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バスが無過失もありうるとした理由。

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こちらの件。

自転車がノールックで歩道→車道に進出し、ひき逃げ容疑で捜査に。
自転車が歩道から車道に「ノールック進出」してバスが急ブレーキを掛けた際に、バスの車内に立っていた人が転倒し骨折の重症だそうな。若干疑問なのは、救護義務違反の容疑という点。(交通事故の場合の措置)第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事...

バスが無過失になることもあり得ると書きましたが、いくつか質問を頂いたので回答します。

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基本過失割合の事案か?

読者様
読者様
基本過失割合が自転車30%、バス70%でどのような修正が加わって無過失になるのでしょうか?

そもそも基本過失割合がこのように設定されているのは、四輪車側に何らかの安全運転義務違反があることを前提にしているのでして、

 

例えばこちらは路側帯通行自転車がノールック横断したもの。

東京地裁平成26年1月16日判決は自転車30%としてますが、この態様についてはバイクが後行、自転車が先行。
路側帯から車道に進出することは容易なことや、バイクからみて前方に自転車がいてしかも自転車は低速であったことを考えると、バイク側の努力で回避可能性があると判断されやすい。

 

ただし自転車が車道に進出したタイミング次第ではクルマ側の努力で何ら回避可能性がないこともあり、

自転車が歩道から車道に転倒し、死亡事故に。
歩道通行していた自転車が何らかの理由で車道に転倒し、クルマと接触し死亡事故になったそうですがご冥福を。ところでこのような事故について、転倒した自転車に何らかの不注意があったと考えられますが、轢いてしまったクルマにどのような責任があるかあまり...

自転車が先行、クルマが後行だから必ず過失がつくとは言えないんだけど、

バス急ブレーキで乗客けが 原因の“飛び出し自転車”にひき逃げの容疑
路線バスが急ブレーキを掛け、乗客が大けが。ひき逃げ容疑で逃げているのは自転車です。一体なぜ。 衝突したわけではありません。事故は23日夕方。京都市内を走っていた路線バスが歩道から車道に飛び出してきた自転車を避けようと急ブレーキ。自転車はその...

このイメージ映像によると、バスが先行、自転車が後行なのよ。
この状況でバスが後方注視義務を負うとは解されないので、基本過失割合が想定する典型的とは違う。

 

そして自転車はバスを歩道から「追い抜き」して前に出たならば、バスはたいしたスピードが出ていなかったんだろうと容易に想像できる。
結局バスに過失がつくとしたら、急ブレーキを掛ける必要がなかったのに急ブレーキを掛けたみたいな話くらいしか思い付かない。

 

前方に進行し進路変更をする予定がないのなら、後方注視義務は負わないのよね。
なので基本過失割合が適用される事案ではないと捉えて無過失の可能性があると書いたわけ。

 

ところで、自転車が先行、クルマが後行のケースですら無過失を認定した判例もある。
判例は東京地裁 令和2年6月23日。
まずは事故の態様から。

・歩道と車道の区別があり、歩道幅員は1.7m(段差のみ)、車道幅員は7.4mでイエローのセンターラインがあり。
・車道の制限速度は40キロ。
・歩道を自転車に乗って通行していた自転車(原告)は、上りを終えて右足を地面に着こうとしたところ、踏み外して車道に転倒。
・車道を時速38キロで通行していた普通自動車(被告)の側面に原告が接触衝突。
イメージ図(正確性は保証しません)

両者の距離が13.8mに接近した際に、自転車が右足を僅かに出したのが確認できる(ドラレコ)。

両者の距離が4.3mに迫ったときに、自転車が右に傾いた。

では裁判所の判断を。

被告は、本件事故発生の数秒前に、本件歩道上を走行する原告自転車を認めることができた。しかし、原告自転車は、本件車道と縁石で区画された本件歩道上を走行しており、原告自転車に本件車道への進入等をうかがわせる動きはなかった。したがって、本件車道を制限速度内の時速約38キロで走行していた被告において、原告自転車を認めた時点で、原告自転車の車道側への進入等を予見して速度を落として走行すべき注意義務はなかったといえる。

原告が原告自転車から右足を出して本件車道との段差に足を踏み外したのは、被告車両との衝突の約1.3秒前である。しかし、被告において、原告が僅かに右足を出したのみで本件車道に倒れ込むことまでを予見することは非常に困難であり、その時点で右にハンドルを切るべきであったということはできない。仮に、原告が原告自転車から僅かに右足を出した時点で何らかの危険を予見することができたとしても、同時点で、被告車両は衝突地点まで13.8mの位置を時速38キロで走行しており、その制動距離は、空走時間を平均的な0.75秒、摩擦係数を乾燥アスファルト路面の0.7で計算すると、16.0mである。したがって、被告が直ちに急制動の措置を講じていたとしても、本件事故を回避することは不可能であったというべきである。

被告は、衝突の0.4秒前には原告が明らかに右に傾いた様子を確認することができたと認められる。しかし、運転者が、その危険を理解して方向転換等の措置をとるまでに要する反応時間(運転者が突然出現した危険の性質を理解してから方向転換等の措置をとるまでに時間が経過することは明らかである。)を考慮すると、原告との衝突前にハンドルを右に切ることができたとはいえない。また、被告車両の走行車線は幅員3.7mで、対向車線上には断続的に走行する対向車があったことからすると、被告において左右90度程度の急ハンドルを行うことは非常に危険な行為であったといわざるを得ない。
したがって、被告において、右にハンドルを切ることにより原告との衝突を回避すべきであったとはいえない。

東京地裁 令和2年6月23日

裁判所はクルマの「無過失の立証」(自賠法3条但し書き)を認めている。

 

歩道通行自転車が車道に進出することが予見される事情があるなら話は別ですが、後方から追い抜きして割り込むような事故態様ならなおさらそのような予見は困難。

 

ただし前回記事にも書いたように、バス会社が被害者からの請求に対して無過失を主張することは考えにくい。
民事の良いところは、当事者間で合意したならそれが全てなのでして、バス会社が争う可能性は低いと思われます。

基本過失割合の考え方

例えば自転車が赤信号無視して交差点に進入して事故が起きたときに、基本過失割合は自転車80%、クルマ20%です。
このような過失割合が設定されている理由は、クルマ側に何らかの安全運転義務違反があることを前提にしているからなのでして、判例タイムズ38号にも「直前飛び出しのような場合には無過失もありうる」ことが書いてある。

 

要は安全運転義務違反が認められないケースでは基本過失割合を適用しないのでして、基本過失割合は何らかの過失があることを前提にしているわけ。
自転車や歩行者は低速な上、それらが信号無視するときは「一応は確認してから信号無視したけど、青信号車両との位置関係を見誤った」みたいな場合がほとんど。
そういう事案を想定した基本過失割合なのよ。

 

バスの事案については、バスが先行していた状況で後方注視義務を負うとは解されないので、無過失もありうる。
ただしバス会社が乗客相手に争うかと聞かれたら、あまり現実的ではないのよね。

 

基本過失割合に内包されている過失がなんなのか?という観点で専門書を読むと、それはそれで勉強になるかと。
まあ、専門書を読むと巷の解説がいかに間違っているかわかってしまいますが…


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