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世間の誤認識とメディアのご都合主義。

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こちらの件。

無罪判決を受け国を提訴。
以前札幌地裁にて、赤信号を無視した中学生とクルマが衝突した事故(過失運転致死)で無罪判決が出た裁判があったのを覚えているでしょうか?中学生が自殺目的だった可能性を否定できないとし無罪判決が出て確定しましたが、被告人側が国に損害賠償請求するら...

たぶん、何を言いたい記事なのかイマイチわからないと感じた人もいると思うので補足しておく。

 

この事故ですが、信号無視して横断していた被害者は、被告人車の通過にあわせて被告人車の進路に飛び出たように見えることが前提にあり(防犯カメラより)

 

被害者が被告人車の接近を認識していたなら、通常は道路中央で立ち止まったまま事故を回避する。
しかしあえて被告人車の通過にあわせて飛び出たなら、被告人車が何キロで通行していようと被告人の努力で回避できたかは疑いが残るわけ(そもそも被告人からしても、自車の通過にあわせて飛び出る人を予見するのは困難)
仮に制限速度内であったとしても、信号無視して横断歩道中央に佇立していた被害者が「クルマの速度に合わせて」飛び出したなら結局回避できたかは疑わしい以上、過失運転致死罪については無罪になる。

 

つまり、この事故においては被告人車の速度超過は過失運転致死罪とは関係がない。

 

ただまあ、「(少なくとも)34キロの速度超過」というのは一種のパワーワードみたいなもので、違反行為としては重大。
仮に事故が起きてなくても、34キロ超過は青切符ではなく赤切符であることを考えると、「そんな重大な違反をしながら無罪はおかしい!」と考える人はいるでしょう。

 

私が考える問題は2つある。

 

①過失運転致死傷罪や逮捕に対する世間の誤認識
②メディアの報道はご都合主義

 

①について。
過失運転致死傷罪は「道路交通法違反の有無」ではなく、「予見可能性と回避可能性の有無」だと理解できている人は少ない。
だから「少なくとも34キロ超過」というパワーワードがあるのに無罪という状況を脳内処理できなくなる人が出てくるし、逮捕要件が「証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとき」だと理解してないから「少なくとも34キロ超過で事故を起こしたなら」逮捕されて当然という誤認識に至る。

 

証拠自体は防犯カメラにあるのだから証拠隠滅のおそれはないとも言えるけど、逃亡のおそれがあると認められる事情があったかについてはわかりません。

 

②について。
過失運転致死罪の判決については「少なくとも34キロ超過」を強調する記事が散見されたものの、無罪確定後に国を提訴する話になったら「少なくとも34キロ超過」は一切報じられない。

 

これについて、過失運転致死罪の判決報道については「重大な違反があった人なんです」という報道にも感じられるところ、国を提訴する話になったら「警察や検察が悪いんです」を強調したいようにすら思えてしまう(やや邪推していることは否めませんが)。

 

で、34キロ超過については「今回の事故(過失運転致死)」については関係ない要素ですが、これってある種の結果論に過ぎないと思う。
たまたま自殺を企図した疑いが濃厚だったけど、違う事故態様であったなら「制限速度を遵守していたなら回避できた」と判断されることもあるでしょう。

 

そう考えると、この事件については過失運転致死罪での起訴を見送り、指定最高速度遵守義務違反罪(道路交通法22条違反)として起訴したほうが適切だったのかもしれない。

 

過失運転致死傷罪の成立要件、逮捕要件を理解してない人が多いことにも問題があるし、メディアの報道についてもご都合主義的な雰囲気を感じてしまったので記事にしたんだけど、

 

苫小牧白バイ事故にしても、記事の論調は「白バイが時速118キロも出していて許されないだろ」という前提に基づいているように見えるの。
そこは確かに過失運転致死傷罪を考える上で重要なファクターだけど、

過失運転致死傷罪を考える上でもう一つの重要なファクター、つまり右折開始時の距離を全く報じない。
その結果起こるのは裁判所の陰謀論でしょ。

 

そして過失運転致死傷罪を「どっちが悪いか?」の比較考量で有罪無罪が決まると勘違いしている人が多いから、なおさら陰謀論に拍車がかかる。
過失運転致死傷罪は被告人の不注意と致死傷に因果関係があれば成立するのでして、この事故は「118キロを予見可能」
と判断したのではない。
ほぼノールックで右折したところにたまたま118キロの白バイが突っ込んできたけど、信頼の原則でいう「+20キロ」にすら安全確認をせずに右折したところが問題なわけ。
その前提にあるのは右折開始したときの距離ですが、そこを報じないなら陰謀論になるのも予見可能なのよね…

 

話を戻しますが、防犯カメラの映像で被害者があえて被告人車の通過にあわせて飛び出ししたことがみえるなら、少なくとも証拠隠滅のおそれはないし、逃亡のおそれがあるとも言いがたいので逮捕要件を満たしてない可能性がある(起訴したことについては必ずしも違法とは言いがたい気もする)。
なので国を提訴したことも理解できるんだけど、「34キロ超過」というパワーワードを併せて報道したら、世論は「そんな重大な違反をしたのに何を言ってるんだ?」となるのも予想される。

 

世間の法に対する誤認識と、メディアのご都合主義が相まっているように感じてしまい、どうにも気持ち悪いのよね。

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