先日取り上げたこちら。

運転レベル向上委員会は「某議員の働きかけで令和5年通達から民泊やホテル等を使った申請が可能になった」と解説してますが、
前回取り上げたように、民泊やホテル等で申請可能とする通達は少なくとも令和元年通達に記載されているわけで、デマと言わざるを得ない。
ところで、ちょっと興味深い国会答弁がありました。
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外免切り替えにかかる事実確認

国会答弁は令和7年3月28日の参議院予算委員会です。
まだ議事録は公開されてませんが、動画は公開されている。
まず興味深いのは、昨年埼玉県川口市において起きた「時速125キロで一方通行を逆走し、優先道路の進行妨害をした死亡事故」。
この件は通行禁止道路危険運転致死罪(処罰法2条8号)の構成要件を満たさないことから過失運転致死で起訴しましたが、

大分地裁判決(時速194キロで直進した事故)において、道路の轍などを理由に「進行制御困難高速度危険運転致死」(処罰法2条2号)が認められたことから、同じ理屈(道路幅等からコースを逸脱せず進行することが制御困難な高速度)で同罪が成立するとして訴因変更請求した。
この事故は「中国籍の男性」が起こした事故ですが、答弁した警察庁の早川交通局長によると、外免切り替えではなく、日本の教習所に通って免許を取得したものなんだそうな。
次に令和6年に中国籍の人が起こした死亡事故は9件だそうですが、うち外免切り替えによる免許取得は1件で、その1件は短期滞在者ではない。
早川交通局長はあらためて調査したとしていますが、死亡事故以外にもデータがあるなら知りたい。
日本の教習所で学び、日本の試験をパスした人がこんなヤバい事故を起こしていたんだなあと思うと、「日本の正規試験をパスした人は道路交通法を知っているんだ!」という主張が虚しく聞こえてしまう(そもそもこの事故の論点は「道路交通法の不理解」ではなく、遵法意識の欠如だと理解できる)。
そもそも大分の時速194キロ事故にしても、普通に考えれば日本の教習所で学び、日本の正規試験をパスした人なんでしょうから…
死亡事故にかかわらず統計を取ってみるのが良さそうですが、どちらにせよ警察庁は「民泊やホテル等を使った申請は認めない方針」を固めたことは報道にある通り。
ちなみに早川交通局長は、外免切り替えの試験難易度は平成5年道路交通法改正以来なんら変わってないことを明確にし、また、某政党の働きかけで試験が易化した事実はない(というより働きかけ自体を否定)と答弁している。
外免切り替えの趣旨
日本はジュネーブ条約の加盟国なので、日本人が海外で運転するために発行される国際免許はジュネーブ条約加盟国でしか使えない。
外免切り替えについて「外国人が日本で運転する場合」のみがクローズアップされてますが、要はジュネーブ条約非加盟国(外国)とジュネーブ条約加盟国(日本)の相互関係に基づくものなので、外免切り替えが認められた国においては、原則として日本人も同じように当該国の外免切り替え制度により運転可能になる。
なのでこの制度は、「ジュネーブ条約非加盟国で日本人が運転する場合」についてメリットがあることに留意する必要がある。
どうしても「外国人が日本で運転する場合」のみがクローズアップされてますが、それは一面に過ぎない。
その上で今回問題になっているのは、平成5年から脈々と続く試験が簡単すぎること(ただし実技試験の合格率は低い)。
そして某政党は令和7年3月28日参議院予算委員会において、
・短期滞在者などが民泊やホテル等を使って申請できる仕組みはそれでいいのか?
と早川交通局長に問うている。
早川交通局長は見直しのためにデータ収集していることと、他国との相互関係に基づくものだから日本人が海外で運転する際の外免切り替えに影響が出る可能性があり調査中としている。
3月末時点で調査中だったものが、昨今の報道(5月末)では「ホテル等での申請は認めない方針」になったので、一通り調査結果を踏まえてのことなんだと理解できる。
で。
この件ってわりと印象操作ありきで事実確認がないままインターネット上で議論されていると思っていて、例えば中国籍の人が事故を起こしたら「外免切り替えだ!」と騒がれる。
川口暴走事故なんかもそうでしたよね。
しかし現実には「日本人と同じルートで免許を取得した人」だという。
たぶんなんだけど、この外免切り替えについては事実がなんなのかわからないものを想像のみで空中戦みたいになるから議論が散漫になるのだと思う。
少なくとも某政党は国会においても、「試験問題が少ないこと」と「民泊やホテル等」を問題と捉えて早川交通局長に質問しているわけで、早川交通局長は事実関係を明確にしてから調査を約束し、その結果として昨今の「民泊やホテル等は認めない方針」につながった。
これがみて取れる事実ですが、憶測によるガセネタが飛び交い「誰のせいか?」という犯人探しに変わっちゃったのがインターネット上。
本来の問題点は「試験問題の難易度」と「ホテル等は妥当なのか?」なのに、論点がズレまくってしまう。
なおぶっちゃけた話、この政党は好きではない。
私の友人なんてあまりにしつこい「選挙勧誘」を回避するためにウソをついてました笑。
バリバリ日本人なのに「選挙権無し」をアピールしてましたが笑、このウソはアリなのかもしれない。
なお、当該国会答弁はこちら。
運転レベル向上委員会のように、全く検証もせず明らかなデマを流す人も問題なんだけど、もっと不思議なのは何ら根拠(旧通達との差)を示していない解説でも鵜呑みにして信じる人が多い点。
根拠が示されてない解説でも鵜呑みにしてしまうのであれば、何でもアリになるわな。
事実確認がまず大事、という典型例なんだと思う。
良くも悪くも印象操作されちゃうと、憶測や推測を事実だと勘違いするのよね。
まとめ
・平成5年道路交通法改正以来、外免切り替えについての試験難易度は何ら変わっていない。
・川口暴走事故は日本人と同じルートで免許を取得した人が起こした事故。
・令和6年に中国籍の人が起こした死亡事故は9件あるが、外免切り替えは1件(短期滞在者ではない)。
・某政党が働きかけて「易しくなった」という事実はないと警察庁が断言。
・外免切り替えは日本人が海外で運転する時にも当てはまるのだから、日本の制度を変えた場合に日本人に影響するか調査した。
・それらを受けて令和7年5月末に「ホテル等は認めない方針」を決めた。
陰謀論の本質って「事実確認せずに憶測」なんだと思う。
陰謀論を信じて本質を見失いデマを拡散する道を選ぶか、事実確認して本質を見て議論するかは自分次第なんだなと考えさせられる事案ですが、あなたがどちらを選ぶかは自分次第なのよね。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。


コメント
古い記事へのコメントですが、ぶっちゃけ、日本の、ドライバーもどれだけ交通ルール守ってるのと言いたくなる惨状ですが。信号も黄色で停まる必要があるのを理解してないし、横断歩道への減速接近なにそれ状態(最近は停まってくれる事は増えたけど)、制限速度なんて誰が守ってるんですかね(30km/h制限をちょいオーバーで巡航してたら、何故か追い付いてきてクラクション鳴らしたかと思ったらイエローライン越えて追い越し)。正直、そういうのが守れるようになってから外免ガーと声上げるべきでは。
コメントありがとうございます。
実はそこなんですよね。
日本人もメチャクチャやっているのに、「自分たちはまともだ」みたいな語り口をするのは違和感。