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車両通行帯がない三車線交差点を右折する一般原付は「小回り右折」がルールなのか?

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ではこちらの続き。

車両通行帯がない三車線交差点で、二段階右折するとルール違反なのか?
千葉県警が車両通行帯の指定をしないまま原付の二段階右折違反を取り締まりしていた件が報道にありましたが、車両通行帯がない三車線交差点では小回り右折がルールであるかのように解説し、警察に確認しようみたいな話をしている。問題がどこにあるか全く理解...

道路交通法上、車両通行帯は公安委員会の意思決定()が必要になるため、理屈の上では「車両通行帯ではない三車線道路」が存在する。
確かに条文上、車両通行帯の意思決定がされてない三車線交差点を右折する一般原付は34条5項(二段階右折)ではなく34条2項(小回り右折)であるかのように読めますが、

 

それを実行するには期待可能性がない上に法の趣旨とも合わないため、「車両通行帯ではない三車線交差点」で一般原付に34条2項(小回り右折)を課すことはできません。

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期待可能性がない

二段階右折と小回り右折は同時に達成不可能なので、どちらかしか履行できません。
理屈の上では

このように三車線&指定通行区分があるかのように見えて、公安委員会が車両通行帯の意思決定をしていなければ「車両通行帯がない」「指定通行区分がない」になる。

 

運転レベル向上委員会の解説だと、車両通行帯の意思決定がない三車線交差点を一般原付が右折する場合、34条2項(小回り右折)が「ルール」だとし、車両通行帯の意思決定がされているか警察に確認しようみたいな解説をしてますが、

 

車両通行帯の意思決定なんて下手すりゃ「昨日まで」と「今日から」でも違うことがあるわけで、この人の珍解釈を鵜呑みにすると、三車線交差点を右折する直前に毎回警察に確認しないとムリなのね。
そんなことを法律は期待してないわけで、馬鹿馬鹿しいにも程がある。

 

一見して運転者が判断つかない「車両通行帯」について、二段階右折と小回り右折という相反するルールを「車両通行帯がある3車線/車両通行帯がない3車線」で見分けろなんて「期待可能性がない」のだから、そんな珍解釈はあり得ないのよね。

たまたま車両通行帯の意思決定がない三車線交差点があったとして、二段階右折した一般原付に罰則を課す理由もなければ、小回り右折した一般原付に罰則を課すこともできない。
単にそれだけのことで、「小回り右折がルール」になるわけではない。

 

そもそも二段階右折の意図を知らないのではなかろうか?

二段階右折の意図

ところで、二段階右折とは何を目的としているルールなのでしょうか?
これ、右折時に対向車との衝突防止と勘違いしている人が多いけど、「速度が遅い車両が右折前に道路中央に進路変更するリスク」が主。

直進可能な十字路であれば、直進する車両と「道路中央に寄ろうとする低速車」の間で衝突リスクが高まる。
だから軽車両については「一律二段階右折」にしてますが、そもそも原付も昭和39年までは「一律二段階右折」でした。

自転車 原付 特記事項
昭和35年 二段階右折の義務 二段階右折の義務
昭和39年 小回り右折 道路交通に関する条約(ジュネーブ条約加入のため等)
昭和60年 3車線以上の場合などに二段階右折の義務

昭和39年にジュネーブ条約に加入する段階で、原付の二段階右折が条約違反になるから「一律小回り右折」に改正。
しかし昭和60年に「3通行帯以上は二段階右折」に再度変更した。
その理由はこれ。

第102回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第4号 昭和60年4月22日

○安藤説明員 道路交通に関する条約は、御指摘のように原付は自動車と同様の右折方法をとるように定めてあるわけでありますが、これはあくまで原則でありまして、安全確保上どうしても必要な場合においては、条約でもちろん管轄権ということで例外的な措置を定めることが許されるというふうに解されております。
御指摘のように我が国の道路交通は非常に過密でございまして、特に原付自転車が千四百万台、しかも非常に過密交通の中で二輪車と四輪車の分離をしていかなければ今後の交通安全上大きな問題になっていることは御指摘のとおりでございますので、その辺の、我が国の過密交通であること、それから四輪、二輪の交通を分離していかなければならない、そういう観点から、広幅員道路では進路変更等を伴う交通方法でなくて二段階右折というのが適当かというふうに判断したわけでございます。

