プロレースでは2016年より実験的に導入されていたディスクブレーキ搭載のロードバイク。
2016年4月、パリルーベというレースにて、落車時にディスクローターで負傷したベントソの件で、いったんディスクブレーキが使用禁止状態になっていましたが、2017年より再び試用期間に入るそうです。
ポイントは「試用期間」ということでしょうか。
ディスクブレーキの利点
近年、プロ選手が使うホイールはほとんどがカーボンリム&キャリパーブレーキです。
カーボンリムは、アルミリムよりも制動力が落ちるというのが常識ですが、雨天時などはさらに落ちます。
カーボンのリムをゴムのブレーキシューで挟んで止めるわけですが、どうにも効きが弱いという問題がありました。
これをディスクブレーキにすると、カーボンのリムを挟むわけではなく、金属製のディスクローターを挟むわけなので、「カーボンリムの制動力の問題」はクリアになります。
また雨天時でも制動力が落ちにくいのがディスクブレーキの利点です。
カーボンリムとキャリパーブレーキの場合、リムの変形という問題もありました。
ブレーキをかけることでリムは高温になりますが、熱でリムが変形してしまうのですね。
最近はブレーキ熱対策で様々な工夫がされていますが、ディスクブレーキ化することで工夫そのものが不要になります。
ロードバイク用に開発されたディスクブレーキは、MTB用などと違い、ガツンと効くようなセッティングではないそうです。
ロードで制動力が高すぎるのも問題なので、マイルドに、かつ雨天時は晴天時と変わらないように設計されているのが特徴です。
ディスクブレーキのデメリット
まず、パリルーベの事故のようなディスクローターで足に裂傷が考えられます。
ただし、一説には「デントソの事故は、ディスクローターではなくチェーンリングではないのか?」という疑義もあるようです。
ロードよりも激しく落車するMTBなどのオフロード競技ではディスクローターによる事故は起きていないわけで、MTBよりも高速回転しているから危険という理屈も無理があるように感じます。
次の問題点ですが、今までのホイールは全く互換性がなくなります。
フレームも互換性がなく、キャリパーブレーキを使っていたフレームをディスク化することは不可能です。
ここでキャリパーブレーキと、ディスクブレーキの大きな違いを挙げましょう。
キャリパーブレーキは、ホイールの外周部を止めます。
ディスクブレーキはホイールの中心部を止めます。
これの違いは大きく、ディスクブレーキ用ホイールは、ホイール中心で発生した『止まる力』をスポークを介してタイヤに伝えます。
そのため、今までのようにスポークが少ないホイールを作れません。
また、キャリパーブレーキ用のフレームは、フレームのエンドを柔らかくして振動吸収性を上げていましたが、ディスク用フレームに同じことをするとブレーキ力が安定しなくなり、フレームのエンドを固くする方向で作らなければなりません。
そのため、
・制動力の安定性を取るならば、ディスクブレーキ
・安全性、互換性、乗り心地などを考えるとキャリパーブレーキ
なのかもしれません。
2017年は全面解禁ではなく、いまだ試用期間
2017年からプロレースではディスクブレーキが使えるようになりますが、ポイントなのは全面解禁ではなくまだ試用期間ということです。
試用期間にまた問題が起これば、廃止に向かう恐れもなくはないのです。
ディスクブレーキに反対している選手もいるわけで、ディスクブレーキ化はシマノをはじめとするコンポメーカーが見切り発車的に投入している印象があります。
自転車業界というのは、次々と新製品を開発し、それを市場に投入し、みんなが買ってくれることで潤う業界です。
その時に投入される新製品が、今までと互換性のないパーツであればなおよい。
だって、フレームからホイールから買い直しですよ。
自転車業界は儲かって仕方ありません。
プロ選手はメーカーから支給されるバイクに乗るだけなので、懐事情は関係ありませんが、一般人はフレームやホイールの買い替えなどは懐事情が気になるのは当たり前です。
そうなると、より慎重に業界の動向を見ずにディスクブレーキ車を買うと、将来ディスクブレーキ車が一般化しなかったときには大ダメージです。
なので、しばらくは様子見がいいかと思います。
