支離滅裂に横槍を入れてくる人がいましたが、こちらの件。

スキーがなぜ滑るのか?については、実はよくわかってない部分が大きい。
ただまあ、「摩擦融解説(溶け水理論)」については矛盾が大きいと指摘されてまして、電気通信大学の仁木氏の論文においても、溶け水理論は仮説モデルだとしている。
1.研究開始当初の背景
スキーが良く滑る原理としては「雪とスキーの間の摩擦熱により発生する水が潤滑剤の働きをする」という Bowden らの摩擦融解説が広く普及している。これはスキーが高速度で滑走しているときの摩擦係数が 0.05 程度或いはそれ以下であることを説明できる唯一の説である。さらに、摩擦によりスキー滑走面の温度が上昇することは測定されている。しかし、滑走界面の水は実際には観測されておらず、真実接触面積や雪との接点に於ける圧力等も推測の域を出ていない。
ところで、スキーは気温、雪質や雪表面の状態、或いはスキー滑走面の状態やワックスなどにより滑走性が異なる。そして、それらの影響を反映する物理量で、「唯一測定できるのは摩擦係数」である。
しかし、もともと小さな値である摩擦係数のしかもその僅かな変化を検出し原因解析することは不可能である。
しかし、多くのスキー関係者は高速度滑走という条件における支配的原理の候補と考えられる摩擦融解説を唯一の科学的根拠と信じ、用具の設計や材料の選択、スキー技術の研究に応用しようとしている。 KAKEN — 研究課題をさがす | 2009 年度 研究成果報告書 (KAKENHI-PROJECT-19500528)
他にも下記論文がありますが、かなりのボリュームなのではしがきのみ引用。
著者は氷雪の摩擦に 40 年以上携わって,真理探究を使命とする科学の世界においても,肝心な部分がはしばしば主観や直観に彩られるのに気づいた。また,様々な視点からの総合的な検討が容易ではないこと、新しい学説や新しい主張を正しく評価することの難しさ,批判精神に徹して学説を吟味することの難しさも知った。先入感の打破や批判精神の強化はわれわれ日本の科学者だけでなく,欧米の科学者にも当てはまるようである。
Joly や Bowden らが氷の低摩擦を説明する場合,氷の特性について十分な検討のないまま圧力融解・水潤滑説や摩擦融解・水潤滑説が提案されたことに気づく。たとえそうだったとしても後の研究は「これらの学説を真に科学的に吟味したのだろうか」という疑問にも突き当たる。多くが,一面の批判であったり,無批判とも思われる受容であったりが目立つからである。氷雪の摩擦について,本書ではこれまでの科学論文で扱われなかったこと,あるいは触れようとしなかった部分にも立ち入って議論を試みたい。それが知の伝承・発展に必要と思われるからである。
氷雪の低摩擦を説明する学説としては,1950 年以降,水蒸気潤滑説や擬似液体膜潤滑説,水分子回転子説,雪粒の流動潤滑説や凝着説も提案された。しかし,これらの学説の中には,水蒸気潤滑説、疑似液体膜潤滑説(氷表面溶解説)のようにほとんど実験データを説明せず,思いつきだけで提案されたと思われるのに,学説への賛同者が少なくないのは驚くほどである。
氷雪の摩擦では歴史認識でも禍根があった。Joly(1886)ではなく Reynolds(1889)を圧力融解・水潤滑説の最初の提唱者とする論文や著書が後を絶たないことや近年注目を浴びているカーリングストーンのカールについて Harrington(1924)の初期の総合研究が見落とされていたことなどである。この不幸な歴史は Reynolds 自身の主観やReynolds の原文を引用し,誤解を広めた Bowden ら(1939)の有名な論文の非を問わないわけにいかないであろう。
カナダの Niven(ニーブン)は Bowden らの論文を批判的に吟味した科学者の一人である。Niven はカナダ国立研究所から氷の摩擦に関する多くの論文や著書(The Magicsurface)を発表した。Niven の研究は摩擦融解・水潤滑説への批判精神に貫かれている。
カナダの Physics of ice の著者 Pounder もNiven の研究を評価した。カナダでは圧力融解・水潤滑説の提唱者として Joly が早くから紹介されていたことも Niven らの功績によるといえよう。
氷の低摩擦の説明として,「摩擦融解・水潤滑説」が圧倒的に多くの研究者から支持を受けたことから,多数決が民主的な判定だと仮定するなら,正しい学説といえるかもしれない。しかし,科学の世界で多数決は禁物である。筆者が直観し本書の随所で指摘するように,摩擦融解・水潤滑説は自己矛盾の学説であり,問題がある。もしそうなら,これまでに発表されてきた多くの論文や解釈に無理があったに違いない。そういう思いから,本書ではいくつかの主要な論文について問題点の吟味も加えた。(中略)
そして,一般の人に対するスケートの低摩擦機構のわかりやすい説明を探求する過程で,摩擦融解・水潤滑説の内部矛盾に気づいた。つまり,水潤滑の実現には「氷を融かす熱」が必要であり,その熱は摩擦そのものによって供給されるのだから,「摩擦がある程度以上に大きいときに融け水が発生するのであり,摩擦が小さすぎれば水は発生できない」ことになる。摩擦融解・水潤滑説は「摩擦が大きいと滑りが良くなる(摩擦が小さい)」という矛盾した論理になっている。それにも拘わらず,摩擦融解・水潤滑説はその後「熱解析」を通して発展していったが,この理論に実際の真の接触面の大きさを適用すると,厚さがわずか 4nm 程度の水膜による潤滑を肯定したものになる。この水膜厚さの値は,一般に雪上,氷上には視認できるほどの深い摩擦痕が形成されることと矛盾している。真の接触面積の大きさや氷の物性を無視した論法は摩擦機構の議論に混迷を深めたといえる。
繰り返しになるが,筆者は長年にわたる氷雪の摩擦の研究を通して,摩擦融解・水潤滑説が氷の低摩擦の唯一の説明ではないと実感してきた。氷の硬さに比べ著しく小さい剪断強さや付着強さ,塑性,焼結,蒸気圧が高く傷つきやすい氷表面に注目すれば,凝着説によって氷の低摩擦が説明できるし,特に単結晶氷の摩擦で発見された氷の結晶面や滑り方位による摩擦の異方性は凝着説だけが正しい説明を与えることに確信を深めた。摩擦の基本に基づいた従来の実験結果の再検討,摩擦融解・水潤滑説の論理的矛盾の立証,氷雪の低摩擦機構として凝着説の確立を伝えることが本書の使命と考えている。
氷雪の摩擦研究を俯瞰して感ずることは,この研究に関与した科学者の思考・洞察が歴史的成果に強く拘束され,摩擦の基本や原点に立ち返っての吟味が疎かにされたこと,それらを克服することの難しさを痛感した。藤岡敏夫,小林禎作,単結晶氷の摩擦の先駆的研究に見られるようにわが国の研究は実験技術に優れており,今後もわが国から優れた成果が発表されることを願う,本書のメッセージがその一助になれば幸いである。http://univ-toyama.jp/Tusima_Books/Tribology_of_Ice_and_Snow_2013_03.pdf
で。
摩擦融解説の難点は、そもそも溶け水が観測されていないことや真実接触面積や雪との接点に於ける圧力等も推測な上に摩擦が大きいから摩擦熱で溶け水が発生し摩擦が減る、つまり「摩擦が大きいから摩擦が小さい」という自己矛盾を抱えてしまう。
ただね、スキー板にワックスを施工したらよく滑るということ自体は経験上明らかなことで、潤滑理論がなんであろうとそこは変わらないのよね。
ワックスの研究やスキー以外への応用という意味では理論が大事になるだろうけど、「よく滑る」という経験的・観測的事実が変わるわけもない。
溶け水が一定の条件下では潤滑に関与する可能性は否定しませんが、スキー潤滑において支配的なのか?と聞かれたらビミョーなところ、

