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歩道の直前で一時停止しても防げない。

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結構不思議に思うのですが、こちら。

歩道の直前での一時停止義務違反(17条2項)を主張する人がまあまあいますが、

(通行区分)
第十七条
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。

見りゃわかるように、歩道の直前で一時停止したところで事故は防げませんが…
大丈夫なのだろうか?

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25条の2第1項

もちろんこの場合、道路外右折車に課された義務は「正常な交通を妨害するときは道路外に右折してはならない」。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

この規制に従えば、道路外に右折するにあたり対向車の左側から2輪車が「正常な交通」として進行してくることが十分予見されるので、最徐行しながら対向車の左側を注視して進行する義務があると言えます。

 

17条2項は「そのあとの話」でしかないし、17条2項を遵守して「歩道の直前」で一時停止したとしても車道左側端を塞ぐことになり、何ら事故を防げない。

 

こういう人は道路交通法を理解してないのだろうか↓
心配になる。

なのでこの場合、道路外右折車に課された義務の順番はこうなる。

 

①25条2項(あらかじめ中央により徐行)
②25条の2第1項(正常な交通を妨害するときには道路外に右折禁止)
③17条2項(歩道の直前で一時停止)

 

文句つける側ですら道路交通法を理解してないとなると、そんだけルールをわかってない人が多いのだなと実感します。

 

ところで。

タイムリーな

今日の昼にアップした記事がほぼ同じ状況にて、2輪車の過失を60%としていますが、

 

2輪車の渋滞すり抜けと、道路外右折車の非接触事故。
とりあえずタイトル通りなので、具体的事例を。 2輪車の渋滞すり抜けと、道路外右折車の非接触事故 判例は神戸地裁 平成10年10月29日。 まずは事故の概要。 渋滞している国道上において、南進してきた加害車両が、右折して路外に出るため、渋滞し...

 

通常、Twitter動画のケースでは2輪車過失は20%程度です。

 

この差はどこからくるのでしょうか?

渋滞している国道上において、南進してきた加害車両が、右折して路外に出るため、渋滞している対向車両の間隙を抜けようとしたときに、渋滞車両の左側を被害車両で北進走行してきた被害者が、加害車両を避けようとして、道路脇の鉄柱に激突した。両車両は、接触はしていない。

ポイント

・道路外右折車は時速5キロ程度
・2輪車は歩道と車道外側線の間、約1.4mのところを時速約50キロで進行
・2輪車はバランスを崩し歩道の縁石に擦りながら、道路脇の鉄柱に衝突

(一) 本件事故現場は交差点ではないこと、対向車線が渋滞していても、その外側に二輪車が通行可能な外側帯があるとき、渋滞車両の陰を二輪車が進行してくることは容易に予測できるところであること、付近は南下して右折する車両は稀であることを考慮すれば、加害者には、右折開始時に対向車線を近づいてくる車両の安全を確認するだけでなく、開始後も、渋滞車両の陰となる外側帯を北上してくる二輪車がないかに細心の注意を払って、安全を確認しつつ進行する義務があったものと言うべきである。加害車両の右折中の速度は時速5キロメートル程であったと推定されるが、加害者が被害車両を発見した地点は12.7mの至近距離であって、同人運転の加害車両は小型ダンプカーで車高が高いことからすれば、右折進行しながら、常時北進して来る車がないかを注視し、さらに徐行して進行していれば、もっと早く被害車両を発見することができ、あるいは自車が外側帯内に進出しかねまじき勢いを被害者に見せることもなく、それによる被害者の動揺を誘うこともなかったというべきであるから、加害者に過失があったことは否定できない。

 

(二) 他方、被害車両は、制限速度を越えていたとまで認めるべき証拠はないが、渋滞中であって右方への見通しが極めて悪いにもかかわらず、外側帯上をかなりの速度で走行していたこと、左側には、川の西にある敷地へ出入りするための橋が随所に設けられていて、稀とはいえ対向右折車両があることは予測できたこと、渋滞車両に切れ目があれば、右折車等の存在を予測すべきであること、被害車両は加害車両には接触しておらず、単に発見が遅れたために、動揺して平衡を失ったものと推定されること、などの事情を総合すると、被害者の過失は重大である。