3年もすれば、時代の流れが見えてくるでしょう。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
コメント
「ロードバイクのブレーキは、速度調節用である」と、まことしやかに述べている人もいます。
真実は、「速度調節にしか使えない」のです。
私はクロスバイクとロードバイク、2台持っていますが、クロスバイクの良いところの一つは、ブレーキがよく効くということです。
ブレーキは自転車を止めるのが目的。
速度調節は「止める」の延長線上にあるものだと思います。
だから、ロードバイクのディスクブレーキ化を望みます。
コメントいただき、ありがとうございます。
ロードのディスクブレーキ化についてですが、なぜ業界がディスク化をしたがっているのかを理解しないと本質が見えなくなると思っています。
クロスバイクのブレーキがよく効くとの話ですが、ロードバイクとクロスバイクではブレーキに対する考え方が違うのが当然だと思います。
ロードバイクは歴史的に、レース用として開発されてきているわけですが、クロスバイクはどちらかというと日常使用の実用車的な扱いとして発展しています。
レース用ということは、レース中に止まる必要性がないため、スピードコントロールが主の目的で間違っていないと考えます。
逆に日常使用のクロスバイクは止まる必要性が多々あるため、Vブレーキなど制動力が高いブレーキをセットして販売しているだけかと。
>速度調節は「止める」の延長線上にあるものだと思います
ちょっとこれについてはとっぴんさんの意見とは異なりますが、速度調節された結果が「止まる」なのではないのでしょうか???
ブレーキは減速できても、加速することはできません。
減速した結果、最終的に止まるものだと思うのですが・・・
シマノを始めとするメーカーがなぜロードのディスク化を推進したがっているかですが、大きく分けて3つの要素があります。
1、リムの問題
リムブレーキだとブレーキで挟み込んだ時に耐えられるような強度を持たせなければならないため、頑丈なブレーキゾーンを作る必要があります。
ディスクブレーキにすればリムにブレーキゾーンを作る必要性がなく、リムの軽量化ができるということです。
リムの軽量化が走りに大きな影響を与えるのはまぎれもない事実ですから。
2、雨天時の制動力
リムブレーキでは雨天時に制動力が極端に下がるという問題がありましたが、ディスクブレーキにするとその問題はかなり改善されるということ。
3、自転車業界の発展性
一番大きな理由はこれなのですが、自転車業界は常に新しい技術を市場に提供して、ユーザーに買い替えを迫らないと成り立たない業界です。
一度買ったものが半永久的に使えるようでは、売れなくて困るわけです。
で、新しいパーツをリリースするときに、以前の規格と互換性がないものを市場に投入すれば、フレームやホイールなども買い替えを促すわけでビッグビジネスになります。
ディスクブレーキにすれば、フレームもホイールもすべて買い替えになるため、業界としては潤う可能性があるわけです。
シマノが11速化したときに、WH-7900などの10速ホイールを11速で使えないようにしたのも、単にユーザーに買い替えのきっかけを与えただけです。
シマノ以外のほとんどのホイールメーカーは、10速ホイールでも11速で使えるようにしてくれましたが、シマノだけは頑なに買い替えさせましたから。
あと、ロードのディスクブレーキって、使ったことありますか?
正直なところ、ドライコンディションでは制動力自体はリムブレーキとほぼ変わりません。
これはあえて、強力な制動力が発揮されないように設計されているそうです。
なのでメリットは、あくまでもウェットコンディションでの制動力低下を最小限にすることくらいなんですよね。
リムが軽くなっても、ディスクホイールは構造的にスポーク本数が増えるため空力は悪くなりますし、フレームのエンドも硬くしないとディスクブレーキの力を受け止めきれないため、フレームの振動吸収性も落ちています。
なので私としては、ディスクブレーキ化したロードにはなんら魅力を感じませんし、ここ最近でもコロコロと規格を変えているところを見ると、現時点で一般ユーザーがディスクロードを買うのはリスクが高すぎるとみています。
ここでいうリスクというのは、安全性の話ではなくて、パーツとして廃れていく可能性があるという意味です。