なんかいろいろと道路交通法の解釈について論争があるようですが、そもそもの話。
警察(都道府県警本部や警察署含む)が正しい道路交通法の解釈を教えてくれるなんて、幻想じゃないですかね。
解説書や判例などは見ますが、警察に聞くことに意味を感じません。
しかも「警察に聞いてきた」と語る人は、あたかも権威ありげに語るからタチが悪い。
警察に聞いてくることが無意味な事例を集めてみました。
Contents
「歩道の逆走は違反だ!」として切符を切る警察官
まずは交通取締りの現場から。
以前読者様の奥様が、「歩道逆走違反」(17条4項)として指導警告票を切られたケース。

結局抗議して取消になりました。
読者様からは「撤回書」のコピーも頂いてますが、要はこんな単純なことすら理解してないまま自転車の取締りに従事する警察官がいるわけです。
第十七条
4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
左側通行義務については、歩道と車道の区別がある場合は車道だと書いてある通り。
なお、愛媛県については条例で右側歩道通行は違反になります(罰則がない努力義務ですが)。

電動キックボードは「玩具」になると回答
今年の7月から電動キックボードのうち最高速度が時速20キロのものは「特定小型原付」として新しい区分が誕生しました。
しかし神奈川県警については「玩具だから自由に遊んでください」と回答w

神奈川県警では電動キックボードが大人のオモチャ扱いなので、警察に頼ることなく自制する必要がありそうです。
神奈川県は日本から独立する気なんじゃないかと心配になりますが、警察に頼ることなく県民自らが情報収集と遵守精神を持つしかありません。
「二段階右折は任意だ」と回答する警察署
YouTuberの方が警察署に行き、自転車のルールを聞いてきたそうですが、

自転車の二段階右折はルールではなく任意だと言われたそうですよ笑。
第三十四条
3 特定小型原動機付自転車等は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
信号の種類 | 信号の意味 |
青色の灯火 | 三 多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車(法第十七条第三項に規定する特定小型原動機付自転車をいう。以下この条及び第四十一条の三第一項において同じ。)及び軽車両は、直進(右折しようとして右折する地点まで直進し、その地点において右折することを含む。青色の灯火の矢印の項を除き、以下この条において同じ。)をし、又は左折することができること。 |
赤色の灯火 | 五 交差点において既に右折している多通行帯道路等通行一般原動機付自転車、特定小型原動機付自転車及び軽車両は、その右折している地点において停止しなければならないこと。 |
法律を読む限り、二段階右折は義務としか取れませんが、二段階右折を「任意」と回答する警察署のクオリティ。
「公安委員会のお願いじゃないと聞けないのか?」
以前このようなトンネルから出た後の変形T字路について、
現場の警察官的にどっちが正解と考えているのか質問しました。
トンネル入口に「自転車は降りて押して歩いて」と書いてあることを理由に、
「そもそも自転車はこのトンネルを通行できない」
と警察官が主張。
実際の意味は「トンネル内の歩道は狭いから、歩道を通行するなら押して歩いてね」という意味でしかないのですが、公安委員会が立てた通行禁止標識がないことを指摘したところ、名言発動。

おかしくないですか?
結局、二段階右折の話は一切答えてもらえないままでしたが、「すみません、聞く人を間違えました」とお礼を伝えて解散。

なお、変形T字路について二段階右折のラインは、判例からするとどちらも正解になり得ます。
「交差点の側端に沿って」なので、交差点の範囲を決めるしかない。
38条2項
38条2項は同一進行方向の横断歩道手前に停止車両がある場合に一時停止義務を定めていて、対向車線の渋滞停止時には38条1項前段により最徐行と解釈されますが、
都道府県警本部3つに質問したところ、全てバラバラの回答がきた上に3つとも不正解という珍事が発生。

3つの警察本部で解釈が違うという時点でヤバいけど、全員不正解だと笑うしかない。
なお、このルールの立法経緯や判例からすると、対向車は含みません。

条文解釈で悩んだときは、条文を新設した時の警察庁の解説を見たほうが理解しやすいかと。
なぜ新しくルールを作る必要があったかなど、立法経緯から説明してあるので。
「自転車専用」信号
先日記事にしたばかりですが、「自転車専用」信号がある場合、歩道通行自転車も車道通行自転車も「自転車専用」に従うのがルール(施行令2条5項)。
しかし一部の警察が間違った説明をして、YouTuberが「警察が言ってたから間違いない!」と自信満々に間違った内容の解説をしているとか。

「警察に聞いたから間違いない」と語る人はむしろ面倒。
自分で条文との整合性を確認しないまま「警察が言っているから間違いない」みたいにおかしな自信に繋がり、改めないままになるので。
AIに聞いてみた系は論外です。
こんな話は多数
ごく一部を取り上げましたが、「警察に聞きました」ほどあてにならない話はないし、解説書や判例でも間違った解釈は見かけます。
ただまあ、複数の解説書や複数の判例を見れば理解しやすいので、条文、解説書(複数)、判例(複数)を合理的に解釈するしかありません。
「警察に聞いたから間違いない」と語るだけの人には条文との矛盾を指摘しても理解する気がないし、むしろ害。
ホントなんとかならないもんかな。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
取り締まりの基準である悪質、危険な違反ではないのなら、法を無視した答え返してきますよね
実務上それはそれで良いと思うけど、出来れば法的にはどうなのかを答えた上で実務的な答えしてほしいですよね
事故った時はきっちり考慮される訳だし
コメントありがとうございます。
実務上も歩道逆走違反で切符を切ったり、電動キックボードを玩具扱いしたりなどメチャクチャですよ笑。
一度解散してくれないかなと思うときもあります。