 

(三) 以上のような加害者の過失と被害者の過失の双方を彼此斟酌すれば、被害者には、本件事故の発生について、6割の責任分担をすべき過失があったものとして、その被った損害の6割について過失相殺をするのが相当である。

 

神戸地裁 平成10年10月29日

2輪車の速度(50キロ)、両者は接触していないこと、被害2輪車が「単に発見が遅れたために、動揺して平衡を失ったものと推定されること」などを総合的にみて2輪車過失のほうが大きいとしています。
被害2輪車が漠然と高速度進行し、動揺して操作ミスしたと考えられる点を「重大な過失」としています。

 

逆に道路外右折車は時速5キロ程度で右折しているなど過失が小さいとの判断。

 

民事の過失って道路交通法の義務違反を争うわけじゃなくて、不注意全般を争うのだから、これはこれで間違った判断というわけでもない。
事案が違うなら似たような事故態様でも、過失割合に違いが出るのは当然で、結果論で考えても事故は防げないのよね。

 

事故発生とは無関係に双方に課された義務、注意義務はこうなる。

 

<道路外に右折する車両>
・正常な交通を妨害しないよう、渋滞車列の左側端を注視しながら進行し、正常な車道の交通を妨害しないことが明らかになれば歩道の直前で一時停止し、歩道の安全を確認する義務

 

<渋滞車列の左側端を進行する2輪車>

・車列に隙間があることから、道路外右折車や横断歩行者の存在を予見し、適宜減速して進行する注意義務

 

日本の仕組みって道路交通法の義務ではなく、過失を争う仕組みなわけで(過失運転致死傷罪、民事の過失割合)、具体的な義務のほか注意義務までを過失と捉えていることは明らか。
事故が起きた結果論から考えるのではなく、「何がいるかわからない前提」での義務や注意義務を考えない限りは事故は防げないのよね。

 

なお、慎重に道路外右折を試みた結果起きた事故について、右折車を無罪とした判例があります。

 

渋滞の隙間から「道路外へ右折」したクルマと、原付が衝突した判例。
道路外へ右折する際には、「正常な交通」を妨げてはならないという義務がありますが、 (横断等の禁止) 第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右...

 

この札幌高裁判決ですが、道路外に右折するに際しまずはこの位置で停止して確認。

第二停止地点はここ。

この位置で停止して確認することにより、左側端を進行してくる2輪車をケアしている(25条の2第1項)。
渋滞車列間を進行して道路外に右折するには、本来はこのように「対向車の左側端」の手前で十分な確認をしてから進行するのが筋で、そのあとに17条2項の一時停止義務があります。

 

結局のところ似たような事故態様に思えても、道路外右折車がどこまで注意を払っていたか次第で有罪・無罪は違うし、2輪車がどれだけ注意を払っていたか次第で過失割合も当然違いますが、冒頭の件については道路外右折車が対向車の左側を確認していた気配はなく、一般的な基本過失割合通りで

 

道路外右折車:2輪車=80:20

 

あたりになるでしょうし、過失運転傷害罪も有罪になるような事案でしょう。

 

けど、このような事故に対し17条2項を遵守したところで事故は防げないわけで、どのような義務があるかわかってない人が多いところを見ると不安しかありません。
道路交通法をまともに理解してない人が道路上にはウヨウヨしているのだと考えるしかないのでしょう。

 

そして結果的にどっちが悪いかなんて話は結果論に過ぎず、事故とは無関係に双方にどのような義務や注意義務があるか考えない限り、いつまで経っても変わらないでしょ。
過失割合にしても、必ず2輪車側の過失が小さくなる保証なんてないことは、判例からも明らか。


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