以前、条文上は左方に一時停止規制がある場合でも左方優先を除外してないけど、「徐行」と「一時停止」のパワーバランスからすると一時停止側が優先とは解釈されないと書きましたが

当たり前ですよね。
徐行する車両と一時停止車両を比較した時に一時停止車両が優先なのであれば一時停止義務を課す理由がない。
なので条文上は明らかではないけど、左方優先は働かない。
これは判例からも読み取れる。
じゃあなぜ条文上で明らかにしてないか?を考えたときにある専門家の方からヒントを頂きまして。
もし条文上で「一時停止がある場合に左方優先は除外」としたなら、

四方向に一時停止規制がある場合に困るでしょと。
結局、左方優先は「同程度の注意義務」がある場合の最終兵器みたいな役目なんじゃないかという。
同程度の注意義務とは、徐行vs徐行とか、一時停止vs一時停止のような場合。
明文化されてなくても、徐行vs一時停止のようなパワーバランスが違う状況では働かないのだと趣旨から解釈できるけど、同程度のパワーバランスのときに解釈できなくなるからあえて除外してないんじゃなかろうか?
言われてみると確かにそうかも。
赤点滅信号は一時停止ですが、43条と異なり「交差道路の進行妨害禁止」は書いていない。
そもそも昭和46年改正以前の43条にも「交差道路の進行妨害禁止」は書いていないですが、一時停止する以上は劣後することが当たり前でして。
判例は東京高裁 昭和41年11月22日(業務上過失致傷)。
事故の態様はこれ。
A車が被害車、B車が被告人。
ところで、道路交通法第35条第36条(昭和39年法律第91号による改正前のもの)が、交差点における互に違つた方向からこれに進入する車両相互間の優先順位を定めたものであるに対し、同法第42条は左右の見とおしのきかない交差点に進入する車両に対し総べての通行者との間の危険防止を目的として制定されたものであり、同法第35条第36条のように歩行者を除いた車両相互間の関係のみを規制したものではないのである。従つて、右法意に照らすと、たとえ、交差する車両に対しては優先する場合であつても、そのために同法第42条の一般徐行義務が解除されるものではなく、又同法第43条も公安委員会が特に必要があると認めて指定する交差点において、車両等に対して一時停止義務を課し(通行人にはその効力は及ばない)、これと交差する道路の車両等に優先通行を認めたに過ぎず、そのために優先車両に対し同法第42条の徐行義務までも解除したものとは解し難い。
東京高裁 昭和41年11月22日
一時停止規制した場合は交差道路が優先だとしていて、優先側の徐行義務は免除していないと説示。
結局、なぜ条文上は左方優先から除外してないかですが、「一時停止だから」という理由で明文化するまでもなく明らかだからなのかもしれません。
以前から書いているように、道路交通法の理解を高めるには立法趣旨から知らないと厳しい。
日本の道路交通法教育に欠けているのはそこ。


2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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