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運転レベル向上委員会が語る「四日市地下駐車場浸水について賠償を取る手順」の問題点。

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四日市の集中豪雨による地下駐車場の水没事故について、「駐車場法16条で賠償を取る手順」として解説してますが、

要はこれですよね。

第十六条 路外駐車場管理者は、その路外駐車場に駐車する自動車の保管に関し善良な管理者の注意を怠らなかつたことを証明する場合を除いては、その自動車の滅失又は損傷について損害賠償の責任を免かれることができない

自賠法3条みたいな規定にみえますが、運転レベル向上委員会は同条を理由に賠償を取る手順と解説する。
変な解説動画だなと思ったのは、駐車場法16条により立証責任を駐車場運営者に転嫁したならば、論点は「駐車場運営者が注意善管義務を果たしたか?を立証できたか」が裁判で争われるのでして。
判例を見てもそのようなニュアンスには感じ取れない。

 

ちょっと調べてわかったんだけど、同法が定義する「路外駐車場」とはこれ。

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 路外駐車場 道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設であつて一般公共の用に供されるものをいう。

「一般公共の用に供されるもの」には月極駐車場を含まないというのが駐車場法の解釈。
くすの木パーキングって一時利用と定期利用(つまり月極)があるんだけど、

料金のご案内|四日市駅前の駐車場 [ くすの木パーキング ] - ディア四日市 -
四日市駅前の駐車場は ディア四日市が運営。

定期利用について「定期駐車券は登録した車両番号以外での入出庫はできません」とある。
このように一時利用と定期利用が混在する場合にどう解釈するか?

月極駐車場や従業員専用駐車場など、利用者が限定されている自動車の駐車の用に供する部分は対象外です

駐車場法(路外駐車場に関する届出)について

駐車場全体を包括的に「駐車場法でいう路外駐車場」と解するのではなく、駐車場のうち月極利用部分は「駐車場法でいう路外駐車場ではない」と解するらしい。
そうすると、同法16条による賠償責任は「対定期利用」については発生しないことになる。

 

くすの木パーキングのうち、どの程度が定期利用なのかは公開されてないものの、SNSの情報だと地下二階は定期利用が多いという情報もあり、少なくとも定期利用者については運転レベル向上委員会の解説は当てはまらないと考えられる。

 

次に、仮に同法16条の適用がある場合でも、現実の訴訟では積極的に駐車場運営者の過失を「原告が」立証しないと難しい。
もちろん同法の適用がない定期利用者については、過失の立証はマストになる。
疑問なのは、彼が主張することを「どうやって」立証するのか?という話。

 

運転レベル向上委員会の人って裁判を知らないのだと思うんだけど、訴訟の相手方しか知り得ない情報は開示する義務があるわけでもなく、いろいろ主張しても推測の域を越えない。
民法の請求は過失責任、つまり原告が被告の過失を立証しなければ「立証がない」ということで請求棄却になるわけですが、「どうやって」過失を立証するのか具体性がない話に終始して、絵に描いた餅みたいな印象の解説動画に見えてしまう。

 

この件って弁護士さんもいくつかのメディアで解説してますが、「賠償を取る手順」などと「勝てる前提」の話をする弁護士さんは皆無。
ある弁護士さんは「難しい」、違う弁護士さんは「過失があることを立証できれば…」としてましたが、過失があることを立証できれば賠償請求が認められるのは当たり前なところ、「いかにして過失があることを立証するか」が困難なわけよね。

 

だから弁護士さんは一般論に終始し、間違っても「賠償を取る手順」なんて無責任なことは言わない。

 

だって普通に「勝てない可能性がある事案」なのだから。
裁判をするのはタダじゃないんだし、素人が弁護士抜きの本人訴訟で勝てる事案でもない。
要は相応の費用を費やすことと、「勝てない可能性」をどう捉えるかなのよね(依頼者のリスク)。

 

弁護士さんって代金を貰えたなら着手する…というわけでもない。
以前弁護士さんに聞いたんだけど、「勝てない可能性が十分ある」ことを説明して「それでもいいから裁判してくれ」というケースでは、敗訴したときに結局恨まれることが多いらしい。

 

「弁護士としての力が足りない人なんだ」
「なぜもっと全力で止めてくれなかったんだ」

 

こうなるのが予見可能だから、勝てない可能性が高い事案は受けないもんだと。

 

集中豪雨の水没事故については、賠償請求が認められる可能性がゼロとは思わない。
とはいえ、あたかも勝てるかのようなタイトルで煽る必要があるのか疑問。

 

