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同乗者の「シートベルト未着用」は過失になるか?

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交通事故が起きて「同乗者」が怪我をしたときに、その同乗者がシートベルト未着用だったとすると被害者(同乗者)の過失になるか?という質問を頂いたのですが、正解はこちら。

管理人
管理人
シートベルト未着用が受傷の原因か、もしくは着用していれば怪我の程度が小さかったと考えられる場合には被害者の過失になります。
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シートベルト未着用は過失になるか?

道路交通法ではシートベルト着用義務を「同乗者」ではなく「運転者」に課してますが、神戸地裁 令和5年9月28日判決では上に書いた理由から被害者に10%の過失相殺をしている。
「道路交通法で取り締まり対象となること」と「損害賠償請求権行使にあたり過失相殺すること」は別の問題と指摘し、過失相殺理由は法令違反に限定されないという当たり前の説示をしている。

 

そりゃそうですよね。
違反と過失は別ですから。

ところで、ちょっと興味深い事例がある。
事案の概要ですが、被告(運転者)のクルマが自損事故を起こした。
そのクルマに同乗していた原告は頸髄損傷による四肢麻痺という重大な後遺症を負ったが、同乗者(原告)のシートベルト未着用は原告の過失になるか?が争点。

 

その他の情報。

・原告と被告は一緒に酒を飲んでいた(飲酒運転)
・法定速度超過の時速100キロでトンネル内の壁に激突した

ア 認定した事実によれば、原告X1は被告と一緒に酒を飲む目的で被告が運転する加害車両に同乗して居酒屋に向かっており当初から被告が飲酒運転をすることを容認していたと認められる上、被告が居酒屋で生ビール一杯、焼酎ロック二杯という少なくない量の飲酒をしたのを承知で加害車両に同乗している。被告は制限速度を約40キロメートル超過する速度で加害車両を運転し、車線変更に際しハンドル操作を誤って本件事故を生じさせたのであり、本件事故の発生には被告の飲酒が少なからず影響を与えていたとみるべきであるから、損害の算定にあたっては、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、原告らの損害額を減額するのが相当である。

イ また、原告X1は、本件事故による衝撃で頸髄損傷、第三、第四頸椎脱臼骨折の傷害を負ったが、シートベルトを着用していた被告の傷害が頭部打撲、挫創にとどまったことからすると、助手席側屋根が凹損しているという加害車両の損傷態様を考慮しても、シートベルト不着用が損害の拡大に一定程度寄与したものと考えられるから、前記と同様、損害の公平な分担の観点から、民法722条項の過失相殺の規定を類推適用して、原告らの損害額を減額するのが相当である。

ウ そこで、減額の割合を検討するに、飲酒運転でカラオケに行くことを被告の方から誘ったこと、加害車両は助手席側屋根が凹損しており、被告に比して重篤な原告X1の傷害は乗車位置によるところも大きいと認められ、シートベルトの不着用が損害拡大に寄与した程度が大きいとはいえないことなどを考慮し、原告らの損害額から2割を控除するのが相当である。

名古屋地裁 平成20年1月29日

運転者はシートベルトをしていて頭部打撲、挫創にとどまったのに対し、同乗者は頸髄損傷という重大な状態になった。
シートベルトを着用していれば損害が小さかったと考えられるとしながらも、この事例ではシートベルト未着用よりも助手席側に損傷が大きかった事故態様から、「過失相殺の理由になるがそこまで大要素とは言えない」となる。

損害拡大防止義務違反

民事特有の考え方ですが、「それをしていたらもっと怪我が軽かったよね」というのを過失扱いすることがある。
損害拡大防止義務違反と言われる概念です。

 

有名どころだと、原付のヘルメットが義務化される前でも「ヘルメット未着用は損害拡大防止義務違反」として過失相殺したものもある。

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まあ、この事故については「飲んだら乗るな」でしかないのですが、お友達同士で加害者/被害者、原告/被告になるのはなかなかつらい。
元の原因となる「飲酒+速度超過」について非難すべきですが、シートベルト未着用が過失相殺の理由になることもあり得ます。

コメント

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