○太田委員 これは。もっと広範囲といいますか、基本的な哲学の問題になるわけですけれども、特に警察のお仕事をやりやすくするためには、そのサイドから理想を言うならば、どんどんこういうふうにしなさい、ああいうふうにしなさい、運転者はこうでなければいけないということを事細かに決めていった方が、がちっとした秩序に運転者がすべて従ってもらうことがやりやすいというふうな考え方はあろうかと思うわけであります。ところが、我が国でそういうふうな考え方が確かに間違いなくあるということは言えないのですけれども、自由主義国家というのは基本的には自分の責任でみんなが生きているわけでして、自分の責任で危険を回避をする。そしてまた、それだけのいろいろな知識、判断力というものは、文化水準の高い先進諸国であれば、みんな国民は良識もあるし、知識もあるし、危険に対して対処する方法というのは知っているわけですね。そこを役所の方の法律とか規定でもって縛ることによってむしろマイナスの結果を生ずることも時々あると私は思うわけです。
こういうふうに二段階で渡ってもいいというふうに変えられたのは大変いいことでもありますけれども、本来ならば二輪車を運転する人がどう渡ろうが、自分で判断して、怖いと思えばそういう二段階で渡る渡り方を今までもしていたはずであります。それを何か従来の規則では最初から右折車線に入ってなくちゃいかぬというようなことを、そういう規定を設けたためにむしろ命を失われた方がおられるとか事故に遭われた方がおられるとかいうことになると、これはちょっと、今のお話を聞けば条約との関係でそうなったということがありますけれども、過剰に規制を強めることによって、過去何年間ですか、かなりの期間運転者が危険に陥れられたというとちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういう面もなきにしもあらずでありますので、物事の考え方として、従来の我が国の警察庁のお考えと多少——自由主義国家、自由主義社会における運転者とかあるいは市民について、むしろもっと信頼をして、広範な、市民の側というか運転する側の努力や創意工夫というものに征した方がいいことの方が多いのじゃないかというふうに私は思うのですけれども、いかがでしょうか。

○太田政府委員 確かに御指摘のとおり、はしの上げ下げまで一々全部法律で、しかも罰則つきで対応するというようなことが適当でないことは事実でございます。ただ、日本の場合、御案内のように車社会というものが非常に急激な形で出現をしたということで、それに対する適応というものが必ずしも十分行われにくいという状況があったこともまた事実でございまして、そういうものを放置いたしますと、弱肉強食といいますか、結局、かっていわゆる交通弱者などというふうに言われたような、そういう人たちに対する手当てというのがまた不十分になる、あるいは交通をめぐりまして公害的な問題がいろいろ出てくるとか、いろいろそういう付随的な問題も予想されるというふうなこともございまして、かなり細かいところまで法律事項といいますか、あるいは法律によって委任された政令というようなことで規制をしているという面もあるわけでございますが、その辺は情勢の変化というものに対応しながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

元々一般原付は「二段階右折」だったのを、ジュネーブ条約加入時に条約に違反するから「一律小回り右折」に変更した。

12条の4(d)
第16条2に定める場合を除くほか、自己が進行する方向に適応した側とは反対の側に右折し、又は左折しようとするときは出来る限り車道の中央に寄ること
16条2(d)
第12条4(d)の規定は、国内法令に別段の定めがあるときは、自転車の運転者には適用しない

これが昭和39年に原付を小回り右折に変更した理由。
しかし現実には右折レーンに行こうとして事故る事例が増えていたため、昭和60年に「3通行帯以上特例」として条約破りを発動させた。

本改正規定を定めるに当たって、まず問題になったのは、「道路交通に関する条約」(昭和39年条約第17号。いわゆるジュネーブ条約である。)との関係である。すなわち、同条約12条4(d)は「右折しようとするときは、できる限り車道の中央に寄ること」としており、原動機付自転車といえどもその例外とはなっていない。そのため、道路交通法を前述のごとく改正したならば条約と抵触するおそれがあった。しかし、いかに条約に加盟している場合であっても、自国民の保護のために条約に対する例外的規定を設けることは、その国の主権に基づいてなしうるところであると考えられ、例えば、同条約第1条や第34条にはその思想が表れていると解されるところである。本改正規定は、このような考え方に基づくものであり、条約違反には当たらないものと考えている。

本改正規定の最も特徴的なところは、道路の左側部分(一方通行となつている道路にあつては、道路)に3以上の車両通行帯が設けられている交差点においては、特に除外しない限り、原動機付自転車は二段階右折をとらねばならないとされたことである。従来の交通規制の手法によれば、今回のような例外的な通行方法をとらせようとする場合、道路標識等でその旨指定することとなると思われるが(なお、本改正規定においても道路標識等により指定されている道路という部分があるが、これは、二段階右折させるべき交差点に係る道路が片側に3以上の車両通行帯がある道路だけに必ずしも限られないという考えに基づくもので、あくまでも補完的なものと考えて差し支えない。)、本改正規定ではそのような規定の仕方をとらず、一律に法定することとした。これは、これら道路標識等に充てる財源の問題もさることながら、道路標識等をいたずらに増やすことは道路標識等の視認性の観点から必ずしも好ましくないと考えられたからである。

