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歩道通行自転車との離隔距離を取るために、センターラインを越えることは許されるか?

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こちらに関係してご意見を頂きました。

歩道から車道に転倒した自転車との衝突は回避可能か?
本当に悲しい事故、ご冥福を。きょう夕方、千葉県八千代市の県道で自転車に乗っていた小学生くらいの男の子が別の自転車とぶつかり、車道にはじき出され、トラックにひかれる事故がありました。男の子はその場で死亡が確認されました。午後4時すぎ、八千代市...
読者様
読者様
管理人さんが取り上げた事故について、運転レベル向上委員会も解説していたのを見ました。

①18条3項は歩道通行自転車に対する義務がないようにみえますが、運転レベル向上委員会は読み間違えなのでしょうか?
②歩道通行自転車との離隔距離を取るために、イエローのセンターラインを越えることをどう思いますか?
かつて運転レベル向上委員会は歩行者との離隔を取るためにイエローのセンターラインを越えたら違反だと力説してましたが、徐行したとしてもタイミング次第では歩道から転落してきた自転車との衝突は回避不可能です。
③運転レベル向上委員会はトラック無過失はあり得ないと解説してましたが、そうなのでしょうか、、、

①から。
18条3項は歩道通行自転車に対する義務を除外してます。

18条3項は歩道通行自転車を車道通行に促すにあたり、車道での安全を確保するために立法したのだから、そりゃそうですよね。
運転レベル向上委員会がカッコ書きを読めないのかはわかりかねます。

 

次に②。
これは以前書いた気がするけど、

歩行者を追い越すために右側通行は認められているか?
ではこちらの続き。法的な問題先に法律から説明します。歩行者を追い越すために右側通行してもいいとする条文は道路交通法にはない。(通行区分)第十七条5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下...

確かに「道路交通法上は」歩道通行自転車と離隔を取るためにイエローのセンターラインを越えることを許していない。
なお歩道通行自転車との関係は「追い越し」ではないため、イエローのセンターライン以外でも右側通行していい根拠はありません。

 

とはいえ、見通しがよく対向車がいない状況では可罰的違法性はないかと。
もちろん大阪高裁判決を踏まえた上の話。

 

道路交通法上は義務違反とはいえ、過失運転致死傷罪上は注意義務違反になりうるのだし。
右側通行を禁ずる趣旨は対向車との衝突防止にあるのは言うまでもないのですが、杓子定規的に17条4項/5項を解釈することに意味はないんですよね。

側方通過するタイミングで歩道から車道に転落してきたなら回避不可能ですし、

見通しがよく対向車がいないことを確認していたなら、道路交通法18条3項の義務がないにせよ安全側方間隔を保つためにセンターラインを越えたとして、それを非難する必要もないでしょう。
むしろ称賛されることですし。
もちろん前方の見通しが効かない状況なら不可。

 

最後に③。

歩道から車道に転倒した自転車との衝突は回避可能か?
本当に悲しい事故、ご冥福を。きょう夕方、千葉県八千代市の県道で自転車に乗っていた小学生くらいの男の子が別の自転車とぶつかり、車道にはじき出され、トラックにひかれる事故がありました。男の子はその場で死亡が確認されました。午後4時すぎ、八千代市...

東京地裁 令和2年6月23日判決は自賠法3条但し書きを適用し無過失を認定してますし、無過失があり得ないということはない。
要は「車道への進入等をうかがわせる動き」があったかどうかにより予見可能性が認められれば減速徐行する義務があったことになるし、

 

予見可能性が否定された場合には、制限速度内で前方注視していたら回避できた距離なのかによる。

被告は、本件事故発生の数秒前に、本件歩道上を走行する原告自転車を認めることができた。しかし、原告自転車は、本件車道と縁石で区画された本件歩道上を走行しており、原告自転車に本件車道への進入等をうかがわせる動きはなかった。したがって、本件車道を制限速度内の時速約38キロで走行していた被告において、原告自転車を認めた時点で、原告自転車の車道側への進入等を予見して速度を落として走行すべき注意義務はなかったといえる。

原告が原告自転車から右足を出して本件車道との段差に足を踏み外したのは、被告車両との衝突の約1.3秒前である。しかし、被告において、原告が僅かに右足を出したのみで本件車道に倒れ込むことまでを予見することは非常に困難であり、その時点で右にハンドルを切るべきであったということはできない。仮に、原告が原告自転車から僅かに右足を出した時点で何らかの危険を予見することができたとしても、同時点で、被告車両は衝突地点まで13.8mの位置を時速38キロで走行しており、その制動距離は、空走時間を平均的な0.75秒、摩擦係数を乾燥アスファルト路面の0.7で計算すると、16.0mである。したがって、被告が直ちに急制動の措置を講じていたとしても、本件事故を回避することは不可能であったというべきである。

被告は、衝突の0.4秒前には原告が明らかに右に傾いた様子を確認することができたと認められる。しかし、運転者が、その危険を理解して方向転換等の措置をとるまでに要する反応時間(運転者が突然出現した危険の性質を理解してから方向転換等の措置をとるまでに時間が経過することは明らかである。)を考慮すると、原告との衝突前にハンドルを右に切ることができたとはいえない。また、被告車両の走行車線は幅員3.7mで、対向車線上には断続的に走行する対向車があったことからすると、被告において左右90度程度の急ハンドルを行うことは非常に危険な行為であったといわざるを得ない。
したがって、被告において、右にハンドルを切ることにより原告との衝突を回避すべきであったとはいえない。

 

東京地裁 令和2年6月23日

車道への転落が予見可能だったか、回避可能だったか次第で過失割合は変わるので、具体的状況がわからないなら答えはでませんが、現に無過失の実例があることは言うまでもなく。

 

ちなみに②の件については、それぞれ考えて欲しいのよね。
道路交通法上は確かに、歩道通行自転車との離隔距離を取るためにセンターラインを越えることを許していない。
しかし安全確保のためにはむしろセンターラインを越えたほうがいい場合もある。

 

以前書いたけど、

歩行者を追い越すために右側通行は認められているか?
ではこちらの続き。法的な問題先に法律から説明します。歩行者を追い越すために右側通行してもいいとする条文は道路交通法にはない。(通行区分)第十七条5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下...

道路交通法を厳格に守ることが必ずしも安全とは限らないのでして、そのような状況で道路交通法を力説するのは机上の空論になる。
執務資料なんかは期待可能性の問題から自転車との離隔距離を取るためにセンターラインを越えることを許しているとしてますが、そもそも、歩道通行自転車を想定してない昭和35年に制定した法律なんだからどこかにしわ寄せがくると思う(歩道通行が解禁されたのは昭和45年)。

 

コメント

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