習行きの指定違反15項目の中に37条違反が含まれています。
この違反はどのようなときに成立するのでしょう。
Contents
自転車の違反者講習行き危険行為
違反者講習行きの指定違反(危険行為)は、施行令に定めてあります。
第四十一条の三 法第百八条の三の五の政令で定める行為は、自転車の運転に関し行われた次に掲げる行為とする。
八 法第三十七条(交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
二段階右折する自転車がどうやったら左折車と直進車に進行妨害できるのか?という疑問については、こちらに書いた通り。
いくつかの警察や自治体の資料を見る限り、二段階右折せずに小回り右折した結果、直進車や左折車を妨害する行為を指しているとしか思えないのですよ。
一例:三重県警
一例:京都府警
他の警察や自治体のイラストをみても、小回り右折した結果妨害する行為を意味するとしか思えないです。
以前も書いたように、二段階右折中の「直進部」を右折中と捉えると、まあまあ意味がわからなくなります。
下記だと、双方「右折中」になるので優先関係が規定出来なくなりません?
事故った場合、悪いのはどっちなんだ笑。
なので「右折」を定義するところから始める必要があると思う。
以前も書いたように、元々37条には2項がありました(昭和46年に削除)。
右折する車両は左折直進車を妨害禁止で(1項)、左折直進する車両は「既に右折している車両」を妨害禁止(2項)。
右折中と既に右折している車両の限界点が不明で評判が悪かった規定です。
これについて最高裁判所が判断しています。
道路交通法37条2項にいう「既に右折している車両等」とは、右折を開始しているとかあるいは右折中であるというだけでは足りず、右折を完了している状態またはそれに近い状態にある車両等をいうとする解釈のもとに、本件において、被告人の車両が、いまだこの状態にはなく、直進する被害車両に優先権があるとした原判断は、正当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和46年9月28日
完全に右に向いた(直進体制に入った)か、それに近い状態を「既に右折している車両」だとしています。
警察庁の「右折」の定義はこちら。
交差点において車体の向きが直進状態から変わりはじめ、交差道路の方向に完全に向きが変わる範囲をいう。
警視庁交通部 逐条道路交通法解説
二段階右折を忠実に守ると、信号がない交差点でもこうなる。
そうすると、この位置で右に向いた自転車は「既に右折している車両」になる。
なので二段階右折における「右折」とは、直進で進んで「方向を変える瞬間」だけなんじゃないか?と思われます。
他の規定から考えてみます。
青信号の意味にこれがありますが(施行令2条)、
「右折しようとして直進」なので、やっぱり方向転換するまでの部分は直進なんだと思う。
理屈の上ではこの「方向転換時」に直進車の進行妨害は起こりうる。
この場合の直進車は、全ての方向から直進する車両です。
道路交通法37条1項にいう「当該交差点において直進し………ようとする車両等」とは、右折しようとする車両等が右折開始まで進行して来た道路の進行方向、その反対方向およびこれと交差する道路の左右いずれかの方向へ直進する車両等をいうものと解すべきであるから、本件のトの字型の三叉路交差点を右折しようとする被告人運転の自動車と、それが進行して来た直路と交差する道路を、被告人運転の自動車が右折後に進行すべき方向と同一の方向へ交差点を直進すようとするA運転の自動車との間に、同条項の適用があり、A運転の自動車の進行を妨げた被告人に同条項違反の罪が成立するとした原判断は、正当である。
最高裁判所第三小法廷 昭和46年7月20日
なので理屈の上では、右折中に後続直進車を妨げる可能性があるのと(②)、③も右折中に含めるなら対向直進車を妨げる可能性はあります。
けどまあ、現実的に起こりうるのは二段階右折せずに小回り右折した結果、左折直進車の進行妨害する行為をイメージしていると思われます。
そのように解釈しないと、辻褄が合わないと思われます。
直進部も右折中と捉えると、事故ったときは双方に優先権無しになりますよ。
二段階右折で方向転換した後は、単に「直進する車両」でしかないと思われます。
旧37条2項との関係性で「右折」を定義すると、方向転換し始め~直進体制に入るまでが右折のはず。
ちなみに某県警本部にこの記事に書いた疑問を質問したときは、
「二段階右折は単なる俗称に過ぎず、右折中=方向転換する行為と考えるしかないと思うけど、よくわかんない笑」
とのこと。笑。
ただし、この解釈に従うとここの関係は直進対直進になるので、また問題がありそうな気がします。
右折から直進段階に入ったとみれば、この関係性では自転車が劣後することになるとは思いますが。
ですが右に進行方向を変えて直進体制までを「右折」とした場合、黄色車が右折するなら、右折対右折になりまた意味がわからなくなる。
やっぱ小回り右折する車両についての規定と考えたほうがスッキリするような気がします。
ちなみに側端に沿って徐行と言っても、「右折」する段階では同一進行方向の後続直進車に対する進行妨害は起こりうる。
そうすると、信号がない交差点でも「右折」する段階で後続直進車の動向を確認せざるを得なくなり、多くの場合一時停止するなどして後続直進車の動向を確認してから進路を右に向けることになるとも取れます。
自転車に二段階右折を義務付けしている理由は、速度が遅い自転車が道路中央に寄ること自体が危険だから歩行者の横断に準じた動き方をさせたいわけなので、事実上は「横断」に近い考え方になるのかもしれません。
ただまあ、いろいろ考えると二段階右折する段階で37条違反が成立すると捉えると矛盾ばかり出るし、事実上は小回り右折した結果、進行妨害することをイメージしているんじゃないですかね。
あんまり自信ないですが、警察本部も「わからない」と言っているので笑。
現実的には
宮崎注解にはこのように書いてあります。
なお、本項の規定は、すべての車両が右折する場合に適用されることになるわけであるが、実際には、右小回りをすべき車両について適用されることになろう。
宮崎清文、注解道路交通法、立花書房、1966
二段階右折する自転車に当てはめると、まあまあ意味不明になります。
なので施行令41条の3にある危険行為についても、自転車が小回り右折した結果、左折直進車を進行妨害する行為をイメージしていると思われます(たぶん)。
けどまあ、警察本部がわからないと答える規定にどんだけの意味があるのかはわかりません。
右折の定義が定まらないと答えも出ないと思う。
直進→右折→直進と捉えると、37条における「右折」とは自転車が二段階右折のために方向転換する瞬間のみ。
なので施行令41条の3についても、小回り右折した結果、進行妨害する行為を危険行為と考えているのではないでしょうか?
あとは、理屈の上ではこのように方向転換する際にも、後続直進車との関係性では進行妨害になりうると思いますが、現実的にはこんな位置で車道にせり出した位置で待つ自転車はいないかと。
普通通りにプレイすれば、自転車が37条違反に問われるケースなんてないような気がします。
ですが、警察本部が「わからない」というくらいなので、普通にプレイしている分には関係ないような気がします。
いろいろ考えると37条は小回り右折する車両についての注意義務と考えるほうが合理的に感じますが、いろんな解説書をみても二段階右折する際の注意義務は書いてありません。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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