「スキーやスノーボードを真剣にされた方はご存知だと思いますが」と前置きしてまで溶け水理論を絶対的な潤滑理論であるかのように語るのは、GOTAL横山氏が科学的な思考停止であり、不勉強であることの表れなのよね…
「キャプチャーまでしてご苦労なこってす」などと無意味に煽って本質から離れたがるのもGOTAL横山氏の特徴。
で。
チェーンワックスについては、第三者機関が行った自転車チェーンを用いた試験においても低抵抗であることが観測されている。
ただし全てのチェーンワックスがオイルより低抵抗ではなく、オイルでも好成績をあげたものはある。
自転車チェーンで実際に低抵抗であることが観測され、実際に使ってみて好印象であるから製品化しているところ、自転車チェーンを使わない実験室での試験をやってごちゃごちゃ語る姿勢や、
チェーンワックスを施工したら悪化することが明らかな「シフトワイヤー」に使ってみて悪化したというユーザーの声に対し、「それは使い方を間違っているから参考にならない」ことを指摘するでもなく「私も疑問だ」などと追従する様子から彼の思考に科学的態度を感じないという話なのね。
そりゃワックスとオイルではフィーリングが違うのだから、ワックスからオイルに移行する人なんていくらでもいるでしょうよと。
それは相性や好みの問題でしかない。
で、「実際にチェーンを用いた試験においてワックスが低抵抗だと示されているのに、実験室でチェーンを使わない試験をしてワックスがダメだと語ることに何の意味があるんだ?」という記事を書いたところ

