山形市で起きたコンビニ駐車場から発進する際に、バックさせた際と切り返して前進した際に、88歳の男性をひいて死亡させた事件について検察は過失運転致死のみで起訴し、救護義務違反(いわゆるひき逃げ)は不起訴の方針らしい。

これですが、「バックさせた際と切り返して前進した際に、88歳の男性をひいて死亡させた」というところについて安全不確認のまま発進させた過失があることは言うまでもなく、被告人もその点については争っていない。
しかし事故を起こした認識がなく、「ぶつかったことも制止されたこともまったく気づかなかった」のだから事故を起こしたことを未必的にせよ認識していたか?は検察官が立証しないと救護義務違反罪は成立しないわけでして(救護義務違反罪は故意犯のみなので、事故を起こした認識が必要)。
例えば防犯カメラ上で、「制止してきた人を見ていたけどあえて無視した」みたいな状況があるなら事故を起こした可能性を認識していたとも言えそうですが、故意の立証が困難だったのだろうか。
ところでこの公判ですが、過失運転致死罪の成立については被告人は争っていないようですが、即日結審しておらず、次回公判は5月23日に指定されている。
結審前に検察官が追起訴するかどうかについて早くも白旗をあげたとも言えますが、
一応理屈の上では「刑事処分と行政処分は別」なので、
施行令別表
不起訴であっても、公安委員会的に「未必的な故意があった」として救護義務違反の加点をする可能性もある。
安全運転義務違反(法70条) | 2 |
付加点数(専ら運転者の不注意) | 20 |
救護義務違反(法72条1項) | 35 |
計 | 57 |
施行令の規定をみると、他の大半の違反については「違反行為」で加点するとしてますが(つまり過失処罰規定がない道路交通法違反でも過失による違反で加点可能)、
救護義務違反として加点するには「罪の行為」だから故意が必要。
起訴して救護義務違反が無罪になったなら行政処分もビミョーになりますが、不起訴、つまり争ってない状況なら「公安委員会的に未必的な故意があると考えたなら」加点は可能とも言えそう。
そういうことまで考えて不起訴なのか、警察と検察は別だから独自に検討した結果なのかはわかりませんが、未必的な故意を立証するに値する証拠がないなら不起訴になるのよね。
こういう事件も、法を理解してないとおかしな陰謀論ばかり出てくるわけでして。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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