なお、実際に被害を受けた方が損害賠償請求を検討するなら、素人動画を参考にするのではなく弁護士に相談すべきなのは言うまでもない。
間違っても「YouTuberが賠償を取る手順として解説している!」などと言って弁護士さんを困らせることをしないよう願うばかりである。

 

ところで、「素人目線の」裁判の怖さは、情報の切り抜きにより「勝てる」と勘違いする点にあると思う。
行政訴訟なんて原告敗訴率は90%以上と言われますが、弁護士から「勝てない可能性が高い」と言われたとしても、心のどこかに「ワンチャンある」と思っているからトライする。

 

「勝てない可能性が高い」というのは、多くの場合「まずムリだろ」なのよね。

 

ところで、運転レベル向上委員会のこの動画を見る限り、コメント欄は炎上気味。
理由はシンプルで、プロの弁護士さんも難しいと考える事案を「こうすれば必ず勝てる」かのような解説をするからである(注、「必ず勝てるとは言ってません」というのは無意味な話で、動画全体のニュアンスの問題)。

 

そして反対意見を駐車場関係者認定してますが、

運転レベル向上委員会から引用

運転レベル向上委員会の人って、反対意見はこういう認定をしてネガティブな印象を付ける手法なんだろうけど、

 

これって実はかなり問題でして、当該駐車場の関係者が書いたコメント呼ばわりした結果、誹謗中傷になるリスクが高い(駐車場関係者ではなかった場合には当然名誉毀損等の問題になる)。
安易に「駐車場関係者」なんて書かないことが法律に携わる人間に求められる最低限のモラルだと思うし、駐車場関係者はYouTuberの動画なんか気にする暇もなければ「モラル的にも」コメントしないでしょうが、

 

今回の動画って、駐車場法の解釈にも疑問がある上に、絵に描いた餅みたいな内容にしか見えないのよね。
「絶対に勝てない」とは思わないが、裁判を実際にやっている「プロの弁護士」と、裁判の経験もないと思われる素人の差なんだと思う。
職業倫理上、「必ず勝てる」かのような解説をするわけにはいかず「依頼者が負うリスク」も考慮する実務家と、何の責任も取らない立場のYouTuberとの差なのかもしれません。

 

ちなみに今回、あえて具体的なところには言及していません。
例えば、仮に止水板を上げていたなら浸水しなかったのかについても、何のデータも持たない私からすれば「わからない」としか言えない。

 

そもそも止水板を上げていたならこの人は脱出不可能に陥っていたとも言えますが、

パーキングから脱出しても路上冠水で結局ストップした人すらいると。

予め止水板を上げて出庫停止措置を講じていたなら、出庫したい利用者とトラブルになるのは目に見えているし、予め止水板を上げて出庫停止措置を講じたけど浸水した場合、それはそれで損害賠償請求の理由にすらなりうる。

この地下駐車場の運営会社によりますと、駐車場は24時間営業で、夜8時以降は地下1階の事務所に2人のスタッフが常駐しています。

記録的な大雨となった今月12日は、午後10時半ごろ、運営会社の中森美治事業部長に駐車場のスタッフから「水が駐車場の中に流れ込み、土のうを積んでいる」という連絡があったということです。

連絡を受けた中森部長が現場にかけつけた時、地下1階の水位は足のくるぶしぐらいの高さになっていたということです。

そして、午後11時半ごろに地下1階の水位が大人の腰くらいの高さになったことから、避難を決断したということです。

この地下駐車場では現在、利用者の出入り口は7か所、車の出入り口は3か所が利用できるようになっていて、運営会社では、大雨の際は利用者の出入り口には近くの倉庫から止水板を出して設置することにしていました。

また、車の出入り口については現地でボタンを操作し、防潮板を出すことにしていましたが、今回は雨の量が多く、いずれも間に合わなかったということです。

中森部長は「ここまでの雨は想定外でした。駐車場内は湖のようで信じられませんでした。利用者の方から『いつになったら車を出せるのか』『補償はどうなるのか』と問い合わせが来ていますが、まだ何も決まっていない状況です。復旧を急ぎたいです」と話していました。

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いろんな情報を見たときに、「賠償を取る手順」なんて無責任なことを語ることが問題なのではなかろうか。

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そのような状況からみて「賠償を取る手順」というのはどうかと思うし、勝てるかのように煽るのが本当に正しいのだろうか。

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