シマノ11速デュラエース/アルテグラクランクリコール問題については全世界で「自転車店が点検後に問題が見られた場合に交換」ですが、なかなか興味深い発信がありまして。
リコールプログラム点検店から排除
要は自転車店が合格/不合格を判定し、問題が見られたクランクをシマノに送るわけですが、全数をシマノに送っていた自転車店が「リコールプログラム点検店」から排除されたと。
おそらくシマノの言い分としては「点検してないだろ」なんだろうけど、このショップの言い分としては「洗浄して画像を報告しなければならない仕組みなんだし、点検はしている」。
とはいえ、最初からこのショップは「合格判定」をするつもりがなかったとも取れる(「点検せずにシマノに送るだけ」みたいな発言もあるので)。
このショップで点検しても今後はシマノからの報償金(イギリスでは35ポンド、約7000円)は支払われないことになる。
目視による限界
そもそも、目視によって「合格」したクランクが剥離しないとする根拠はどこにもなく、実際には目視で「合格」したクランクが後に剥離した事例も報告されてますが、
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目視検査はあくまでも「剥離等が見つからなかった」というだけであり、その後も問題が起きないことを保証する話ではない。
ユーザーからすればそれを不満に思うのは当然だし、ショップとしてもユーザーに「大丈夫」とは言えない。
シマノ的には、問題が起きたときの責任は点検したショップではなくシマノにあると明確にしているようですが、ユーザー的には「責任が誰にあるか?」ではなく「経年劣化や打撃以外なら問題が起きないと言えるのか?」。
その意味では、責任の所在を明らかにしてもユーザーの懸念を払拭できてないとも言えるけど、あらゆる製品について「初期不良は起きません」みたいなアナウンスはできないわけでして…
例を挙げるなら、シマノはチェーン洗浄について「中性洗剤で洗え」とアナウンスしているけど、「中性洗剤なら問題は起きません」とはアナウンスできない。
シマノ互換性に従ってパーツをアッセンブルしたら「問題が起きない」なんてことは当然言えませんが、「○○は起きません」なんてアナウンスをするメーカーがないのは仕方がないとはいえ、シマノの対応がユーザーを納得させる十分なものなのかは果てしなく疑問。
そうすると問題の根源は
目視による検査という検査者の主観によるものはバラツキが大きいし、そもそも目視で検査した内容は「現時点で剥離が見つからなかった」だけ。
ユーザーの懸念は「本当に使い続けて大丈夫なのか?」にあるわけで、結局は点検後交換よりも全数交換のほうが望ましかったと言える。
この問題がなかなか不思議なのは、ろくに事実確認しないまま「日本だけが差別されていて、海外では無条件交換だ!」とか、「ショップはたった2000円しかもらえない」などデマを流す人がいること。
問題は日本で、無条件のリコールにはならず。問題があるかもしれないと指定された製造番号のクランクを持っている人は、正規販売店で検査して、ダメそうだったらそこでやっと交換と。通販でやってる店や、買った店がなくなった人、近所に店のない人とかどうすんのよという話。
— 福島の人(5th vaccinated)ω (@fukushimanohito) December 25, 2023
ごめんなさい 訂正です。 海外はリコールですが日本国内はリコールではなく、点検交換だそうです。 何が違うんだ!!
— GOTAL-TOKYO (@gotal_tokyo) September 21, 2023
ろくに事実確認しないまま発信する意味がわからないし、本来批判すべき論点からズレてしまうからちゃんと事実確認くらいしましょう。
ちなみに「2000円」の発信源についてはよくわかりませんが、

以前も同じ話をしてきた人がいるので、誰かが事実確認しないままテキトーな発信をしたのかと。
全数交換のほうがユーザーに寄り添っているのは間違いないにしても、わざわざデマを流して批判を増幅させる手法については理解し難い。
なお、イギリスではシマノがショップに払う報償金は35ポンド、日本でも似たような額です。
イギリスのショップはシマノリコールプログラム点検店から排除されたようですが、ある意味ではユーザーの立場に立っていたわけで、結局は「全数交換していれば起きなかった問題」なのかもしれません。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
全数交換をしないのはフォードのピント事件と同じ思想からだと思います。全数交換するコストよりも、死亡や怪我で払う賠償金の試算の方が少ないからだと思います。それくらいしか全数交換しない理由が思い付きません。
判断方法が曖昧なものを店の判断に任せるわけですから、シマノが店を信用しない時点でこの方法は破綻していると思います。
コメントありがとうございます。
いろいろ失敗してますが、シマノ的にはたいした問題じゃないんでしょうね。
認識がズレるのは仕方ないのか…