「根拠を見せろなんてよく吠えてますが、根拠を見せてもスルー。さすがです」として実験室でのデータを強調しているけど、ちゃんと読んでるの?と疑問しかない。
そもそも「根拠を見せろ」なんて書いてませんが、科学云々以前に文章読解の問題です。
根拠を見せろなんてよく吠えてますが、根拠を見せてもスルー。さすがです。GOTALの主張はWAX 系は低摩擦よりもチェーンの摩耗を低減させるのが主眼と思うのです。で根拠ね。SRVテストの結果右側の7663でもこの内容。左側はひまわりのやつ。赤い線は摩擦係数。黒い線は荷重です。 pic.twitter.com/u6tloNIUBD
— GOTAL-TOKYO (@gotal_tokyo) May 14, 2025
ちゃんと読んでるのか?と指摘したところ、「メーカーが言ってますだけの反論」だと話をすり替えられましたが、ケミカルメーカーの試験結果の話なんかしてないのよね…
メーカーが言ってますだけの反論ってねえ。それを自分で乗ってデーター出して正しいのか見るのが評価。自転車乗りもしなく誰かのコピーでレビューとか言ってもダメ!!。自分で乗ってみなさい。なぜGOTALのお客様がWAXから乗り換えているのか?乗らない人にはわからないでしょう。ゴタクは良いから、ま…
— GOTAL-TOKYO (@gotal_tokyo) May 15, 2025
科学云々以前の問題。。。
そして急に感情論ばかりを強調し始めましたが、この人が論点をすり替えまくる性格なのは数年前に気づいていたことでして。

正当な主張できないから自ら「誹謗中傷」だと断りを入れてから誹謗中傷を展開する。
今回も同じパターンですが、「グリスを抜いて注油すれば平地巡航速度が簡単に5キロアップ」と主張しながら何ら根拠を示さない上、話をすり替えまくる人と正常に議論が成り立つ見込みは薄い。
それは置いといて、潤滑原理ってわりと興味深いので、とりあえず言いたいのはスキーの潤滑理論の多数派「摩擦融解説」は矛盾をはらむ仮説モデルに過ぎないことと、その理論の正否はともかくとしてスキー板にワックスを施工することは潤滑に繋がるという経験的・観測的事実は変わらないということ。
彼が実験室でチェーン以外の環境でシコシコ実験しても、実際にチェーンを用いた試験における観測的事実は変わらない。
国際基準の試験かどうかも関係ないのよね。
それは「結線に対する静的荷重試験の話」で理解できると思ってましたが、剛性評価試験にしても一応はきちんと規格化されている。
しかし結線に対する評価方法として本当に正しいのか?が問題なのであって、国際基準の試験なのかは論点ではない。
これだけ話がズレまくる人も珍しいけど、スキーの潤滑理論についてはなかなか興味深いので、どこかのケミカル屋がSNSで発信した程度の話よりも論文を見たほうが勉強になるのでどうぞ。
しかし論点が「ワックスvsオイル」だと思っているのは痛いな…
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


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