「道路交通法の一部改正について」(警察庁交通企画課 池田克彦)、警察学論集、1985年8月、立花書房

で、一部の交差点については「二段階右折禁止(小回り右折)」を指定しているように、

一般原付が交差点内で待機場所がないなど二段階右折が不適切な交差点については、公安委員会が「二段階右折禁止」を指示している。
つまり小回り右折をさせたい交差点についてはわざわざ指定できる仕組みにしたわけで、今回のように「車両通行帯がない三車線交差点」というのは、一般原付を小回り右折させたくてそうなっている訳じゃないのよね。

 

ほとんどの場合、今回のように「何らかの不備で車両通行帯の意思決定が漏れて」「結果的に車両通行帯がない三車線交差点になってしまった」のが実情。
公安委員会が狙ってそうしているわけじゃない。

 

そういう場合でも「一般原付が道路中央に寄ろうとするのは危険」なことには変わりないのだから、二段階右折したとして非難する理由もないわけよ。

 

・元々原付は全て二段階右折だった

・ジュネーブ条約加入のため一律小回り右折に変更した

・右折レーンに行こうとして事故に遭う原付が増えた

・ジュネーブ条約違反は承知で、3通行帯以上(つまり広幅員道路。国会議事録参照)という条件付きで二段階右折に変更した。

・ただし交差点内に待機場所がないなど二段階右折が不適切な交差点は小回り右折を指示できることにした

車両通行帯がない三車線交差点は、車両通行帯がある三車線交差点と同じような広幅員道路になりますが、広幅員道路で道路中央に寄ることを「危険」と捉えた立法趣旨から考えて、たまたま車両通行帯がなかった三車線交差点は「小回り右折を義務付けている」と考えるバカがどこにいますか?
車両通行帯の有無はリスクとは何ら関係がないのに。

 

ところで気になって調べたり意見を聞いたのですが、民事過失上は車両通行帯の有無に関係なく、三車線交差点で二段階右折しなかったなら「過失」になるだろうと。
もちろん二段階右折禁止の場合は別。

 

こういうのも、立法経緯を知らずに条文解釈に走ったり、刑法の概念を知らずに杓子定規に当てはめたりすると本質を見失うと思う。

 

結局、二段階右折と小回り右折は相反するプレイなのだから必ずどちらかを履行することになる。
条文上は確かに「車両通行帯がない三車線交差点」であれば小回り右折のように見えますが、わざわざ警察に確認しないと履行不可能なことを法律は期待してないわけよ(標識標示主義の観点からも)。
ましてや、「車両通行帯がある三車線交差点」も「車両通行帯がない三車線交差点」もリスクレベルに差はないのだから、公安委員会が「小回り右折」と指示してない限りは二段階右折を求めていると捉えるのが妥当でしょう。

 

というよりも、この人の話は所詮結果論みたいな内容が多い。
なんのために二段階右折というルールを設けているか、三通行帯以上の交差点に限定した趣旨は何なのかを理解していれば「あり得ない」。
だからそもそもの立法趣旨や経緯を知らずに条文から解釈しようとするのは、ダメなのよ。
裁判所も、立法趣旨や経緯から判断しているケースなんていくらでもあるでしょ。

 

法律は不可能や理不尽を求めている訳じゃないのよね。
わざわざ警察に確認する必要もないしたまたま「車両通行帯がない三車線交差点」があったとしても、ルールは二段階右折になり「結果的には二段階右折しなかったとしても違反が成立しない」にとどまりますが、

結果論で考えない道路交通法の義務と違反。
道路交通法の一部規定には、義務の発生と違反の成立が一致しないものがあると思ってまして、違反の成立を基準に考えるといろいろ間違う気がしてます。今回はそんな話を。合図車妨害たぶんこれが顕著に出るのは合図車妨害禁止の話。(左折又は右折)第三十四条...

結果論で道路交通を考える人は、事故るリスクが高まる。
そもそも、車両通行帯がない三車線交差点で二段階右折しなかった一般原付を誤検挙しまくった実績がある以上(過去にも同様のケースはある)、小回り右折して誤検挙されるリスクすらあるわけで、面倒なことに巻き込まれたくないなら「三車線以上は二段階右折」が最適解なのは言うまでもないんですけどね…

コメント

  1. 元MTB乗り より:

    三車線の話とは別ですが、
    > 自分の責任で危険を回避をする
    現実は、他者の頑張りで危険に遭わないようにしてもらってるだけなような気がする。

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