右直事故の報道なのかと思ったのですが、どうも様子がおかしい。
26日午後6時10分ごろ、神奈川県横須賀市夏島町の市道交差点で、直進していた大型バイクが右折しようとしたトラックと衝突した。バイクを運転していた男性が全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
田浦署は同日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、トラックを運転していた市内在住の会社員の男(37)を現行犯逮捕。容疑を過失致死に切り替えて調べるとともに、男性の身元を確認している。
署によると、容疑者は容疑を認めている。
現場は信号機のある丁字路交差点。トラックは右折して自動車工場に入ろうとしたという。
横須賀の交差点で二輪車とトラックが衝突、男性が死亡(カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース26日午後6時10分ごろ、神奈川県横須賀市夏島町の市道交差点で、直進していた大型バイクが右折しようとしたトラックと衝突した。バイクを運転していた男性が全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された
様子がおかしいというのは、この事故のドラレコ映像がネットに出ているから。
追浜の日産正門前でトラックとバイクの事故…
バイク爆発してる…. pic.twitter.com/dpbMp6vt89— みずき (@7e2cf230249c4e5) July 26, 2024
右折車は黄色灯火で停止線越え。
直進オートバイは赤信号に変わって数秒後に交差点に高速度進入。
オートバイは何キロ出ているのかわかりませんが、なんで赤信号で高速度突破したのですかね…
ところで、赤信号無視のオートバイと、黄色信号で交差点に進入した右折車の事故の基本過失割合がどうなっているかご存知でしょうか?
赤信号無視のオートバイ | 黄色信号で交差点に進入した右折車 |
60 | 40 |
あくまでも基本過失割合なので細かい状況次第で修正されます。
普通車と大型車でも違うし、直進オートバイは赤信号に変わってから数秒後に交差点に進入している点を見ると、右折車側からみて「オートバイが信号無視することが予見可能だったのか?」は怪しい。
さすがに刑事責任(過失運転致死)は書類送検後に不起訴になるだろうけど。
ところでこのような事故について右折車ドライバーを逮捕する必要があるのか?という話が出てきます。
逮捕は刑罰ではなく身柄拘束に過ぎないので、死亡事故については加害者逮捕はまあまああるのですが、逮捕要件は過失の大小ではなく証拠隠滅や逃亡の恐れがあるか?が問題になる。
実際のところ「証拠隠滅や逃亡の恐れ」というのは、取り乱して自○する恐れがある場合も含めて運用しているので、逮捕自体にはあまり意味がないのよね。
たまに「加害者が逮捕されてないから過失が小さいのだろう」みたいな解説を見かけますが、何ら関係ありません。
右折車視点から見た事故現場。
右折を開始する際に、対向直進車が赤信号で停止しないことが予見可能な「特別な事情」があるなら別ですが、一般的には赤信号無視する直進車を予見する刑法上の注意義務はない。
本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和40年(あ)第1752号同41年12月20日判決(刑集20巻10号1212頁)が判示しているとおりである。
最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日
右折車視点から見た対向直進オートバイが、「そのスピードなら止まらないことが明らか」みたいな状況だったなら別ですが、信号無視しても何一ついいことなんてないのよね。
警察的にはそのあたりを捜査することになるだろうけど、報道について疑問が残るのは右直事故と、信号無視を伴う右直事故はだいぶ違うわけで…

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
日産追浜工場前ですね。
凄まじいスピードです。
信号が赤でも止まれる速度では有りません。
今まで運のみで突破できたたらこんな運転が板に付いたと考えてしまいます。
その昔、速度取締りのお巡りさんに「君は運がいい。今反省の機会が得られて。」と、言われたことがありますが、このバイクの方は、そんな機会がなかったのではと考えさせられます。
ご冥福を祈ります。
コメントありがとうございます。
他の報道で右折車は全く対向車を確認せず右折したとありましたが、確認していたら回避可能な事故だったのかは怪しいようなスピード。
なかなか厳しいですが、被害者の責任がかなり大きな事故なんですよね。